（羊の鳴き声）
（足音）
（鳴き声）
（村本朱実）あれさちょっと怖くなかった？
（村本修吾）怖くない。
（朱実）本当？ターゲット確認。
「いつもどおり公園に向かった」わかった。
（朱実）もうみんな来てる。
遊ぶ前にトイレ行ってくるか。
はーい！いつもどおりトイレ入ります。
Ｃ班アクション。

（西田悟巳）紅茶お詳しいんですか？
（杉下右京）紅茶を愛している事は確かですね。
愛しているなんて大げさ。
面白い人ですね。
（飛城雄一）杉下右京さん？はい。
連絡した新井です。
（中園照生）飛城雄一は振り込め詐欺をはじめとするシステム詐欺など新しいタイプの犯罪を考案したといわれている人物です。
（中園）犯行は他人に行わせ自らは手を汚さずその姿を見た者さえいないといわれている人物です。
ゆえに犯罪者たちからは神様と呼ばれています。
（橘高）なんですか？このクエスチョンマークは。
私は飛城雄一の情報を提示して頂きたいとお願いし今日この場を設けたんです。
（甲斐峯秋）橘高議員の質問に答えて頂けますか？申し訳ありませんが警視庁が把握している飛城雄一の情報はこれが全てになります。
次のページをご覧ください。
（中園）構成員同士横の繋がりはなくこのように階層化された指揮系統から直接連絡を取る相手以外はお互い構成員同士顔も名前も知らない…。
（内村完爾）絆を重んじる従来の反社会勢力とは正反対だな。
はい。
全く新しいタイプの犯罪組織という事です。
（橘高）そんな事は私も理解してるんですよ。
問題なのは飛城とそのグループが稼ぎ出す何百億というブラックマネーです。
その金が海外のマフィアなどの犯罪組織にも流れている。
（橘高）その事にアメリカ政府も強い懸念を持ってるんです。
橘高議員のおっしゃるとおりだ。
飛城の組織に対する摘発および情報収集を強化して頂きたい。
（中園）了解致しました！警視庁特命係の杉下です。
あっ…。
僕名刺ないんで…。
特命係ってどんな部署なんですか？とても説明しにくいのですが言うなれば他の部署の手からこぼれ落ちた何かを拾い集めていくような…そんな部署です。
こぼれ落ちた何かを拾い集める…。
面白いですね。
警察によると悟巳さんは自殺したという事です。
そうですか。
彼女とはどういうお知り合いだったんですか？紅茶の種類もダージリンとアールグレイぐらいしか知らないし何を選んだらいいのかわからなくて。
そうですか…。
ダージリンとアールグレイのブレンドを飲んだ事ありますか？そんな組み合わせあるんですか？そのブレンドはフランスの画家バルテュスが愛したものでバルテュスの奥さんが毎朝彼のために淹れていたとか。
ふ〜ん…素敵ですね。
ご興味ありますか？とても。
もし…よかったら。
（右京の声）紅茶を通じて僕とあの人は友人になったんです。
聞いてもいいですか？彼女と最後に会った時どんな様子だったか…。
最後に会ったのも同じ紅茶店でした。
私の家はお金に困っていたのでめったに家族旅行なんかしなかったんですが珍しく家族旅行に行ったんですね。
小田原の山荘に数十年に一度しか咲かないというきれいな花が咲いていて…。
（右京の声）そんな話をしただけです。
数十年に一度しか咲かない花ですか…。
ええ。
それだけですか？それだけです。
そうですか…。
あなたにお渡ししたいものがあるんですが…。
彼女に身寄りはいませんでしたから僕や友人で遺品を整理したんです。
その中にこれが…。
宛名に「杉下右京」とありました。
これは勝手に捨てるわけにはいかないと思ったんです。
あなたに届けるべきだと。
ありがとうございます。
いえ…。
失礼します。
何をバカな勘違いを…。
（甲斐享）西田悟巳さんの死について担当の所轄に問い合わせてきました。
どうもありがとう。
毒物による自殺で事件性はないと判断されています。
ただ少し気になるのは遺書が発見されていない事なんです。
遺書はこの手紙です。
え？僕のせいであの人は自殺したんです。
私信ではありますが所轄に知らせておいたほうがいいでしょうねぇ。
あの…西田さんと杉下さんはどういうご関係ですか？友人です。
了解。
紅茶ですか？ダージリンとアールグレイのブレンドです。

（電話）
（村本博史）はい村本です。
（ボイスチェンジャーの声）「修吾くんを誘拐しました」「離婚したほうの奥さんを呼んでください」
（通話の切れる音）前の女房を呼べって…。
（大杉鉄平）第１段階は成功しました。
（飛城）第２段階へ。
（大杉）了解しました。

（梶井素子）ちょっと…どういう事よ！？
（吉岡琢磨）梶井素子さんですね？
（素子）あんた何やってたのよ！あんたたち散々私の事母親失格とか言ってなんてざまなの！？ねえ修吾に子供携帯持たせてたわよね。
ＧＰＳで場所わかるんじゃない？
（吉岡）修吾くんに携帯は持たせていないとお聞きしましたが…。
持たせていないです。
なんでよ！？私が買ったのがあるでしょ？どうせ使わないしあなただって修吾と電話した事なんかないでしょ！？こういう時のために持たせてたんじゃない！あんた…犯人に協力してるんじゃないの？なんて事…！
（村本）朱実…。
（朱実）何も知らないくせに！
（悟巳）あの花を見た時は何かいい事が起こるような気がしました。
何かいい事はありましたか？楽しい事のあとには必ず…悲しい事が起こります。
ごめんなさい…。
ありがとうございます。
ごめんなさい…。

（吉岡）捜査本部へこちら吉岡。
動画サイトのＵＲＬとパスワードを転送します。
（捜査員）「了解」
（携帯電話）もしもし。
（ボイスチェンジャーの声）「動画は確認して頂けましたね？」はい！「修吾くんを返してほしければ今日の午後１時現金１億２０００万を用意してください」え？私が！？はいあなたです。
梶井素子さん。
今日の午後１時なんて無理よ！あなたの投資会社には顧客から預かっている現金があるでしょう。
それは私のお金じゃないから…。
いつものジョギングウエアを着て黒いリュックに金を詰めておいてください。
ジョギングウエア？指定した金額が用意出来ない場合は修吾くんの命の保証は出来ません。
（ボイスチェンジャーの声）「どうせ警察を呼んでいるのでしょう」我々の動機は特命係の方にでも聞いたらいいでしょう。
（不通音）切れちゃった…。
ねえ特命係ってあんたたち？いえ我々は特殊班なんですが。
（ボイスチェンジャーの声）「我々の動機は特命係の方にでも聞いたらいいでしょう」え？特命係？なぜ特命の名前が…。
ええ。
なぜ特命係でしょう？
（伊丹憲一）特殊班と間違えてるだけだと思いますけどねぇ。
杉下心当たりは？ありません。
会話を聞いて何か気づいた点は？今のところは何も。
ご苦労さま。
特命係はもうお帰りください。
そうですか。
では我々は。
待て！今回の誘拐事件は特命にも協力してもらう。
（芹沢慶二）え！？は？
（中園）文句あるのか！？あっ…いえ。
（中園）では伊丹から報告を頼む。
（伊丹）はい…。
えー修吾くんは村本博史さんと離婚した梶井素子さんとの間に生まれた子供です。
修吾くん誘拐時に一緒にいたのは再婚相手の朱実さん。
義理の親子ですが仲は非常にいいという事です。
（芹沢）梶井素子さんは「お金こそが人生」というフレーズで有名な投資家です。
テレビ出演や著作なども多く犯人の狙いは彼女の資産だと思われます。
到着しました！
（素子）さあ用意したわよ！ありがとうございます。
なんでわざわざ現金を用意しなきゃいけないわけ？新聞紙かなんかじゃダメなの？
（吉岡）もし仮に犯人の手に身代金が渡った場合新聞紙を見た犯人が人質に危害を加える可能性があります。
それって身代金が奪われるっていう前提じゃない。
いえ身代金は必ずお守りします。
当然でしょう！誘拐捜査のプロならちゃんと仕事してよね！私がいくら税金払ってると思ってるの！？
（携帯電話）
（吉岡）ちょっと待ってください。
（携帯電話）
（吉岡）お願いします。
はい。
（ボイスチェンジャーの声）「１億２０００万用意出来ましたか？」
（素子）「用意しました」いつものジョギングウエアを着ていますね？はい。
黒いリュックに金を詰めて…。
（ボイスチェンジャーの声）「氷川神社に来てください」「午後２時龍神公園の泉までジョギングのスタートです」
（吉岡）聞こえましたか？
（吉岡）「至急配備お願いします！」わかった！あと１時間しかないぞ。
早急に捜査員を配備しろ！
（一同）はい！ここからここですね。
ええ。
神社と公園の泉に何か心当たりはありますか？どちらも金運が上がるパワースポットです。
私のジョギングコース…。
犯人はそれを知っていたという事ですか。
でも私のパワースポット巡りはマスコミで喋りまくってるから誰でも知ってると思う。
（吉岡）距離はどれくらいですか？ちょうど５キロぐらいです。
経路を詳しく教えてください。
捜査員を配置します。
本部に連絡！
（捜査員）はい。
犯人はいつものウエアって言ってましたね。
何か明確な意図があるように感じますね。
カイトくん。
はい。
我々は公園の泉ゴールのほうで待ちましょう。
はい。
これは警察との連絡および犯人との通話が録音出来るようになっております。
おい！はい。
失礼します。
失礼します。
（内村）犯人の指示が来たそうだな。
（中園）はっ！今スタート地点とゴール地点に監視カメラの設置終わりました。
経路への捜査員の配置はどうなってるんだ？はあそれは今…。
バカ者！被害者は著名な投資家だそうじゃないか。
気合を入れんか気合を！
（一同）はい！
（捜査員）「梶井素子さんが神社に入りました」
（携帯電話）もしもし。
午後２時スタートの時間です。
はい。

（捜査員）「これから龍神公園に入ります」犯人はこの龍神公園で身代金を奪う計画なんですかね？なぜジョギングをさせるのか必ず意味があるはずです。
行きましょう。
ええ。
前方より自転車の集団が高速で接近中。
自転車集団は通過しました。
間もなくゴール地点の龍神公園だ。
警戒しろ。

（携帯電話）もしもし。
（ボイスチェンジャーの声）「リュックを下ろして」テレビ電話機能で中を見せてください。
（テレビ電話に切り替える音）
（内村）何をやってるんだ？現金を撮影しているかと思われます。
そんな事はわかってるよ。
確認しました。
動画サイトを見てください。
あっ！修吾！「
（修吾の泣き声）」
（捜査員）動画出ました！ああっ！
（ボイスチェンジャーの声）「警察の皆さんもご覧になりましたね？」「
（修吾の泣き声）」こちらが会話を聞いているのも承知の上か。
（ボイスチェンジャーの声）「梶井さんの周囲から捜査員を遠ざけてください」
（ボイスチェンジャーの声）「修吾くんがどうなっても知りません」「いいですね？」では梶井さん。
（ボイスチェンジャーの声）「次は成増ペテロ教会まで走ってください」成増ペテロ教会…？
（ボイスチェンジャーの声）「今いる泉の前から公園の南口を出て右側に走ってください」
（ボイスチェンジャーの声）「光が原団地の広場を通り抜けて国道を真っすぐ走るとホームセンターがあります」そこを左折すると教会があります。
梶井さん犯人の指示どおり…。
（中園）「教会に向かってください」はい。
教会…教会はここです。
ええ。
犯人は経路を指示してきました。
必ず意図があるはずです。
行きましょう。
はい。
成増ペテロ教会は現在使われていないようです。
バカ者！あっ…。
捜査員を再配備しないか。
はっ！おい再配備だ早急に捜査員向かわせろ。
（捜査員たち）はい。
ここに車両が入る事は出来ません。
警備が手薄になります。
ここで何かを仕掛けてくる可能性が高いですね。
来ました。
カイトくん。
なんだ？これ。
僕とした事が…。
なんだ？一体。
おい何があったんだ！
（吉岡）おいどうなってんだ？おい！きゃあ！失礼。
カイトくん！はい。
大丈夫ですか？梶井さん！お金とられた…。
とられた…。

（バイクの走行音）止まれ！カイトくん！はい！
（爆発音）
（飛城）第３段階へ。
（大杉）わかりました。
（捜査員）おらっ！修吾！修吾！おばさん。
大丈夫だった？うん。
ママは？すぐ来るわ。
修吾…。
（越本）１億２０００万？
（ため息）
（越本）知らなかったです。
故障したから降りただけであんな爆発するなんて…。
知らなかったで済むと思ってんのか？本当に何も知らないんです。
俺はあそこに行って女にフードをかぶせてリュックを受け取って帰れと言われただけです。
誰に言われたんだ？上条金融の宮ノ原さんって人がこのバイトやったら借金チャラにしてくれるって…。
上条金融というのはいわゆる闇金融です。
バイクで逃走した越本は借金を帳消しにするという約束で今回の事件に誘われたようです。
ただし誘拐の事もリュックの中身が金である事も知らなかったと言っています。
ダンス集団について。
今回ダンスに参加した人間は皆ＣＭ撮影でフラッシュモブをするという名目で集められただけのようです。
フラッシュモブ？申し合わせた人々が街頭で突然ダンスなどを始め終わったらすぐに解散するというパフォーマンスです。
彼らは全員ダンサー募集の掲示板で応募しており取っ払いの日給と衣装を支給され指示どおり踊って解散しただけだと言っています。
（中園）修吾くん誘拐の実行犯の情報は？
（吉岡）この２人の男が修吾くんを公園のトイレから誘拐した実行犯と思われます。
防犯カメラに映った２人を顔認証システムで照合しましたら免許証の登録や過去の犯歴データとは一致しませんでした。
連絡係の男については？発信元は特定できませんでした。
修吾くんの監禁場所について…。
はい。
修吾くんはあの団地の空き部屋に監禁されていました。
監禁中１組の男女によって見張られていたと思われますが残念ながらあの団地には防犯カメラが設置されておらず今のところ行方はわかっていません。
（中園）一体どういう組織の犯行なんだ？中園参事官。
なんだ？犯罪を細分化し足のつきにくい人間たちを部品のように使う。
そういう犯罪組織があったと思うのですが…。
飛城！飛城雄一の組織か！身代金を奪った越本が誘拐の事を知らなかったように実行犯たちはそれぞれの命令に従って自分たちの役割を遂行しただけ。
事件の目的もお互いの素性も知らない可能性があります。
（吉岡）３分の２が焼け残った札は再発行する事が可能で…。
いくら残ったの？２３万円になります。
そんなちょっとばかし返ってきたって意味ないわよ。
あんた必ず守るって言ったわよね？警察が責任持って弁償しなさいよ！申し訳ありません。
我々は弁償する事は出来ません。
梶井さん。
飛城雄一という名前をご存じではありませんか？飛城？聞いた事ないけど？ある犯罪組織のリーダーの名前なんですが…。
犯罪組織…。
ええ。
そういえば去年私がある企業の株式の大量売りした事でやばい連中がかなりの損害被ったって聞いた事あるけど…。
開店した。
店内は１人しかいない。
（佐伯紫乃）いらっしゃいませ。
とりあえずビールちょうだい。
はい。
先トイレ行きたいな。
どこ？そちらです。
ママ水が流れっぱなしになってるんだけど。
えっすいませんちょっと待っててください。

（米沢守）杉下警部がおっしゃるとおり単なる故障であそこまでの爆発は起こらないでしょうな。
（爆発音）つまりなんらかの仕掛けがあった。
ええ爆発により証拠はほとんど残ってませんが燃焼のスピードが早い黒色火薬が現場から検出されました。
じゃああらかじめ爆発させるつもりだったわけですね。
逃走後の証拠隠滅用に爆破装置を仕掛けたという見方になるんでしょうか。
バイクが故障したというのは嘘ですね？黙ってると君が主犯って事になるかもしれない。
身代金を強奪したのは間違いなく君なんだから。
俺は金の事も誘拐の事も知らないって言ってるじゃないですか。
それは信じましょう。
しかしあなたの知っている事は全て話してください。
あなたは本気で逃げるつもりはなかったのではないですか？車の追跡をかわしたかったのであれば細い路地を通ればいい。
ですがあなたはそうはしなかった。
まるで我々に捕まえられたかったかのように。
俺は指示どおりに動いただけです。
どんな指示だったのですか？バイクを捨てて逃げろと言われました。
そしてもし捕まったらバイクが故障した事にしろと言われた。
はい。
そうです。
他の事は何も知らない僕には罪はないと言われました。
犯人グループは身代金を持ち去れないのであれば黒色火薬を使ってまで身代金を燃やそうとしたと考えられます。
なんでそこまでして燃やそうとしたんでしょうか？燃え残った札は再発行出来ます。
犯人は梶井さんにお金が戻るのをよしとしなかった。
そこから推理出来る事は犯人の目的は株式の損害を取り戻すという事よりも梶井さんにダメージを与える事だったという事です。
手短にしてもらえません？顧客が一斉に離れてテンパッてるんですから。
身代金の影響ですか？まあね。
でも梶井さんは被害者です。
同情される事はあっても契約を打ち切られる必要は…。
信用の問題。
私は顧客から預かっていたお金に手を出した。
何もかも失った。
何もかもですか。
修吾がいるって言いたい？あの子とはこの１年で１度ぐらいしか会ってないから。
この写真は？顧客と撮った写真。
氷川神社ですね。
顧客と一緒に金運が上がるようにジョギングしてるの。
ねえこれって捜査となんか関係あるの？帰ってもらっていいかしら？もうひとつだけ。
このジョギングに参加した顧客の方たちのリストお借り出来ますか？面倒くさいわね。
（秘書）橘高先生！うん？先生！どうした？見てください！
（機械音声）「１２月２５日衆議院議員橘高誠一郎は必ず罪を犯す」メールは複数の海外のサーバーを経由しているため発信者は特定出来ません。
その事が差出人が本物の飛城である事の証左になるかと思われます。
橘高議員は飛城の摘発に向かって動いている。
それをサーチした飛城が仕掛けてきた。
そういう見方になりますか？我々もそう考えております。
現在捜査中の誘拐事件も飛城の組織に損害を負わせた投資家に対する復讐の線が有力ですね。
はっきり申し上げておきますが私が犯罪者になる事などあり得ません。
飛城は何を仕掛けてくるかわかりません。
警察が総力を挙げて厳戒なる警備態勢を敷かせて頂きます。
ありがとうございます。
ただし公務は予定どおり行います。
私はテロには屈しない。

（社美彌子）橘高議員を調べろという事ですか？ああ。
どんな高潔な人間でも陰はあるものだ。
飛城という男は犯罪の神様と呼ばれている。
何を仕掛けてくるかわからん。
橘高議員の情報は全て把握しておく必要がある。
手段は選ばんでいい。
わかりました。
誘拐事件で犯人から特命係に指名があったそうですね。
そのようだね。
何か気になるかね？いえ。
すぐに調査を始めます。
それでは失礼します。
あっ…。
杉下さん梶井さんの顧客リストの中に自殺している女性がいます。
自殺ですか…。
ええ。
「２０１３年１２月２５日」１年前のクリスマスですねこの日付は。
偶然でしょうかね？飛城が橘高議員の犯行を予言した日付ですね。
場所は樹海ですね。
ええ。
行ってみましょうか。
もっと奥ですね。
行きましょう。
はい。
ここにつけます。
左ですね。
あっ…。
ここですね。
ええ。
向こう回りましょう。
ええ。
ここ…ここにテントが張ってあったのですね。
ええ。
伊藤博美さんはここで集団練炭自殺をして亡くなったようです。
一緒に３人の遺体が発見されていますが他に身元が確認出来たのは粕谷栄子という女性のみ。
他の男性２人は身元不明のままです。
ああ…ちょっといいですか。
ええ。
この男性ですが見覚えがある気がします。
えっ？どっちの男性ですか？こちらの男性です。
顔にほくろが２つ…。
どこでこの男性に？君が特命係に来る前の話ですが僕は万引きの現行犯を逮捕した事がありました。
いけませんねぇ。
（藤井貞雄）里保。
（藤井）見逃してもらえませんか？里保はつい手が出てしまうというか…。
常習なんですねぇ。
彼女の将来のためにもきちんと対処しておいたほうが…。
でも…警察沙汰になるのはまずいんです。
まずいとは？
（杉下の声）その時に駆けつけてきた恋人がこの身元不明の男性に似ているんです。
彼女は未成年だったので保護者にも連絡して引き取ってもらったのですが…。
もしこの男性が身元不明の男だったとしたら…。
すごい偶然ですね。
ええ。
この場所で集団自殺した４人がどういう関係だったのか気になりますね。
伊藤博美さんですね？
（素子）はい。
伊藤さんが自殺してたなんて…。
もうひとつ。
身代金が奪われた団地の広場についてわかった事があります。
なんですか？昔からずっと伊藤博美さんはあの団地に住んでいたそうです。
なんの意味もないと思われていたあの広場にあなたとの接点がありました。
伊藤さんが投資の相談に来たのは３年前でした。
自分で言うのもなんですけど私のアドバイスでＦＸを始めて伊藤さんの資産は順調に増えていきました。
まさかあんな事が起きるなんて…。
何があったんですか？２０１３年２月２６日。
円の暴落があったのを覚えてますか？あなたは職業柄大変だったでしょうねぇ。
私初め暴落が起きてる事知らなかったんです。
何か事情があったのですか？電話があって…。
どなたから？修吾からです。
修吾くんはなぜ電話を？村本が再婚前でちょうど彼女にプロポーズをしようとしてた時期です。
修吾は父親の愛情が自分から彼女に移ってると感じ取ったんでしょう。
（素子）パパを取られるわけじゃない。
修吾にはいつもそばにいてくれるママが出来るの。
ママはなかなか会えないからね。
うん…。
これから私は修吾のおばさんになる。
おばさん？そう…。
（携帯電話）
（携帯電話）お仕事行っていいよ。
（携帯電話）もうちょっと遊ぶか。
なるほどおばさんですか…。
そしてあなたが出なかった電話が円の暴落を告げる連絡だったんですね？ええ。
私が職場に戻った時は全てが終わったあとでした。
（伊藤博美）何度も電話したのよ。
あんたに聞かないと何もわからないじゃない。
申し訳ありません。
何してたの？子供と公園に…。
子供…。
あんたお金こそ人生って言ってたくせに…！肝心な時に子供と遊んでたんだ…。
おかげで…私が一人で頑張ってためたお金全部なくなっちゃったわよ…。
伊藤さんは生活に困窮するようになって家賃も払えなくなりあの団地の広場や屋上で寝泊まりしていたそうです。
住民の苦情で立ち退いたあと向かった先が樹海だった。
生涯独身で子供もいなかった伊藤さんがお金まで失った。
そんな彼女から見たらあなたは子供もお金も全てを手に入れているように見えたでしょう。
暴落の日あなたは修吾くんと公園にいました。
あなたが母親からおばさんになってしまった悲しみを伊藤さんが知らなかったとしたらあなたに恨みを抱いたとしても不思議はありません。
もしそういう事なら伊藤さんは恨みを晴らした事になるんでしょうね。
投資家としての信頼を失って修吾とも会えなくなった。
何かあったのですか？あの夫婦が私のお金のせいで誘拐されたんだからもう会わないでくれって。
私はおばさんですらなくなった。
あっ…。
こちらが藤井さんが身につけていたものですね？
（中西）はい。
ＤＮＡ鑑定をさせて頂きますので。
はい。
藤井は身寄りがなかったし俺がもっと気にしてやるべきだったんだなぁ。
ありがとうございます。
こちらお借りします。
「生田里保さんのお母様ですか？」あんな事があって…。
北海道に連れ戻したんです。
でも半年程で病気で亡くなりました。
そうですか。
藤井さんはそれ以降は…。
しつこく連絡してきました。
でもあの子には一切伝えませんでした。
あんな男と付き合ったせいであの子…心を患ったんです。
この衣服に付着しているＤＮＡと樹海で自殺した身元不明の男性のＤＮＡが合致するかどうか鑑定をお願いしたいのですが。
わかりました。
それにしても今回の誘拐事件の関係者と過去に杉下警部が関わった万引き事件の関係者が一緒に自殺をしていたとはえらい偶然もあるもんですな。
ええ。
ところでもう一人の身元不明の男性ですが何かわかりましたか？この情報だけで身元を特定するのは難しいと思われますね。
まず財布や携帯電話などなんらかの連絡先を示す所持品がない。
歯の治療痕など医療関係の情報もない。
衣服なども大量に出回っているものですし。
やはり難しいですかねぇ。
身元不明の遺体は東京都内だけでも１００を超えますからね毎年。
悲しい事ですがいなくなっても気づかれないそういう人たちが存在するという事です。
いなくなっても気づかれない存在ですか…。
あっ樹海で集団自殺した粕谷栄子さんの納税書類から生前の勤め先がわかりました。
「一松」という老舗料亭です。
料亭の仲居さんというのはこんなにお給料をもらうものでしょうかねぇ。
確かに。
でも料亭の仲居と飛城の事件に何か関係があるんですかね？老舗料亭はよく政治家の会合に使われます。
料亭一松といえば天沢大二郎御用達の料亭です。
天沢大二郎…天沢大二郎…。
なんか聞いた事ありますね。
ああ〜。
汚職事件の取り調べ中に自殺した政治家。
５年前その汚職事件を担当したのが当時東京地検特捜部にいた橘高議員です。
なるほど。
という事は１年前の１２月２５日に樹海で自殺した伊藤博美さんは梶井素子さんに恨みを持っていた可能性がある。
そして飛城のターゲットである橘高議員と同じく樹海で集団自殺した粕谷栄子さんには接点が見つかった。
ただの偶然とは思えませんねぇ。
ええ。
（女将）ええ。
栄子ちゃんうちで長年仲居をしておりました。
（女将）芯の強い子だったから自殺したと聞いて本当に意外で…。
粕谷さんの自殺の動機に心当たりはありませんか？いえあの子はもう何年も前にうちを辞めていましたからね。
そうですか…。
あの…こちらの料亭は亡くなった天沢大二郎さんもよく利用していたそうですが粕谷さんと天沢さんは会った事があるんでしょうか？さあどうでしょうかね？天沢さんがいらしてたかどうかも忘れてしまいました。
それは何かを隠してると判断していいんでしょうか？お役に立てなくてごめんなさいね。
ではお引き取りください。
あっ最後にもうひとつだけ。
つかぬ事をお伺いしますが仲居さんの給料というのはどれくらいが相場なんでしょうか？ぶしつけになんです？いえ粕谷栄子さんのお給料を見たのですがサラリーマンの平均給与よりも高かったものですから。
仲居が高給取りじゃおかしいかしら？いえ決してそういう事ではありません。
単純に気になりまして。
細かい事が気になる人なんです。
ええ僕の悪い癖。
器量がいい子でしたから彼女についているお客さんもいたんです。
そういう仲居にはお給金を弾むというのが私のやり方ですから。
ああ〜納得です。
杉下さんはやけに粕谷さんの給料にこだわってますね。
僕が二課にいた頃ある会社社長の金の流れを調べる中で別の料亭でこんな事が起きていたんですよ。
社長と仲居は愛人関係。
社長は料亭の会計に手当の金額を上乗せして払い仲居は給与に手当の金額を上乗せして毎月受け取る。
直接渡したほうがバレにくいと思うんですけど。
会計に上乗せすれば経費として落ちますから懐が痛まないわけですよ。
なるほど。
同じ事が一松でもあったとしたら粕谷さんは誰かの…もしかしたら天沢大二郎の愛人だった可能性もある。
あくまで推理です。
裏の取りようもありませんがね。
あの女将は何も喋らないでしょうしね。
料亭の女将とはそういうものでしょう。
じゃあ橘高さんに直接聞くのが早いですね。
そのようですね。
やめて…やめて…。
助けて…。
（秘書）すいません時間がありませんので手短にお願い致します。
橘高議員明日は１２月２５日クリスマス。
議員が必ず罪を犯すと予告された日ですが。
当然ながら私が犯罪を犯すなどという事はあり得ません。
明日飛城雄一が何かを仕掛けてくるとしたら逆に組織を壊滅するチャンスだと思ってますよ。
問題なく終わりそうですね。
ああ…あ？背中がムズムズする…。
（芹沢）ええっ？ものすごい警備体勢ですね。
特命係の杉下です。
同じく甲斐です。
もう特命係は！警護の邪魔までしないでくださいよ！橘高議員に少し伺いたい事がありまして。
議員は分単位で公務をこなしておられます。
そんな暇はありません！ちょっ…カイト！バカバカバカバカバカ…！
（秘書）すいませんこのへんで。
（記者）橘高議員！もうひと言お願いします！橘高さん！甲斐享です。
あの…甲斐峯秋の息子の…。
ああ享くんか。
お久しぶりです。
お知り合いですか？ああ。
甲斐次長とは特捜時代からお付き合いさせて頂いてるんでね。
何か私に用かな？飛城の件について少し伺いたい事があるんですが…。
そうか。
少しなら時間を取れる。
事務所へどうぞ。
カイトの野郎…親父パワー使いやがって！伊丹さんたちもよろしければ。
もちろんですよ！どうぞ。
どうぞ。
早速なんですが粕谷栄子さんに心当たりはありませんか？ないな。
粕谷さんは天沢大二郎がよく使っていた料亭一松の仲居をしていたんですが…。
一松には特捜時代に捜査で行った事あるよ。
あそこは官僚が多く出入りしてる。
君ら警察関係もな。
そうなんですか。
だが従業員の顔までは覚えてない。
質問は以上かな？あっもうひとつだけ。
天沢大二郎はもともと清廉潔白な政治家として名が通っていました。
ああ。
政界を丸洗いする洗濯機…。
それが天沢のキャッチフレーズでした。
それを逆手に取ってあなたは天沢大二郎をカビの生えた洗濯機と呼んだ。
マスコミはそのキャッチフレーズに飛びつきました。
人気のある議員の捜査を強引に進めるためにあなたは世論を味方につける必要があった。
そのために天沢大二郎本人のみならず奥さんの趣味嗜好まで徹底的に調べ上げ贅沢をしているという印象を作り出しました。
正義のためにそういう手段を取る事もあります。
まずは居間！壁天井！はい！
（橘高）いいか？汚職に関係がありそうなものは塵一つも逃すなよ！
（捜査員たち）はい！
（天沢大二郎）正義の看板がなければただの強盗団だな。
天沢大二郎は汚職について口を閉ざしたまま自宅で自殺。
その後奥さんも心労から衰弱し昨年亡くなられたようですね。
確かに私は天沢大二郎を厳しく追及したがその事に後悔はない。
自殺によって不起訴になったが汚職をしていた事は間違いないんだ。
私に責任を感じろと？そうは言っていません。
ですがあなたを恨んでいる人間がいてもおかしくないとはお思いになりませんか？特捜部にいたんだ。
恨みを買う事もあったろうが似たような事は君ら警察官だってあるだろ？
（秘書）先生次の約束が。
ああそうか。
それじゃ失礼する。
（橘高）お父さんによろしくな。
伝えます。
失礼します。
頼みますよもう！どうしましょうか？粕谷さんは自殺の前に持ち物を全て処分してますから交友関係を洗う事は出来ません。
では裏技を使ってみましょうか。
裏技？
（大河内春樹）柳通りの一松ならよく知ってます。
（大河内）あそこは警察関係者もよく出入りしますから私も何度か。
この女性に見覚えはありませんか？ああ仲居の粕谷さんですね。
彼女に関して何か覚えている事があれば教えて頂きたいのですが…。
なじみの客や仲のいい従業員などがいれば。
確か同じ仲居の佐伯さんと仲がよかったそうです。
佐伯さん…。
その佐伯さんは今も一松にいらっしゃるのでしょうか？いえ今は辞めて西神田で小料理屋を開いています。
場所を教えて頂けますか？はい。
助かります。
（月本幸子）何かお飲みになりますか？
（大河内）ではビールを。
はい。
女将が代わっていたんですね。
ご存じありませんでしたか。
ええ。
２代目の月本幸子と申します。
警視庁の大河内です。
よろしくお願い致します。
出ませんねぇ。
今日は店休みでしょうかね？あっいらっしゃいませ。
（笛吹悦子）こんばんは。
おっ悦子！お疲れさまです。
仕事終わりに寄ったんだけどいたんだね。
いたよ。
クリスマスイブなのにお二人はなんの予定もないんですか？まあ明日享に時間があったら食事でもって思ってますけど。
う〜ん悪い…仕事…。
まあ仕方ない。
私は１日オフだからさ終わったら連絡してよ。
おう。
あっどうも。
（携帯電話）
（携帯電話）杉下です。
例の身元不明の男性のＤＮＡが藤井貞雄さんのものと一致しました。
そうですか。
どうもありがとう。
どうかしました？カイトくんこのあと君に付き合ってほしいところがあるのですが…。
ここが西田悟巳さんのアパートですね。
ええ。
あの人はこの部屋で亡くなっていました。
まるで眠っているように死んでいたそうです。
そして遺書代わりに僕に手紙を残しました。
あの手紙ですね？
（悟巳の声）「杉下右京様」「私は夢を見ました」「あなたとずっと一緒にいられたら…」「そう思いました」「でもあなたには決まった人がいると知りました」「花の里という店の女将さんとあなたが一緒にいるところを偶然見かけました」「あなたが他の女性にほほ笑む姿を見て私はかつてないほどの胸の痛みを感じました」
（悟巳の声）「あなたが教えてくれた紅茶を飲んで逝きます」「さようなら」この手紙について何か疑問があるんですか？僕は当事者です。
冷静な判断をするのに適任ではありません。
君がこの手紙を読んでどう感じたのかを率直に話してほしいのですが…。
わかりました。
手紙によると西田悟巳さんは杉下さんの事が好きだった。
そして幸子さんの事を杉下さんの恋人だと勘違いし失恋を苦に自殺した…。
そういう事ですよね？ええ。
言いにくいんですけど大人の女性が自殺をする理由としては何か幼すぎるというかこじつけのような気がします。
つまり君は自殺に不自然さを感じると。
はい。
１年前の１２月２５日樹海で集団自殺した４人そのうちの伊藤博美さんと粕谷栄子さんは一連の飛城雄一の事件の関係者と接点がありました。
そしてもう一人の自殺者藤井貞雄さんは僕と接点のある人物だった。
つまり杉下さんは西田悟巳さんの死が飛城と何か関係があると？それはまだわかりません。
最後に会った時彼女に何か変わった事はありませんでしたか？あの人とは…。
この花の話をしました。
数十年に一度だけ咲くという花です。
数十年に一度？ええ。
あの人は１６歳の時に小田原の山荘でこの花を見た事があると言っていました。
（携帯電話）はい。
最終段階の準備は整いました。
飛城が予言した１２月２５日はいよいよ明日である。
現実的に判断して飛城を逮捕するにはもう時間がない。
飛城が何を仕掛けてくるのか有力な情報も得られていない。
今我々がやるべき事は橘高議員の身に危険が及ばないように全力で守りきる事だ。
おとなしくしてりゃいいのにスケジュール詰め込みやがって。
これだけの警備ですから何か仕掛けてくるタイミングはないと思いますけどね。
ここみたいですね。
あっ…。
「都合により長期休暇を取らせて頂きます」いつまで休みなんですかね？２日前の配送ですね。
ええ。
開けちゃうんですか？水菜ですか。
足が早い野菜ですよ。
豚肉と牛乳もあります。
ええ。
長期休業を予定していて注文する食材とは思えませんがね。
あ…。
あっ！電気がつけっぱなしです。
ええ。
携帯…。
佐伯紫乃さんのものですねぇ。
携帯を忘れたまま長期休暇してるとは思えませんね。
あっ！これ…。
このにおいはなんでしょう？化学物質のにおいですね。
昼飯は錦糸町にある洋食斉藤で取りたい。
この前おやじさんから連絡もらったんだ。
しかし警備の事がありますし…。
スケジュールを変更するわけじゃない。
２０分で昼飯食うだけだ。
洋食斉藤は私が学生時代にバイトしてたところだから安心だ。
（秘書）はい。
国会議員がテロを恐れて好きな昼飯を食えないような国じゃしょうがないだろ。
うん…。
やっぱおやじさんのエビフライは最高ですよ。
ありがとう。
あんたも立派になったねぇ。
私は嬉しいよ。
よしトイレ行って出発だ。
（店主）ありがとうございました。
ごちそうさま。
どうぞ。
ご苦労。
（米沢）杉下警部の読みどおりです。
佐伯紫乃の携帯には橘高議員の番号が入ってました。
しかし高山菊代という女性の名前で。
２人の関係は適切なものではなさそうですな。
佐伯紫乃さんと橘高議員は愛人関係だったと仮定します。
その状況から推理して彼女は拉致された可能性が高い。
大切な人を誘拐して脅すというやり方は梶井素子さんに対する犯行と同じですね。
飛城は橘高さんを脅すために佐伯紫乃さんを誘拐した。
思えば飛城のメッセージは犯行予告というよりも今日必ず橘高議員が犯罪を犯すという予言めいたものでした。
それを実現するためには橘高議員を脅し彼の行動を操るしかないでしょう。
捜査本部には橘高議員から目を離さぬよう私から伝えておきます。
はい。
カイトくん我々は佐伯紫乃さんを捜しましょう。
捜すってどこへ？天沢大二郎邸です。
米沢さんありがとうございました。
どうも。
中園参事官が橘高から一瞬も目を離すなだと。
さっきトイレに入ったところですけど。
あれ？入ってからだいぶ経ちますね。
おい…。
議員は？あっトイレに…。
トイレトイレ…。
議員！議員！
（ドアを蹴る音）早く開けるんだ！嘘！？おい表だ！表捜せ！
（ボイスチェンジャーの声）「次の場所を指定します」橘高議員はどこへ消えたんだ？はっ。
現在２００名の捜査員が橘高議員の捜索に当たっており防犯カメラによる追跡も急いでおります。
しかしあれだけの警戒の中どうやって？橘高議員は学生時代洋食斉藤でバイトをしていたそうです。
建物の構造を熟知していた橘高議員が自ら脱走したとしか考えられません。
だからなんでそういう事をするんだ？特命の報告によりますと橘高議員は愛人を誘拐されて脅迫されている可能性があると。
愛人？
（ボイスチェンジャーの声）「座敷に黒いバッグがある」
（ボイスチェンジャーの声）「その中に必要なものは揃ってる」
（ボイスチェンジャーの声）「その銃を持って後ろの椅子に座ってください」杉下右京が現れました。
かなりでかいですねこの家。
カイトくん君離れのほうをお願いします。
はい。
（携帯電話の振動音）もしもし。
悦子です。
聞き覚えのある声ですねぇ。
新井さん？先日はどうも。
改めまして飛城雄一です。
悦子さんは無事ですか？あなたは僕の監視下にある。
警察には連絡せずすぐに僕の指定する場所に来てください。
ＧＰＳがついているでしょうから携帯電話は処分してきてくださいね。
わかりました。
場所を教えて頂けますか？すぐに伺います。
（紫乃）助けてください…助けて！助けて…。
警察です！助けてください…。
（ガラスが割れる音）大丈夫ですか？佐伯紫乃さんですね？はい…。
（キャスター）「これは動画サイトによるライブ配信です」「今日１２月２５日は犯罪組織によって橘高議員が罪を犯すと予言された日であり…」ありがとうございます！大丈夫ですか？
（銃声）
（銃声）
（キャスター）「銃を乱射しています」「橘高議員銃を乱射しています」
（銃声）
（銃声）杉下さん！橘高さん…。
紫乃さんは無事です。
そうか！銃刀法違反住居侵入の現行犯で…逮捕します。
お久しぶりです新井さん。
飛城です。
お一人ですか？もちろんです。
人質を取って人を従わせるのがあなたの手法ですから。
悦子さんは無事なんですか？中へどうぞ。

（ため息）あっ…。
（足音）随分賑やかですねぇ。
人数的に不利なので手加減する余裕がなくて申し訳ない。
（スタンガンの音）
（伊丹）佐伯紫乃さんとは愛人関係なんですね？初めは…偶然だったんだ。
（橘高の声）一松の仲居だと思って私から声をかけた。
天沢大二郎の情報を得るために近づいたんですか？初めはそうだったが彼女は悪い男にしつこくつきまとわれていてね。
守ってやりたいと思った。
天下の東京地検特捜部ならいくらでも相談に乗ってやれますもんね。
（橘高）男とのトラブルが解決したあとも彼女が小料理屋を出す相談に乗り開店資金も出した。
そんな中で…全く別のルートから天沢大二郎の汚職に関するリークがあった。
それが例の汚職事件ですね。
証拠が足りなくても天沢に自供させればいいと思った。
だが天沢は決して口を割らない。
私は焦り始めた。
（橘高の声）そんなある日…。
お役に立つといいのだけれど…。
（橘高の声）そこには天沢の愛人である一松の仲居の名が書いてあった。
それが粕谷栄子さんですか？私はそれをネタに汚職の自供をさせようとした。
だが天沢は汚職の事も愛人の事も全て自分の腹に抱えたまま自殺した…。
飛城はその情報を知った上で佐伯紫乃さんを拉致しあなたを脅した。
「佐伯紫乃を誘拐した」「言うとおりに行動しなければ大切な彼女を切り刻みます」
（橘高の声）彼女を守るためにはやるしかなかった。
それであそこまで…。
愛していたんだ。
でも佐伯紫乃さんがあなたに天沢大二郎の愛人の件をリークした事はどこで漏れたんでしょうか？誰も知らないはずだ…。
だが１年ちょっと前私と一緒にいるところを偶然粕谷さんに見られたと彼女が言っていた。
あなたがリークしたのかと問い詰められても…。
あなたでしょう？私と天沢の事を流したのは。
そのせいで天沢は自殺したのよ…。
なんの事ですか？粕谷さんの立場になれば間違いなくあなた方２人を恨んだでしょうね。
いない…。
（角田六郎）どうした？何座ってんですか。
ちょっと休憩するぐらいいいだろう？杉下さん見かけませんでした？いや見てないね。
中園参事官が捜してたな。
そうですか…。
天沢邸までは一緒にいたんですけど急にいなくなって連絡がつかなくて。
まあ何考えてるかわからない人だからね。
…とはいえお前らの読みどおり橘高は愛人を拉致されて自分から姿を消したんだってな。
ええ。
角田課長。
どうした？やばいかもしれないです…。
（中園）杉下と連絡が取れない？はい。
今までの飛城のやり方を考えれば杉下さんの大事な人物を人質に取って脅迫している可能性があります。
警部殿の大事な人って誰なんだよ？離婚された奥さんや思い当たる交友関係は全て無事でした。
じゃあたまたま連絡がつかないだけかもしれないじゃない。
ですが…自分の恋人が連絡がつかないんです。
恋人？はい。
それも…たまたま連絡がつかないだけかも…。
そうかもしれませんがＮシステムで確認出来る限りでは杉下さんの車は東名高速に乗り小田原の方角に向かっています。
なんで小田原なんだよ？数日前杉下さんの友人だった西田悟巳さんという女性が亡くなっています。
その女性にゆかりのある山荘が小田原にあるんです。
その女性の死も飛城絡みだっていうのか？不自然な死だった事は確かです。
杉下さんの行く先に飛城の組織が待ち構えている可能性があります。
いやその程度の根拠では捜査員は出せない。
早く動かないと手遅れになる可能性があります。
身代金も取られたし橘高議員も守れなかった…。
これ以上ミスは出来ない。
わかりました。
（伊丹）カイト。
なんですか？特命係に飛ばされた奴は代々暴走しがちだからな。
俺たちが見張らないとな。
（芹沢）１人で行く気なんだろう？１人で飛城のとこに突っ込むほど無謀じゃありませんよ。
お前のために私が警視庁の幹部に頭を下げる事になる。
その意味はわかるかね？お願いします。
田丸警視総監？甲斐です。
飛城の件でご相談があります。
小田原の山荘に向けて至急ＳＡＴ並びに狙撃班の配備を要請します。
ええ…県警にはわたくしからも連絡しておきますのでよろしくお願いします。
早く行きなさい。
もし自分の推理が間違っていたら？私は失脚かもな。
（笑い声）ありがとうございます。
お前が親父さんに頭下げるとはな…。
大事な人のためです。
親父に頭を下げるぐらいなんともないですよ。
そういう親父パワーの使い方なら許す。
急ぎましょう。
（鳥の鳴き声）はあ…。
はあ…。
（ドアの開閉音）お目覚めのようですね。
手荒なまねをしてすみませんでした。
こうでもしないと落ち着いて話しも出来ませんから。
そうまでして僕と話したい事があるのですね？なんだと思います？修吾くんの誘拐事件の際にあなた方は動機は特命係に聞けばいいと言いましたね。
ええ。
で動機はわかりましたか？僕の推理では誘拐事件で被害者となった梶井素子さんに恨みを抱いていた伊藤博美さんのための復讐です。
全てを失った伊藤博美さんと同じ絶望感を梶井素子さんにも味わわせた…という事ですか？粕谷栄子さんは天沢大二郎の愛人だった。
天沢大二郎を死に追いやった橘高議員を犯罪者にしさらし者にする。
それが粕谷栄子さんのための復讐ですね。
正解です。
大した推理ですね。
さすが杉下右京。
お褒め頂き光栄ですが僕にはまだいくつも謎が残っています。
なんでしょう？あなたが自殺した伊藤博美さん粕谷栄子さんと会ったのは樹海ですね？そのとおりです。
樹海での集団自殺者の中に藤井貞雄さんという男性がいました。
彼が恋人を失ったいきさつから考えて僕に恨みを抱いていた可能性が高い。
だとすれば僕も復讐の対象者だったのではないですか？藤井さんはあなたを死神と呼んでいましたよ。
見逃してもらえませんか？里保はつい手が出てしまうというか…。
僕が見逃していれば２人は引き離されずに済んだ。
藤井さんは彼女の死を悲しんで自殺したんですね？まさに死神ですね。
あなたのために２人は死んだ。
僕に悲劇のきっかけがあった事は認めます。
しかしあえて言いますがそれでも僕は警察官としての職務を全うしただけです。
そう！あなたに悪意はなかった。
あなたを裁く法はない。
だからこそ僕が復讐する意味がある。
あなたがなぜ復讐の代行をする必要があるのですか？それはあなたでも理解出来ないでしょうね。
あなたと話してみて僕が感じていた違和感の正体がわかった気がします。
飛城雄一とその組織の犯行は一貫して金銭のために行われてきました。
犯罪組織とはそういうものです。
今回の一連の犯行は大胆でありながら巧妙に細分化され実行犯も警察のデータに載らない人間を使うという非常に合理的な手段が用いられてきました。
とても飛城雄一的と言えます。
それはそうでしょう。
しかしその手段とは反対に目的は復讐という非合理極まりないものでした。
非合理極まりないといえば僕を捜査に参加させた事もそうです。
そんな必要など全くなかった。
好敵手がいないとゲームが盛り上がらない。
ちょっとした遊びです。
遊びですか…なまじ知能に優れた犯罪者は自分の存在を知ってもらおうとする。
自分がこんなに頭がいいのだという事をひけらかすために。
飛城雄一が他の犯罪者と比べ最も優れていた点は何か？犯罪における天才的頭脳以上の資質それは自己顕示欲の希薄さです。
飛城雄一は自らの存在を消す事に専念した。
だからこそ犯罪の神様と呼ばれたのです。
遊びなどという理由で僕に推理のきっかけを与えるようなそんな愚かなまねはしません。
愚か？完全犯罪を達成するという視点から見れば愚行以外の何ものでもない。
手足は飛城雄一のままで頭だけがすげ替わってしまった印象を受ける。
そこからある仮説が生まれます。
あなたは飛城雄一ではない。
では誰なのですか？それはあなたが一番よくご存じでしょう。
あなたには全てを知ってもらいます。
１年前の今日１２月２５日僕は樹海へ向かいました。
（杉下の声）あなたも自殺を？
（飛城の声）ええ。
樹海へ向かう道中で全身黒ずくめの男がなんとも優雅にたばこを吸っていました。
（杉下の声）黒い服の男…。
その男が本当の飛城雄一ですね？死ぬ前に一服どうです？俺こう見えて犯罪の神様って呼ばれてるんだ。
へえ…。
信じてないな？今世間を騒がせている新型の犯罪はほとんど俺が考え出したんだぜ。
それでいて前科なし。
警察は絶対に俺までたどり着けない。
素朴な疑問なんですがそんな人がどうして自殺を？俺頭に爆弾抱えてるんだ。
でかい動脈瘤があって近い将来確実に破裂する。
裏の世界に生きてきたから死は身近なもんだ。
俺が死ぬ事よりも怖いのは考える事が出来なくなる事なんだよ。
動脈瘤が破裂して仮に生き残ったとしても思考が奪われてしまう。
どうせ死ぬにしても訳のわからないまま死ぬのなんてのは嫌だ。
俺は自分に起こる事を全て把握して死にたい。
そして誰にも死んだ事すら気づかれずに神様として存在し続ける。
男は自分の事を事細かく僕に聞かせました。
ひととおり男の話を聞き終えると僕らは自殺するために樹海の奥へ向かいました。
そこであなたは集団自殺の人たちと出会ったのですね？
（杉下の声）伊藤博美さん。
（杉下の声）粕谷栄子さん。
（杉下の声）藤井貞雄さん。
そしてもう１人…。
（杉下の声）あの人もいたのではないですか？樹海には迷える羊たちがいました。
こうして広い樹海で皆さんに出会えた事には意味があるかもしれません。
一緒に死にませんか？「あなた方はどう思うか」「ある人に百匹の羊がありそのうちの一匹が迷い出たとするならば九十九匹を山に残してその迷い出た一匹の羊を探しに出ないであろうか」『聖書』ですか？『聖書』では羊飼いは１匹の迷い出た羊を捜しに出るんだ。
俺なりの解釈では９９匹というのは一般的な社会生活を送っている人間。
だとすれば迷い出た１匹の羊は社会からはぐれた奴だよ。
私たちみたいに？そう。
俺たちは世の中という群れからはぐれ樹海に迷いついた羊。
そして残念ながら今の世の中捜しに来てくれる羊飼いはいない。
あの女全てを手に入れてるのに私には何も残ってない…。
（粕谷栄子）私は相手の家庭まで壊す気はなかった。
むしろ守りたかった。
それを橘高は正義面して簡単に壊した…。
あの日杉下って刑事が見逃してくれてたら里保が死ぬ事はなかったんだ。
私は免疫不全の難病なんです。
耐えるのももう限界で…。
どうせ一人きりだから…。

（飛城）そして僕らは死んだ。
ではなぜあなたは生きているのですか？僕は夢を見ました。
（羊の鳴き声）
（鳴き声）これは一体…？他の人は？あっ！ああ…。
僕は迷える羊を捜し出す夢を見ました。
（すすり泣き）きっとその夢には何か意味があるのよ。
こんなふうに生き残るなんて何か意味があるのよ。
意味？僕がここで生き残った事の意味？私も一度は死のうとした人間だから絶対に死ぬななんて言えない。
だけどあなたが生き残った意味がわかるまでは生きてみたら？それまでは私も生きてみるから。
（飛城の声）生き残った事そこに飛城雄一という男に出会った偶然が重なった。
それが僕に意志と力を与えたんです。
飛城が話したとおり部屋は存在しました。
そして唯一の連絡相手であるナンバー２の男に接触しました。
あなたの言った事信じます。
ここには飛城雄一の全てがある。
（大杉）金だけじゃない。
このノートには飛城さんの情報や考え出した犯罪手法が書き記してある。
彼は望みどおり神様になったんですね。
ええ。
あなたは俺にとって神様の使いです。
彼は僕の考えた計画に組織の力を使っていいと言ってくれました。
飛城雄一の組織の頭がすげ替わったという事ですね。
僕は飛城雄一として生まれ変わったんです。
あなたが考え至った意味。
結果から推理すればそれはともに集団自殺した人々の復讐を代行する事だった。
復讐についてあの人はなんと言っていたのですか？
（飛城）復讐こそが僕の生き残った意味だと思うんだ。
わかった。
でも約束して。
（飛城）何を？復讐のためだとしても人を殺したりはしないでほしい。
（飛城の声）人を殺さないという束縛はかえって復讐の発想を自由にしてくれました。
そして僕は復讐を実行し成功した。
ではなぜあの人を殺したのですか？山荘の周辺を取り囲むぞ。
彼女は自殺した。
理由は手紙にあったでしょう。
僕への復讐のためにあの人を殺したのではないですか？推理を聞かせて頂きましょうか。
あの人の手紙には僕に決まった相手がいると勘違いしその失恋の痛みから自殺する旨が書かれていました。
まるでこじつけのような違和感のある自殺の動機です。
自分のせいで死んだと思いたくないだけではないですか？藤井さんの恋人は彼に別の相手が出来たと勘違いし思い詰めて死にました。
勘違いによって相手が死ぬ。
あなたはその痛みを僕に与えようとしたのではありませんか？そう。
彼女はそのために死んだ。
自らの意志で。
（悟巳）「杉下右京」？藤井さんの復讐相手なんだ。
かなり優秀な刑事らしい。
組織の調査でも隙は見当たらない。
どういう復讐をするの？少しでも藤井さんと同じ痛みを杉下右京に与えたいと思ってる。
シンプルだけど心に痛みが残るような方法がいい。
まず女性を１人近づかせる。
杉下右京が女性を好きになる必要はない。
女性のほうが好きになった事にすればいいんだから。
それでどうするの？女性が自殺する。
杉下右京に別の相手がいたと勘違いしてね。
ちょうどいい事に勘違い出来そうな相手がいるんだ。
（悟巳）だったら私が死ぬ。
君が？
（悟巳の声）最近病気の症状がつらいの。
最初から死ぬ気で樹海に行ったんだから私が杉下右京に近づいて自殺すればいい。
すいません。
失礼。
全てはあの人が僕に仕掛けた復讐のための嘘だったという事ですか。
そういう事です。
僕が殺したのではない。
彼女はあなたを傷つけるために自ら死を選んだ。
僕のためにね。
ライフルの男を狙えるか？
（狙撃手）障害が多いですね…。
先輩先輩先輩…！日野警部補！警視庁一のスナイパー…。

（携帯電話）もしもし。
（大杉）「山荘が警察に取り囲まれているという報告がありました」わかりました。
今までありがとうございました。
（枝を踏む音）あなたには迷い出ても捜しに来てくれる人がいるようですね。
約束を守って誰にも言わずに来たのですが僕には相棒がいるものですから。
甲斐享ですか…。
時間がないようですね…。
あなたも自殺するつもりですか？あなたには全てを知ってもらうと言ったでしょう。
一連の事件の全貌を知り真犯人を目の前にしながら逮捕出来ずに自殺させてしまう。
そうすればあなたには刑事として間違いなく後悔が残る。
あなたはまだ全てを話してはいません。
なんの事です？あの人の部屋のカーペットには紅茶の染みがありました。
どのような状況で紅茶はこぼれたのでしょう？…紅茶をこぼすぐらいよくある事でしょう。
そうですか。
香りから判断するとこぼれた紅茶はダージリンとアールグレイのブレンドでした。
手紙に書いてあった僕が最初に教えた紅茶です。
手紙のとおりという事ですね。
いえ。
手紙のとおりではなかったんです。
紅茶ポットに残っていた茶葉は全く違う茶葉でした。
つまりあの人が最後に毒を溶かして飲んだ紅茶はダージリンとアールグレイではなかった。
初めに用意したダージリンとアールグレイのブレンドをなんらかの理由でこぼしたあとわざわざ違う紅茶を淹れ直したという事になります。
なぜでしょう？紅茶に大してこだわりなどなかったのでしょう。
そうでしょうか？手紙に記してあった気持ちとあの人の本心が違っていたからではないでしょうか。
死ぬ間際あの人はなんらかの理由で僕に本心を伝える事が出来ないと考えた。
そしてせめて手紙が間違いだと知らせるために僕だけがわかるメッセージを残そうとした。
（飛城）これは？あの人への手紙。
前に用意したのがあるじゃないか。
そっちにして。

（悟巳）これを飲んだらお別れ。
この香り…あの日の事を思い出すな。
やめろ！妄想にも程がありますね。
これから言う事は本来僕が口にするのははばかられる事ですが…。
何を言うつもりですか？あの人は僕を愛していました。
紅茶を飲みながら一緒に過ごした時のあの人の表情しぐさ…。
僕だけが感じ取れるものです。
あなたの妄想だ！初めて声を荒げましたねぇ。
その態度からあなたの心も読み取る事が出来る。
あなたはあの人を愛していましたね。
あれが数十年に一度咲くという花ですか。
最後に会った時あの人は１６歳の時にこの庭園で見たという花の話をし泣きました。
あなたは花の話を聞いていなかったようですねぇ。
あの人は僕にだけ話した。
あの花の話を僕から聞いて心がざわついたのでしょう。
あなたはこの山荘を調べ出し僕を呼びつけ自らの命を絶つ場所に選んだ。
あなたの行動にはあの人への思いが溢れています。
妄想はもういい。
もう終わりだ。
あの人が最後に選んだのは僕です。
あの人は望んであのような死を遂げたのではない。
あなたが復讐の道具としてあの人を利用し追い詰めた。
あなたがあの人を殺したんです！違う！彼女は僕のために死んだんだ！
（伊丹）クソ…！
（銃声）
（銃声）
（喚声）杉下さん！ケガはありませんか？大丈夫です。
殺せ−！！立て！危機一髪でしたね。
狙撃手が配備される事は予測出来ました。
そして僕に銃口を向けさせれば当然狙撃してくると思いました。
なぜ自分に銃口を？彼の自殺を止めるためです。
えっ？…リスクが高すぎますよ。
警視庁一のスナイパーなら確実に急所を外して狙撃してくれると信じていました。
えっ？あそこから？
（携帯電話）あれ？誰だろう。
もしもし。
（悦子）「あっ享？私」悦子？お前何度も電話したんだぞ。
ごめんごめん。
携帯なくしちゃってさ。
何かあった？いや…メリークリスマスって言おうと思って。
それだけ？メリークリスマス。
悦子さんですか？はい。
携帯なくしたみたいです。
悦子さんの携帯ならすぐに見つかると思いますよ。
よかった。
戻りました！
（拍手）いや〜杉下！無事で何よりだった。
一時はどうなる事かと思ったが…。
いや特命のおかげで事件解決だな！お役に立てて光栄です。
ところでひとつよろしいでしょうか？なんだ？参事官が今回の捜査に限り僕たちを重用してくれたのには何かわけがあったのでしょうか。
あ…それ自分も気になってました。
私もです。
私も。
まあ事件も解決したしぶっちゃけて言うとな…。
俺の女房には霊感があるんだ。
はい？その女房が俺のキャリアが終わるようなとんでもない事件に巻き込まれると予言したんだ。
そしてそのピンチから逃れるためのラッキーアイテムが紅茶と眼鏡！それで杉下の事だとピーンときた！あの…ご冗談でおっしゃってるんですよね？いや真剣な話だよ！俺はな女房の霊感に従ってここまで出世してきたんだ。
まあ信じるか信じないかはお前たち次第だがな。
ハハハハハハ…！アハハハハハハ…！立場が逆になってしまいましたね。
なぜ僕を死なせてくれなかったんですか？あの人はあなたに生きてと言った。
だからあなたを死なせるわけにはいかなかった。
ちなみにあの時僕が話したあの人の気持ちはあなたを挑発するためのものです。
あの人が最後に選んだのは僕です。
人の気持ちは誰もうかがい知る事は出来ませんから。
そういえばお礼を言ってませんでしたね。
礼？あなたがあの場所を教えてくれなければ僕はあの花を見る事が出来なかった。
ありがとうございます。
あなたを憎んでいたはずなのに数十年に一度の花が今咲いているのを見た時あなたに見せたいと思った。
あの…紙とペンをお借りしても…。
ええ。
彼女の本当の手紙が置いてある場所です。
ありがとうございます。
僕は人生を二度失った。
僕が生き残った意味なんて何もなかった。
あなたは生きて罪を償ってください。
それがこの事件に残された最後の意味だと思います。
こぼれ落ちたものを拾い集めるか…。
最後にもうひとつだけよろしいですか？あなたの名前を教えて頂けますか？新井です。
新井亮一それが僕の本名です。
本当に新井さんだったんですね。
不思議なもんですね。
彼女の葬儀場であなたと会った時なぜか用意していた偽名を使わず新井と言ってしまった…。
あの人が見ていたので緊張したのではありませんか？そうかもしれませんね。
では。
あの僕も最後にひとつ…。
あなたも…彼女の事を…。

（ドアの閉まる音）またご活躍だったようですね。
これで飛城の残した組織の全容が解明出来るでしょう。
ええ。
ところで橘高議員を愛する女性のために政治生命を捨てたヒーローとしてマスコミにリークしたのは広報課長であるあなたの判断ですか？ええ。
警察族である議員に復活の芽を残せというのが甲斐次長の指示だったものですから。
さすが情報の扱いには長けていらっしゃる。
ありがとうございます。
情報といえば杉下警部の大事な女性が事件に関わっていたとか。
僕の事が気になっているようですが僕もあなたについて気になっている事があります。
それはまた別の機会に。
幸子さんこれすごい美味しそう！どうやって作ってるんですか？これ１回お野菜をちょっと素揚げにしてそれで…。
あら？カイトさん。
悦子さんの事ずーっと見つめてる。
えっ？いや…。
何？気持ち悪…。
クリスマス以来変だよ？そんな事ないでしょ。
変なんですよ。
杉下さんは？ああ…杉下さんはちょっと遅れて来るみたいです。
そう。
（悟巳の声）「杉下右京様」「最後にどうしてもお伝えしたい事があり筆をとりました」「あなたと出会ったのは偶然ではありません」「ある人の復讐のために近づいたのです」「でもそれが私の人生にとって特別な出会いになるとは思いもよりませんでした」「私はあなたに恋をしました」「それは初めての恋でした」「私の人生は男性を愛する事が出来るようなものではなかったのです」「でもあなたは優しかった」「あなたと過ごした時間は私の人生で一度だけ咲いた花のようでした」「嘘でもいいからこのままでいられたら…」ありがとうございます。
ごめんなさい…。
ああ…もういきますね。
今日も楽しかったです。
こちらこそ。
杉下さん…。
さよなら。
（悟巳の声）「そう思うと最後まで本当の事を言えませんでした」「素敵な思い出をくれたあなたをこれ以上裏切り続ける事は出来ません」「今まで申し訳ありませんでした」「そしてありがとうございました」「本当にありがとう」「杉下右京さん」お待たせ致しました。
ダージリンとアールグレイのブレンドです。
2016/01/24(日) 13:55〜16:30
ＡＢＣテレビ１
相棒　ｓｅａｓｏｎ１３　＃１０ＳＰ[再][字]

「ストレイシープ」
右京に恋した女性の謎の自殺。
犯罪の神様とまで呼ばれる飛城の正体とは？
相次ぐ誘拐と謎めいた予言。その驚愕の目的とは…!?

詳細情報
◇番組内容
右京（水谷豊）に恋した女性・西田悟巳（石田ひかり）が謎の死を遂げる。時を同じくして、少年が何者かに誘拐される。警察は万全の警備態勢で身代金受け渡しに臨むが、予想だにしない事態が！その後も事件は相次ぎ、一連の事件の犯人は「犯罪の神様」と言われている男・飛城かと予想されたが、その正体は警察でも掴めていなかった。右京と享（成宮寛貴）は単独で追跡を開始。すべての事件にある共通点があることを掴むが…。
◇出演者
水谷豊、成宮寛貴、鈴木杏樹、真飛聖、仲間由紀恵、石坂浩二
川原和久、山中崇史、六角精児、山西惇、片桐竜次、小野了、神保悟志
【ゲスト】平岳大、石田ひかり、川上麻衣子、三浦浩一、寺島進、羽鳥慎一

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字（字幕）

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード（ステレオ）
日本語
サンプリングレート : 48kHz

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