梓林太郎サスペンス「旅行作家・茶屋次郎 梓川清流殺人事件」 2016.01.23


(女)あっ?
(男)あ〜っ!
(車掌)お客さん!忘れ物ですよ!
(茶屋次郎)あっ?いけねえ!
(山倉副編集長)…何だこれ?原稿!深夜バスの中で徹夜だ。
お〜い木下〜!こらぁ木下〜!茶屋大先生のお原稿だよ!校正!
(木下)はい。
ほんとにまあご苦労さん!寝起きもいいけど調子もいいなあ?まったくいい仕事だよなあ。
毎回旅するだけでメシが食えるんだから。
旅するだけ?旅するだけ!ふざけんなお前…。
原稿っていうお前には無縁な知的作業があるんだ。
おまけにどっかの雑誌社…経費は有って無きがごとしだ。
よく言うね人の恩も忘れて。
恩だと…?お前が作家になるってサラリーマンを辞めたとき最初に使ったの誰だ?じゃ出版社に入れたのは…?俺が卒論書いてやったからだろ。
あのさあ来る度にその話するのやめてくんない?俺だって副編集長って立場が…。
なにが立場だ。
まだ「副」で…。
同期じゃ取締役も出る頃だろ?お前に言われたくないよ。
旅行作家って言ったって世間じゃ知ってるヤツいやしないよハハハ…。
どうしたの…?怒ったの?帰って寝る。
相変わらずまずいなお前んとこのコーヒー。
おい忘れるなよ。
例の面接1時だからな。
あっ!そうだったな。
きょうか…。
いい女連れてくるからエヘヘ…。

(山倉)どうぞ。
春川真紀さん?
(真紀)はい。
ハルカワマキさん…「ハルマキ?」…。
お前本当にこれだけしか応募が…?一応俺が先により分けといた。
おいそれじゃあ?!これならお前も変な気起こさないだろ?お前なあ!あのう…。
茶屋先生はもちろんご結婚を…?はあ?バツイチ。
女房とは6年前に…。
おい!仕事とはいえ旅行ばっかりで連絡はしない若い女にチョッカイじゃ女房も怒りますわなハハ…。
要するに逃げられた?そう言っちゃ身も蓋もないけどそのとおりですハハハ…。
困ったなあ…。
え何が…?仕事は茶屋さんのスケジュール管理と資料の整理ですよね。
あと原稿の清書ね。
…となると当然この部屋で二人きりにね…アハハ。
いやもし…変な気でも起こされたら…?変な気…?私も嫁入り前の体ですしフフ…。
ちょっと勘弁してよ誰が…。
ああっ!それは心配ないです。
こいつすっかり枯れてるし取材でいないから。
じゃあしばらくテスト期間で様子みるかなウン。
テスト期間ってね雇うのはこっちだよ。
パソコンだ…買ってくださいよ。
仕事になんないからね?はあ…?
(真紀)「6月20日新宿発11時特急あずさ57号」・「8時ちょうどの〜あずさ2号で〜」か…。
あ2号じゃなくて57号かアハハ。
「松本駅着13時46分」「松本電鉄上高地線乗り換え」と。
「松本発14時30分…」
(浅沼瑞恵)すみません!
(小口葉子)これね。
ありがとう。
あっ…。
(腕時計のアラーム音)ああもう上高地に着いてるなあ。

(仲居)お風呂は24時間ご自由に。
露天風呂もどうぞ。
ああ梓川が見えるんですねえ。
お夕食は6時からですがお酒は…?結構です。
少し仕事しますから…。
キャッ!すみません!あ先程は失礼しました…。
あっ!あ駅で…?いやあまたお会いしましたね。
どうも…。
先程はあんな格好をお見せしちゃって…。
あ私は茶屋…茶屋次郎といいます。
茶屋…?茶屋ってもしや旅行作家の…?えっ?…はいはいいやご存じでしたか?よく読ませていただいてます。
私浅沼瑞恵と申します。
あなたのような方に読んでもらってて光栄だなあ。
じゃ私はこれで…。
はい。
あの…よかったら夕食をご一緒に…?え?いや旅館で独りでメシ食うのは侘しいもんですからね。
ご迷惑ならいいんですけど…。
いえ。
こちらこそいいですか?もちろん大歓迎です。
あのね夕食はこちらの方と私の部屋でご一緒しますから…。
あっお酒だ。
とりあえずビールをね。
ああもう自分でやりますから。
ごゆっくりどうぞ。
学生の頃から穂高や槍ヶ岳に登るにはいつも松本から上高地に入りましたからねえ。
梓川って特別に思い出のある川なんですよ。
初めて見た時流れの美しさに声も出ないって感じだったかな。
そうですか…。
確かに美しいかもしれませんね。
えっ?・はい。
宿に着いたら連絡してくださいよ!梓川でおぼれ死んだのかと…。
縁起でもないことを…。
原稿はどうなってます?あ〜きょうの分はまだ上がってない。
まさかお酒を…?毎日送るって言ったんですからね!だから朝までにFAX入れるから…。
もう晩飯でも食べて帰ってよ。
あっ領収書忘れるなよ!あ先生…。
あっ!アッタマきちゃったなもう!秘書がうるさくてねえ。
「原稿まだか?」って怒られましたよ…。
秘書がいらっしゃるの?あのね「秘書」って響きとはほど遠いヤツでしてね。
連絡しないもんだから梓川でおぼれ死んだのでは…なんてね。
ロクな事言わないですよ。
さ飲みましょう!あすみません。
もしもし…はい…ちょっと待って。
では私はこれで…。
もう少しいいんでは…?十分いただきました。
おやすみなさい。
おやすみなさい。
もしもしお待たせ…。
男か…?
(カッコウの鳴く声)少し撮っとくか…。
浅沼さん…?どうしました?!
(パトカーのサイレン)
(道原刑事)私豊科西署の道原ですが発見者だって?ええ。
ガイシャとどういう関係で…?関係なんかありませんよ。
昨日初めて会ったんだから。
初めて…?
(伏見刑事)じゃなぜ朝早く二人で…?二人?!私は写真を撮ろうとして偶然彼女を発見しただけです。
手が血まみれだったとか?それは抱き起こしたから…。
話は署の方で聴くから…。
ちょっと私は仕事が…。
車はこっちです。
これじゃ犯人扱いだよ。
ただの発見者ですよ。
(道原)今のところ重要参考人だ!重要参考人?あっ?どうしたの?いえ…。
ああ?ああ…ブン屋新聞記者。
新聞記者…?早く乗って!お〜いちょっと!旅行ジャーナリスト茶…茶茶屋次郎。
おい知ってるか?すみませんね売れてなくて…。
じゃ仕事というのは?梓川の流域を訪ねて紀行文を書くことで…。
で坂巻温泉で浅沼瑞恵と一緒になった。
待ち合わせたんだろ?偶然ですよ。
彼女とは昨日初めて会ったんだから。
若い女が初めて会った男と部屋で食事するわけないだろ!かなり親しそうだったとか…?そういう経験ないの?だから彼女は私のファンだと…。
(道原)ファン…?えっ?アンビリーバブルだなあ。
でファンの女を朝になって河原に連れ出したと…。
どうしてそう短絡的なんだろう?夕食を共にした男が第一発見者で手にはべったりと血。
誰がどう見たって怪しいだろうえっ?!なぜ私が殺さなきゃいけない?それが分かってたらすぐ逮捕状とってんだ!強引に何かを迫って拒否された。
それで…?「何かを」って何?それを「下司の勘ぐり」って言うのよ。
茶屋さん当分こちらにいてもらうことにして所在を明確にしといてくださいね。
いつまでですか…?そらあんた犯人が捕まるまでってことに…。
あんた以外にいればの話ですよ。
何…?!殺し!じゃお前が第一発見者なのか?やっと解放されたんだ。
それがまるで犯人扱いでさぁ。
当分居場所は明らかにしといてくれって。
今回の取材は中止。
なんだって!こうなったら犯人を捜すよ。
下手したら刑務所行きだよ。
お前なに馬鹿な事を…。
ああそうか…?お前書けよそれを!ああ?その女幾つだ?20歳代半ばかな。
顔は…?ええっ?美人か不細工かってことだよ?お前のカミさんより100万倍はきれいです。
そうかそうかいいぞ!アハハ。
何がいいんだ馬鹿!こっちは犯人扱いで大変だぞ!おいしいじゃない?ラッキーじゃない?ラッキー?いいか?「緊急ドキュメント梓川美女殺人事件!旅行作家茶屋次郎遭遇」な?来週号でいこう!徹底取材で経過をリポートする。
もう梓川はどうでもいい!ちょっと待った!原稿は入れろよ!ウチの取材だから他社には書くな。
コメントもダメだ!おい!取材費は自由だ。
売れるぞこれは!なに勝手に汗かいてんだ。
こっちの身にもなってみろ!あのう…。
茶屋次郎先生で…?はあ…。
私小口葉子と申します。
お話を伺いたい事が…?あいや…マスコミに話す事はなにも…。
あ違うんです。
私は浅沼瑞恵の友人でそれに私文化部で事件担当じゃないですから。
そうですか。
瑞恵と食事を…。
いや僕は決して彼女を…。
分かっています。
私は瑞恵が殺された理由は別にあると思うんです。
どういう事ですか?瑞恵は大学の後輩なんです。
ああ…じゃそれ以来彼女とずっと…?いえ私は就職で地元に帰りましたから交流はなかったんです。
それが1年前突然連絡があってこっちに来てるからって…。
旅行で…?私も温泉にでも…と思ってたんですがなんだか調べたい事があるとかで…。
調べたい事…?ええ。
島々から奈川渡を通って黒川渡まで行きたいからって…。
ちょっと待って。
座りませんか?島々から奈川渡…黒川渡…。
あの何か…?えっ?いや事件の事を書く羽目になりまして…。
書くって…?あいや…週刊誌なんですよ。
初めは梓川流域を旅する企画だったんですが急きょ殺人事件の事を書くようにって…。
そうですか。
すみません。
いやな商売で…。
先生…。
はい?協力していただけませんか?私突きとめたいんです。
瑞恵は一体誰に何のために殺されたのか…?そりゃもう私で力になれるなら喜んで…。
私が瑞恵の話をちゃんと聞いてれば…。
それを仕事が忙しいからと食事をつき合うぐらいで…。
この1年間月に1度は来てたのに…。
そんなに何度も?ええ。
「ヤマガタ」とか「イマイ」という地名を口にして地図で探してました。
「イマイ」に「ヤマガタ」…?瑞恵が調べようとしていたもの…それが分かれば殺された理由もそこにあるはずです!送ってもらってすみません。
これ私のケイタイの番号です。
できれば先生のも…。
あ僕は持ってないんです。
えっ?ご職業柄必要なんでは…?逆です。
日頃の煩わしさを忘れるための旅行ですから。
ケイタイなど持ってたら…。
今は登山客でもピーピーとね。
中でも大人が音楽を…。
あっケイタイか…?もしもし…はい…ちょっと待ってあの電話…?犯人だとでも…?何か関係あるかもしれない。
ケイタイなら着信記録が残ってるはずだわ。
きっと警察が調べてます。
聞き出せるかも…。
何か分かったらここへ…。
はい。
(茶屋のつぶやく声)
(虫の鳴く声)あっ!あった…。
山形に今井…あったよここだ…。
多分「何かの道」であることは間違いないと思う。
(真紀)山形から今井に折れるという事は松本には向かわず塩尻を目指したという事では…?ああ…多分そうだろうなあ。
ああ?塩尻の先はどこです?岡谷だね。
じゃ反対側に行きますよ。
黒川渡の延長は…?どんどん行くとね…ええ野麦…?野麦峠…。
旧野麦街道…「女工哀史」か!遅い!岡谷は大正時代から製糸工業で栄えたんです。
製糸工業といえば飛騨の寒村から少女たちが野麦峠を越えて…。
浅沼瑞恵が調べていたのは女工哀史の道か…。
そう。
たぶんそこで何かを捜してた…。
ハルマキ君。
え?君顔は冗談みたいだけどかなりやるねえ。
先生推理もの向いてないんでは…?私はね旅行作家です。
どうでもいいですがきょう中に原稿をね!はい…。
ごめん!先生!茶屋先生!昨日あれから調べたんですが瑞恵が最初に信州に来たのは1年前の同じ日なんです。
つまり一昨日6月20日は何か意味が…。
それで花束を…。
同じ日に花束か…?誰かの誕生日かなあ?瑞恵さん新島々の駅でタクシーに乗るのを見たけど…。
タクシー?ええ。
行きましょう!乗せたよ。
先生!雑炊橋まで乗せたけど歩ける距離だと言ったら料金2倍くれましたよ。
先生!私が用意した花束です。
誕生日じゃなかったようですね。
10年ちょっと前だったかね。
男の人の死体が流れ着いて大騒ぎになったんだわ。
そうですか…。
あったわ。
「浅沼泰三48歳」間違いないわ。
瑞恵中学の時にお父さんを亡くしたって…。
「警察は自殺と事故の両面で捜査中」か。
瑞恵のお父さんは12年前なぜ梓川を訪れたのでしょう?
(斉木記者)小口さ〜ん!茶屋先生ですね。
私社会部の斉木和清です。
あ昨日の朝事件の現場で…?ええ早番でしたので警察から第1報を受けて…。
現場で被害者が瑞恵さんと分かりすぐ小口さんに…。
瑞恵が来た時彼も何度か一緒に食事を…。
そうですか。
で瑞恵さんのケイタイの着信履歴ですが…。
分かった?それが…発信元は松本市内の公衆電話なんです。
あぁ…そうですか…。
待てよ…。
瑞恵さんが調べていたのはこの父親の事件では…?父親の死に疑いを持ちそれを調べていた…。
そのせいで殺されたと…?多分何かを発見したために…。
少し強引すぎませんか。
警察の捜査では父親は事故か自殺ってことでしょう?何の証拠もないですけどね。
彼女の東京の住所分かります?ええ。
明日一度東京へ帰ります。
警察に内緒で…。
新聞で読みました。
お気の毒に…。
去年お母様を亡くされてずっとお独りで…。
はぁ…この家にずっと独りですか?あの瑞恵さんのお父さんは12年前信州で亡くなりましたね。
そうでしたわね。
旅行されててそこでね…。
亡くなられた父親の泰三さんはどんなお仕事を…?え…穂高精工という会社を経営されてました。
穂高精工?ええ。
確か義理の弟さんが後を継いでます。
事件についてお心当たりは…?
(横山社長)いや…瑞恵が出かけてることも知らなくて…。
交流はなかったですか?いえ…。
去年母親が亡くなって瑞恵は取締役という形で報酬を受けてましたから。
以前は瑞恵さんのお父さんが社長でしたよね?突然の事故で亡くなって私が後を継ぐことに…。
その事故ですが12年前浅沼泰三さんは何の用で梓川流域に行かれたかご存じないですか?さあ…。
なぜそんな事を?瑞恵さんはどうも父親の死因に疑いを持っててそれを調べてて殺されたんではないかと思うんです。
死因を調べていた?はい。
で当時の泰三さんの行動が分かれば手がかりになるかと…。
はあ…。
泰三さんから…女工哀史とか野麦街道とかの話は…?どういう事ですか?あの頃の義兄は野草に興味を持ったとかで度々あの辺りに出かけるようになったんです。
興味を持つように…?義兄は機械の開発しか頭にない人で家で本ばかり読むような人でしたが…。
それが急に野草ですか?慣れない山歩きで…足を滑らせ転落したんだろうと…。
しかし瑞恵さんはそれを信じていなかった。
それにしても親子二代が同じ川で死ぬなんて…。
あの…二代じゃありません。
えっ?三代です。
三代にわたって梓川で亡くなっているんです。
三代…?
(真紀)三代?!じゃ彼女の祖父の浅沼与吉も梓川で死んでる…?!下流の島内付近で変死体で発見されている。
それも泰三と同じで自殺か事故かはっきりしない…。
娘父祖父…。
3人ともが…梓川で…。
いいじゃないかいいじゃないか。
「三代の悲劇梓川に呪われた家」お〜…!次の号もバーンといくぞ!「さすらいの旅行探偵茶屋次郎。
女工哀史に隠された謎に挑む」どうです?お〜いいね。
いただきましょう。
いい加減にしろ!人が死んでるんだぞ。
そうですね。
その浅沼家…どういう家なんだ?穂高精工の経営者創業者は瑞恵さんの祖父の与吉。
医療機器の精密部品で大きくしたのが父親の泰三…。
「穂高」というからには信州に関係あるんでしょうね。
与吉は何しに梓川に行ったかだ。
36年も前だ会社には当時を知る人いないそうだ。
ハルマキさ瑞恵が勤めてた会社の方は?1か月前に辞めてました。
えっ?寿退社とか…。
寿退社?相手は?それが誰も相手を知らないんです。
そいつが怪しいぞ。
うん…。
おっ!きた。
(FAXの着信音)いいからあなたは座ってなさい。
ちょっと…これ私の仕事ですから。
信濃タイムス…コグチヨウコ。
誰です?いや…それは…コグチでなくオグチヨウコ…。
オオグチ…?大口は君だろうが…。
まあ誰なんです?誰なの?捜査の協力者よ単なる…。
本当ですか?
(FAXの着信音)きたきた…。
当時も不審死で取り上げられているな。
浅沼与吉の本籍地は梓川村だ。
やっと梓川の源流にたどり着いた。
このあたりですね。
36年も昔の事件が本当に瑞恵さんの死と関係あります?こう考えては…。
瑞恵さんは父親の死因を調べていて殺された。
父の泰三も父与吉の死因を調べ…。
推理に想像や決めつけはタブーです。
ま…それは作家の性分でしてね。
事件の大本は浅沼与吉の死にある気がするな。
昔のことで…。
あ〜そうですか。
そうですかどうも…。
浅沼さんて知ってる?知らんね…。
(さき)えっ?あさぬまよきち…。
よきち?浅沼与吉さん。
あ〜東京へ行った浅沼与吉のことか?おばあちゃん知ってるのね!ああ同級生だ。
でもな家はもうここにねえよ。
復員してすぐ東京へ行っちまったからな。
与吉さんそれまでこの村で何やってました?セイシに出てただ。
セイシへ。
セイシ…?製糸工場に行ってたんですか?そう…岡谷のな…。
岡谷…繋がった。
まさしく女工哀史だ。
その製糸会社のことを詳しく分かりますか?そういえばもう1人村から製糸に出とったなあ〜。
では高林さんは浅沼さんと一緒に丸川製糸に。
(高林)浅沼さんは私より5つ6つ年上でね。
私が行った頃には見番に昇格してましたな。
見番?ま…女工の監督役です。
それはいつまで?戦争に行くまでですな。
20代半ばの応召でしたから。
あのう…浅沼さんが梓川の島内付近で昭和40年に亡くなられたことはご存じですか?はあ…それも随分古い話になるわな…。
あのう…。
え〜?浅沼さん誰かに恨みを買うようなことなかったですか?あ〜…いや…。
(かね)まあ見番は数えきれないほど女工から恨まれていたんじゃねえかえね…。
えっ?私も別の工場の女工でした。
見番ちゅうのは竹刀持って現場を見回る仕事だもんだでね。
竹刀?はい…。
(かね)長げえ時間の労働で女工たちは疲れていたでね…。
居眠りでもしようもんなら…。
見番:起きろ!こっちへ来い!この!
(竹刀で叩く音)そりゃ鬼だと陰口をたたいていたわいね。
監督という特権利用してのひどい仕打ちもあったしね…。
浅沼さんも厳しい見番だったんですか?そういえば浅沼さんの息子さんが訪ねて来たわいね。
12〜13年前のことだったかいな。
やっぱり泰三も父与吉の死因を調べてた…。
息子なら旅行ついでに父の故郷を訪ねるでしょう。
あったわい。
ありました。
この子です。
図抜けてきれいな子だったからね。
この人が浅沼さんと何か?急に製糸やめていなくなって…。
それが浅沼さんの子が出来たせいだと噂になって…。
いなくなった?浅沼さんには奥さんがいたもんでね。
遊ばれて捨てられたわけですか…。
いや…そこまでは…。
その人の名前分かりますか?忘れちまったな〜…。
スエさだったら分かるじゃねえかね…。
お高山に西沢スエという当時の女工がいるわね。
ちょっと…住所を…。
高山ですか…?今からじゃ無理ですね。
瑞恵が結婚なんて…。
そんな話一度も…。
斉木君は?いえ何も…。
この店瑞恵が来るたび3人でよく来たんです。
そうですか。
さ飲みましょう。
彼女のためにも早く犯人を見つけないと…。
さどうぞ。
いえ結構です。
新聞記者が飲酒運転で捕まってはシャレになりません。
その人形は…?ちょっと…。
ああ…小口さんは…?すみません。
いける口でしょ?生きてるかどうか不明の女工を見つけたところで瑞恵さんの事件が解決しますかね?私は何かに近づいている気がするわ。
浅沼与吉はこの女に殺されたとでも?その可能性はあるんじゃないですか。
与吉がこの女に恨まれたとしても25年もたって殺される原因になりますか?25年ですよ!この女が瑞恵さんも殺したとでもいうんですか?80歳近い婆さんが若い娘を絞殺するなんてできますか?…そうなんですけどね…。
(スエ)どうですな…。
買っていってくだんさいよ。
西沢スエさん…?はい…。
確かに浅沼って人が見番やったな〜。
私はただただ恐かったとしか覚えておらんなあ。
あの〜この女性に見覚えありませんか?あ〜…懐かしい。
これユウさや。
ユウさ…?あの時分丸川にいた者ならみんな覚えてるはずや。
確か…名字はハシダやらハシドやら…。
橋戸じゃないですか?岐阜県によくある名前の。
そやそや。
橋戸ユウって名やった。
その女性と浅沼与吉さんはその…何か関係が…?そや…そやったな〜…。
初めは工場主に手込めにされその子をはらんだと噂が立ってな〜。
けど私はユウさと見番の浅沼さんが工場の裏で会っているのを何度も見とったもんな〜。
それが腹が目立ちかけた頃ふ〜っとおらんようなった。
どっかに囲われたんでねえかとか飛騨の実家に戻されたとかいろいろ言われてたな〜。
その実家分からないかな?さ〜…そこまでは覚えておらんな〜。
ともかく名前まで分かった。
「旅と山」「週刊モモコ」に「女性サンデー」それにスポーツ新聞が何社かテレビの「モーニングスクープ」からの出演依頼も…。
本当かよ…。
全部断っときました。
おい…!だって山倉さんにきつく言われてんですもの。
お前さ…。
はい…。
誰の秘書だよ!お金に転んじゃ筆が荒れます!やかましい!…ったく…。
・しつこいな〜…。
何だよ…。
あっ…。
どうしてこれが…?西沢スエさんから電話で橋戸ユウの話の中に生まれ故郷の千光寺の話が出たのを思い出したって。
千光寺って円空彫りで有名…。
で顧問弁護士に丹生川村の戸籍照会を頼んだら名前と年齢が一致する人がいたんです。
大正11年生まれ。
ということは…79歳。
戸籍の付表には移転先は載ってません。
ここまでか〜…。
おかしなことがあるんです。
ユウは妊娠して丸川を辞めたはずですね。
なのに出産の記録がないんです。
未婚で産んでも記録には残るはず…。
何らかの…処置をしたのかもしれない。
あるいは生まれてすぐ誰かの実子としてもらわれたとすれば戸籍には残りませんよね。
(ドアが開く音)分かったんですか?警察の方はどうだったの?ようやく泰三と与吉の事故までは行き着いたようです。
先生の記事でキリキリしてましたよ。
そうかそれで瑞恵さん坂巻温泉に…。
彼女次の日丹生川村に行くつもりだったんですよ。
もしかしたらもう…行って来たのかもしれない。
先生…!見えてきましたね。
すごいですね。
作家の物を書く執念というのは…。
もう書くことはどうでもいいんです。
ただ…何があったのか無性に知りたい。
一つの家の人間が三代にわたり命を落とす…どうして…?瑞恵もきっとそれを調べてたんです。
行きましょう明日。
丹生川村に…。
つきあいます。
山道なので僕の車がいいでしょう。

(好春)ユウは私の姉やけどいったい何のために?それが…。
「製糸女工たちのその後」ということでお話を聞いて記事にまとめたいと…。
ほ〜なにやら5〜6日前にもそげなこと研究している娘さんがござったな〜。
やっぱり瑞恵も…。
せっかくみえても姉はここには…。
ユウさんは今どちらに?…もう30年以上も葉書一つきておりませんな。
30年…。
なにしろ姉は13か14歳の時岡谷に出たまんま一度もここには帰ってきとらんですよ。
一度も…。
さっき30年といわれましたがということはそれまで何らかの連絡があったんですか…?ええ…手紙が…。
最初の2通は丸川製糸にいる時だよね。
送金額とか父親に医者に行くことを勧めたり。
3通目で丸川を辞めた事を伝えその後は住所が転々としてる。
松本市今井…東筑摩郡山形村…松本市島内…。
全部瑞恵が言っていた地名です。
彼女…どうして橋戸ユウの転居先を知ってたんだろうね。
ユウが与吉にも手紙を出していたら…。
ユウの住所を控えていたということ?父親の死に不審を抱いていた泰三が見つけ訪ね歩いた。
今度は娘の瑞恵さんがその住所を調べだした…か。
あの…橋戸ユウは手紙だけじゃなくずっと会っていたような気がするんです。
まさか…。
これ見てください。
最後の手紙です。
「先日島々から稲核を通って奈川渡まで行きました。
山の形に見覚えがあり懐かしさで涙があふれ思わず今も肌身離さず持ち続けているお守りに手をやりました。
思えば千光寺でもらった円空彫りのお守りを胸に野麦峠を越えそこを通ったのは30年も前のことです。
私はもう…43歳になりました」13歳から43歳になるまで一度も帰ることがなかったなんて…。
なぜでしょう?ユウの生活が故郷の家族に知られたくないようなそんな状況だったからじゃ?なるほど…。
製糸を辞めてからの生活がまったく書いてない。
なぜ6通目から20年も間が空いているのか?どうしてもひっかかるんです。
その間与吉の世話になっていたら?確かにその可能性はある。
この日付…40年10月となってます。
何か気づきません?与吉が死んだのが同じ年の9月…。
奈川渡行きは与吉も一緒だったんだ。
そうか…与吉は東京からユウに会いに来て…。
梓川沿いを奈川渡まで行った。
間違いない。
橋戸ユウは与吉の死に関わっている。
待ってください。
与吉が50歳半ばとはいえ大の男を女の手で殺すのは可能でしょうか?もう1人同行者がいたら…?えっ?ユウが産んだ子が男だったら?つまり…親子3人…水入らずで出かけた。
二人の間の子供なら24〜25歳になってたはずだ。
もし母親から全てを聞いていたら与吉を恨んでる可能性あるね。
生きていればその息子60歳ぐらいだ…。
じゃ瑞恵さんも彼女の父親も橋戸ユウの息子が殺したと…?そう考えれば説明がつく。
それは強引すぎますよ。
ユウが子供を産んだ確証がない。
まして男の子だなんて…メチャクチャですよ。
最後の手紙の住所にいないとすると行き止まりですね。
振り出しに戻りましょう。
今井…。
ユウが製糸を辞めてすぐに住んだ所です。
ユウはここで子供を産んでるはずです。
60年も前のことだ。
覚えてる人がいるかな?可能性あります。
あちらです。
ありがとうございます。
橋戸ユウさんですが…。
昔の製糸工場の女工史を書くために…ね〜。
ええそれで是非この方に話を聞きたくて。
(市山)ユウさんにかね?ご存じなんですか?もう行き合うことはないけどね。
年賀状だけは毎年もらいます。
年賀状が…?終戦直後ここを離れてから60年近いというのに律儀な人だ。
じゃどこに住んでるか分かりますね?ユウさんの子供は市山さんが取り上げたんでしょうか?子供?ええ…。
あの人子供なんか産んでないですよ。
えっ?今井に来た頃妊娠してたはずですが?さあ〜記憶にないですね。
ユウは…子供を産んでますね。
えっ?…だって。
実家にも手紙を出さないのになぜ助産婦に毎年年賀状を出すんです?ユウにとって助産婦の市山さんは特別の人物だったんですよ。
ユウの子供について全て知っている。
隠してるんです。
なぜでしょう?とにかくこの住所に行ってみましょう。
いらっしゃい。
橋戸…ユウさんですね。
ユウさん…ですか?
(橋戸ユウ)はい…。
ようやく…会えました。
うん…うまい…。
浅沼与吉さん覚えていらっしゃいますか?えっ!?与吉さんは36年前の9月梓川で水死体で発見されました。
ご存じですよね?覚えているわね。
ご近所の人から名前を聞いて驚きました。
与吉さんのこと知りたくてあちこち歩きました。
あなたと一緒に働いていた丸川製糸の方々にも…。
東京在住の与吉さんがなぜ梓川で亡くなったのか。
それを知りたいんです。
それを知っているのはあなたしかいないと思ってます。
なんで私が…?与吉さんとあなたは…親しくしてましたよね。
製糸の時親切にしてもらいました。
浅沼与吉さんとの間にお子さんがいますね?私は…子供なんか産んだことないわね。
ユウさん…私一週間前に梓川沿いの坂巻温泉に泊まりました。
次の朝同じ旅館に泊まっていた若い女性が殺されました。
ご存じですか?いいえ…。
彼女の名前は浅沼…瑞恵。
与吉さんのお孫さんです。
浅沼家には不思議なことが続いてるんです。
12年前瑞恵さんの父親つまり与吉さんの息子が雑炊橋の下で水死体で発見され三代にわたって全員梓川で亡くなってるんです。
私は事件の源は与吉さんにあると思ってます。
調べているうちにユウさん…あなたに行き着いたんですよ。
知りません…!私は…知らないよ。
どうか…帰ってください。
私たち昨日丹生川村に行きました。
弟の好春さんお元気でしたよ。
お家を継がれて今も農業をされてます。
これ…。
ユウさんが実家に出された手紙大事にしまっておられました。
ユウさん…。
弟さんに会ってみませんか…?斉木君!どうしてここに?小口さんの赤い車目立ちますからね。
とうとう見つけたんですね。
それで…何か分かったんですか?斉木君明日車を貸してくれない?橋戸ユウさんを丹生川村に連れて行くの。
えっ?
(小鳥のさえずり)野麦峠へ回りましょう。
はい。

(ユウ)13歳の時に迎えに来た男の人に連れられて一度高山に集まり私らは…ここを越えて岡谷へ向かったんだわ…。
66年ぶりだわね…。
姉さか?好春…。
姉さ…。
姉さ…よかったよかった…。
好春…ああ…っ好春…。
千光寺本堂前
(小鳥のさえずり)戦争が終わってすぐだったわいねえ。
ええっ?あの人が突然訪ねて来たのは…。
浅沼与吉さんですね?それからは年に何度も…。
あの日まで20年間ずっと…。
あの日?昭和40年の9月。
あの日奈川渡までバスに乗って行きました。
村を出た時に見たのと同じ山を30年ぶりに眺めた時は涙がとまらんかったわね。
与吉さんもご一緒だったんですね?それは息子をあの人に会わせるためにね。
やはり息子さんいらしたんですか?生後10日でよその人にもらわれ別の籍に入っていた息子は25歳になって初めて実の父に行き合ったんです。
それが…その息子に向かってあの人は…。
与吉:本当に俺の子かどうかも…?おめえが産んだとしても誰の子か分かるかよもしかしてその息子さんが与吉さんを…。
それは絶対にありません。
息子は2度とあの人と会っていませんから。
でもどうしてそう言い切れるんですか?それは私が…。
私が浅沼与吉を殺したもんで!ああっ。
あ〜…あの男が息子に言った言葉がどうしても私には許せなかった。
いったい私のこの30年は何だったんだ…。
誰のせいで故郷へも帰れずにいたんだ。
13歳から全てをあの男だけに捧げてきた答えがこれなのか…。
「誰の子か分かったもんじゃない」って…。
うっ…う〜うう…。
連れていってもらえるかね?はい…?警察です。
家を出る時に用意はしてきました。
その必要はありませんよ。
えっ?今のは一人の女性の物語です。
それにそのお話が本当でも36年も昔の事です。
とっくに時効です。
ひとつ教えてください。
今息子さんはどちらに…?いませんもう…。
えっ?死にました。
5年前に…。
亡くなった?!茶屋さんようやくあんたに追いついたようだな!橋戸ユウさんですね?署まで同行を…。
待ってください!浅沼瑞恵殺害事件の重要参考人として話を聴きたい。
与吉は橋戸ユウが自分の手で…。
多分息子の方は推理どおり父の死を調べていてユウの息子に行き着いた。
そして彼に殺された。
でもユウさんの息子は5年前に死んでたら…瑞恵はいったい誰に…?この事件は浅沼家三代にわたっている。
与吉がユウに殺され…泰三はユウの息子に殺された。
瑞恵さんが殺されたのは…。
行きましょう!えっ…?橋戸ユウは浅沼与吉との間に子供を産んだはずです。
そして誰かの実子としてその籍に入った。
私たちその家の名をど〜しても知りたいんです。
ちょっと失礼します。
はい小口です。
えっ?ええいらっしゃいますがお待ちください。
警察からです。
警察?はい茶屋ですが…。
僕が犯人じゃなかった!今さらなに…。
最初からそんな事決まってるじゃないですか!本当ですか?!ありがとうございました。
わざわざどうも…。
ユウが瑞恵さんと泰三の殺害を自白した。
嘘でしょう?多分誰かをかばってるんだ。
教えてください。
お願いします。
橋戸ユウを救えるのはあなたしかいないんだ。
昭和15年…私が助産婦を始めた年です。
橋戸…ユウ…。
私が中に入ってその子は別の母親が産んだとして届けられました。
それは誰にも明かす事はない私と橋戸ユウそして清造と名づけられた子の戸籍上の両親だけの秘密だった。
ところがその両親が早くに死に母親の方が死ぬ時に清造に全てを話したんです。
そして清造とユウさんは行き来するようになって…。
だけどその清造も5年前に死んだわいなあ…。
実子としてもらわれた家の名は…?次のページに…。
斉木!?清造さんに…子供いませんでした?息子が一人。
奥さんを亡くし男手一つで育てたらしいわ。
キーを見せて…。
えっ?車のキーです。
飲酒運転で捕まってはね…。
(ユウ)「懐かしさで涙が溢れ今も肌身離さず持ち続けているお守りに手をやりました。
私が千光寺でもらったあのお守りを胸に野麦峠を越え…。
」斉木君!どうしてここに?斉木和清は橋戸ユウの孫だ。
どうしたんですか?!
(支局長)斉木が自殺を図った!!どうですか?先生!なんとか一命は取り留めました。
ユウさん…。
和清…。
和清…和清!私のせいで私のせいで…全部…。
和清…私を許しておくれ。
和清!許しておくれ!ユウさん…。
私が…あんな男と…あんな男と…。
うっ…ううう…。
多分この辺りでしょうね。
与吉さんが流れ着いたのは…。
ここで梓川は終わりですね。
槍ヶ岳から始まって奈良井川と合流し犀川になる。
花束で始まった私の旅も花束で終わりです。
先生…。
斉木君からメールが入ってました。
多分薬を飲む直前に送ったんでしょう。
(斉木)「すべての始まりは1年前の6月20日。
小口さんに誘われた食事の席。
そこに彼女がいたのです。
浅沼瑞恵。
僕は彼女の持つ都会のお嬢さんといった雰囲気にいっぺんで引き込まれました。
そして僕らが二人だけで会うようになるのにそう時間はかかりませんでした。
そして旅の目的が父親と祖父の死を調べるためでそれが殺人に違いないと聞き僕は驚いたが彼女を手伝う事に決め真相調べは順調でした。
そう…彼女がある名前にたどり着くまでは…」やっと分かったわ。
祖父殺しはきっとその女よ。
その橋戸ユウを捜し出せば父の事件の事も分かるわ「橋戸ユウ。
その名を初めて聞いた時僕は残酷な神の仕打ちに叫び声を上げそうになった。
それは5年前父が死ぬ時に初めて知らされた実の祖母の名前でした。
父の死んだ後初めて祖母の元を訪ねた時どれほど祖母が喜んでくれたか…。
以来今までの空白を埋めるかのように僕は頻繁に訪ねるようになりました。
そう…橋戸ユウの元を…。
それは祖母にとっても初めて安らいだ時間だったと思います。
あの呪われた偶然が起こるまでのほんの短い…。
その時僕はもう一つの恐ろしい事実を思い出しました。
中学生の頃一人の男が父を訪ねて来てその男の名が浅沼だった事。
二人して出かけて行った数日後その浅沼が梓川で死んだ事…。
浅沼泰三の死に父が関わっている…。
与吉の死を調べていた泰三が父にたどり着き父は母親を守るため…」今度は息子同士が…。
「瑞恵は僕との結婚を口にするようになりました。
僕はその残酷な運命をただ呪うしかなかった。
そしてあの日が来たのです」瑞恵よ。
ユウの居場所が分かったの。
連絡ください「それを留守電で聞いた時血の気の引く思いでした。
とてもすぐ電話をする気にはなれなかった。
電話したのはその日遅くでした。
あの時偶然携帯電話のバッテリーが切れていて結果的に自分を守る事になるなど思いもよりませんでした」「僕らは次の日朝早く会う事にしました。
僕が早番で7時前には出社したかったのです。
僕は祖母と死んだ父を守りたい一心で全てを話したんです。
その時の彼女の表情…今でも忘れる事ができません」嘘よ!!嘘でしょうそんな事!そうならどんなに楽か…。
全部知ってて私に近づいたの?!違う!こんな事僕だって信じられなかった。
あなたが人殺しの一族だったなんて…何でそんな男が私の前に…。
あの女がこの世にいなければ父も祖父も…!まさかあなたの体の中にもあの女と同じ悍しいものが流れていたなんて!「それを言われた時僕の中で何かが切れたのです。
あの悍しい女…祖母がどんなに苦労して生きてきたか!彼女の人生がどれほど辛いものだったか!それをこの女は!!」瑞恵さん…。
瑞恵さん!…瑞恵さん!!随分苦しんだんだろうなあ。
自分の父親を祖母を守るために愛する女性を殺す羽目になってしまった。
三代にわたって家族が殺され…そしてまた同じように殺した方も三代にわたっている。
こんな事が起きるなんて…。
一人の年端もいかない少女が飛騨からあんな凄い山をそれも雪の中を越えて岡谷の製糸工場に向かった。
そして…。
70年の時の流れの中で…ユウに関係のあった人間が次々に命を落とし自分の孫まで犯罪者にしてしまった。
橋戸ユウの「女工哀史」だけはずっと続いていたんですね。

(山倉)おはようさん。
おはようございます。
お〜進んでるなあ。
今週号だ!派手にぶちかましたぞ!2016/01/23(土) 14:00〜16:00
テレビ大阪1
梓林太郎サスペンス「旅行作家・茶屋次郎 梓川清流殺人事件」[字]

犯人扱いされ怒る茶屋に、山倉は事件を取材して週刊誌に記事を書くように命じる。旅行作家が遭遇した殺人事件の結末は…!?

詳細情報
番組内容
旅行作家の茶屋は取材で長野を訪れ、梓川を臨む坂巻温泉へ。そこでファンだと言う瑞恵と夕食を共にした茶屋は、彼女の様子に不審を抱く。その翌朝、河原で彼女の死体を発見。一時は犯人扱いされ憤慨する茶屋に対し、副編集長の山倉は事件を追うように指示。そんな折、茶屋の元を瑞恵の友人で地元新聞記者の葉子が訪ねてきた。事件の調査を始めた2人は、瑞恵の父も10年前、同じく梓川で不審な死を遂げたことを知る。
出演者
茶屋次郎…橋爪功
 小口葉子…細川ふみえ
 山倉晋吉…角野卓造
 春川真紀…久本雅美
 橋戸ユウ…三條美紀
 道原刑事…西田健
 斉木和清…吉見一豊
 横山新吾…岩崎ひろし
 浅沼瑞恵…今村恵子
 松沢さき…神田時枝  ほか
原作脚本
【原作】梓林太郎
【脚本】長谷川康夫
監督・演出
【監督】富永卓二

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

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サンプリングレート : 48kHz

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