相棒 season2 2016.01.23


(雷鳴)
(2人)キャーッ!!
(杉下右京)触らないでください!ああっ…!
(亀山薫)はい見ない見ない。
あなたですね?雨ですね。
(宮部たまき)あらホント。
(奥寺美和子)やだ傘持ってきてない。
ちょっと…。
もっとよく味わって食べなさいよね。
めったに来れないお店なんだからね!彼はおいしいと無口になります。
あらそうなの?そうですけどぉ…。
うちの店ではよく喋ってるわねえ。
さすが美和子さんです。
これほどおいしいお店を見つけるとは。
あ実は…これで!エトイレス…?
(美和子・たまき)『エトワール』。
お前もミーハーだよな。
この本をそこらへんのグルメ本と一緒にしないでよね。
『エトワール』はフランスの建設会社が出している世界的なグルメガイドなんですからね!『ミシュラン』みたいなものね。
…わかってますよそれぐらい。
ちょっとこれ見てごらんよ。
(美和子)日本で三ツ星ってここだけなんだよ。
ふーん…。
しかしそんな星誰が付けるんだか。
「インスペクター」です。
インスペクター?ひそかに料理店を審査する人たちのこと。
自分の正体を家族にも内緒にするらしいですね。
(榎並)どうぞこちらです。
食前酒はいかがなさいますか?
(藤間ゆり子)そうねぇ私は何か白ワインを。
(滝沢恵美)私はマティーニ。
(大曲幸吉)俺焼酎ロック。
あ〜申し訳ありません。
焼酎はご用意できないのですが。
え〜ないのぉ?じゃあ冷酒でいいや。
申し訳ございませんが…。
えっそれもダメ?じゃあ…。
あの…!私と一緒で。
かしこまりました。
今ワインリストをお持ちします。
ワインか…飲みつけねえな。
…明らかに場違いな男が来たな。
君もそうだよ。
ウフフッ!…何ですか?いや…おいしいものを食べると本当に無口になっちゃうなって。
ホントみんな薫ちゃん状態。
(笑い)あーでもホント来て良かった。
来た甲斐ありましたよね〜。
こんなとこまで。
なんかトゲのある言い方だなあ。
こちらよろしいでしょうか?
(たまき)とてもおいしかったです。
ありがとうございます。
シェフにそう伝えさせていただきます。
どうもおそれ入ります。

(沼功)宗匠様はお亡くなりになってるんですよ!?そんなこと事務長に言われなくったって。
(沼功)黛流の家元は世襲制に決まってるんです。
(美和子)黛流だって。
(たまき)有名な生け花の流派よね。
その関係者かもしれませんね。
えー?あのオッサンが生け花〜?
(美和子)あのオッサンは違うかも…。
な?な?せっかくのお料理なんだからよしましょう。
雨…強くなりましたねえ。
(すする音)メシ食うのに香水つけてくんなよ!…身だしなみです!マナーなってねえな。
あなたに言われたくありません!失礼します。
ご予約の際デザートはいらしてからお決めいただくことになっておりましたが。
あぁ…お薦めは?
(榎並)当レストラン特製グラスバニーユはいかがでございましょうか?そりゃつらいなぁ!今日冷たいもん食いすぎてて腹冷えちまって。
(ゆり子)んもう…!でしたらさくらんぼのタルトはいかがでしょうか?んっ…俺それ!なんかあの人だけ雰囲気違うよね。
少なくとも生け花って感じじゃねえよな。
ああの人がシェフじゃない?…何かあったのかしら?
(恵美)どうしよう…!
(庚塚英明)あの…大変申し上げにくいのですが…。
(たまき)なにか?
(庚塚)実は今ふもとの警察から連絡がありまして。
警察?はい。
こちらへ続く道路で土砂崩れがあったと。
(美和子)え…?来るときタクシーで通ってきた道かな?たぶん。
こちらへ来る道は1本だけですから。
じゃあどうやって帰るの?それが復旧するのは朝になるだろうと…。
(亀山・美和子)えっ?困ったわね…。
ご心配なく。
うちはオーベルジュですから。
オーベルジュ?宿泊施設のあるフランス料理店のことですよ。
皆さんにお泊まりいただけるだけのお部屋はございます。
ただ…お2人で1部屋ということになりますが…。
じゃ今夜はここに…。
どうしよう…明日早朝会議があるんだけどな…。
こちらを出られまして廊下の右に電話がございますのでよろしかったら…。
あ…電話なら。
すみません。
ここ繋がらないんですよ。
えっ?…あ!
(庚塚)なにぶん山の中なもので…。
あの…すみませんこちらのシェフですよね?申し遅れました!シェフの庚塚です。
おいしくいただいてます。
さすがは三ツ星シェフですね。
(庚塚)ありがとうございます。
それでは大変ご迷惑をおかけしますが…。
失礼します。
いただきましょう。
でも…ここに泊まることになるなんてね。
お泊まりセットとか持ってくるんだったな…。
なんだよお泊まりセットって?どこに泊まるセットだよ?記者クラブとかで泊まるときとかあるでしょう?なあんだ…色気ねえなあ。
どこに泊まれば色気があるのよ?まあまあ。
ちょっとヤキモチ妬いちゃっただけよね。
へえぇ〜ヤキモチですかぁ?2人1部屋か…。
たまきさん一緒の部屋にしましょうね。
バカッ気ぃ使えよ!えっ?あ…。
(美和子)すいません。
…はい?私はこいつで我慢しますから!まあ〜トゲのある言い方ね〜。
どうします?そうしましょう。
はい?いけませんか?…いいえ。
(雷鳴)キャッ!ごめんなさいビックリしちゃって…。
(雷鳴)キャーッ!大丈夫っすか?薫ちゃんこういう所は自分で拾わないの!…拾ってないよ!変わりませんねえ…あなたの雷嫌いは。
(榎並)ヤリイカのエテュベアスピック詰めでございます。
ずいぶんシンプルですねえ。
いえ。
たぶんこのイカの中にアスピックが…。
ああすごい…こんなの初めて。
素晴らしい演出ですねえ。
うーん…。
うんおいしい…!味も素晴らしいです。
ありがとうございます。
ではごゆっくり。
(美和子)さすが三ツ星シェフよね〜。
このイカの煮方も野菜のゼリーも最高!
(美和子)本当に…ねえ!ホンットに食べさせ甲斐ない奴…。
無口ってことはおいしいってことよね?まさか…おいしくないの?いや別に…。
普通には食べられるけどね。
なにその感動のなさ?…うまいっすか?ええとても。
右京さんいいですよ!こんな味オンチ放っておいて。
そんなうまいかなあ…?
(美和子)フン…味覚バカ。
おい味オンチっていうのは許すが味覚バカっていうのは…。
だってこの味がわからないなんて味覚バカでしょ!なんだよお前が来いって言うから来たのに!いやいや来たみたいな言い方しちゃってさ…。
あのねこの店は半年前から予約しなきゃ来れない店なんだよ?それは何度も聞きました!お2人とも声が大きい。
・あっ…!ああっ…!何ですか今の?先ほどのギャルソンですね。
(たまき)また何かあったのかしら?土砂崩れのうえに洪水で1週間帰れなくなったとか?ヤなこと言わないでよ。

(悲鳴)少し尋常じゃありませんね。
触らないでください!ああっ…!はい見ない見ない。
…あなたですね?第一発見者は。
はい…。
そんなことより早く警察を!それにはおよびません。
(2人)警察です。
一応地元の警察に電話しました。
(庚塚)無理ですか?やはり土砂で塞がれてて…。
(美和子)警察来られないの?あの…幸吉さんはその…殺されたんですか?
(右京)ええ。
心臓部を一突きでした。
じゃあ凶器は包丁とか?そんなに鋭利な刃物ではありませんが少なくともこのお店の中にあるものもしくは…この中にいる人が持っているものです。
まさかこの中に犯人が…?
(沼)だって誰かが外から入ってきたかもしれないじゃないですか。
ここへ来る道は土砂で塞がれてます。
それにこの雨ですからね。
もし誰かが侵入して殺したなら出入口から死体発見現場まで濡れた痕跡が残るはずです。
同じ理由で凶器が外に捨てられた形跡もありません。
じゃあ凶器も犯人も今このお店の中…?犯人は被害者に怨恨か強い利害関係を持つ人物でしょうね。
皆さん生け花で有名な黛流の方だとか。
…ええ。
殺された大曲幸吉さんとはどういうご関係で?幸吉さんはその…。
次期家元になるはずの人でした。
えっ?事務長その言い方はちょっと…。
彼が家元に決まってたみたいなこと!そうですよ。
今日はそのことを話し合うために…。
失礼ですが…どういうことですか?亡くなった家元の実の弟なんですよ。
あの人が家元の弟さん?家元は世襲制。
これが黛流のしきたりなんです。
そんな古い考え方でどうするんですか!家元にはお子さんがいない以上幸吉さんが…。
世襲制なら私にも権利が。
(沼)ありませんねあなたには。
どういうことですか?すごい…家元争いですよ。
(たまき)2時間サスペンスみたいね。
2時間で解決すればいいんですけどね。
それにしてもあのオッサンが家元候補だったなんてな…。
彼も生け花をされていたということですね?らしいですよ。
「らしい」とは?私幸吉さんと会うの今日が初めてなんです。
同じ黛流で生け花をされているのにですか?彼は若いころ黛流を飛び出した人なんです。
飛び出した?なぜ?さあ…?生け花に興味がなかったんじゃないですか?なるほど…。
それで彼は今何を?建築会社で現場監督をしてるとか。
あ〜そっちのほうがイメージですね。
つまり彼はずっと生け花から離れていた。
ええ!そんな人を家元候補にだなんてバカげてますよ!そんな彼がなぜ家元候補に?事務長が強引に推してるだけです。
なぜ事務長はそこまでして彼を推すんですか?素人を家元にすれば黛流の利権を握れるからです。
利権?黛流は全国に4万人の会員がいますから。
あ〜つまり家元はそれだけ儲かると。
…まあ。
だからあなたも家元に立候補した…?私は黛流東京本部の筆頭師範ですよ?実力のある者が家元になるのは当然じゃないですか。
だから最有力候補の彼が邪魔だった。
…だから私が殺したと?いいえ。
…ただ動機があると言ってるんです。
幸吉さんは家元になれるような状態じゃなかったんです。
家元になれる状態ではなかった。
…どういうことですか?何か言えないことでも?だから彼は家元に興味がなかったみたいだし…。
なぜそう言えるんです?だって自分から本家を出てった人ですよ?でも気が変わったのかも。
儲かるらしいし。
彼は家元になる気はなかったはずです!いやに自信もって言いますねぇ。
私…見ちゃったんです。
なにを?彼と事務長がそれでもめてるのを。
(薫)へぇ〜。
事務長…やる気のない彼を強引に説得してて。
ところで幸吉さんはなぜ席を立ったのでしょう?はっ?立ちましたよね?殺される前に。
(ゆり子)電話をかけに行ったみたいです。
あぁ…電話ですか。
土砂崩れで今日は帰れないって聞いて。
その後…あなたも席を立ちましたよね?私も電話をかけに。
しかしそのとき幸吉さんが電話をしていたのでは?
(ゆり子)ええ。
行ったら彼が電話をかけているのが見えたので私はかけずに席に戻りました。
ええ。
確かに私は家元に幸吉さんを推してました。
今日はその話し合いをする場だったんですね?
(沼)はぁ…。
急に家元に立候補した女性お2人と。
えっ?もう一人の彼女も家元候補なんですか?ええ。
自分は家元の娘だからと。
先ほど亡くなられた家元には子供がいないと…。
(沼)愛人の子ですよ。
(右京)なるほど。
この席を設けたのは事務長なんですね?ええ。
私が皆さまをお誘いしました。
ほぉ〜!あなたがみんなを誘いだした?「誘いだした」ってなんですか?このお店はよく利用されるんですか?いえ初めてです。
初めて?ええ。
この店は幸吉さんが指定した店なんです。
彼が…?彼がこのお店を予約したんですか?ええ。
一度こういう店に来てみたかったとかで。
ところで事務長。
なぜ彼を家元に?はっ?いや。
ずっと生け花から遠ざかっていたような人を。
家元は血筋で決めるというのが黛流のしきたりなんですよ。
彼が家元になるかどうかであなたの実入りも違うでしょ?黛流の利権ってすごいらしいじゃないですか。
なにが言いたいんですか?だから彼を家元にしようとした?私はね…ただそうすることが黛流のためになるかと。
しかし彼家元になる気がなかったそうで。
誰がそんなこと言ったんですか?あれ?彼は「家元になりたい」と言ってたんですか?そ…それは…。
事務長それで彼ともめてたそうじゃないですか。
だから私が幸吉さんを殺したと?いえいえ。
ただ動機があると言ってるだけです。
ところで…。
幸吉さんが席を立った後ですが…ゆり子さんが席を立ちましたね?そうでしたかね?そうでした。
そのゆり子さんが戻ってきた後事務長が席を立ちましたよね?あぁあぁあぁ…!そうでしたね。
どちらへ?トイレです。
そのとき幸吉さんは?
(沼)見てませんけど…。
電話でもかけてたんじゃないですか?なるほど…。
電話はトイレの反対側ですからね。
あなたも家元候補だとか?私家元の実の娘ですから。
でも家元の奥さんの子供ではない。
家元からはちゃんと認知してもらってます!しかし家元候補には幸吉さんが選ばれた。
そんなのどう考えてもおかしいですよ。
あの人は生け花を捨てた人だっていうじゃないですか。
悔しかったでしょうねぇ…。
当然ですっ!
(恵美)私は愛人の子だって陰口叩かれても黛流の中で頑張ってきたんですよ。
それなのに…!だから…幸吉さんを?まさか…!でも動機はありますよね?そんなぁ!ところで幸吉さんが席を立った後なんですが…。
まただよ…。
ゆり子さんが席を立ちその後事務長が席を立ちました。
そしてその事務長が戻ってきた後あなたが席を立たれましたね?
(恵美)でしたっけ?そうでした。
どちらへ?あぁ…えっと…電話です。
…電話?
(恵美)ええ。
そのとき幸吉さんは?
(恵美)見てませんけど。
見てませんか?…はい。
やっとわかりましたよ。
なにがですか?右京さんがなんであんなこと気にしてたのか。
あんなこととは?例の生け花三人衆が席を立った順番ですよ。
彼らはこの順番に席を立ちました。
その間彼らは席に戻るまで誰にも会ってません。
ゆり子さんは電話中の幸吉さんを見たと言ってますよ。
幸吉さんは殺されています。
それは証明できません。
なるほど。
しかも彼が殺されたのはこの3人が席に戻るまでの間。
そうですね。
つまり3人ともアリバイがないということになります。
そうなりますねぇ。
右京さんはこれを知りたかったんですね?…違います。
はいっ!違うんですか!?こんな屈辱初めてだわ。
仕方がないでしょう。
我々の身内が殺されたんですよ。
誰が殺したんだか…。
(ゆり子)言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ!
(美和子)あの…。
(たまき)少し落ち着かれたほうが。
はぁ〜ないですね。
(榎並)このフロアにも凶器になるようなものはないようです。
じゃあ厨房ですかね?普通に考えればそうですね。
早く言ってくださいよ。
しかし厨房にはシェフがいました。
あそうか!勝手に入って持ち出すなんて…。
いえできますよ。
…え?厨房の地下に野菜室があるんです。
え?厨房に地下があるんですか?シェフはよくそこに?ええ。
料理中はよく。
じゃあ厨房が空になることは?もちろんよくあります。
なるほど…。
これは殺された幸吉さんの物ですね?ええそうです。
先ほどちょっと中身を見せていただきました。
まぁお菓子をそんなにたくさん?これはまた意外な…。
甘いものが好きな方だったようですね?え?そんなふうには見えなかったけど…。
(沼)そういえばよくアメとかチョコやガムとか食べてました。
やっぱりね。
口いやしい人だったのね。
だからか…。
なにか?いやいや。
幸吉さん昔はもっとスマートな体形だったんですよ。
これじゃあ糖尿病になるはずだわ。
糖尿病…?ええ。
彼それで毎週病院に通ってて。
なぜ…それをご存じなんですか?お2人が幸吉さんに会ったのは今日が初めてですよね?
(恵美)そうですよ。
ゆり子さんそうじゃないの?またなんか隠してます?警察としてもぜひお訊きしたいですね。
幸吉さんの病気をなぜあなたがご存じなのか。
(沼)あっ!ま…まさか!まさか?いやしかし…まさか…。
いやちょっと…なんですか?…脅迫状。
脅迫状?これ1週間前私んとこへ送られてきて。
失礼。
「大曲幸吉は重い病気を患っていて黛流の家元を務めるのはとても無理です」。
ゆり子さんまさか!?この手紙…調べればわかることですよ。
だって…。
あなたなんですね?家元の候補になった人がどんな人なのか気になって…。
調べたんですね?ずっと生け花から離れてた人だって聞いたら黙ってられるわけないじゃないですか!だからってねあなた私に脅迫状をっ!書いたことは全部本当よ。
彼は重い糖尿病で私彼が自分で注射を打ってるところ見たんです!注射?インシュリンですね。
それで彼が通ってる病院を突き止めたんです。
だから病気をネタに私を脅迫したのか?脅迫したんじゃないわ!私は…ただ黛流の将来を…。
あなたはっ!…自分のことしか考えてない。
だってハードな家元の仕事がそんな人に務まるはずないじゃないですかっ!だからって幸吉さんを付け回したの?付け回したわけじゃないわっ!!
(恵美)どうだか!そうやって殺す機会狙ってたんじゃないの?なんですって!?だってそうでしょっ!!やめなさい!みっともないっ!!しかし…それはちょっと気になりますね。
ええ。
被害者の身辺を調べていたなんて。
いえ。
彼が糖尿病だということがです。
えっ?そんなのお菓子の食べ過ぎかなんかが原因でしょ。
いえ。
お菓子は糖尿病になってからでしょう。
低血糖になるのを避けるためにアメやガムをいつも口にしチョコレートなどを持ち歩いてた。
そう考えるのが自然ですね。
幸吉さんがこのお店に来たのは初めてですか?えっ?私は初めてお目にかかりましたが。
シェフは?
(庚塚)私も…。
いや初めてですよ。
「一度こういう店に来てみたい」って。
でも私がここで働き始めたのは半年前からなので…。
もし幸吉さんが以前にもこのお店に来ていたとしたら…。
…えっ?あの…私ちょっと外してもよろしいでしょうか?えっ?そろそろ皆さんの宿泊の支度を。
結構ですよ。
どうぞお仕事なさってください。
じゃ上におりますのでもし何かありましたら…。
ちょっと…行かせていいんですか?構いません。
さあ厨房へ行きましょう。
どうぞ。
失礼しまーす。
ちょっといろいろ触りますけど。
(庚塚)はい。
すみませんねー。
あぁ…包丁とかじゃないんだよなぁ。
ん?…んっ?右京さん。
これとこれが被害者の傷口に一番似てますね。
似てるだけでは意味ありませんね。
…意味ないっすよね。
シェフ。
そちらのドアは?あ野菜室です。
ちょっと失礼。
あぁここが地下室?じゃあシェフがここに入ればこの厨房は…。
先ほども言ったように空になります。
(薫)その間に誰かが入って凶器を持ち出すことは…?
(庚塚)可能です。
野菜室にも凶器になるようなものはありませんね。
そうですかぁ…。
これは先ほどのイカのお料理の?ああそうです。
とてもおいしかったです。
ありがとうございます。
微妙な火加減が必要でつきっきりじゃないといけないんです。
つきっきり?はい。
つまり…この料理の間はずっとここにいた?ええそうです。
だとすると…シェフがこの料理にとりかかる前ダイニングに出ていったときにしか厨房から凶器を持ち出すことはできない?ええ。
もしも犯人が厨房から凶器を持ち出したのだとしたらそれが可能な人物はおのずと限定されますね。
右京さん…!シェフが我々と一緒にいたときダイニングから出ていったのは幸吉さんと…ゆり子さん。
つまり…!シェフ。
申し訳ありませんがダイニングのほうでお待ちいただけますか?はい。
やはりそうですか。
亀山くん。
はい?…これです。
(恵美)思えば幸吉さんもかわいそうよね。
これで家元にはなれなくなったんだもん。
(右京)そうでしょうか?幸吉さんは本当に家元になりたかったんでしょうか?だから今日来たんじゃない。
しかしゆり子さんと事務長は彼が家元になりたくなかったことご存じでしたよね?えっ?
(ゆり子)ええ…。
じゃあ…彼はなんで今日ここに?事務長が無理に誘ったんじゃ?
(沼)無理にって…。
この店だって幸吉さんが「来たい」と言うから。
そこです。
はっ?このお店を予約したのは幸吉さんでしたね?ええ。
一度来てみたいって。
しかしそれは少し無理がありませんか?私が嘘を言ってるっていうんですか?いえ。
嘘を言ってるのは彼のほうです。
考えてみればたしかに少し無理がありますよねぇ。
どういうことですか?一見マナーもがさつでグルメにも見えない彼が「一度こういう店に来てみたかった」なんて。
それにここは半年前から予約が必要なんですよね?つまり彼がこの店に来ることは半年前から決まっていたんです。
ええっ…?半年前ってまだ家元生きてたじゃない。
(恵美)ええ。
家元相続の話し合いはこの店へ来るための口実だったんでしょ。
どうして幸吉さんがそんなことを?こうは考えられませんか?実は彼はこういう店をよく利用するような人だった。
(恵美)え?まさか…。
皆さんがこの店に入ってきたときイスの左側から座ったのは彼だけでした。
それも女性2人が先に座ったのを確認してから座っていました。
かなり厳格で正しいマナーです。
イスって左から座るの?
(ゆり子)知らなかった。
でもそれはたんなる偶然じゃあ?グラスバニーユ。
(沼)えっ?「グラスバニーユ」。
皆さん何のことかおわかりですか?シェフはおわかりですね?グラスバニーユ…バニラアイスクリームのことですが。
あのとき…。
当レストラン特製グラスバニーユはいかがでございましょうか?そりゃつらいなぁ!今日冷たいもん食いすぎてて腹冷えちまって!あぁ…!知ってたんですね。
グラスバニーユがバニラアイスクリームだってこと。
つまり彼はフランス語ができるかもしくはフランス料理に詳しい。
そういう人だと思いました。
そんな幸吉さんが…。
それに彼が香水を気にしていたのも…気になりました。
メシ食うのに香水つけてくんなよ!ちょっと失礼…。
そんなに強い香水はつけてないですよね?ええ…だから“嫌なこと言う人だな”って。
それだけ彼は香りに敏感だったんですね。
彼が生け花を辞めてから太ったというのも気になりました。
おそらく彼はそれから始めたのでしょう。
…インスペクターという仕事を。
ええっ?
(たまき)あの人がインスペクター?な…なんですか?その「インスペクター」って。
グルメガイドの覆面審査員のことですよ。
彼が?
(ゆり子)あの人がグルメガイド?だから糖尿病にもなった…。
一日に何軒もレストランを回る仕事ですからね。
なぜ彼は基本的なマナーを知っているのにあえて対局にいる人物を演じていたのか?インスペクターの身分を隠すため…。
家族にも知られたらいけない仕事ですもんね。
(恵美)じゃあ彼を殺したのはいったい…?それは…。
あなたですね?…シェフ。
そんな…どうして私が?インスペクターと強い利害関係があるのは…。
インスペクターだなんて知りませんでした!本当ですか?今夜初めてお会いしたんですよ。
つまり…。
あなたは今夜それを知ってしまった。
それは今刑事さんに言われて初めて…。
いいえ!あなたがそれを知ったのは彼が電話をかけているときです。
シェフ…その電話を聞いてしまいましたね?そしてその電話こそ彼が殺された理由でした。
『エトワール』に確認すればすぐにわかることですよ。
でも仮に彼が電話をしてたとしても私がそれを聞いてたという証拠があるんですか?いいえ。
しかし犯人はあなたです。
そんな乱暴な…!凶器がそれを物語っています。
(たまき)見つかったんですか?そんなバカなっ!そんなバカな…?なぜです?凶器が見つかるはずがない…そんな口ぶりですね。
(美和子)何なんですか?凶器って。
亀山くん。
凶器は…これです。
これが…?イカッ!?
(沼)まさか…そんなもんで。
ほんとにこれで人が刺せるんですか?それにこの凶器被害者の傷の形と…。
ちょうど合うんですよ。
シェフ…。
殺すつもりなんてなかった…。
殺すつもりなら凶器にイカなど選ばないでしょうね。
(幸吉の英語)
(庚塚)そのとき…聞いてしまったんです。
それで…彼の正体を知りました。
でも…どうして英語なんですか?万一誰かに聞かれてもいいようにと思ったんでしょう。
しかし残念ながらシェフも英語がわかる人だった。
その電話で…彼が言ったんです。
あ…シェフ…。
(庚塚)どうして…?ハハハ…うまいよ今日のメシ。
どうして星を落とすんだ!?どうして…どうして落とすんだ…!?
(庚塚)それからのことは頭が真っ白で…。
(庚塚)〔なぜだっ!?〕
(雷鳴)
(雷鳴)20年です…。
星を取るまで20年。
そしてやっとこの店で三ツ星を取って…。
そんなに大切なんですか?星って。
そうかもしれませんね…。
フランスで三ツ星だったシェフが星を二つに減らされて自殺したことも…。
でも右京さんよく凶器がイカだなんて…。
それは亀山くんのお手柄です。
えっ?亀山くんの…舌を信じました。
えっ?あっ…!…うまいっすか?
(たまき)亀山さんが食べたイカ…。
…あっ!シェフ…凶器を料理しましたね?証拠隠滅のために…。
しかし…慌ててしまいました。
気が動転してて…。
(庚塚)あのイカは最後に鍋に入れたので煮る時間が不十分でした…。
それで味に差が…。
三ツ星シェフがそれではいけませんね。
俺…凶器食べちゃったよ!せっかく亀山くんが食べ残してくれた貴重な凶器。
これは鑑定に回しましょう。
幸吉さんが皆さんをこのレストランに誘ったのは家元問題を円満に解決するためだったのかもしれませんね。
おいしい料理は人の心を和ませますから。
幸吉さん…家元になる気なんてなかったんだ。
私たちって…バカみたい…。
あちらのほうも解決しそうね。
っていうか…なんだったのかしら。
家元騒動。
ホンットにまぎらわしい。
あの…お部屋のご用意ができましたが。
ああ…私とシェフは同じ部屋でお願いします。
(榎並)えっ…でもシェフはこの近くに自宅が。
最後の夜です。
ご自分のレストランでお休みになりますよね?お願いします。
あ…はい。
ではまず皆さんからどうぞこちらへ。
そういうことになりました。
しようがないですね。
すみません。
いいえ。
もう雷も鳴らないみたいですしね。
雨…やみましたね。
えっ?
(美和子)うわぁきれい!
(たまき)わあ…!ここはこんなに星が見えるんですね。
初めてです。
初めて…?こんなふうにここから星を見たのは…。
きれいなんですね星って…。

冬真っただ中
2016/01/23(土) 14:30〜15:30
ABCテレビ1
相棒 season2[再][字]

「殺人晩餐会」

詳細情報
◇出演者
水谷豊、寺脇康文、高樹沙耶(益戸育江)、鈴木砂羽、渡辺哲、西尾まり、西田健、山口美也子 ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

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