法医学教室の事件ファイル23 2016.01.23


(ピアノ)
(拍手)
(成宮令子)皆様本日は本当にありがとうございます。
ではここで右手の不自由な私を長年支えてくれてそしてこのコンサートのプロデュースをしてくれた私のベストフレンド塚田久美子さんを紹介します。
(令子)久美子前へ出て。
(拍手)上がって。
何かベストフレンドっていうよりもうるさい母親って感じなんですよ。
だってすごいのよね。
私がほらちょっとでもサボろうとすると令子あなたそんな事でいいと思ってるの?顔を洗って出直してらっしゃい!ちゅうのうふふ。
(観客の笑い声)
(成宮俊作)遅かったね。
(俊作)はい恋人の隣にどうぞ。
どうした?ケンカでもした?
(令子)次の曲を贈ります。

(ピアノ)
(花瓶が割れる音)
(若林真弓)あなた悪魔よ。
人間の皮を被った狼!
(真弓)あっ!あぁううっ…。
ああっ。
(二宮早紀)全部ね全部入るようにお願いします。
はいいきますよ。
チーズ!はいきれいにお願いします。
どうもありがとうございました。
いいえどういたしまして。
いいお家ですね。
ああ…ありがとうございます。
はい失礼します。
気をつけていってらっしゃい!おはようございます!引っ越してきた二宮です。
えっ!何何何何よ?
(二宮一馬)お前なジョギングしてる人に写真を何枚もパッチリパッチリ。
だってしょうがないじゃない。
3人で写した写真撮る人他にいないじゃない。
それにねこれは大事な近所付き合いの第一歩だから。
そんな事よりさ早く中に入ってほらほらほら…。
お城と私いろんなとこで写真を撮って。
きれいにねお城と私を!ほほほほ。
さあさあ…早く!はあ〜今はまだお義母さんの家具に占領される前の和室で少し愁いに満ちた表情を浮かべる私。
何を憂いだよお前。
きれいに撮ってきれいに。
はいはいいくぞほらこっち見ろほれ。
ああ…きれいな部屋あはは。
ああいいわぁいいわいいわ!私のお城きゃ〜。
ああこの幸せもあとちょっと。
ねえお義母さんいつ来るの?ちゃんと訊いてくれた?えっ?あと2〜3日だろ。
まだ引っ越しの準備も終わってないみたいだし。
ああ。
(二宮愛介)ふうちゃん来ないみたいだよ。
えっ!?エジプト行ってるってさ。
エジプト!?ちょっとちょっと…。
「一馬早紀さんごめんなさい」「私は今女学校時代の友達と一緒にエジプトに来ています」「急に決まったものだから気を悪くするといけないと思い連絡しませんでした」何これ!?はあ…?結局あれかな?おふくろ同居に二の足踏んでんのかね?ああ見えても繊細だから。
うん繊細だから。
何が繊細よ。
いい歳かっくらった男が母親つかまえて言うせりふ?はははは。
まったく。
冗談よ冗談!悪い冗談に決まってるじゃない。
お義母さんこういう事大好きだからこれをやって私を油断させておいて突然やってこようと思ってんのよ。
「ここが私のエジプトよ」とか何とか…。

(チャイム)ああっクレオパトラのお出ましだ!お待ちしておりました。
お義母様。
(七海)おはよう。
七海叔母様。
あらっ?叔母さん。
しばらく。
まあ〜早紀さんお家を新築したと思ったら声まで上品ぶってんのねぇ。
いや…。
ダメダメ根ががさつで。
それが売り物なんでしょうあなた。
えっ?ホント十何年ぶりかしら?おっうわぁ愛介君も大きくなってねぇ。
でも相変わらずきれいね。
早紀さんあなた。
わた…?ああ…いえそんなとんでもございません。
さあどうぞ!そんな私なんて。
ありがとう。
叔母様ほどじゃございません。
ふふふふでしょうねぇ。
私あなたの歳にはもっときれいだったもの。
目尻のシワ増えた?そんな事はどうでもいいわ。
それよりねぇ一馬さん。
うん?芙佐江姉さんが突然エジプトへ行っちゃったのやっぱり本当はあなた達と一緒に住みたくないからじゃないの?そんな事ありませんわ。
お義母さん同居とっても喜んでくださいました。
ホントにそうかしら?はあ?まっいいわ。
私が2〜3日ここへ泊まってあなた達が本当に芙佐江姉さんを迎える態勢を整えてるかどうか私がチェックしてあげる。
泊まってですか…?そう…。
泊まれるんだうれしいなあ。
で芙佐江姉さんのお部屋どこかしら?こっちです叔母様。
ありがとう。
それじゃあちょっと拝見。
はあ…。
頭くるなぁ。
まるで私が姑いびりでもするみたいじゃないの。
叔母さんは心配なんだよ。
えっ?ほらおふくろと歳が離れてるだろ。
だからおふくろの事を母親みたいに思ってるんだ。
私は忘れてないわよ。
七海叔母様何て言ったと思う?私達の結婚式の時。
うん?鼻の頭にちょこってオデキができちゃった私に「まあよくお出来になるお嫁さんだって聞いてたけどオデキによくなるお嫁さんの間違いだったのねお〜ほほほほ…」だって。
じゃあ恨み…。
骨髄!ハブと…。
マングースなの私達は!
(アナウンス)「次は憩の森公園」「お降りの方は降車ボタンを押してください」
(爆発音)光一!!キャー!!イヤー!!助けてー!!
(塚田光一)助けてー!
(村中葉子)ドア!ドア開けて!!うわぁ!!ギャー!!キャー!!光一!!ダメ!!逃げるのよ!バスのガソリンに引火するわ!!光一!!
(葉子)違うダメ!逃げるのよ!!光一!光一!
(爆発音)
(携帯電話)はい。
バスが爆発!?憩の森公園。
ここの近くじゃない!?
(消防車のサイレン)光一!!誰か!誰か!!横浜東署二宮だ!私は医者です!大丈夫ですか?救急隊!この人をすぐ搬送して!大丈夫よしっかりして。
冷やすわよ。
ああっああーっ!救急隊!検事検事!二宮さん。
お願いします。
バスに乗ってたの。
爆発はバスの中央部付近から。
突然バーン!という爆発音がして一瞬にして火の海になったの。
そんな事説明してる場合じゃないわ!ケガしてるじゃないの。
でも私は検察官として…。
葉子さん!しっかりしろ!この人運んでください!光一!光一!!
(救急車のサイレン)しっかりしろ!光一!!俊作!お母さん。
(塚田久美子)俊ちゃん光一は?光一はどこなの?今…。
光一!ああ…あっ。
久美子…。
大丈夫ね大丈夫だから。
ダメだ…。
運ぶぞ。

(永岡)死者はもう少し増える可能性があるってさ。
警察の人が言ってた。
(未奈)だとしたら検視も少しスピードアップしなきゃまずいですね。
そういう事。
スピードアップスピードアップ!
(ドアの閉まる音)ふざけないで。
遺体は物じゃないのよそんな言い方やめなさい!
(永岡・未奈)すみません。
(桑田)この奥さん2か月前に家を建てたそうなんです。
そのローンの支払のために週末もパートに出るようになってそれであのバスに…。
(桑田)お子さん達が泣いていました。
お母さんのいない家なんていらないって…。
みんなほんのちょっと前まで生きてたのよね。
生きて…笑って。
(未奈)先生。
ガラスすべて抜き取りました。
はい。
黙祷。
始めます。
240。
心筋内出血が認められるわ。
出血斑があるわね。
日下部検事。
(日下部英介)おう。
どうしてここへ?村中検事がケガをしたそうだな。
連絡が入ってなこの事案私が担当する事になった。
事件性は?いや今のところまだ…。
ああ…このあたりが一番ひどいな。
うん?おい何だそれは?
(鑑識員)リモコンみたいですね…。
まさか爆弾の!?起爆装置。
どいてください!邪魔ですから。
どいて!!
(大石貴一)爆発のあった時に何か車内に不審な動きはなかったですか?
(小池勇樹)大きな荷物を忘れていったとかいう事は?あなたはここに座ってたんですね?怖かったですものすごい爆発音がして。
何が何だかわからなくなって…。
光一。
最善の手は尽くしたんですが…。
ああっ!光一!!光一!!光一光一。
ねえどうして…どうして!?ほんのちょっといいですか?ピアニストの成宮令子さんですよね?爆発事故でどなたか…?帰れよ!!・
(未奈)先生。
次の遺体の準備ができました。
はい。
(桑田)先生。
この遺体他に比べて損傷が少ないです。
そうね…。
これ…索状痕じゃない?それに何かしら?この圧迫痕。
このヤケド。

(未奈)先生?人間のヤケドはね生きている時に受けたものには水泡ができるけど死んでから受けたヤケドには水泡はできずに色も違うの。
赤みがなくこんなふうに青白いのよ。
永岡君。
生活反応調べてみて。
たぶんないと思うけど。
はあ?どういう事ですか?生活反応がないって。
死体がバスに乗っていたって事よ。
死体がバスに乗っていた?今度の爆発で亡くなった方は4名。
遺体を解剖した結果そのうちの1人20代と思われるこの女性だけは遺体に損傷も少なく死後硬直もはっきりしない。
そして火傷つまりヤケドに生活反応がないの。
じゃあ…。
ええ。
爆発の前に首をひも状のもので絞められて彼女は殺されていた可能性が強いわ。
おい…。
この女性の身元は?わかりません。
所持品もなくただ一人身元のつかめない女性で…。
(有田光志)じゃあ遺体がバスに一人で乗った?という事はありえないわ。
つまり誰かが遺体をバスに持ち込んだっていう事なの。
捜査もそこを中心に進めると爆発の理由も何かつかめるんじゃないかしら。
あいにくだが捜査に君の指図は受けない。
横浜地検の日下部検事だ。
村中検事に代わってこの件を。
安東君。
きみの言っていた捜査に口を挟む監察医ってのは彼女の事か?
(安東篤)いや…私はそこまでは。
二宮警部。
君は女房の力を借りなきゃ自分の捜査方針も立てられないような腑抜けなのかね?腑抜けと思われても私は別に構いません。
今はあらゆる情報が欲しいんです。
4人もの人間が亡くなり18人の人間が負傷した事件なんですから。
事件?やっぱり事故じゃなかったのね。
手製の爆弾装置とリモコンが発見されたんです。
(日下部)小池!とにかく今はこの女性の身元の割り出しだ。
あのバスの経路には横浜音大けやき台団地IT関連センターがある。
大石岩本。
お前達はそこを徹底して洗え。
他の者は現場周辺の聞き込みと不審な人物がいたかどうかの目撃者探し。
すぐにかかってくれ。
(捜査員一同)はい!すいません。
ちょっとお訊きします。
(岩本刑事)こちらの女性に見覚えはありませんか?すいません。
警察なんですけれども…。
(ため息)あれ?先生まだいらしたんですか?ああ永岡君。
ちょっとこの写真見て。
はい…。
この圧迫痕。
どうしてできた圧迫痕だと思う?ああそうか。
先生はこの女性が殺されて何かに詰められていたって考えてるわけですね。
それが爆発とともに遺体が外に出てきたと…。
そう。
どういうものに詰められていたらこういう圧迫痕ができるのかしらねぇ?遺体の損傷の程度から考えると布製の燃えやすいものじゃなくてハードなケースよね。
じゃあ鑑識さんに協力してもらって焼け残ったバッグとかケースとかそういうのを残骸の写真を借りてきて同じようなものをそろえて調べてみるしかないですね。
そう頼むわね!えっ?僕がですか?そうよ。
でも僕はあの…明日の休みはあの…ちょっと秋葉原のほうへ。
またメード喫茶?そんなとこでデレデレしてる場合じゃないでしょう!4人が死亡し18人が負傷した大事件なのよ。
(パトカーのサイレン)この人じゃない?うん。
(大石)じゃあ知ってるんですね?ええ。
うちの大学の院生で弦楽器科の若林真弓さんだと思います。
(父)真弓!どうして?
(母)真弓!
(父)真弓…。
真弓…。
真弓。
嫌!何でだ?真弓が…。
若林真弓さんがあのバスに乗ってたって聞いて。
本当だったんですね。
(俊作)光一と僕そして真弓には夢がありました。
いつかオーケストラで組めたらいいねって。
(俊介)真弓はバイオリン。
僕はピアノ。
光一はチェロ。
じゃああなた方3人は親友だった?こういう事を訊かれると驚かれるかもしれませんが…。
若林さんを恨んでいる人間に心当たりは?どういう事ですか?刑事さん。
まさかあの爆弾は真弓を狙ったもの?いやまだそうと決まったわけじゃ。
でも書いてましたよ新聞に。
爆弾だって。
そうなんですか?主任!何!?これを見てください。
あの爆発で亡くなった被害者の1人ルポライターの福沢祐一郎さんが持っていた写真です。
検事とはどういうご関係ですか?いや別に関係はない。
その男はブラックジャーナリストだ。
何だかよくわからないが私のスキャンダルを追っていた。
そんなものあるわけないのに。
基本的に検察官は知り合いの事件を担当しないはずでは?うん。
それが明確に被疑者あるいは被害者であったりした場合はな。
彼は間違いなく被害者です。
…の1人だ。
それも巻き込まれたな。
そこまで範疇を広げたら担当する事件がなくなる。
しかしですね…。
犯人の目星は付いているんだ。
誰が爆弾を仕掛けたのか。
13年前宇都宮で同じようなバスの爆破事件があった。
「宇都宮バス爆破事件」「平成3年9月14日」「栃木県宇都宮市弥生町3丁目5番9号」《山脇雄作当年42歳は3日前に解雇された吉隅化学工業を恨み同工場を爆破せんとして爆発物を作りそれを同工場に持ち込もうとしたが途中のバス車内でそれが爆発》《山脇雄作は出血性ショックにより死亡》《本件は被疑者死亡として送検された》そしてその事件を起こした犯人の子供が今回の事件のバスに乗っていた。
父親の犯した犯罪を子供が繰り返すとは限らないが…。
これを見てくれ。
そこに書いてあるだろう。
父親と同じ死に方で死ぬと。
彼が犯人だ。
それ以外には考えられない。
《人は自ら死を選ぼうとする時父親と同じ死に方をわざわざ選ぶだろうか?》
(永岡)これはこれだよな…。
これはこれとこれだもんなぁ。
これでしょ…う〜ん。
こんなもんだよな?
(桑田)ええ。
どう?ダメですね。
どれも人間1人入れるのには小さすぎますね。
他になかったの?いやもう…。
今のところはこれだけらしいです。
何しろ爆発物のそばには気化したガソリンが置いてあったみたいでもうほとんどの物は爆発で粉々に…。
これってト音記号じゃない?こんなケースかしら?
(未奈)楽器ケースの取っ手ですかね?楽器ケース?うん。
ちょっと待ってくださいよ。
確かあのバスは横浜音大に向かうから乗客の中にはトランペットを持っていた人間が1人。
フルートクラリネットバイオリンそれにチェロ。
チェロ?はい。
ああ…それならありうるかも。
塗りました全部。
OK。
ちょっと変な体操はいいから。
いいあなたは死体なのよ変なとこに力を込めたりしないでね。
わかってます任せてください!ほら眼鏡眼鏡!あっお願いします。
のっけて。
やりますよ…。
南無阿弥陀仏…。
大丈夫?力抜いててね!
(永岡)は〜い。
じゃあ運んで。
はい。
(永岡)うわぁ!すごい重い!そりゃそうよ合計すると60キロぐらいにはなるはずよ。
でも犯人が本当にチェロケースを使ったんならこれを持って移動したわけですよね。
だからあなたもそのつもりで運んでよ。
ほら例えばバスに乗るんだったらステップを上がるわけでしょ。
そんな感じで。
はい。
いよっ!
(永岡)うわぁ!いよっ!
(未奈)大丈夫?うっ!よいしょ!うわぁ〜!よいしょ!うっ!はあっ。
じゃあ開けてみて。
わあ〜。
ああ出るとき気をつけてね。
体の他の部分にペンキが付かないように。
もう死ぬかと思ったよ。
ああごめんなさい。
でも仕方がないのよ。
若林真弓さんに一番体型が近いのはあなたなんだから。
どう?この写真の圧迫痕とほぼ同じです。
ちょっと。
えっ…?チェロのケース?そうなの。
これはあくまで推測なんだけどでも若林真弓さんの遺体はチェロのケースに入れられてバスの中に持ち込まれた可能性が高いと思うの。
主任一致しますね。
日下部検事の持ってきた情報と。
日下部検事の情報って?チェロの持ち主である塚田光一の父親山脇雄作は13年前バスの中に爆弾を持ち込みそれで爆死している。
えっ…?犯罪者の息子というのがわからないように母親の久美子は籍を抜き旧姓の塚田を名乗っていたんです。
塚田光一はトラウマっていうんですか?その事件が心の中で尾を引いて父親と同じ死に方を選ばせた。
そんな…。
そんな単純に父親と同じ死に方を選ぶ…?もちろん俺もそう考えた。
しかし日下部検事がインターネットの書き込みに…。
おい…。
こんなものを見つけた。
また日下部検事なの?これ…。
名前は匿名。
塚田光一と断定されたわけじゃない。
だが彼がよくのぞいていたサイトに間違いないようだ。
それに若林真弓と塚田光一が付き合っていたという情報もあるんです。
つまりその付き合いが何らかのトラブルに発展し塚田光一は若林真弓を殺害。
そして塚田光一はバスの中で爆死するという形で無理心中を図った。
そんな…。
それに何より爆破装置とそれを点火するためのリモコンが炎上したバスの中で発見されている。
たとえそんな自殺の方法を選んだとしても何の罪もない人達を巻き添えにするなんて…。
尋常では考えられないな。
じゃあどう説明する?若林真弓の遺体にはチェロのケースに入れられていたという痕跡が残っていたんだろ?それはお前が突き止めた事じゃないか。
そりゃ確かにそうよ。
確かにそうなんだけど…。
何か…引っかかるわ…。
あっ先生!
(久美子)あなたが監察医の二宮って人ね?ええそうですけど…。
あなたがうちの光一がチェロのケースの中に真弓さんの遺体を隠していたと言ったそうね?でも違う!光一は犯人なんかじゃない。
自殺しようともしていない。
警察は13年前の事件を調べてしめたと思ったんでしょ。
でも違う!犯人は光一なんかじゃない。
ふざけないで!久美子先生に突っかかったってしょうがないでしょう。
ちょっと待ってください。
どうしてあなた方はご存じなんですか?私が警察で報告してきた事。
そんな事関係ないでしょ!許せない!あなただけは許せない!あっ…。
久美子…。
ああ…。
久美子大丈夫?大丈夫ですか?心臓が悪いんです。
先生から無理をしちゃいけないって。
えっ…?ひどい不整脈だわ。
桑田君この人をERに。
大至急!どうだった?循環器の田中先生は?今急患で手術室に。
こっちも急患なのに…。
血圧は?6866下がってます。
ドーパミン入れて。
えっ?監察医だってれっきとした医者よ!生きてる人間も見るのよ!はい。
波の振幅が小さいわね。
先生ダメです。
VFです。
エピネフリン1AIV。
はい。
除細動するわよ。
はい。
離れて。
はい。
300!360!まだVFです。
リドカイン50ミリIV。
もう一度360いくわよ。
離れて。
はい。
心拍再開しました。
血圧60。
はあはあ…。
いかがですか?あれから循環器の先生に診ていただいたんですけどやはり2〜3日入院したほうがいいって。
ありがとうございました。
いいえ。
私はお礼は言わないわよ。
この人はうちの光一を犯人扱いした。
そんな人に腐ってもお礼なんか言いたくない。
久美子!いえいいんです。
私は医者として当然の事をしただけですから。
じゃあ。
あのちょっと…。
何か?成宮さんなぜあなたや塚田さんが私が警察で話してきたばかりの事をご存じなんですか?ああマスコミの人から聞いたんです。
でもこんなに興奮するんじゃ言うんじゃありませんでした。
じゃああなたが…?ええ。
仕事柄マスコミの知り合いもたくさんいますし。
先生信じてあげてください。
光一君そんな事するような子じゃないんです。
ホントに素晴らしい子なんです。
お願いします。
ああ…すみません。
事件や犯人の事は私には…。
ああマスコミか…。
うん…。
誰かが話したんだと思うの。
大勢の報道陣が特ダネ取ろうと躍起になってるからな。
どっかで情報が漏れたのかもしれんな。
ねえ捜査の情報ぐらいさしっかりガードしろっていうんだよね。
でどうなの?捜査の状況。
ああ塚田光一と一番仲のよかった成宮俊作を呼んで話を聞いた。
違います。
光一はそんな事する人間じゃない。
信じてください刑事さん。
友達だからかばうのかな?違います。
本当に2人はみんなもうらやむ仲だったんです。
だから光一が真弓を殺すなんてそんな事は…。
同じね。
俊作君の母親の成宮令子さんも必死で塚田光一を守ろうとしてる。
犯人じゃないって。
やっぱり実況検分をやって新たな証拠を見つけ出すしかないわね。
その実況検分だが明日になった。
来れるか?うんもちろん!ちょっとちょっとあなた達いつもそんな話ばっかりしてんの?家で。
いや違うんだよ。
今度の事件はねとっても複雑な事件なんだよ。
子供の教育によくないわねぇ。
愛介君がああなるのも納得できるわ…。
うん?愛介がああなったってあの子どうかしたんですか?自分の目で確かめてみるのね。
それがさすごいかわいい子なんだよ。
俺もうびっくりしちゃってさ。
ホントここ引っ越してきてよかったよ。
うん。
髪?髪は長くてさぁかわいいピンクのブラウスに白いスカート。
ホントイケてるよ。
愛介お前何やってるんだ!この…のぞきか?お前。
もう情けない!違うよ!たまたまかわいい子が…。
七海叔母さんひどいよ。
ばらしたの?言いたくなかったけどねぇ。
もう仕事の事しか話さないこの2人にあきれ返っちゃってね…。
だからって何も…。

(ピアノ)おっショパンだ。
ショパンの『幻想ポロネーズ』。
愛介あんたそんな事わかんの?当ったり前じゃない。
これぐらい常識だよ。
愛介。
これは『幻想ポロネーズ』じゃないぞ。
『アンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズ』のほうだ。
同じショパンでも違うから間違うなよ。
何であなたがそんな事詳しいの?全身びっちり体育会系のあなたが?あっそうか。
一馬芙佐江姉さんの言いつけで10歳くらいまでピアノ習ってたものねぇ。
ピアノ!?あなたが?ははは…まあな。
でも自慢するほどでもないし指ももう動かないしねうん。
なるほど。
これでわかったわ。
えっ?この家になぜ情操教育が欠けているのか。
早紀さんあなたのせいね。
あなたが死体を切ったり貼ったりする事ばっかりに夢中になってるからだわぁ。
嘆かわしい…。
悔しい〜!まあ我慢我慢。
ていっ!ああっ!どうせ私は縦笛とカスタネットしかできませんよ!もう!てゆーか大体あんたがのぞきなんかするから悪いんでしょ!いい?のぞきは犯罪よ。
絶対やめなさい!はいはい…。
もうこんな瑣末な事にかかわり合っていられないわ。
4人が死亡して18人が負傷した事件なのよ。
明日の実況検分では絶対何か新しい証拠を見つけなきゃ。
(大石)よろしいですか?自分が爆発寸前に座ってたあるいは立っていた位置にお願いします。
私はみどり橋から乗りました。
その時ここに座ってらした楽器を持った学生さんが席を譲ってくれて…。
さあどうぞ。
お前もうちょっと重そうにやれよ。
席を譲ればいいってもんじゃないだろ。
こう楽器ケースを大事に重そうにだ。
待って。
そうじゃなかったわ。
あの時塚田光一はチェロのケースを軽々と持ち上げて席を譲ったの。
軽々とってケースには遺体が入ってた可能性があるのよ。
重さだって約60キロぐらいには…。
そうですよ。
僕片手じゃ全然持ち上がりませんでした。
でも確かに…。
村中君不確かな事を言ってもらっちゃ困るよ。
軽々と持ち上げたなんて…それは真実かね?大事な事だからね。
君の見間違いじゃないだろうね?そう言われれば…そうですね。
気のせいだったかも…。
ちょっと待って。
そんなに簡単に撤回しないで。
大事な事なんだからよーく考えて思い出して。
君は実況検分の邪魔をするのか?これは大事な事ですから。
二宮警部だから私は反対したんだ。
どうしてこの監察医が実況検分に必要なんだ?亡くなった被害者の方の状況を一番よく知ってるのは彼女です。
だから立ち会ってもらったんです。
でも現実にはやたらと捜査に口を挟む。
口を挟みたくて挟んでるんじゃありません。
真実を突き止めたいからです。
何が真実か真実でないかはこちらが判断する。
君の仕事ではない!あっ続けてくれ。
そしてバスは爆発地点の憩の森公園に向かってます。
で私は降車の合図を聞いたのでバスを徐行させました。
で押した人間は?彼だと思います。
チェロを持った塚田光一。
何?待ってください。
だとしたら全面的に考え方を変えないと…。
彼はバスの中で自殺を図るつもりだった。
ところが憩の森公園で降りようとボタンを押した。
何か目的があったんですかね?降りる…。
村中検事見間違いじゃないですか?塚田光一が押したっていうのは。
いえ確かに彼が…。
いえ。
押したのは私です。
憩の森公園のアナウンスを聞きすぐに押したんです。
村中君いい加減な事を言ってもらっては困るよ。
体調が悪いんだったら立ち会ってもらわなくても構わないからね。
いえ大丈夫です。
すいません…何か勘違いしてたみたいで。
ありがとうございました。
ご苦労さまでした。
ありがとうございます。
葉子さん。
ああごめんなさい。
何だか記憶の間違いばかりで。
ううんそんな事ないわ。
それよりあなたの記憶どおりだったとするととんでもない事がわかるの。
えっ?だってそうでしょ。
塚田光一は人間の遺体の入ったチェロのケースを軽々と持ち上げた。
そして憩の森公園に着いた時にバスを降りようとしていた。
それはつまりチェロのケースの中に人間の遺体は入っていなかったって事でしょ?そして彼はバスの中で爆弾を爆発させて自殺しようっていう意志はなかった。
何を言い出すんだ君は。
あなたは黙っていてください。
何!?という事は誰かが若林真弓さんの遺体にあたかもチェロのケースに閉じ込められていたような痕跡を付け私達の目をそこに向けさせようとした。
それを考えた人間は13年前に塚田光一の父親が起こした事件を知っていた人間ね。
そして私達はまんまとその思惑に乗せられた…。
ばかばかしい。
二宮警部君はいつまで自分の女房に好き勝手な事を言わせておくんだ?早紀もうそれ以上はよせ。
ちょっと待って。
もう少しだけ。
日下部検事…。
あなたは爆発事故に遭ったショックが消えない中真相究明のために何とか記憶を呼び覚まそうとしている村中検事の発言を何とか抑え込もうとしていた。
私にはそう見えました。
私はなそういう曖昧な記憶に振り回されるのはばかばかしいと思っただけだ。
村中君君だってわかってるはずだ。
曖昧な記憶は証拠としては採用されない。
公判維持の時我々検察官がどれほど困るか…。
もちろんです。
私は自分が情けなくて…。
本当に曖昧な記憶かどうかそれを調べるのも私達の大事な仕事だと私は思っています。
そうか…。
つまり君も私のやり方に異議を挟むというわけか。
二宮警部捜査の指揮権は検察官にあるんですから。
ああいいだろう。
では君は自分の思うとおりにやってくれたまえ。
ただしそれなりの覚悟はしといてくれたまえ。
行くぞ安東。
まずいですよ二宮警部。
日下部検事はすっごいプライドが高い人なんですよ。
もう逆らったりしたら…。

(日下部)安東君!あっはいただいま!ごめんなさい。
ちょっと言い過ぎちゃったかな。
ああいいんだよ。
気にするな。
はは…。
村中検事。
検事だけもう一度バスで話を聞かせてもらえますか?ええ。
お願いします。
「だけ」って言ったろう!バカ!帰れ!もう…!ただいま。
あれ先生。
終わったんですか?実況検分は。
うん…でも何だか納得がいかないのよねぇ。
あのさっきからお待ちなんです。
えっ?まあ…。
何か?今聞いたものですから。
先生だけが光一君が犯人じゃないって言ってくださったそうですね。
ちょっと待ってください。
どうしてその事をご存じなんですか?まだ限られた警察関係者しか知らないはずなのに。
私に教えてくれたマスコミの人が言っていたんです。
犯人は光一君に決まっているのにそんな事言うのは先生だけだって。
だから私すごくうれしいんです。
強い味方ができたような気がして。
《また捜査情報が漏れてる…》あっちょっと…。
(令子)で先生どうやって証明したらいいんでしょうか?光一君のチェロのケースに真弓さんの遺体など入ってなかったって。
それはどこか別の場所に入っていたっていう事が証明できればそれが一番なんでしょうけど。
でも今のところはまだ…。
私協力します。
光一君が憩の森公園でバスを降りようとしていたのはもしかしてうちの息子に会いに来たんじゃないかって。
うち公園のすぐそばなんです。
たまたま偶然なんですがうちの息子がバス停に来たらそのバスに乗っている光一君を見つけたって…。
いえそのへんのところもう少しちゃんと聞いて…。
(携帯電話)すみません。
(携帯電話)久美子?私もう生きていたくない。
インターネットの書き込みね警察の人がやっぱり光一みたいだったって…。
もう私…。
ねえ久美子生きていたくないって一体どういう事なの?ねえ教えて…。
どうしたんですか?インターネットの書き込みがやっぱり光一君のものだってわかったらしいんです。
それでもう生きていたくないって。
そんな…。
私捜します。
たぶんこの病院のどこかにいると思うので捜してきます!私も!みんなも捜して!じゃあ俺こっち行く。
私こっち!あっごめんなさい。
ごめんなさい。
未奈ちゃん駐車場のほう捜して!すいません。
あっ…。
上行ってみましょう。
塚田さん!久美子!やめなさい!死なせて…!何が死にたいよ!バカな事言わないでよ。
何のために生きてるのかわからなくなった…。
光一は私の生きがいだった。
でもその光一が…。
じゃあ信じるの!?インターネットの書き込みは光一君のものだって信じるの?信じてない!信じるわけない!光一がそんな事するなんて…。
でも…。
だったら誰かが光一君に自分の罪を着せようとしてるって事じゃない。
それを突き止めるのよ。
先生先生からも言ってください。
真弓さんの遺体は光一君のチェロのケースに入ってなかったって。
嘘!?ホントなの?でもそれは最初に先生が…。
そうです。
最初にチェロのケースの事を言い出したのは私です。
でもそうじゃないという線も浮かび上がってきて…。
何だか私犯人の悪意のようなものを感じるんです。
真犯人はすべてを光一さんの犯行にして事件を終わらせようとしてる。
もちろんまだ真実はわかりません。
でももし私が真犯人の思惑どおりに動かされたんだとしたら…。
私なりにもう一度事件を法医学の観点から調べてみたいと思ってます。
光一は心やさしい子です。
心臓の悪い私のために救命技能の講習を受けてその資格も取ってくれ…。
いざって時のために家には除細動器も買ってくれて…。
そんな光一が人を殺すなんてとても思えないんです。
そう…。
それを証明するためにも強く生きるのよ。
先生だけが頼りです。
よろしくお願いします!さあねっ…。
いい?このバスは事件が起きたのと同じ型。
私達は遺体がチェロのケースの中に入っていないという前提の元で調べるわよ。
じゃあ遺体が入った荷物はどこに?爆発したのは中央部の少し前。
塚田光一の立ってた斜め後ろあたりですよね。
いやぁダメですよ。
いくら若林真弓が体が小さいといっても遺体を隠してるようなバッグなんかが置いてあったらどうやったって目に付くでしょうし…。
ああ〜あれならアリですね。
車イス用だあれ。
あそこなら大きな荷物があってもおかしくない。
乗客も気にしませんよね。
遺体の損傷からみて爆弾は座席の下。
遺体はハードなケースに入れてあそこ。
バスの始発のあたりから乗り込めば…。
やってみましょう。
どうぞ。
はい。
何でいっつも俺ばっかり。
代わってよたまには。
ははは…。
入らないよこんなの。
入ります。
頭頭…頭入れてください頭。
いきますよ。

(アナウンス)「次は本牧六丁目」「お降りの方は降車ボタンを押してください」あっ降ります!私達も降ります!はい!やりましたね大成功!あれなら誰も気づかないわ。
爆発とともにトランクは吹っ飛び遺体が出てくる…。
こんなにうまくいくとは思ってませんでしたね。
あっ!何?どうしたの?永岡さん忘れてます!ああー!まったくもうひどいんだよなぁ。
あのまま遺失物センターまで運ばれちゃったらどうするんですか?間に合ったからいいようなものの。
だから謝ってるじゃない。
もうしつこいなぁ…。
でもよしとしましょうよ。
実験は成功したしこれで犯人はトランクを置いていった人間ってわかったんですから。
甘いね。
だからお前はダメなの。
そんなの全然立証できてないだろ。
どうして?僕はねちゃんとトランクの中で考えたんだから。
いいか?爆発現場のあのがれきっていうかさ燃え残った残骸の中から爆発物のリモコンは発見されたんだよ。
これは一体どういう事だ。
つまり爆発したあのバスの中に犯人がいたって事だよ。
そっかリモコン…。
そう考えると犯人は自分も死ぬ事を考えている人間。
つまり無理心中を考えていた塚田光一がやっぱりリモコンを押したと考えるのが妥当なんだよ。
なるほど…。
ちょっと待って。
こういうのは考えられない?あらかじめリモコンのダミーを置いとくとか…。
爆発が起きた後でリモコンを投げ込むとか…。
バス停には塚田光一の友人の成宮俊作がいたんでしょ?
(桑田)じゃあ彼が…。
ダメ!!逃げるのよ!でももう1人いるわ。
バスにリモコンを持ち込む事のできる人間が…。
その人間がねそのリモコンを現場で一番最初に発見した…。
リモコンみたいですね…。
(桑田)日下部検事…!?でも検事でしょう?相手は。
まさか…。
だけど塚田光一の父親が13年前に事件を起こした事を突き止めたのも日下部検事だしインターネットの書き込みを見つけたのも彼よ…。
そして何よりも…。
あの人は何とかして塚田光一を犯人に仕立て上げようとしていた…。
何が真実か真実でないかはこちらが判断する。
君の仕事ではない!捜査関係者の中に犯人がいるなんてそんな事思いたくないけどでも…。
さあ入って。
二宮君塚田光一の犯行の動機につながる重要な供述を手に入れた。
まあ掛けて。
どうぞ。
さあ話してくれ。
どうした?黙っていちゃわからんぞ。
そうですよ。
さっき私達に話したように…。
いやすごいですよ検事は。
こちらの刑事課の事情聴取が手ぬるいというので自分で音大にまで出かけて…。
そんな事はどうでもいい。
(日下部)俊作君…。
最近うまくいってなかったんです。
光一と真弓。
真弓光一と別れたがっててそれで突然僕の事ホントは前から好きだったって。
でも待ってください。
事件のあった前日あなたと塚田光一さん若林真弓さんの3人はそろってあなたのお母さんのリサイタルに出かけてますよね。
好きだと告白されて…。
でも僕は2人の仲を修復したいって思ったんです。
真弓の気持ちはうれしいけど光一は親友だしそれに僕にはワールドショパンコンクールがあるし。
ワールドショパンコンクール?4年に一度開かれるピアニストのコンクールだ。
一流を目指す世界中の若手がこのコンクールで優勝するために血反吐を吐くような練習をしてる。
へえ〜。
いやいや母ちゃんがファンなんだよクラシックの。
こっちは演歌だけどな。
で2人の関係は修復できたんですか?ダメでした。
それに光一死にたいって…。
真弓を殺して自分も死にたいぐらいの気持ちだって…。
よく話してくれた。
もうこの事件の事は忘れて君はコンクールに専念しなさい。
二宮警部君はこれでもまだ塚田光一が犯人ではないと言い張るのかね?被疑者死亡!?…で送検させるつもりだ。
日下部検事は。
ちょっと待ってよ!そんな事言ったって塚田光一を犯人と決め付けるのはまだ無理でしょう。
決め手となる証拠もないんだし。
だがな状況証拠がすべて塚田光一を示唆している。
それに動機も出た。
それは成宮俊作の話でしょ。
その話がどこまで信用できるの?言ってるのは彼だけなんでしょ?もちろん全面的に信用してるわけじゃないよ。
今裏もちゃんと取ってるよ。
そんな事よりささっき私が電話した話はどうなの?ばかばかしい!日下部検事がリモコンを投げ入れた?でもこの事件をこんなに早く終わらせようとしているのよ。
何か理由があるはずよ。
ねえ日下部検事が恨みに思ってる人がバスの乗客の中にいたとかそういう事ないの?ない事はない。
えっ!?
(日下部)その男はブラックジャーナリストだ。
何だかよくわからないが私のスキャンダルを追っていた。
でもそれはもう調べ済みだ。
調べ済みってどういう事よ。
ねえちゃんと話してよ私にも!個人のプライバシーに関する事だよ。
お前に言っても始まらんだろう。
警察はそうやって検察を守るのね。
やっぱりグルなのね。
警察と検察は!バカ!いい加減にしろホントに。
ちょっと待ってよ。
まだ話終わってない…。
おお今度は夫婦ゲンカなの?まあホントにこの家家庭環境よくないわね。
余計な口出ししないでください!叔母様には関係ありませんから。
ちょっと待って!今度はこっちにトバッチリ?おお〜怖っ…。
ねえちょっと待ってよ!もう…。
都合が悪くなるとすぐ逃げるんだからもう…!ああ…。
隠してる…。
みんなが何かを隠してる…。
塚田さん!どうしたんですか?どちらへ?令子のところです。
さっきニュースでやってたわ。
あの俊ちゃんが光一を裏切ったんでしょ?光一と真弓さんがケンカしてたなんて…。
いえそれは…。
令子は後ろめたいのか昨日から来ない。
あの俊作がある事ない事しゃべって光一を陥れようとしてるんだわ。
行ってください。
運転手さん。
あっ…塚田さん!あっ桑田君?すぐに成宮令子さんの住所調べて。
たぶん憩の森公園の近くだと思うけど。

(久美子)さあ言いなさい!なぜあんな嘘ついたのか。
光一と真弓さんがケンカしてたなんて。
やめて!この子だって言いたくなかったの。
でも事実なのよ。
えっ…。
しゃべった事は謝ります。
でもあの2人うまくいってなかったんです。
おばさんが知らなかっただけです。
(久美子)嘘!
(俊作)嘘じゃありません。
じゃあ証拠はあるの!?証拠見せなさいよ!やめて。
いい加減にしてよ!あっ塚田さん!大丈夫ですか?令子…。
俊作はコンクールが近いの。
そんなくだらない問題に付き合ってる暇はないわ。
くだらない!?くだらないって光一が死んだ事がくだらない事なの!?ごめんなさい。
どうかしてた。
言い過ぎたわ…。
いいえそれがあなたの本心よ。
あなたは自分の夢のためなら…。
この子をコンクールに出すためなら他の事はどうでもいいと思ってる。
私の事もね!何言ってるの。
あなた友達よ。
学生時代からつらい時もずっと2人で支え合ってきたじゃない。
昨日まではね。
でももう終わった…。
久美子…。
あなたがその体になった時私はあなたを何とか支えたいと思った。
そして主人が事件を起こした時あなたが私達を支えてくれた。
でもそれも昨日まで。
昨日で終わったのよ私達の友情は。
久美子…。
私は光一をおとしめた人間を自分の手で捜します。
誰の力も借りずに。
あっ塚田さん!放っといてください!
(ピアノ)あの子はつらいんです。
誰よりも光一君に友情を感じていました。
その友情を裏切る事になってしまって…。
本当につらいんです。
でもどうして黙ってらしたんですか?塚田光一さんと若林真弓さんが仲違いしていた事を…。
そんな事言えません。
言えばすぐに光一君が犯人だという事になってしまう。
私も光一君を信じてました。
だから私の事も傷つけたくなかったんじゃないでしょうか。
あの子いつも私に遠慮するから。
遠慮…?親子でですか?実の親子じゃないんです私達。
俊作は兄夫婦の子供なんです。
20年前私はコンサートの帰りに兄夫婦と一緒に車に乗っていて事故に遭いました。
キャー!居眠り運転のトラックが信号無視したんです。
その事故で兄夫婦は亡くなり私は右手が動かなくなりました。
それで左手で…。
私クラシック詳しくないんですけどうちの息子から聞きました。
成宮令子さんは左手のピアニストとして有名だって。
それもあの子がいたから頑張れました。
あの子僕が叔母ちゃんの代わりに夢を叶えるからって。
夢…?コンクールの夢…。
あの事故がなければ私は出るつもりでした。
自信もありました。
でもそれが叶わなくなってしまって…。
あの子と養子縁組した時にあの子言ってくれたんです。
叔母ちゃん僕が叔母ちゃんの夢叶えるから。
コンクールで絶対優勝するから元気出してね。
ありがとう。
俊作君がそんな事を…。
あの子も両親を亡くしてつらかった…。
でも私を励ましてくれました。
第一次世界大戦で右手を負傷したピアニストはたくさんいる。
だから左手1本で弾ける曲があると聞くとすぐに久美子と一緒に楽譜を探してきてくれました。
だからあの子今つらいんです。
友達を裏切ってしまった…。
久美子も傷つけてしまった…。
でもコンクールは真近に迫っている。
あの子の心は今張り裂けそうなんです。

(ピアノ)先生…。
だからもうそっとしておいてほしいんです。
光一君の無実を晴らすなんて偉そうな事言いましたけど…。
今の私にはあの子のそばに付き添っていてあげる事しかできないんです。
お願いします。
あっこれ…。
落とされませんでしたか?イヤリング。
そうです。
ありがとうございます。
探してました。
(ノック)被疑者死亡じゃ終わらせないわよ。
週刊誌に気になる記事…。
早紀よさないか。
ああ…相変わらずですよね。
何か捜査に口出したいって感じですね。
私は別に興味本位で捜査にかかわってるわけじゃありません。
かかわってほしくない。
これ以上部外者に捜査をかき乱されるのは迷惑だ。
部外者って私は…。
何だ?まだ何か言いたい事があるのか?いえ別に…。
もういいだろ!あっちょっと…。
ねえ表で待ってる。

(日下部)捜査会議始めてくれ。
なぜ…?なぜ成宮令子のイヤリングとおそろいのネクタイピンを日下部検事が…?まさか…。
みんなが何かを隠している…。
許されない。
4人の人間が死に18人がケガを負った。
そんな事絶対に許せない。
空いてたから早かったよ。
入って。

(携帯電話)俺だ。
どうした?日下部検事が成宮令子の家に入っていったわ。
何か関係があるのよあの2人。
すごく親しげだった。
「返事がないわね」「やっぱり知ってたのねこの事」ああ。
だが本件とは関係ないだろう。
何言ってるの!週刊誌にだって出てるわよ。
亡くなった人の中に検察庁のスキャンダルを専門で追ってたルポライターがいたって。
これなのね?それであなた達は日下部検事をかばってるのね。
バカ!俺達は別にそんな事…。
じゃあ警察の威信を見せて。
日下部検事だって容疑者でしょ?放っとくなら私が糾弾するわよ!早紀ちょっ…。
(ため息)ホントにかばうつもりなの?・
(ドアの開く音)あっ…。
あんまり心配しないで。
ねっ。
ええ。
ちょっと待ってください。
どういう事なんですか?通用しませんよ。
捜査の一環で来たというのは。
あなたは安東事務官を公用車で帰した後1人でこそこそとここへやって来たんですから。
日下部さんとは古くからの知り合いなんです。
それで事件の事が気になって来ていただいたんです。
お2人はおそろいのイヤリングとネクタイピンをするような間柄だったんですよね?そしてあらゆる警察の情報を誰よりも早くあなたはこの日下部検事から手に入れていた。
いやそれは俊作君からいろいろな情報を手に入れようと…。
これはあくまでも捜査の一環だ。
あなたは塚田光一さんを犯人にして事件の幕引きをしようとしてる。
それはあなた自身がお2人の関係を世間に知られたくないからですか?ひょっとしたらそれが理由で福沢というルポライターをあなたが?君!・早紀!あなた…。
これでも警察はこの2人を問題にしないの!?ああもういいから来い!申し訳ありません。
なぜ謝んのよ!私は別にやましい事なんかしてないわよ!やましいのはこの人よ!これ以上俺に恥をかかせるな!来い!ちょっと待ってよ!二宮君!抗弁はしないぞ。
私は何ひとつやましい事はしていない。
わかってます。
来い!ちょっと…イタタ…!痛いってばもう!
(ため息)少し頭冷やせ。
権力が怖いの?何?見損なったわ。
なぜ日下部検事を追及しないの?ペコペコ…頭下げて。
事件の本質と関係ないだろ。
(ため息)日下部検事が成宮俊作を俊作君と呼んだ時からおかしいと思い2人の関係は調べるには調べた。
日下部検事は結婚してるんでしょ?あの2人は不倫なんでしょ?それをルポライターに突っ込まれて…。
2人が以前恋人同士だったのは事実だ。
20年前成宮令子の乗った車が事故に巻き込まれた時運転していたのは独身時代の日下部検事だった。
(衝突音)じゃあこうも考えられない?日下部検事はその事故の事を負い目に感じて本当の犯人は成宮俊作なのに彼をかばって事件に幕引きをしようとしてる。
だからそういう事を含めて俺達はいろいろな観点から捜査をしているんだ。
わかったか?何がいろいろな観点よ!じゃあ今まで調べた事を全部日下部検事にぶつければいいじゃない!否定されたらそれまでだろ。
証拠もないしあくまでも俺の推測だ。
だらしない。
情けないわねぇ。
検察に頭が上がらないなんて。
もし私が男だったらあなたをぶっ飛ばしてるわよ!お前が男だったらとっくにぶっ飛ばしてる。
何それ!?もう…。
何度よせと言っても事件に首を突っ込む。
そんなに俺が信用できないか。
お前がいなかったら俺は刑事として半人前か。
お前がいなかったら俺は事件も解決できない腑抜け野郎か?ちょっ…誰もそんな事言ってないじゃない。
家を建てた…そのローンだってお前と半々だ。
仕事を持ってる奥さんを持って幸せですね。
うらやましい。
おふくろを引き取ってもらう。
いい奥さんを持って幸せですね。
うらやましい。
俺は半人前か。
嫌だそんな事…今関係ないでしょう。
そうだ関係ない。
つまらん事言った。
忘れてくれ。
(ため息)だがな俺は今までの刑事人生で相手が検察だからといって捜査に手加減を加えた事は一度もない。
それだけは…それだけは忘れるな!
(ため息)腑抜けに半人前ねぇ…。
何だかショックだわ…。
そんなふうに思ってたんだ。
そんなふうに傷つけてたんだって…。
それで落ち込んで帰ってきたんだ。
あなたらしくないと思ってたのよ。
いつもの元気がないし…。
男の人のプライドってそんなところで傷つくなんて…。
何バカな事言ってんのよ。
私はむしろ一馬さんのほうが情けないと思うわよ。
そんな事言い出すなんて。
叔母様…。
うちの息子だって同じよ。
向こうの実家に家の頭金半分出してもらってるもんだから遠慮しちゃってさ。
娘の誕生日うちの奴の実家でやるから母さん何もしなくていいよ。
ふん!せっかくこっちだって支度してるっていうのに向こうの言いなり!だから私さ頭きて家飛び出してきちゃったのよ。
男ならねデンと構えてなさいっていうの!叔母様それって…。
あっいけない言っちゃった…。
あはは…うふふ…そうなのよ。
はあうまくいかないわねぇ同居って。
あなたも覚悟しといたほうがいいわよ?いいえ!私はたぶん大丈夫です。
ふ〜ん…随分自信大ありね?頑張れ頑張れ早紀!ファイト出せ!
(ピアノ)
(ハミング)何ですか?それ。
ははは…。
いや久しぶりに弾きたくてね買って来ちゃったのよ。
それに情操教育の欠けてるあなたにちょっと嫌みがやりたくてね。
まあ…。
でもさぁ元気がないと張り合いがない。
ふふっ叔母様ったら。
はははっ!
(ハミング)
(携帯電話)はいもしもし。
久美子さん?先生はどっちの味方?やっぱり令子?いえ私はどちらの味方とかそういう事は…。
令子には日下部検事がついてるのよ。
ご存じでしょ?先生も。
ええまあ…。
「だったら私の味方になって。
お願い!」どうして黙ってんの!?光一の無実を証明してくれるって話嘘だったの!?「いえ私は真実を突き止めたいと…」真実は一つよ!光一は何もしてない!もうあなたにも頼まない!あっ…久美子さん!久美子さん?もうどうしてみんなこう…。
(ため息)あのこんな物が家に来たものですから。
ああ塚田光一君ですね。
ええ。
でいつから来てもらえます?いつからって…。
息子はチェロの奏者を目指してたんですけどここで働くつもりだったんですか?ええぜひ働きたいって。
そんな…。

(携帯電話)あっ久美子さん?二宮です。
昨日あれからずっと考えてたんですけど逆に光一君と真弓さんが仲違いなどしてなかったって事を証明できるもの。
手紙とかメモとか誰かの証言とか何かありませんかね?
(久美子)「もういいんです。
その件は」「わかったから」わかったってどういう事ですか?もう犯人を家に呼びつけました。
自分の手で決着をつけます。
待ってください!私今からすぐそっちへ行きますから早まらないで!いいですね!?犯人を呼び出したって誰なの?一体誰が…。
早まらないで久美子さん…。
確か住所だとこのあたり…。
ちょっとあなた!?待ちなさい!ああーイタッ!やっぱりあなたが犯人だったのね。
違いますよ。
何言ってるんですか。
じゃあなぜ逃げたの?あなたまさか…。

(女の声)きゃあー!久美子さん…。
久美子さんの家はどこ?どこなの?ここなのね。
はい。
久美子さん!久美子さん!犯人よ。
追って。
はい。
久美子さんしっかりして。
久美子さん久美…。
久美子さん…。
ダメでした。
逃げられました。
警察に連絡したわ。
聞かせて。
なぜあなたはここに来たの?光一のお母さんから犯人がわかった。
疑ってごめんなさいって電話もらって。
でその時自分一人で対決するって言うから気になって。
私と同じね。
だけど昨日の昼間の態度思い出してやっぱり会いたくなくなって…。
バカです僕。
僕が電話もらってすぐに駆けつけてればこんな事には…。
私も…。
電話で話した後すぐに警察に連絡してればこんな事には…。
(パトカーのサイレン)
(カメラのシャッター音)ああ…。
あなた…。
話は聞いた。
お前を怒鳴りつけるのはもう飽きた。
死因は頭頂部の打撲か?鑑識は感電死だと…。
それもかなり強い電流が流れるよう改造されたのではないかと…。
成宮俊作は?事情を聞かせてもらってそれで帰ってもらいました。
そうか。
二宮警部これで彼の無実が証明できたはずだ。
何しろ犯人を追ったんだ。
彼が犯人であるはずがない。
君達が彼に嫌疑をかけていた事は私も薄々気がついていた。
検事。
この状況で真っ先に言うのがそれですか?何?あなたは何年捜査にかかわっているんですか?人が死ぬ殺される。
それで真っ先に訊くのが知り合いの安否ですか?検事俺達刑事はガイシャを見て真っ先に思うのはこのガイシャはどういう思いをしてるんだろう。
どんなにつらかったろう。
どんなに悔しかったろう。
そういう思いをバネに捜査してるんです。
それはもちろん私だって。
あなたの指図はもう受けません。
あなたと成宮親子がどういう関係かそんな事は関係ない。
その事だけにこだわっているあなたの指図は受けたくない。
それだけはあなたに言っておきます。
君は今自分が何を言ってるのかわかっているのかね?部外者をつまみ出せ。
二宮さんそこまで…。
大石有田責任は俺が取る。
この検事をこの現場から連れ出せ!
(大石・有田)はい。
触るな!二宮君この事はよーく覚えておくよ。
(安東)あっ検事。
頭頂部に打撲擦過傷軽度の出血。
左上胸部に電流痕。
少しずれて同じく電流痕。
左側胸部に電流痕。
薄いけどこれも電流痕よね。
なぜ2つ…?上胸部にもずれた電流痕。
念のため薄いほうの生活反応も調べてみて。
はい。
おそらく犯人は背後から久美子さんを襲い…。
(殴る音)ああーっ!彼女を気絶させ…。
改造した器械で感電死させた。
(電流を流す音)ああーっ!許せないわ。
人の命を救う器械で人の命を奪った犯人。
許せない。
4つの電流痕。
いずれも生活反応あるな。
じゃあ塚田久美子さんは昨日の昼間このはがきを持ってこちらへ伺ったんですね。
ええ。
それで息子さんがうちで働くつもりだって聞いてすごくびっくりしてましたよ。
知らなかったんですか?母親なのに。
でしょうね。
結婚して身を固めるのが一番の目的だって言ってましたからこれ以上チェロを続けるのはお母さんにすまないっていうそういう気持ちがあったみたいですね。
結婚!?塚田光一が若林真弓と…?その工房はもともと若林真弓が紹介したものらしく面接を受けに来た時も若林真弓が同席していたと…。
つまり2人はケンカなどしていなかった。
むしろアツアツで当てられたって言ってましたよ店の主人は。
主任。
これから考えると成宮俊作は嘘の供述をしていた可能性があります。
呼んで叩きましょう。
無駄だな。
僕の前ではケンカしてたと言われればそれまでだろう。
でも2人が結婚を考えていたという事を知って塚田久美子は犯人がわかったと思ったんでしょ。
やっぱり塚田久美子は成宮俊作を犯人とにらんで…。
でも忘れるな。
除細動器のパドルの残留指紋は成宮俊作のものではない。
それに塚田久美子が殺された時うちの早紀は成宮俊作と一緒だった。
殺される瞬間の悲鳴も聞いている。

(女の声)きゃあー!そして成宮俊作は塚田久美子の家から逃げ出した犯人を追った。
(ため息)どういう事なんだ?一体これは。
成宮俊作に塚田久美子殺しのアリバイがあるとなると誰が塚田久美子を殺したのか…?
(電話)はい。
捜査本部。
はっはい。
はいはい。
伝えます。
主任。
署長がすごい剣幕ですぐ署長室に来るようにと。
わかった。
捜査を続けてくれ。
(有田)やっぱりあれかな…。
昨日の日下部検事を怒鳴りつけた事が問題になって…。
(ノック)・
(ドアが開く音)あなた…。
うん…。
署に電話したら署長に呼ばれた後1人で犯行現場に行ったって。
何か言われたの?いやぁ別に…。
現場百遍。
ただし百一遍目はないかもしれんがな。
進退伺いを出せと言われたが断った。
地検全部敵に回したぞとも言われた。
別に構いませんと答えた。
県警と相談して俺の処分を決めるらしい。
私のせいだわ。
私が余計な事したから…。
お前は関係ないよ!これは俺の信念だ。
被害者の遺体が置かれた犯行現場で個人的な感情だけにこだわってる人間を俺は許せなかった。
それだけだ。
やっぱり日下部検事が?いやあの男は事件そのものには関係していない。
塚田久美子が殺された時間のアリバイはもちろんあるし若林真弓とは何も結びつかない。
でも自分のスキャンダルを追っていたルポライターの福沢は…。
福沢祐一郎はたまたま車が故障してあの日バスに乗った。
あの日あの時間にバスに乗る事を日下部検事が知るはずもないし爆弾も仕掛けられない。
ああ…そう…。
怪しい人間は全部シロだ。
ただ一人除いてな。
でもそれは立証できない。
(舌打ち)どうする?クビになったら。
払えんぞ家のローン。
何言ってんのこんな時に。
そんな事気にして。
私あなたには小さく生きてもらいたくない。
あなたには大きく堂々と生きてもらいたい。
それができないぐらいだったら家なんかいらないわよ。
バーカ。
冗談だよ。
仕事ぐらいいつでも見つけるさ。
ごめんなさい。
えっ?私が余計な事して…。
久美子さんと電話で話した時にすぐにあなたに電話してれば…。
(舌打ち)一人で何とかしようなんてバカな事考えるから…。
正直言っちまうとな。
余計な事するお前嫌いじゃないぞ。
うん。
それはお前は人間が好きだ。
その好きな人間の命を奪った犯人を心から憎む。
うん。
そういうお前…好きだよ。
もう…。
こんな時に泣かせるような事言わないでよ。
バカ…。
でもな事件はまだ終わっちゃいないんだ。
俺にどれだけ時間が残されてるかわからんが俺は諦めんぞ。
うん。
私も。
最後まで諦めない。
お願いよ久美子さんあなたの最期の声を聞かせて。
一体誰があなたの命を奪ったの?なぜここに生活反応のある電流痕が…?しかも2つずつ…。
訳を教えて。
(ため息)ただいま。

(七海・愛介)「ねこふんじゃった」・「ねこふんじゃった。
ねこふんづけちゃったら…」何なの?2人で…。
(七海)「ふんづけちゃったらひっかいた」そうそう…。
ただいま。
「ねこひっかいた…」ただいま!あっおかえりお母さん。
あらおかえんなさい。
ねえ愛介悪いんだけどちょっと静かにしてくれる。
お母さんね今日すっごく疲れてんの。
ああごめん。
いいのよ。
はあ〜。
早紀さん。
まあこう言っちゃなんだけど仕事の疲れっていうのは家に持ち込まないのが仕事を持った主婦の務めじゃないかしら?ええ私もいつもはそうなんですけどね。
でも今日はホントに煮詰まっちゃってもうくたくた。
ねえ僕の部屋でやろうよ。
お母さんには悪いからさ。
そう…。
でもあなたってホントにやさしい子なのね。
あんなわがままなお母さんに気ぃ使っちゃって…。
ふふふ…じゃあそうしようか。
ねっじゃあ。
よいしょ。
アイタタ…。
大丈夫?イタッ!イタ〜イ!ダメよ。
あら私ちょっとピアノ弾き過ぎたのかしら。
腱鞘炎になっちゃったみたい。
気をつけてくださいね。
ご自分で思ってらっしゃるより歳とってるんですから。
ふふふ…。
どうもありがとう。
いえどういたしまして。
ちょっと腕も上がんないわ。
あっイタタタ…。
(七海)ああ…。
まさか…。
そうよ。
それならありうるわ。
先生から連絡をもらって集められる事ができたのがこれぐらいです。
じゃあ始めます。

(ピアノ)止めて!腕何度ぐらい離れてる?体から。
はい。
(未奈)座った姿勢ですから正確には…。
30度ぐらいですね。
そう。

(未奈)やっぱりこれも30度ぐらいですね。
ここに書いてありますよ。
「右手はほとんど上がらなくてドアのノブを開けるのにも苦労する」って。
そう。
約30度って事ね。
それでやってみましょ。
ああ何ですか?先生。
僕に頼みって。
裸になって。
はっ!?裸?犯行現場のカウンターとほぼ同じ高さです。
イスの高さもほぼ同じです。
オーケー。
桑田君久美子さんの身長は?162センチです。
じゃあ162センチになってここに座って。
はい。
濃いほうの電流痕と同じ位置にパドルを当ててみて。
はい。
さあいきますよ。
ビビビビ…。
ああー!ビビビはいいビビビはいい。
はい。
どう?あっはい。
(未奈)久美子さんの遺体にあった電流痕とほぼ同じ位置です。
うん。
じゃあ今度は右手を30度に固定した状態でやってみましょう。
未奈ちゃんあなたは成宮令子と背格好が同じだからあなたがやって。
(桑田)そうしたらここの角度が30度だから…。
(未奈)はい。
(桑田)そうここで押さえといて。
はい。
はい1回留めちゃってね。
じゃあいきます。
薄いほうの電流痕と同じ位置にパドルを当ててみてね。
はい。
いきます。
よっ。
あれっ?右手のパドルがうまく届きません。
じゃあ位置を変えて。
これならできるっていう位置を探ってみて。
はい。
ええっと…。
この位置だよ。
はい。
いきます。
よいしょ。
ああー!ああ君はいいから。
未奈ちゃんその格好でわあーって悲鳴あげてみて。
わあーっ!オーケー終了。
どう?ほぼ同じ位置です。
先生。
この薄いところまで同じです。
見てください。
力が入んなかったんです。
ガムテープで押さえられてて。
(未奈)自分なりには力入れたつもりだったんですけど。
決まったわね。
でも先生。
先生が何を言いたいかはわかりますけどでも塚田久美子の遺体にあった4つの電流痕にはいずれも生活反応があったんですよ。
それはどうなるんですか?そう。
生活反応っていうのは不思議なものなの。
死んですぐならまだ皮膚組織や血管の一部は生きてるからその反応が出る場合があるのよ。
殺してすぐなら…。
(桑田)先生。
どこへ?私が聞いた悲鳴は確実に女性の声だった。
この実験でわかった事をその人にぶつけてくるわ。
ちょっちょっと待ってください。
やばいよやばいよこれ。
二宮警部に電話しないと。
(携帯電話)「早紀!バカな真似はやめろ!」行かせて。
許せないの。
真実をぶつけたい。
それはお前の仕事じゃないだろう!いいえ私の仕事よ!今度の事件では5人の遺体を解剖したわ。
(爆発音)みんな悔しくてつらくて…。
誰もが私に言ってた。
どうして私が死ななきゃならないんだって。
私はその声をぶつけたい。

(ピアノ)美しい音楽は心の美しい人が奏でるものだと思ってました。
でもそうじゃないんですね。
なぜこんなところに?誰が久美子さんを殺したのかわかりました。
そして誰が偽装したのかも…。
あなたはその犯人が久美子さんに呼び出されるのを見ていた。
わかりました。
僕が無実だって事をちゃんと説明しますよおばさんに。
待っててください。
7時頃には行けると思います。
そして彼は密かに除細動器を手に入れ改造した。
そしてあなたは彼の行動が気になりそのあとをつけた。
(殴る音)ああーっ!彼は久美子さんを失神させ…。

(電流を流す音)ああーっ!物音に驚いた彼は改造した器械を回収する間もなく逃げた。
(令子)久美子!久美…!?そしてあなたは彼に殺された久美子さんを見た。
・ちょっと待ちなさい!やっぱりあなたが犯人だったのね。
違いますよ。
何言ってるんですか。
追い詰められている彼を見てあなたは焦った。
その時久美子さんの体が動きあなたは一瞬生きてる生きていてはまずい。
そう思って…。

(電流を流す音)きゃあー!動いたと思ったのはあなたの間違いよ。
何かの弾みで遺体がずれただけ。
久美子さんはすでに死んでいた。
だから本来ならパドルを当てなくても悲鳴だけを上げれば済んだはずよ。
でもそう思わせたのは久美子さんの執念だったのかもしれない。
面白く聞かせてもらったよ先生。
母さん少し早いけど仕度を始めたら?あとは僕が代わってお相手するよ。
だけど随分勝手な推理ですね。
それ誰も信じないよ。
はあ…。
認めたわね。
警察に出頭してすべてを話すのよ。
それはできない。
僕にはコンクールがある。
コンクールに出て優勝しなくちゃいけない。
それにはあんたが邪魔なんだ。
僕を裏切った光一と同じように罰を与え始末してやる。
何が罰よ!何が始末よ!僕に逆らっちゃいけない。
僕は天才なんだ。
光一にはそれがわからなかったんだな。
真弓も。
(俊作)2人共僕が真弓の事好きなの知ってて結婚する予定を立てていた。
だけど僕は素知らぬ顔して言ってやった。
はい。
恋人の隣にどうぞ。
そして表面では2人の結婚を祝福する態度を取ってやった。
でも…。

(花瓶が割れる音)あなた悪魔よ。
人間の皮を被った狼!そしてその罪も全部塚田光一に着せようとして。
ああ僕は法医学の本を読むのが大好きでね。
ピアノの練習に疲れるといつも読んで楽しんでた。
それで…!?だから真弓をチェロのケースに詰め込んで家へ運び圧迫痕が付いたところでドラムのケースに詰め替えた。
音大を通るバスだから誰も不審には思わない。
大変だったよ。
始発の停留所からバスに乗って次の停留所で降りバイクで先回りして…。
途中で乗ってくるはずの光一が本当にあのバスに乗ってくるかどうか確認するまではドキドキだった。
そしてバスを爆発させた。
(爆発音)光一!!ダメ!!逃げるのよ!
(爆発音)一番苦労したのは空のチェロのケースを時間を指定して家まで届けてくれと頼んだ時さ。
あいつ馬鹿正直というか真弓を取っちまったっていう負い目でも感じてるんだろうな。
疑わずすんなり受けてくれたよ。
はあ…。
こんな事が許されると思ってんの!あなたの卑劣な犯罪計画のために何人もの罪のない人が犠牲になったのよ。
聞いただろあんたも僕のピアノを。
僕は神から選ばれた天才なんだよ。
その天才が生きるためだったらそんなちっぽけな命いくら消えても構わないんだよ。
そんなふざけた事言わないで!そんな事が許されると思ってるの!いいからあんたも死ねばいいんだよ。
はっ!あっあっああー!俊作!やっやめなさい!離してよお母さん。
コンクールで優勝する僕が見たいんでしょ!僕はあの時母さんがとっさの判断で悲鳴を上げてくれた時母さんの気持ちがうれしかった。
そして逃げる母さんを追いかけながらありがとうって涙が込み上げてきたんだ。
だから見せてあげるよ。
優勝する僕の姿見せてあげるから!ダメよ!だあーっ!
(刺す音)あっああ…。
母さん…。
令子さん。
先生逃げて。
逃げて早く!どいて…!
(ナイフが落ちる音)早紀!令子さん…令子さん。
あなた救急車大至急!わかった。
令子さんしっかりして。
すぐに救急車が来るから。
ねえ。
先生の言ったとおり。
美しい音楽は美しい心の人間にしか奏でられない。
しゃべらないで。
すぐに救急車が来るから。
私ね俊作が犯人だとわかった時久美子に申し訳ない事したってそう思いました。
もちろん光一君にも真弓さんにもそして他の皆さんにもね。
わかった。
わかったからもうしゃべらないで。
だけどそう思いながらも私…私俊作を選んでしまった。
自分の夢を叶えたい。
どうしてもコンクールに行かせたい…。
バカね私…。
令子さん…。
私には音楽を奏でる資格なんてない…。
罪を償ってもう一度…。
もう一度心から…美しい音楽を…。
令子さん!令子さん!令子さん…。

(パトカーのサイレン)令子!?成宮俊作は母親の死を見ても何も言わずショパンを口ずさんでいました。
令子さんは罪を償って心から美しい音楽を奏でたいと言ってました。
私の中にはこの20年間彼女の右手を傷つけてしまった後悔だけがあった。
その事が検事として真実を見抜く目をなくしてしまった。
彼女の夢を叶えてやりたい。
そういう思いで私は…私は…。
最低だ…。
検事として。
そう…。
日下部検事検察庁辞めたの。
ああ。
しばらく何もしないで人生考えたいって。
うん…。
結局人間才能だけじゃないのよね。
才能に目がくらんで成宮俊作をあんなゆがんだ人間に育ててしまったのよね。
ああ…。
まあ一応これで俺もおとがめなしだ。
ローンも払えるし…。
ほっとしたか?うんほっとした。
だってさやっと手に入れた念願のマイホームじゃない。
すぐ売りに出さなきゃいけないのかって内心ハラハラしてたの。
ああそうか。
うん。
あれっ!?うん?何だそれ葉っぱばっかりで花がついてないじゃないか?そうそうそう…。
今度ねいつまたこんな事になるかわからないから少しでも野菜を植えて生活の足しにしようと思って…。
これがさナスでしょ。
それでトマトにこれはシシトウ。
あなたが好きだから。
ははは…。
それじゃお前自給自足じゃないか。
そうそうそう…。
ねえお母さん。
七海叔母さんもう帰るって。
(一馬・早紀)ええっ!?あれっ?どうして?事件もひと段落したんでこれから叔母様にはうんとサービスしようと思ってたんですよ。
そんな事言ったって芙佐江姉さんに渡す通信簿ふふふ…上がんないわよ。
通信簿って…?私の?そんなもんつけてらしたんですか?まあね。
栄養管理が4。
年上の人間への労わり方が5。
ああよかった!ほとんどオール5ですわね。
あはははは…。
ご冗談でしょ。
10点法よ。
じゃあこれね。
はい。
ああ…。
じゃあ…。
憎たらしい。
うん?くぅーっ!何なに?「夫への労わり2」はあーっ!ははは…。
2だってよ。
イタッ!何バカ面してんのよ!こういう時こそ私の味方をしなかったらローン一人で払わせるわよ。
必然的にお小遣いはゼロ!ええっ…!?あっ叔母さん叔母さん!ねえちょっちょっと待った…!2016/01/23(土) 12:00〜14:25
ABCテレビ1
法医学教室の事件ファイル23[再][字]

バス大爆破心中!!恋人の死体が、自分でバスに乗った!?疑惑の検事と女医の対決…二つの電流痕の謎!!

詳細情報
◇番組内容
バス大爆破心中!!恋人の死体が、自分でバスに乗った!?疑惑の検事と女医の対決…二つの電流痕の謎!!人気シリーズ第23弾!!新たな登場人物、一馬の叔母に由紀さおり。名取・宅麻を相手に丁々発止とイビリまくる!
◇出演者
名取裕子、宅麻伸、由紀さおり、坂口良子、西岡徳馬、沢田亜矢子、五十嵐めぐみ、佐野和真、載寧龍二、池田良

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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