日経スペシャル 夢織人 〜小さなトップ企業〜 2016.01.23


広島・呉市の海軍工しょうで造られた軍艦です
当時ドックの周りには数多くの部品工場が集まっていました
その工場を陰で支えた道具がありました
呉市仁方地区のヤスリです
最盛期には全国のヤスリの95%がここ仁方で作られていました
ヤスリの命が「目」と言われる部分
一つ一つが刃物になっていてこの目で金属や木を削ります
削るものによって目の形や大きさはさまざまです
ヤスリ職人のすごさをちょっとのぞいてみましょう
刃の角度を調整しながら150ミクロンの幅で目を切っています
顕微鏡でのぞいてみると…
うわぁー!すっごい整ってますね
肉眼でわからないほど精巧な技です!
この技を求めているのがノコギリの目立て職人修理屋さんです
吉田さんの元には全国からノコギリの名品が集まってきます
宮大工などプロが求める切れ味を復活させるのです
ところが吉田さん愛用のヤスリが手に入らなくなります
この20日で廃業ですわもう…仕事したって売れへんのや
ヤスリを使い切ったら吉田さんも廃業です
高度成長期およそ120社あった仁方のヤスリメーカーは今4分の1に減っています
100年以上続いているヤスリの草分け「ワタオカ」も廃業の危機に苦しんでいました
これだけ売り上げが落ちたらね…
安い輸入品やグラインダーの登場で国産ヤスリの需要が大きく落ち込んだのが原因です
先人が築いたたくみの技をつなげたい!
女性社長と娘の挑戦が始まっていました!
母の情熱に動かされ娘も協力してあるものを削るヤスリを考えました
これはまあ…アイスクリームをすくうやつみたい持ちやすい…あっそうですか
起死回生の新製品となるのでしょうか?
そんな崖っぷちのヤスリメーカーを広島で活躍するイラストレーターが訪れます
何でもできないといけないですね総力戦というかそうですね
伝統の技術をつなぐため難しい職人仕事にも挑戦する女性たちの奮闘ぶりを取材し番組の最後に作品で表現します
どんな作品が出来上がるのでしょうか?
企業でさまざまな夢を抱き働く人々
それぞれの夢を重ね織り合わせて作られる企業の物語に気鋭のクリエーターが迫ります
女性たちが考えたヤスリの新製品
こだわり雑貨を扱う大阪の店で売られていました
新製品は伝統の技を駆使した高級爪やすり
握りやすい斬新なフォルム
ヤスリの目が3方向から細かく切ってあります
そのためどの方向からでもスムーズに削れなめらかに仕上がります
うんちくが語れる商品ですのでこういうこだわりでこうなんだよって言うとまあその後の話題にもなりますしいい商品だと思います
高級爪やすりを作ったのは…
創業100年を超える「ワタオカ」です
こだわりは大工道具の刃の修理に使われる目の細かい「和ヤスリ」を作り続けてきたことです
ワタオカを訪ねて仁方駅に降り立ったのは地元・広島のイラストレーターです
仁方ははじめてですヤスリのほとんどが呉で作られてるっていうことは全然知らなかったです
社長が出迎えてくれました
(社長)おはようございますおはようございます本日はありがとうございますようこそ池田さん前に一度孫描いて頂いてみたいですね〜!ご縁があったんですね
実は池田さんは社長の孫瑞月ちゃんの似顔絵を描いていたんです
似顔絵から地元企業の広告さらに漫画も発表している池田さん
「人の心を豊かにする」をモットーに広島で活動しています
まずヤスリの街仁方を車で案内してもらいました
昔はここの辺海だったんですけどヤスリ団地がね昭和46〜7年にできたんかな?へぇ〜
(社長)この筋がずっとヤスリ屋さんとか鉄鋼所で…
(池田さん)壺玉ヤスリさん壺正さんみんな「壺」がつく壺若さんはい
ヤスリメーカーの社名やマークにはほとんど「壺」が入っています
ヤスリ作りで重要な「みそ」を壺に入れていたのがその由来なんですって
仁方は現在深刻な問題に直面していました
廃業する会社が増えているのです
もうこのへんも廃業とかね…
ヤスリにかわるグラインダーの登場や安い輸入品に押されてヤスリの出荷が年々減り続けているのです
和ヤスリの技を守るワタオカも同じ悩みを抱えていました
こんにちはお世話になります
(池田さん)池田と申します
事務所には女性ばかり社長の妹・道子さんに社長の娘・美幸さんです
(池田さん)4人で!?
まず池田さん新製品の爪やすりを体験します
(社長)直線で武骨な形のヤスリ多いですけどこれはまぁ…アイスクリームをすくうやつみたい
(社長)あっそうですかね?
(池田さん)あっ本当だすごい気持ちいいです
次に工場を見せてもらいます
(池田さん)こんにちはこんにちはうちの職人さんで吉原さんってもうオールマイティーの職人さんなんですけども
(池田さん)よろしくお願いします池田ですカッコイイですね職人って感じで
伝統の和ヤスリは表面の不純物を削り取り目を切る前の下準備をします
これはヤスリの目を切る刃物・タガネです
ヤスリの種類や大きさによってタガネの取り付け角度を微妙に調整します
(社長)こういうふうに…
いちばん目の細かいヤスリで…
この精度がヤスリのよしあしを決めるだけに熟練の技が求められるのです
吉原さんは15歳の時ワタオカに入社
その後引退しましたが4年前社長から頼まれて和ヤスリの技を絶やしたくないと復帰
和ヤスリの伝統をつなぐため女性たちの職人修業も始まりました
いえそれこそつい最近ですねつい最近!?もう何でもできないといけないですね総力戦というかそうですね
社長みずからタガネの研ぎ方を教わっています
あぁやっぱり片寄っとるんやねうん今までずっとすごいやってこられたのに…やっぱりね…だからそれをどう引き継ぐかというところと…たぶん私の仕事かもしれません
先代の父が亡くなったあと…
このときすでに仁方のヤスリを取り巻く環境は厳しかったと専門家は言います
やはり仁方ではヤスリだけではだめだいうことで多角化を考えたりですね合わせて脱ヤスリということで昭和56年58年…3社ほどがダイヤモンド工具の製造販売を始めたといういきさつもありますね
ノコギリも替え刃式が主流となり和ヤスリを買ってくれていた目立て職人もだんだん姿を消していきます
なんでそのヤスリを作るのをやめなかったんですか?あのう…父が亡くなる頃にもうこれ…これだけ売り上げが落ちたらねもうヤスリはもう世の中に必要とされんのじゃないか
100年続いた家業が本当に必要のないものか?
久美子社長はヤスリのこと綿岡家のことを知りたくなりました
過去帳や戸籍の写しを調べて家系図を作ったのです
すると発見がありました!
(久美子さん)この人ね嘉作さんって1800年に生まれて65年くらいに亡くなってるんですけどこれって幕末なんですよでねたぶんこの人30代ぐらいのときから刀鍛冶もしながら綿花も扱ってて
綿岡家の先祖は刀鍛冶だったのです!そして…
(久美子さん)この人の次男・友平さんてこの人が大阪に行って技術を持って帰ったっていう説もあります刃物作りの技術と大阪で学んできた大工道具のヤスリの技術がたぶんそこで合わさって一致したこれからはヤスリだ!みたいな
江戸時代刀鍛冶だった嘉作の次男友平の子孫は明治に入って「ツボ万」「ツボサン」といったヤスリメーカーを立ち上げました
一方嘉作の長男・好平の息子栄次郎はワタオカを創業します
20世紀初頭日本は富国強兵に伴う産業革命が起きまさに「鉄の時代」を迎えます
ワタオカは刀からヤスリに切り替えた事で時代の波に乗り和ヤスリの技法は…
そして4代目久美子社長へと受け継がれていったのです
今これ友平さんから出てきてツボ万っていう大きな会社でここは仁方のヤスリ作りのいちばん原点というか原材料も含めて大きな仕事をされて今現在はダイヤモンドのヤスリに変わってますそれでもうひとつここから派生したツボサンっていうのがいちばん大きなメーカーとして残ってますけどもここは目立てのヤスリは作ってませんなのでその…
50年前にワタオカが作った「白鮫」
ワタオカ自慢の…
例えばね…
「私の代でこの技術を終わらせてはいけない」
久美子社長は雑貨店をしていた娘にヤスリづくりを手伝ってほしいと訴えます
ちょっとまあ親戚の人から…こうやって見たんですね?そうですそうです…
(池田さん)鮫だとうんわかったというか
どれだけスゴイ技術なのか…
池田さんに実際に見てもらうことにしました
失礼しまーすこんにちは表面を拡大してちょっとずつ焦点をずらすことによって3Dに見えるようにしてる3Dに…
白鮫の表面を顕微鏡で見せてもらいます
(大石さん)これがまあ今表面のそのままの画像で
(大石さん)そうですね
(大石さん)そりゃあ細かいですよ
(池田さん)細かい
(池田さん)これでもいいですねおおっ!と思いますねそりゃあ感動しますよねうんびっくりしたなんかすごいことになっとるよって
次に白鮫の目切りを取り入れた新製品の爪やすりも見せてもらいます
うわ〜!
(美幸さん)すごいねぇねぇ!四角が同じ大きさになってるし…ヤスリのことをもっと
白鮫のすごさを目の当たりにして母の気持ちが分かった美幸さん
消費者に和ヤスリを身近に感じてもらおうと爪やすりの販売に力を注ぎ始めます
来る日も来る日も売り込みです
その熱意が通じて爪やすりがオンラインショップに採用されました
でもそのあとに…
右肩下がりの業績にもようやく歯止めがかかりました
「これでお母さんを助けられる」美幸さんは次の試作に取り掛かりました
はい巻き爪にすごい進化しながら昔の技術はそのまま受け継ぎながら
ヤスリに向ける母と娘の情熱を池田さんはどう表現するのでしょうか?
そういう意味を込めて作ろうと思います
絵巻物はまもなく完成です
和ヤスリの伝統を受け継ぐ100年企業を絵巻物で表現したというイラストレーターの池田奈都子さん
お疲れさまです
(スタッフ)できましたか?できました!はい
(スタッフ)それですか?こんにちはいらっしゃいませようこそきのうはありがとうございましたこちらこそありがとうございました一つすごいキーワードが思い浮かんだんですけど「つながり」っていうのをすごく感じましたそれは家系図を見せてもらってモノづくりのDNAがご先祖さまからずっとつながってるっていうつながりと4人が力を合わせて頑張っていらっしゃるっていう4人の強いきずなっていうかつながりとすばらしい昔からの技術を未来につなげたいっていうそういうつながりっていうのをキーワードにすごく感じたのでそれを巻物にして表してみました
「綿岡鑢漫画絵巻物」ワタオカのきずながテーマです
じゃあ皆さんおっ!え〜!わぁすごーいうわ〜すごい!
幕末に生きた先人から和ヤスリの伝統を未来へつなぐワタオカの歩みがいきいきと描かれています
旅姿でそうだそうだ!きっとこうだったんだろうなっていうのを想像して
ヤスリの技術を仁方に持ち帰ったのが友平さん
このへんで吉原少年が吉原さんが15歳の時に信次郎さんにしごかれたっていうのを聞いたんでちゃんとこれを入れて久美子さんが社長になってから大変なことがあったんだけど…
(社長)本当だ…
(池田さん)やっぱり両刃ヤスリのすばらしい技術を絶やしてはいけないってことで平成に株式会社ワタオカになって美幸さんが白鮫を見て衝撃を受けてそして新商品を開発して次の代につながっていってるそれを助ける15歳だった吉原さんが出てきていいことをおっしゃられた…道子さんも支えて猫ちゃんもいて社長が頑張っていこうっていうそうか!あぁ〜!ありがとうございます!こんなふうにまとめてもらえるってビックリですね本当にもうダメだとか苦しいと思った時にクルクルっとこれを見てよしダメだ頑張らなきゃって思ってもらえたらなと思いますこのつながりっていうことばは昨今そういった話も多いですけど縦糸と横糸とか斜めとかいろいろつながりが今やっと形になったのでその分もまたよけいにうれしいですねありがとうございます
伝統のヤスリを守るワタオカの物語が未来へ続いていきますように
旬の小鉢が大好きな豆助
2016/01/23(土) 12:30〜13:00
テレビ大阪1
日経スペシャル 夢織人 〜小さなトップ企業〜[字]

「白鮫の技を後世に繋げ!呉のヤスリメーカーの挑戦」母から娘へ涙の継承、4代続いた伝統のヤスリを守れ!高級爪ヤスリ、かかとヤスリ誕生秘話▽語り キムラ緑子

詳細情報
番組内容
「このままでは匠の技がなくなってしまう!」立ち上がった呉の肝っ玉かあさん▽戦艦大和製造を支えた陰の立役者、仁方ヤスリ▽顕微鏡で見ないとわからない職人技に驚愕▽宮大工ご熱望するヤスリ製造の技術がピンチ▽絵描屋池田奈都子が渾身の絵巻物を!
出演者
ナレーション キムラ緑子

絵描屋(イラストレーター)池田奈都子
音楽
「Cheer Up!」(作詞・作曲)田中雄也
制作
【製作】テレビ大阪 BSジャパン 日経映像
ホームページ
www.tv−osaka.co.jp

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ニュース/報道 – 経済・市況

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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