小さな旅「山里に水音響いて〜埼玉県 東秩父村〜」 2016.01.23


(テーマ音楽)
秩父山地の山懐に抱かれた埼玉県東秩父村
およそ3,000人が暮らしています
山あいを縫うように流れる槻川。
清らかな水をいつもたたえています
冬枯れの山里を訪ねました
ああ気持ちがいいなこういうとこはね。
こんにちは。
こんにちは。
何なさってるんですか?これはねカズを切ってるんですけどね。
今は楮って言うんですけどね。
紙の元の木なんですけどね。
今収穫してるところなんです。
あっ楮。
そうです。
根元から多くの枝をスッと伸ばしている楮。
和紙の原料となります
気温が下がり木の成長が止まるこの時期に収穫されます
東秩父村ではおよそ1,300年前から和紙作りが盛んに行われてきました
伝統の技を継ぐ工房がありました
こんにちは。
ごめんください。
失礼します。
工房の主…
70年近く紙作りを続けてきました
こうしてくんで動かすのを縦揺すりって言うんですけどこっちが横揺すりって言うんです。
両方に絡んでないと紙が強くないわけですよね。
縦に揺すって横に揺すってこう揺すりながらこの楮の繊維をこういうふうに重ねるわけだ。
楮の繊維を溶かした水を簀桁と呼ばれる道具ですくい繊維をよく絡ませます
この地域で昔ながらの手作業で作られる和紙は「細川紙」と言います
細川紙を漉く技術はおととしユネスコの無形文化遺産に登録されました
この風合いがいいな。
ねえ絹のよう。
よく言いますよね。
和紙ってこういうんですかって知らない人。
繊維がしっかり絡み合った細川紙。
丈夫で艶やかな光沢があるのが特徴です
障子や便箋かつては商家の大福帳などにも使われました
和紙作りの魅力って何ですか?最初っから最後まで手作りっつうところかね。
それと奥は深いんですよね。
いくらやってもこれでいいっつうのないっつうんか。
自分でそれ満足しちゃった時は終わりだと思うんで。
まだまだと思って。
こんにちは。
ご無沙汰してます。
どうも。
(鷹野)しばらくでございます。
鷹野さんを訪ねてきた人がいました
東京・葛飾で染め物の工房を営む小宮康正さんと息子の康義さんです
こんな感じです。
小宮さんが手がけるのは細やかな模様が特徴の江戸小紋
その型紙に使っているのが細川紙です
型紙は柿渋で張り合わせた和紙を彫刻刀で彫って作ります。
江戸小紋の細かい模様を表現するには薄くて丈夫な細川紙が欠かせないと言います
江戸小紋の中で和紙っていうのは本当に切って切れない存在なんですね。
これは要するにもう和紙を除いて他のものがあるかっていったらないんですね。
ですからその和紙というのは絶対必要なものですね。
鷹野さんの工房には和紙作りを学んでいる女性たちがいます。
その一人小山妙子さんです
京都にある伝統工芸の専門学校で手漉き和紙と出会い6年前からこの工房で働いています
今は原料の仕込みが主な仕事。
冷たい水に浸した楮の皮をきれいに洗い流します
別に苦ではないです。
大部分を手作業でっていうのは手漉きのよさでもあるのかなって思いますし。
洗った楮から紙となる繊維の部分だけを取り出していきます。
楮の皮を煮て不純物を取り除きます。
よく煮ないときれいな繊維になりません
煮続ける事4時間
いい調子やんね。
じゃあこれで蒸らしといて下さい。
きれいに仕上がっていました
(鷹野)じゃあお願い。
(鷹野)8もんめぐらいで漉く感じでいいんかね。
工房で働くようになって6年になる小山さん。
大きな簀桁での紙漉きはほとんど経験した事がありません
縦横に自在に繊維を絡ませる鷹野さん。
その技をなんとか身につけたい。
小山さんの思いです
(小山)きれいな紙が漉きたいですね。
繊維が均等で何かこうバッと透かした時にあ〜きれいだなって自分でも思っちゃうような紙が漉いてみたいですね。
夜仕事を終えた小山さん。
向かったのは村の文化財が保管されている倉庫です
細川紙の歴史を伝える品々。
楮の皮をはぐ道具や簾桁漉き上がった和紙などが収められています
小山さんが心引かれるのは昔作られた紙
村の代々の名人たちが最高の原料と技で漉き上げてきたものです
手に取っていいですよ。
いいんですか?ええ。
そのために保存してるんで。
そうかそうか。
紙の光沢手触り重さ。
それを生み出す繊維の微妙な絡み方を確かめていきます
すごいとしか言えないですけど。
昔のすごいすてきな紙を見るとちょっとまだまだもっとこう一つ一つ…集中してやんないといけないなと感じます。
これぐらいの紙が漉けたらすごいいいだろうなって思います。
紙漉きへの夢が広がります
山の中腹に村の男たちが集まっていました
こんにちは。
どうも。
何をしてるんですか?これは。
きれいだね。
これ今皮むきしてるんですよ。
ああこれはあれだね。
楮の…。
楮ね皮むきを。
やっていたのは楮の皮むき。
楮を栽培する農家の共同作業です
これ簡単にむけるんですか?そのまま引っ張ってもらえば。
あっほんとだ。
きれいだねこれ。
いいでしょ。
一皮むくときれいなんですよ。
古くから楮の栽培が盛んだった東秩父村。
しかし戦後和紙の需要が減り楮を作る人はいなくなりました
そこで立ち上がったのが地元の農家の人たち。
13年前和紙の文化をつないでいこうと楮の栽培を再開したのです
楮を入れた大きな釜に火をくべます。
勢いよく湯気が吹き上がっています
蒸気を出して。
こういう形で入ってる。
うわ〜すごいね。
これは縦に入れて…。
なるほど!
楮を蒸して皮をむきやすくしていたのです
和紙の里によみがえった冬の手仕事。
手間賃はほとんど出ません
ほぼ慈善事業。
1回宴会ができるかな?
(笑い声)お小遣い程度で。
1杯これで。
2杯目はないですよね。
失礼します。
こんにちは。
こんにちは。
作業が一段落したら昼御飯
家から持ち寄った手料理が並びます
ふるさとの伝統とともにある楽しみです
これがあるからやっぱりね皮むいても苦になんないかなって感じで。

この村ではあちこちで和紙を使った品々を見る事ができます
江戸の昔から続く和菓子屋では…
寄ってみましょう。
こんにちは。
いらっしゃいませ。
えっちょっとこれ…。
この…これ和紙じゃない?これもですね和紙一枚漉きの和紙です。
細川紙で出来た値札がありました
あとはですねあっこちらがですね和紙の…これ和紙で出来てるんですよ。
え〜っ。
和紙で?
和紙で作られた葉ぼたんや水仙。
村の女性たちのグループが作ったものです
形や質感色合いなどまるで本物。
一つ一つ丁寧に再現されています
村の集会所に女性たちが集まってきました
和紙の花作りの教室が開かれる日です
しっかり曲げてますね。
講師の新井マサさんです。
楮を栽培する農家に生まれた新井さん。
子供の頃から和紙が身近にありました
葉っぱはグリーンのワイヤー。
両面。
使っているのは細川紙です
繊維がよく絡み合った細川紙は切る折るなど細工をしやすいのが特徴です
質感を見事に再現する花作りは評判を呼び活動の輪は大きく広がっています
身近にあった細川紙。
新たな魅力の発見でした
すごく自然な感じに出来てすごく大好きです。
うちの中も和紙だらけです。
和紙の花だらけです。
いいよねこうやってね和紙がこういうきれいな花にできるっていうのはね。
顔に似てるでしょ?はははっ。
よく言うよって。
村の人たちに愛される和紙の花。
いつまでも咲き続けてほしいと新井さんは願っています
好きなんじゃないんですかね和紙を。
それで作れるっていう楽しみがみんなにもあるんじゃないかなと思いますね。
伝統的なものがこの村にあったっていう事でそれを使わせてもらえるっていう事もほんとにありがたいですねうれしいですね。
和紙の工房で小山妙子さんが紙を漉いていました
去年から少しずつ漉かせてもらえるようになりました
(鷹野)ここに入れて。
師匠の鷹野さんの傍らで桁を操ります
(小山)ああいうふうに漉けたらいいなと思いますね。
理想となる人がすぐ横で紙を漉いてるっていうのはとても恵まれた環境にあると思います。
続けたいですね。
どこまでもいけるものなら。
伝統を継ぐ水音の響きです

(テーマ音楽)
(テーマ音楽)2016/01/23(土) 05:15〜05:40
NHK総合1・神戸
小さな旅「山里に水音響いて〜埼玉県 東秩父村〜」[字]

1300年前から続く埼玉県東秩父村の手すき和紙。その技は1年前、ユネスコの無形文化遺産に登録された。熟練の職人、原料栽培に取り組む農家など伝統の和紙にふれる旅。

詳細情報
番組内容
外秩父山地に囲まれた埼玉県東秩父村。山間を流れる槻川の清流を利用して1300年前から作り続けられてきたのが、手すき和紙です。今も3軒の工房で和紙作りが行われています。伝統をつないできた熟練の職人とそのもとで技術を学ぶ若手。村の伝統を支えようと、和紙の原料・こうぞの栽培を復活させた農家たち。地元の女性たちは、和紙で花を作り伝統に彩りを添えています。村が大切に守りつなぐ手すき和紙にふれる旅です。
出演者
【語り】国井雅比古

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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