『え、趣味?んー、まぁ特にないけど…強いて言えばギターかな。実はバンドのリーダーしてんだよね。』
俺はこれまで、こんなセリフで数々の女性を騙してきた。
いや、ギターをやっていたのも、バンドのリーダーをしていたのも嘘ではない。
ギターは中学1年の頃からやっていたし、大学時代に男女5人でバンドを組んでリーダーにもなった。
しかし、…
…だがしかし……
…ギターやってたっていってもエレキじゃなくてアコギだしそれなのに「ギター弾けるよ」なんて迂闊に口にしたばっかりにバンド組むって話になったから慌ててイシバシ楽器行って5万くらいするエレキ買ったはいいものの全然使いこなせなくてドキドキしながら初の全体練習やってみたら結局メンバー誰も楽器使いこなせてなくてちょっぴり安心しながら「もうちょっと個人練習が必要だねーえへへへ」なんて言ったきりそのまま自然消滅したのである!!!
そして当初メンバーでひねりにひねって創り出したバンド名は、
『5人のストロベリー処刑者たち』。
完全に黒歴史である。
いやしかし自然消滅だからいつ消滅したかもよくわからないし、もしかしたらまだ消滅していないのかもしれない。5人のうち誰かしらは7年経った今もまだひっそりと個人練習をがんばっているのかもしれない。
だからおれはまだバンドマンを名乗っていいはずだ。女性にバンドマンアピールしても文句あるまい。
だがもう俺も28歳、アラサーだ。バンドマンぶってカッコよさげなのは大学2年生までだ。
だからもう、大事にしまっておいたエレキギターを黒歴史もろとも売り飛ばすことにした。
元々そこまで高価なものではないし、売れても大した額にはならないだろう。
でもいいんだ。きっと次にこのギターを手にした人が楽しい思い出に塗り替えてくれるはずだ。
黒歴史、そんなものはカネに変えてしまえばいい。
そのカネで新たな未来を切り拓いていけばいいんだ。
さようなら、俺のバンドマン人生。
さようなら、5人のストロベリー処刑者たち。