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【社会】

15年書籍、雑誌の販売額 過去最大の減少 前年比マイナス5.3%

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 二〇一五年の書籍と雑誌を合わせた紙の出版物の推定販売金額が前年比5・3%減の一兆五千二百二十億円と、統計が始まった一九五〇年以降で最大の落ち込みだったことが二十五日、出版科学研究所(東京)の調査で分かった。これまでの最大減は一四年の同4・5%減だったが、今回大きく上回った。前年割れは十一年連続。

 出版物の販売金額のピークだった九六年の二兆六千五百六十四億円と比べると、市場規模は十九年で六割弱まで縮小。「雑誌離れ」が顕著で、雑誌は前年比8・4%減の七千八百一億円。文芸書が健闘した書籍は同1・7%減の七千四百十九億円だった。

 出版科学研究所は「スマートフォンの普及で読書時間が短くなり、出版物の売り上げに影響した。雑誌は、若い世代向けの創刊や企画が乏しかった」と分析している。

 今回から電子出版の推計市場規模も公表。一五年の紙と電子を合わせた出版市場規模は、一兆六千七百二十二億円だった。

 出版物の多くは通常、売れ残れば書店が返品できる制度の下で流通しているが、返品率は書籍が37・2%、雑誌が41・8%で、需給バランスが崩れていることもあらためて明らかになった。

 雑誌は、週刊誌が前年比13・6%減と苦戦。宝島社の「宝島」や「CUTiE(キューティ)」、KADOKAWAの「歴史読本」など各ジャンルでの休刊も相次いだ。

 小幅の減少にとどまった書籍は、累計約二百五十万部に達したお笑い芸人又吉直樹さんの小説「火花」や西加奈子さんの「サラバ!」、東山彰良(あきら)さんの「流」など文学賞の受賞作を中心に文芸書が好調だった。文庫本の売り上げは低迷した。

 電子出版は千五百二億円で、紙の出版物の約一割の規模だった。漫画は、紙の本が二千百二十億円、電子コミックが千百四十九億円で、電子版が急速に伸びている。

◆「雑誌時代」の終わりか

 出版ニュース社代表の清田義昭さんの話 日本の出版界は、一九七〇年代後半から雑誌の売り上げが書籍を上回る「雑高書低」が続いていたが、雑誌の落ち込みで、現在はほぼ拮抗(きっこう)するようになった。雑誌を中心に出版界が回る時代は終わりつつあるのかもしれない。一方、雑誌は実験的な企画で新たな書き手を育ててきた面がある。雑誌が悪くなると、いずれ書籍も悪くなる。状況の改善が急務だ。

 

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