イタリア中部の都市フィレンツェ。
15世紀にルネサンス芸術が花開いたこの町はレオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロが活躍した美の都です。
フィレンツェ市庁舎の前にあるシニョリーア広場です。
多くの彫像が立ち並ぶこの広場ではルネサンスのころからさまざまな行事が行われてきました。
1,504年町のシンボルとしてこの広場に設置された「ダヴィデ像」。
今はレプリカが置かれています。
この彫刻の制作者はルネサンスの巨匠ミケランジェロです。
現在その原作は町の北東部にあるアカデミア美術館で見る事ができます。
ガラス張りのドームの下に悠然と立つダヴィデ像。
高さ4mを超えるこの像は世紀ほど前に広場からここへ移されました。
長く町の中に放置されていた巨大な大理石から若きミケランジェロが見事に彫り上げた作品です。
敵のゴリアテを倒した旧約聖書の英雄ダヴィデの若々しく力強い姿。
ルネサンスを象徴する大作です。
次は町の中心を流れるアルノ川を渡ってルネサンス初期の最も重要なフレスコ画を見に行きましょう。
サンタ・マリア・デル・カルミネ聖堂です。
祭壇画の右手にあるブランカッチ礼拝堂。
ここの内部装飾を担当したのが15世紀初めまさにルネサンスの訪れと共に登場した画家マザッチョです。
それ以前にはない人物の感覚や感情までも描き出したマザッチョの革新性を見る事ができます。
神との約束を破って楽園から追放されるアダムとイブの物語。
悲しみのあまり両手で顔を覆うアダム。
イブは天を仰ぎ嘆きをあらわにしています。
「貢の銭」にはもう1つのマザッチョの挑戦が見られます。
描かれているのは税を求められるキリストとペテロの行。
湖に行って魚の口から銀貨を取り出すようにキリストが命じその銀貨でペテロが税理士に税を払うという話が展開されています。
当時発明されたばかりの遠近法を用いて生み出された奥行きを感じさせる空間。
マザッチョは中世の絵画には見られなかった現実的な空間を画面に作り出したのです。
芸術の町フィレンツェは13世紀に毛織物工業で成功した市民によって築かれヨーロッパの都市国家として繁栄を誇っていました。
そうした中自由な考え方や芸術を支える豊かな土壌がはぐくまれルネサンスという芸術文化が花開いたのです。
フィレンツェのシンボル大聖堂の前にたたずむ八角形の建物。
サン・ジョヴァンニ洗礼堂です。
美しいロマネスク様式のこの建物はフィレンツェで最も古いものです。
ミケランジェロが「天国の門」と絶賛した事からその名で呼ばれるようになった黄金の扉。
画面には旧約聖書から選んだ塔の主題がそれぞれに浮き彫りで表現されています。
制作当時この装飾を誰に任せるか自由都市国家フィレンツェらしい般公募による史上初のコンクールが行われました。
その時の応募作品が市庁舎の裏手にあるバルジェロ美術館で今も大切に保管されています。
最終審査に残ったギベルティとブルネルスキの作品です。
主題は「イサクの犠牲」。
信仰心を試されたアブラハムが人息子イサクの命を捧げよと神に命じられ今まさに息子にナイフを突きつける場面。
それぞれの個性と技術がぶつかり合った力作は甲乙つけがたく結局グランプリは2人となりました。
しかしその結果に満足しなかったブルネルスキは制作を辞退。
扉の装飾はギベルティ1人に任されました。
方ブルネルスキは後に建築家に転身し当時誰もが不可能だと考えていた大聖堂の巨大な円天井に着手します。
高さ100mを超えるこの雄大な大聖堂は完成当時世界高い建造物でありブルネルスキの熱い思いがここに込められています。
建物の外壁に取り付けられたタベルナーコロ。
屋外の祭壇画です。
フィレンツェの町を歩くとあちらこちらでこのような祭壇画を見る事ができます。
町の北部にあるサン・マルコ修道院です。
心洗われるような静かなたたずまい。
この修道院では画僧フラ・アンジェリコの作品を見る事ができます。
修道士が祈りを捧げる小さな僧坊に描かれた質素な壁画。
神を謹んだドミニコ会の精神を受けフラ・アンジェリコが描いたキリストの生涯です。
2階への階段を上がったところにはその代表作「受胎告知」があります。
天使がマリアに神の子を宿した事を告げる場面。
美しく彩られた天使の羽。
神の言葉を厳かに受け入れるマリア。
神聖な空気に包まれて時が止まったかのような画面です。
深い信仰心に満ちたフラ・アンジェリコの祈りの世界が伝わってきます。
15世紀から300年にわたりフィレンツェを支配したメディチ家の別荘が町の郊外にあります。
カレッジのヴィラ・メディチ。
ここは当代きっての文学者や芸術家が集い日夜哲学談義が交わされる社交の場でした。
ボッティチェリの「東方三博士の礼拝」。
15世紀末当主となったロレンツォ豪華王にかわいがられた画家ボッティチェリはメディチ家のために多くの作品を描きました。
キリスト誕生のエピソードを示したこの作品には多くの人物が描かれさながらメディチ家が主催していたサロンの様子を呈しています。
横を向く黒髪の男性はそのロレンツォ豪華王。
画面右端でこちらに視線を投げかけているのが画家ボッティチェリ自身だといわれています。
新しい考えや感性が生み出されたメディチ家の別荘はルネサンス文化の発信地でした。
そうした文化的な雰囲気の中でボッティチェリも傑作を生み出します。
神話の世界を基に描かれた「春
(プリマヴェーラ)」です。
中央に立つのが愛と美の女神ヴィーナス。
画面の右手番端には西風の神ゼフュロス。
その求愛を受けた森の妖精クロリスが花の女神フローラに変身するという物語が展開されています。
左手の3人の乙女は愛と貞節美を表す三美神。
「春」はさまざまな寓意を登場人物や花に込め愛と美の世界を描いたルネサンス芸術の大作です。
ボッティチェリの名作を含めイタリア・ルネサンスの膨大なコレクションを誇るのがアルノ川のほとりに建つウフィツィ美術館です。
美術館入り口にはいつも入場を待つ人の長蛇の列ができています。
早速ここで見られる名画をご案内しましょう。
まずは「春」と並び称されるボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」です。
先程の作品が地上のヴィーナスであるならこちらは海の泡から生まれた天上のヴィーナス。
髪を風になびかせたおやかにたたずむギリシャ神話の女神です。
バラの花をまきながら風を送る西風の神ゼフュロスと花の女神フローラ。
時のニンフホーラが布を広げてヴィーナスを待ち構えています。
甘美な表情のヴィーナス。
当時の人々の古代への強いあこがれを示す華やかな大作です。
隣の部屋には天才画家レオナルド・ダ・ヴィンチの作品が展示されています。
まだ修業中に師匠ヴェロッキオとレオナルドが共同で描いた「キリストの洗礼」。
師匠の手によるものは中央のキリストと洗礼者ヨハネ。
レオナルドは深い精神性をたたえたまなざしの天使を左端に描きました。
ヴェロッキオは弟子が描いたこの天使を見てこれ以上のものは描けないと言い絵筆を折ったと伝えられています。
レオナルドが二十歳のころの作品「受胎告知」です。
天使の言葉に耳を傾けるマリアのりんとしたたたずまい。
その表情には気高さがあふれています。
はるか遠くまで広がる神秘的な風景。
画家であり科学者でもあった万能の天才レオナルド・ダ・ヴィンチの比類なき才能が遺憾なく発揮された作品です。
フィレンツェの町のいたるところで目にする丸い玉をあしらった紋章。
ルネサンス文化の最大のひご者となったメディチ家の紋章です。
そのメディチ家の礼拝堂が町の中心近くにあります。
ここでもミケランジェロの有名な彫刻作品に会う事ができます。
1,520年ミケランジェロはロレンツォ豪華王の息子ジュリアーノと孫ロレンツォの墓碑を依頼されました。
ミケランジェロは実際の2人に似せて像を作るのではなく2人の短い人生を悼む気持を込めた男女の像を作りました。
墓碑という存在を超え人間の尊厳をも表現したミケランジェロの独創的で力強い作品です。
最後にレオナルドやミケランジェロに学び自らもフィレンツェで偉大な画家となったラファエロの作品を見に行きましょう。
アルノ川の南にあるピッティ宮殿。
メディチ家のライバルであったピッティ家がより大きな宮殿をと命じて建てさせたためそのスケールや壮麗さは格別です。
ラファエロの傑作を同に集めているのがこの宮殿内にあるパラティーナ美術館。
装飾品のようにきらびやかに飾られた絵画。
ここにラファエロの傑作「小椅子の聖母」があります。
我が子を抱きしめるように身をかがめるマリア。
母親の愛情に包まれて屈託のない表情のイエス。
優れた人物表現と調和のとれた構図によってラファエロが生み出した永遠の名作です。
同じ部屋にあるもう1つの聖母子像。
暗い背景の中から浮かび上がるマリアとイエスは優美な雰囲気をたたえています。
穏やかさと気品にあふれた作品で知られるラファエロはこうした聖母子像でルネサンスの巨匠へと成長しました。
16世紀後半メディチ家の衰退と共にルネサンス文化も幕を閉じます。
およそ200年の間に多彩な才能が織り成した人類の遺産。
長い時を経た今でもこの町には豊かなルネサンスの芸術が輝き続けています。
〜2016/01/22(金) 13:05〜13:30
NHK総合1・神戸
美の都 フィレンツェ[字]
【語り】比留木剛史
詳細情報
番組内容
【語り】比留木剛史
出演者
【出演】【語り】比留木剛史
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
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