木曜時代劇 ちかえもん(2)「厄介(やっかい)者初、井守黒焼」 2016.01.21


(万吉)・「おやおやおやおや親不孝の不孝糖」ほい!・「親を泣かせてやろうとて」・「拵え始めの不孝糖」・「おいしいで売ったろか」・「一ぺん食うたら」ちかえもん。
(門左衛門)えっ?あんたも歌いなはれな。
断る!何で?わしを誰や思てんねん。
近松門左衛門やぞ。
まあまあ知ってる人は知ってる浄瑠璃作者や。
何でこないな道の真ん中でしょうもない歌歌わなあかんねん。
田んぼの真ん中で歌うたかてタニシにしか売れまへんがな。
買うかタニシが!ほら行きまっせ。
・「不孝糖不孝糖」・「おやおやおやおや」・「親不孝の不孝糖」
(小声で)・「親不孝の不孝糖」ほい!・「親を泣かせてやろうとて」うるさいな。
・「拵え始めの」
(2人)・「不孝糖」はい。
・「おいしいで」はい。
・「売ったろか」・「一ぺん食うたらやめられへん」・「それ不孝糖不孝糖」
(2人)・「おやおやおやおや」すんまへん。
・「親不孝の不孝糖」ぎょうさん売れ残ってしもた〜!ちかえもん。
こないな事では立派な不孝糖売りになれまへんで。
なりたないねんそんなもん。
ほんま何やらしてもあきまへんな。
何やと!?
(喜里)もっと言ってやってちょうだい。
万吉殿。
母上!まこと取り柄がないのですから。
と…取り柄がないて…。
母上は私を浄瑠璃作者としても一人前でないとそない言いますのんか?まるで書いておらぬ者が何故一人前の浄瑠璃作者です?う…。
50にもなって母に世話をかけて。
いい加減後添えでももろうたらどうじゃ。
おかあはん。
そらむちゃでっせ。
誰がすき好んでこんな行き詰まったにんじょうぎょうるり書きの嫁はんになりまんねん。
人形浄瑠璃や!大体何でお前がここにいてんねん。
おかあはんが晩飯食うていけ言うてくれたさかい。
なあ?母上。
をさばける人に悪い人はいません。
籠絡され過ぎでしょう!万吉殿。
へえ。
この不孝糖味の工夫をしてはいかがです?ん?味でっか?うん。
何かもの足りないように思います。
ちょっと母上?はあ。
何が足りん思います?それが分からぬゆえ工夫がいるのですよ。
はあなるほど。
理屈でんな。
母上の忌み嫌う親不孝を勧める飴ですよ。
信盛。
万吉殿の商いの邪魔をしてはなりませぬよ。
・「悲しくて悲しくてとてもやりきれない」
・「このやるせないモヤモヤをだれかに告げようか」
いてんねんああいうやつが。
あほでお調子者でええ加減な事ば〜っかりしてるくせして人気者や。
わしが地道に身ぃ削って浄瑠璃書いてもだ〜れも褒めてくれへんのにやな…。
(お袖)そらしゃあない。
ん?きっとあんたは死ぬまで悩みも苦しみも尽きんで。
口の悪いおなごやなあ。
ただでさえお茶挽いてばっかりやのにこの上わしまで名指しせえへんようになったらどないすんねん。
ふん。
金のあれへんじじいがどないしてほかの妓名指しでけんねん。
…それもそやな。
得心すんのかい!…何や?帰る〜!金は払わん!
(吉兵衛)なんぞ粗相がおましたんやろか?大ありや!えっ!あのおなごに聞け!おい刀持ってこい!新入りの部屋や。
新入り?京の島原から新しい妓が来たんや。
(お玉)ちょいちょいちょい…!はい!はい!お初。
何しでかしよったんや。
(お初)何も。
何もせいで何で客が怒って帰るんや!
(お初)ほんまに何もせなんださかい怒りましたんやろ。
…すんまへんなあ女将さん。
わて今日は気ぃが乗りまへん。
か〜…。
こらどえらいおなごが来よったで。
(お鈴)万吉っつぁん。
ん?あんたお初の事知ってる?お初?
(お雛)新しく入った妓や。
これが愛想のあれへん妓でな。
ほう。
(お里)わてらがな声かけてもなにこりともせえへんねん。
わてらどころかそんなの客の前でも笑た事ないちゅう話や。
ああそらあかんな。
おなごは愛きょうや。
(3人)そやろ。
ああ。
そないな性根しとったらしまいには顔まで醜うゆがむで。
こないなふうにな。
(3人)いや〜!ハハハ…!お初にお目にかかります。
お初です〜。
ん〜ん〜。
お初見たらえらい事…あっ!お初…。
お初は初物が好きなのでございます〜。
(走り去る音)ん…?はあ…はあ…はあ…。
な〜んも思いつかんなあ…。
近松はん。
ほな行きまひょか。
こ…これは…。
(喜助)朝鮮人参でございます。
(2人)朝鮮人参!生を見るのは初めてだすか?そらもう…めったにお目にかかれるもんやおまへん。
(喜助)これを煎じたのがこちらでございます。
何やえらいもったいぶってまんな。
ありがたみが増しまっしゃろ。
どうぞ。
あ…。
近松さん。
滋養つけてせいだい筋書きに励んでや。
結局それかい…。
余計プレッシャーなんですけど…
(佐七)失礼致します。
若旦さんのお帰りでございます。
(忠右衛門)徳兵衛!
(ため息)若旦さん。
さあさあ…。
ふう〜!
(忠右衛門)どこぃ行てた?ええ?2晩も戻らんとどこぃ行てたんや!?若旦さん。
ご存じだすな?こちらが竹本座の義太夫さんと浄瑠璃作者の近松先生だす。
…ああ。
(忠右衛門)お前も知ってのとおりうちは竹本座の金主や。
浄瑠璃の一つも見て主君を敬う気持ちやら義理に堅い生きようやらを身につけい!あほらしい。
ええ大人がたかが人形芝居にようそこまで入れ込めまんな。
もうええ。
部屋に戻って謹慎しとれ!
絵に描いたようなどら息子。
大坂の言葉で言うところのあほボン。
あれでは何の参考にもなりまへん
平野屋はんが言うてはったとおり芝居で喜ばれんのは忠義の物語や。
例えばこの「出世景清」。
わしの書いた傑作。
これの前と後とでは浄瑠璃そのものの有り様が違うといわれる名作
何でや…何であのころみたいにさくさくと書けんのや…。
やっぱり年なんかな…
ちかえもん!うわっ!びっくりした!わい…病にかかったかも分かりまへん。
ああ…そらいかん。
どないしたんや?痛うて痛うてたまりまへんねん。
痛い?なんぞけったいなもんでも食たんと違うか?いや…いや…違いまんねん。
腹痛やおまへんねん。
胸が…!胸?胸がキュ〜ッとなって息が苦しおまんねん。
え〜っ…。
そのおなごを見てるだけで体が…もう熱うなって。
おなご?へえ。
お前それ…恋煩いや。
恋煩い?お前そのおなごにほれたんや。
え〜っ!大きな声を出すな。
これがおなごにほれるちゅうやつでっか?お前一体いくつやねん。
いくつに見える?もったいぶったおなごかお前は!しかもそのほんまに年知りたいおなごの隣の不細工なおなごか!よっしゃ決めた!わいはそのおなごを嫁はんにしま。
お前が嫁に欲しいちゅうたかてそのおなごが「うん」と言わなどないしようもあれへんがな。
なんぞおなごがほれるちゅう工夫教えておくんなはれな。
またややこしい事言いだしたで。
あ…さては知らんな?えっ?偉そうに物書きみたいなもんしてるくせ大して物知らんのやろ。
ほなこれはどや?一見栄二男三金四芸五精六おぼこ七ゼリフ八力九肝十評判。
何でんのその油虫のまじないみたいなもん。
何やねん油虫のまじないて。
よう聞け。
このうちどれか一つでも身に備わってればおなごができるちゅう10か条や。
はあ〜!しかしお前ときたら身なりは悪い顔も端正とは言えん。
金はない。
芸はない。
見てみい。
これでもう四まであかんわ。
五から先がおますがな。
ああ五精ちゅうてな精出して一生懸命こつこつ働くこっちゃ。
わい精出して働いてまっせ。
不孝糖売りてなしょうもない商い遊んでんのと一緒や。
失礼やな。
ほな六は何でんねん?六おぼこちゅうてなおぼこかったら年増がほれる。
ああこの度のおなごは年増やおまへんねん。
七ゼリフや。
おっ!それやったらわい得意でっせ。
お前はようしゃべってるだけで中身があれへん。
えらい言われようやな。
八力ちゅうてな。
うん。
手のひらに湯飲み茶わんを載せて力入れたらパチンと割れる。
何やしょうもない。
湯飲みぐらい。
わいこないだすり鉢割ったがな。
えらい力やな。
落としたんや。
あかんがな。
九は何でんの?九肝ちゅうてな肝っ玉度胸の事や。
おっ!それやったらわいおまっせ。
確かに度胸はありそうや。
ほな十は?十評判ちゅうてな。
わいの評判どうです?う〜ん。
まああほでお調子者で…まあええ加減な事ば〜っかりしてるくせして人気者やんな…。
何やえらい悲しそうでんな。
いやいやそないな事は…。
ちかえもんが悲しいんやったらわい評判が悪いって事で結構ですわ。
すまんな。
気にしなはんな。
ほな十一は?十一てなものはないねん。
ほな十二は?十二もないねん。
十三。
十三も十四ももうず〜っとあれへんのや。
ほなお初を嫁にもらう目論見はどないなりまんねんな!そんなもん知ったこっちゃ…お初?へえ。
お初て…天満屋の新入り遊女のお初かい?へえ。
やめとけやめとけ。
あないなややこしいおなご。
評判が悪すぎるで。
人の評判は知りまへんけどわいの中の評判は群を抜いてよろしおまんねん。
けったいな物言いやな。
なあなあどないかしとくんなはれな。
なあなあ!ええ工夫教えてもらわなもう付きまといまっせ。
もう付きまとってるがな!ほななああの…いもりの黒焼にでも頼れ。
いもりの黒焼?ああ。
あれがほれ薬になるちゅう話や。
ほれ薬!あんたそれを早よ言わんと!長々としょうもない話でわいの時無駄にしたがな。
こっちのセリフや!それをのましたらええんでんな?ああ確かのんで最初に見た者にほれるちゅう話や。
いもりの黒焼。
ほな早速行ってきまっさ!おおきに!しかし見事にどれも当たらなんだなあ。
一見栄二男三金四芸五精六おぼこ七ゼリフ八力九肝十評判…。
あっ!若旦さん!あきまへん。
決して外には出はるなと旦さんが…。
佐七。
田舎へ帰りたいんか?…えっ?お前が店の勘定ごまかしたとでっちあげるくらい私には訳あれへんのやで。
えらい高い買い物についたなあ。
えっ?何が?お初のこっちゃ。
あ…ああ…。
あんたがええ買い物や言うさかいに話に乗ったのに。
いや〜器量よしを安う譲たる言うて島原の旦さんが言うたさかいに。
だまされてやっかい者つかまされてんねんがな!そう怒りないなもう…。
そやけどどう言うんやろなああのなげやりなそぶりは…。
次にやらかしたらただでは済まさへんで。
(銀助)お初さんお願いします。
(人が入ってくる音)お袖…笑てくれ。
わしはえらい事に気ぃ付いてしもた。
おなごができる10か条や。
なんとびっくり。
わし一個も持ってへんかった。
ハハハ…。
何やお袖。
何で笑てくれへんねん。
いっそ罵ってくれ。
「何をしょうもない事言うてんねん。
このくそじじい」ちゅうてわしを罵ってくれ!…ってお初〜!?何やお初。
もう来てたんかいな。
お袖。
こらどういう…?ちょっと間面倒見たってくれて女将さんに頼まれてな。
ええやろ?お代はいつもどおりでええさかい。
まあ…そらええけど…。
お初。
浄瑠璃作者の近松先生や。
浄瑠璃…。
作者。
わてらには縁のあれへんこっちゃけどな。
まっお酌しい。
あ…。
近くで見たら…若〜い!きれ〜い!
けど…愛想がな〜い!
しゃあない妓やな。
ちょっとは愛想する事覚え。
ほんまやで。
このまま行たらこのお袖みたいになるで。
どういうこっちゃ!おっちゃんみたいな者が言うのもあれやけどなお茶っ挽きは哀れやで。
もっと上を目指した方がええて。
…上?こないな地獄で上にはい上がったからいうて何がおます?しょうもない客に愛想して太夫に上り詰めたところであほらしいだけや。
いっそ病にでもかかってさっさと死にとうおますわ。
万吉〜。
こないなおなごほれるだけ無駄やで〜!
(騒ぐ声)何や?えらいにぎやかやな。
ああ。
平野屋の若旦那や。
ええ〜?また遊んでんのかいな。
(お袖)空いてる妓は皆呼んでこいちゅうてな。
豪儀なこっちゃな。
そら大坂一の大店平野屋忠右衛門はんの跡継ぎや。
そこら辺のボンボンとは格が違うわ。
わしかてもともとは武士の出や。
またその話かいな。
商人みたいなもんよりはるかに高い身分に生まれついたんや。
それがどや。
世の中ひっくり返ってしもてあほボンは座敷で若いおなごら揚げて大騒ぎ。
わしはいちば〜ん安い部屋でいちば〜ん年増のおなごと安酒をちびちび。
悪かったな。
お初。
ほら空いてんで。
お初!ええ〜っ!ちょっと!何してんの!どいて!ああ…ああ…。
(お袖)お初!どこ行くんや!?
(ため息)悪かったな。
堪忍や。
…いや悪いのはわしの方や。
えっ?それこそ平野屋の若旦さんの愚痴やったら喜んで聞くやろけどな…。
わしみたいなしょぼくれた年寄りの世まい言なんぞ誰が聞きたいねん。
くよくよしなっちゅうねん。
そこがあんたのええとこやないかいな。
…えっ?ええ年してしょうもない事悩んでるあんたがおもろいかいらしいちゅうてんねん。
えっ…?かいらしい?何や?いや…。
あ…あれ…?何や…?何か胸が…胸がキュッ。
息が苦しい。
体が熱い。
こ…これって…
もうええ。
お前も行てこい。
え?若旦さんのお座敷や。
お前歌も踊りもでけるんやさかい行ておひねりでももろたらええやないか。
あほらし。
顔と羽振りがええだけのボンボンの座敷なん疲れるだけや。
つまり?つまり〜?
この年なったら楽なんが一番ええねん。
それは…?わしとおるのが心地ええちゅう事〜?わしに身請けされたいちゅう事か〜?
お袖。
うん?う…うちの母親がなそ…そろそろ後添え…後添え…何か…もらえちゅうあの…。
よっしゃあ!次の勝負で勝った者の部屋へ今夜は泊まるで〜。
ハハハ…!
(一同)キャ〜!おっしゃ!ほんならいくで。
(一同)よいよい…よいよい!ハハハ…!お前ちゅう妓は…!連れていきなはれ。
(銀助菊介)へい!ちかえもん!捕まえてきましたで!あれ…?あっここやないんか。
(一同)キャ〜!あれ?どこ行った?いもりどこ行った?あれ?どこ行った?どこ行った?いもりどこ行った?
(一同)キャ〜!どこ行った?どこ行った?どこ行った?万吉!お前はまた何を…!うわ〜!はあ…ああ!ちかえもんおおきに。
おおきにやあれへん!気色悪い。
えっ?いやあんたがいもりの黒焼が効くちゅうさかい探しに行きましたんやがな。
ところが川ぃ行ても池ぃ行ても田んぼぃ行ても見つかれへん。
気配すらしまへん。
それもそのはずや。
今冬でんがな。
いもり寝てまんがな。
…でもう諦めて帰ろ思たら足元で「キャッ!」てな声しましたんや。
「キャッ!」。
いやほんまでんねん。
枯れ葉の下で冬眠してたいもりがわいに踏まれて「キャッ!」てな声を上げたもんやさかいわいも「ヒャッ!」てなってヒョイと捕まえましてん。
「キャッ!」「ヒャッ!」「ヒョイ!」ですわ。
(一同)ハハハ…!…であんたを探し回ってるうちに懐ん中でぬくもったんやろな。
いもり目ぇ覚ましてここへ来た途端に逃げ出したちゅうあんばいですわ。
そやから長いねんお前のあんばいは!ええさかい早よ謝れ。
あ…いやこらどうもえらいすんまへんでした。
待て!そないな謝りようで済む思てんのんか?
あ…
私を誰やと思てんねん。
平野屋の跡継ぎやぞ。
そやった。
こういうやつやったこのお人は…
へえ。
それが何でっしゃろか?
そしてこいつはこういうやつや〜!
すんまへん。
こいつちょっと変わり者でんねん。
ああ。
近松たらいう物書きか。
…へえ。
呼び捨て〜!年長者捕まえて呼び捨て〜!
お前の知り合いか?
「お前」〜!
いや…知り合いちゅうか…。
友達です。
いつお前の友達になったんや!お前ら2人が謀って私に嫌がらせをしたと親父に言うてやる。
え…。
お前は二度と浄瑠璃なんぞ書けんようになるぞ。
そら困ります。
ほな謝れ。
申し訳おまへんでした。
手ぇついて謝れ。
誰がそないな事するかい!けど…しゃあないや〜ん
早よせえ!この腐れ物書きが!
仕事のうなったら困るも〜ん!浄瑠璃書けんようなったら困るも〜ん!
見るな…。
お袖見んといてくれ…!
ちかえもん!わいは不孝糖売り万吉や。
…不孝糖売り?親不孝したい者がなめる不孝糖を売って歩いてる者や。
けどな…。
お前みたいな腐れ親不孝者こっちから願い下げや!…はあ?
いやおかしいから。
「願い下げ」て言葉がおかしいから
何言うてんねんこいつ。
もっともな反応や
何や分からんけどえらい失敬な事言われてる事だけは分かる。
正解や
おいあほボン。
何やこら!いもり男!
何の話や…
(吉兵衛)えらいすんまへん。
若旦さんえらいすんまへん。
おい!居残りが粗相したようで…。
居残りやと?ハハハ…!どうりで貧乏くさい顔してる思た。
どうかお許し下さい。
すぐにあちらの座敷に膳も酒も支度し直します。
どうぞ今宵は存分に…。
さあどうぞこちらへ。
おい。
早よ…。
どうぞ。
何であないな男におなごらはちやほやすんねん。
まだ言うてんのかいな。
そら一見栄二男三金四芸…。
ここら辺り皆そろってるさかいな。
しょうもない。
あの愛想のないお初かて一目会うたらどないなるか。
お初?今日会うたけどなあらあかんで。
お前の手に負える相手やあれへん。
ヘヘヘ。
心配おまへん。
わいにはこれがありますよってから。
何や?それ。
いもりの黒焼でんがな。
ほれ薬でんがな!えっ…お前そないなもん使てお初の気ぃ引いてそれでほんまにええのんか?えっ?男やったら正々堂々とお初をほれさしてみい!…みい!あんた珍しゅうええ事言うたな。
珍しゅうとは何や。
あんたの言うとおりや。
わいも男や。
こないなもんには頼らんで!あほでよかった。
こないなもんがほんまに効く訳あるかい。
(嗅ぐ音)
(鳴き声)…えっ?
(鳴き声)ほんまにあんたみたいなややこしい妓は初めてや。
なにもそこまでせいでも…。
(お玉)ええか?わてらはな行くとこのない娘らにただ飯食わせるほどの気のええおっさんとおばはんやあれへんねん。
あんたらを飯の種にしてどないかこないか生きてんねん。
(吉兵衛)なんちゅうあけすけな物言いやねん。
(お玉)生きるちゅうのんはきれい事やあれへんとこの甘えたおなごに教えたってんのや。
今日一日ここで反省しときなはれ。
・「父は都の六波羅へ虜となりて」・「あさましや」お…お初!一体どないな客が来とったんや?女将さんのお仕置きや。
はあ〜。
きっついおばはんやな。
よっしゃ。
すぐほどいたる。
ええのや。
こないな事には慣れてるさかい。
あ〜はは〜ん。
さてはあんた見かけによらず相当な悪がきやったな。
フフン。
いや〜わいも昔お父はんにこないしてお仕置きされた事あんねん。
…ちゅうのもお父はんが一人でこっそりつぼに入った水飴なめてんの見てしもてな。
「おいお父はん。
わいにもその水飴よこさんかい!」ちゅうたらそこは大人や。
抜かりないわい。
「これはな大人が食うたら薬になるが子どもが食うたら毒になる。
下手したら死んでしまうのやで」。
しょうもない。
誰がそないな作り話にだまされるか。
子どもやいうてなめんなよちゅうて夜中にこっそり忍び込んでつぼの水飴ベロンベロンなめたった。
ベロンベロン。
ヘヘッ。
ほしたらどや。
ものの3つも数えんうちに腹がキリキリ〜ッてなってもう急いで厠へ飛び込んでそっから3日3晩腹下したがな。
ようよう粥がすすれるようになった思た頃に庭へ引きずり出されてこないして木にくくりつけられた。
「人を信用せんさかいこないになるんじゃ!」。
これにはさすがにぐうの音も出なんだで。
フフッ。
あんた…あほなんか?何で?どうでもええ話長々したりわてみたいな者に構たり。
不孝糖たらいうけったいなもん売ったり。
おっ!よう知っとんな。
何なん?あれ。
不孝糖ちゅうのはなこれをなめると親不孝しようちゅう気がむくむくって湧いてくる飴や。
ふ〜ん。
今味の工夫してるさかい出来たら一番に売ったるわ。
そのかわり一つ約束や。
存分に親不孝したらスカッと笑た顔見せてや。

(喜里)…信盛。
うわっすみません!も…もうしません!何を言うておる。
あ…い…いや…。
これを万吉殿に届けてはくれぬか?はい出来たよ。
持ってって。
は〜い。
おいでやす!ちょっとすんまへん。
ちかえもん!お前なあ居残りしてる店の厨で何勝手な事してんねん。
仕事の邪魔やろ。
いやかめへんかめへん。
大概よう働いてくれとるしな。
それにおってくれたらおもろいさかいね。
何も出まへんで。
ここでも人気者かい。
ええなあ…
ちょっとすんまへんな。
どうぞどうぞ。
どないしました?これなうちの母親から言づけや。
おかあはんから?すりゴマや。
不孝糖にまぶしたらおいしゅうなるやろちゅうて。
はあ〜!そらありがたい!おおきに。
「出来たら一番に売る」てお初に約束しましてん。
ほう。
あんたの言うたとおりいもりの黒焼みたいな姑息な手ぇ使わんでもほれさせてみまっさ!それでこそ男や!
すんまへん。
わしは姑息な男です
お袖。
わしは今はお茶は要らんのや。
お前飲み。
後で飲んだらええやあれへんの。
後でも要らんのや。
飲み!要らん。
頼む〜!飲んでくれ〜!けったいなじじいやなあ。
(あくび)朝粥でももらおか。
朝粥て若旦はんもうお昼でっせ。
この平野屋徳兵衛には関わりのあれへんこっちゃ〜。
またそんな事。
ハハハ…。
若旦さん!番頭さん困ります。
天満屋はん。
あんたも店の主やったらよう分かりまっしゃろ。
若旦さん。
なんぼうちが大店やちゅうても若旦さんがこのありさまではいずれ身代潰してしまいまっせ!やかましい。
説教すな。
なあ?若旦さん。
この喜助が一緒に頭下げますさかい今日のところは戻っておくれやす。
ほんまに戻ってほしい思てんのか?…えっ?いっそおらん方が安泰やと思てんのと違うんか?…若旦さん。
おい。
(吉兵衛)へえ。
酒と膳の支度せえ。
最初に見た者にほれる。
最初に見た者にほれる。
最初に見た者に…
こんでええのんか?どや!?何が?何か変わった事ないか?何や?変わった事て。
何かや。
何か…。
えらい香ばしいお茶やったけどな。
…香ばしい?
(嗅ぐ音)ゴマ…?お初〜!お初!お初!出来た!不孝糖や!…頂戴。
うん。

(ため息)万吉!ちかえもん。
間違うた間違うた!うん?あれはゴマやない。
いもりの黒焼や。
えっ?どういうこっちゃ?お袖にのますいもりの黒焼間違うてお前に渡してしもた。
えっ?お袖にのますいもりの黒焼?ん〜ちょ…ちょ…ちょ…ええがなそれは!つまり今お初がなめてる不孝糖は…いもりの黒焼入りちゅう事でっか!?そういうこっちゃがな。
えらいこっちゃ!すまん…。
わしの間違いでこないな事になるとは…。
ほんまに…何と言うたらええやら…。
よかった。
えっ?お初が笑た。
初めてお初が笑たんや。
(すすり泣き)ほんまにあほやなお前は…。
…と若者たちの恋もようにちょっぴり胸キュンしたわしやったが…
書けてな〜い!今日も一行も書けてな〜い!
うん?
何でや?
あの時お初が笑たんはいもりの黒焼の効き目なんぞではなかった事をこの時のわしは知る由もなかったのである
危ない!危ない…。
…ってな陳腐な言い回しはわしのプライドが許さんのである
おやすみ。
2016/01/21(木) 20:00〜20:43
NHK総合1・神戸
木曜時代劇 ちかえもん(2)「厄介(やっかい)者初、井守黒焼」[解][字]

万吉(青木崇高)は天満屋に現れたやっかいな新人遊女・お初(早見あかり)に一目ぼれ。近松門左衛門(松尾スズキ)に恋の指南を頼むが徳兵衛(小池徹平)の逆りんに触れる

詳細情報
番組内容
万吉(青木崇高)は堂島新地の「天満屋」に現れた厄介な新人遊女・お初(早見あかり)と出会い恋に落ち、近松門左衛門(松尾スズキ)に恋の指南を頼む。一行も筋が書けない近松は、適当に「恋にはイモリの黒焼きが効く」と答える。ところが、近松の助言を真に受けた万吉は、お初攻略に乗り出し、その振る舞いが「平野屋」の放とう息子・徳兵衛(小池撤平)の逆りんに触れる。近松も目の敵とされ、作家生命まで危うくなる事態に…。
出演者
【出演】青木崇高,優香,小池徹平,早見あかり,北村有起哉,高岡早紀,岸部一徳,富司純子,松尾スズキ
原作・脚本
【作】藤本有紀

ジャンル :
ドラマ – 時代劇
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:16644(0x4104)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: