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 政務活動費900万円余りをだまし取ったとして、詐欺と虚偽有印公文書作成・同行使の罪で在宅起訴された元兵庫県議・野々村竜太郎被告(49)の初公判が26日、神戸地裁で始まり、被告は起訴内容を否認した。「虚偽の収支報告書に基づいて返還を免れようとしたことは決してありません。結果として誤ったかもしれないが、一つひとつの記憶がございません」と述べた。

 2014年7月の「号泣会見」以来、本人が公開の場で説明するのは初めて。初公判は昨年11月の予定だったが、「精神的に不安定」(弁護人)と出廷せず延期された。佐茂(さも)剛(たけし)裁判長は正当な理由なく再び出廷しないおそれがあると判断。強制的に出廷させる「勾引(こういん)」の手続きをとり、神戸地検が25日に身柄を拘束して地裁へ移送。26日午前、収容先の神戸拘置所から出廷させた。

 検察側は冒頭陳述で、野々村被告が初当選した11年度から13年度までに受領した政活費1684万円のうち913万円をだまし取ったとする手口や使い道を説明。適正に使ったように装うため、虚偽の内容を記した収支報告書を県議会側に提出した、と述べた。

 収支報告書には、城崎温泉(兵庫県豊岡市)や東京都などへの日帰り出張344回分のうその証明書類を添えたと指摘。また、商品券代なのに切手・はがき代に見せかけようと単価や数量を修正テープで消したレシートのコピーなどの改ざん書類も添えたという。

 さらに、議会事務局から出張先の具体的な場所を記すよう修正を求められた際、被告は「昨年もこのやり方で通った」と拒否。毎月支給される政活費は貯蓄や商品券の購入などにあてた、と述べた。

 野々村被告は14年7月、疑惑を受けて開いた記者会見で号泣しながら釈明し、国内外に報じられた。辞職後、過去に受け取った政活費1834万円を全額返還したが、県議会や市民団体の告発を受けて兵庫県警が捜査。神戸地検は昨年8月に在宅のまま起訴した。(佐藤啓介)