中国が秦と呼ばれていた時代。
淮陰(わいいん)という場所に一人の若者が住んでいた。
名を韓信という。
韓信は気の小さい青年であった。
ある時、町の少年が韓信にこう言った。
「お前はいつも剣を腰に差しているが、実際は臆病者なんだろう。お前の持っている剣で俺が刺せるのか?刺せないんだったら俺の股をくぐれ、カス。」
黙って股をくぐる韓信。
その時、股の奥に見える風景が異国の地を映し出していることに気づいた。
「あの男のようになりたい。」
その姿はまるであの男が韓信に乗り移っているかのようであった。
これは韓信が将軍に任命された時の逸話。
ある時、劉邦がこう言った。
「お前にあの軍団を指揮することができるか?」
見れば三万人の軍団が足並みをそろえて行進している。
韓信は容易いとばかりにこう言った。
「一声(ひとこえ)で軍団の行進を止めて見せましょう。」
「ちょ、待てよ」
軍団の行進がピタリと止まり、一斉に韓信の方を振り返る。
それから数年後。
韓信は趙という国と戦っていた。
韓信率いる漢軍の数、3万。
対する趙軍の数、20万。
圧倒的に劣勢であるはずの漢軍。
しかも誤って逃げ場のない川の前に陣を張ってしまう。
その中でただ一人、全くひるむ様子がなく、むしろ落ち着いた様子で軍団を招集する韓信。
韓信「ぶっちゃけ、みんな集合してー。話あっから集まって〜。集まれって。集まれよ!!」
韓信の元に集まる兵士たち。
韓信「今日は紀元前204年です。先週からわれわれと趙軍の戦いのことで、農民の方々をお騒がせしました。そして、たくさんの方々にたくさんのご心配とご迷惑をお掛けしました。このままの状態だと、われわれ漢軍が空中分解になりかねない状態だと思いましたので、今日は自分が皆さんに報告することが何よりも大切だと思いましたので、本当に勝手だったんですが、このような時間をいただきました。」
ざわつく兵士たち。
韓信「最後に。これから、自分たちは何があっても前を見て、ただ前を見て進みたいと思いますので、皆さんよろしくお願い致します。」
それは漢軍復活の狼煙だった。
この演説により、まるで死人のように下がっていた兵士の士気は一気に上がり、決死の覚悟で戦い抜いた結果、奇跡的な勝利を得た。
その時の漢軍の戦いぶりは、まさに青いイナズマのようであったという。
炎。体、焼き尽くす。ゲッチュ。
韓信くんチームの勝利〜!
韓信はこの戦でHEROになり、この時の話は『背水の陣』として長く語り継がれることになる。
よろしこ。