大学発ベンチャー企業に投資するベンチャーファンドが増えている。東京大学や京都大学などを対象に、政府が資金投入したことが呼び水となって、ほかの大学もファンド組成を急いでいる。
■投資資金の規模、2.6倍に
2015年度末時点では前年度比2.6倍にあたる1000億円に迫る勢い。民間ベンチャーキャピタル(VC)に加え、政府が資金を用意した国立大学発VCの設立が相次いでいるためだ。
国立大や私立大、国内の主要な大学向け民間ベンチャーキャピタルの出資額などをもとに日本経済新聞が推計した。15年末時点のファンド規模は合計で約650億円。
■資金の出し手、主力は政府
ただ大学発ベンチャー向けファンドが膨らんでいるのは「官製」資金によるところが大きい。14年に施行した産業競争力強化法により、東大、京大、阪大、東北大に合計で1000億円の資金を国が用意。国立4大学はこの資金を活用する。
大学発ベンチャーに投資1年で2.6倍 育成ファンド1000億円に 東京理科大、40億円で来月設立(1月11日)
■国立大学の動き急
大阪大学が2014年12月に設立した大阪大学ベンチャーキャピタル(大阪府吹田市)は第1号の投資先に阪大発ベンチャーで化学品の製造販売を手がけるマイクロ波化学(同市、吉野巌社長)を選んだ。約3億円を30日に出資した。政府の規制緩和で国立大学法人が設立したベンチャーキャピタル(VC)が大学発ベンチャーに出資する初のケースとなる。
阪大VC、投資第1号は化学会社 3億円出資(2015年9月30日)
京都大学は2015年12月9日、同大学の研究成果を生かす大学発のベンチャー企業を対象にする投資ファンドを、2016年1月に設立すると発表した。規模は150億円で、ベンチャーに投資するファンドとしては国内最大級となる。主にベンチャー企業の中でも創業後間もない企業に対し、1社3億円ほどの投資を年10件程度進めていく方針だ。
京大、150億円のベンチャーファンド設立へ(2015年12月9日)
名古屋大学など中部地方の5つの国立大学法人と日本ベンチャーキャピタル(東京・千代田)は15年10月6日、共同でベンチャーファンドを創設すると発表した。
参加するのは名古屋大、名古屋工業大、豊橋技術科学大、岐阜大、三重大。ファンドは日本ベンチャーキャピタルが16年3月末までに設立し、運営する。投資規模は総額20億円以上で、中部の企業や金融機関から出資を募るという。
中部の国立5大学、VBファンドでタッグ 名古屋大や三重大、日本ベンチャーキャピタルと(2015年10月7日)
ベンチャーキャピタル(VC)のみやこキャピタル(京都市)は15年11月30日、メガバンクや関西の地方銀行などと京大発ベンチャー企業の支援に向けた投資ファンドを設立する。京都銀行や池田泉州銀行、京都中央信用金庫、京都信用金庫などが参画する。当初は約20億円規模のファンドを立ち上げる。バイオや医療、ものづくり系のベンチャー企業に出資して経営も支援する。
京大発企業 支援ファンド みやこキャピタル、メガ銀や地銀と(2015年11月30日)
西日本シティ銀行は15年7月1日、大学などの研究機関が持つ知財や技術など「創業の芽」に出資するファンドを創設すると発表した。同行と九州大学系のQBキャピタル、九州の地元有力企業などが出資して15年7月末に設立する。ファンドの総額は約30億円となる見込みだ。
西日本シティ銀、「創業の芽」出資のファンド(2015年7月1日)
出遅れているとみられていた東京大学も21日、東京大学協創プラットフォーム開発(東京・文京、大泉克彦代表取締役)を設立した。ベンチャーキャピタルや大手事業会社などと連携し、ベンチャー創出する方針だ。
■慶応や理科大、私立にも動き
野村ホールディングスは候補企業を早期に発掘することを狙って慶応義塾大学と共同でベンチャーキャピタル(VC)を設立。
野村と慶大が15年12月に設立したVCは、金融機関や事業会社から出資を募って2016年上半期をメドに30億円規模のファンドを組成する。慶大は研究成果を生かして新興企業を育て、野村は資金調達面などで企業を支援する。産学で連携しながら、将来のIPOにつながる新興企業を支援していく狙いだ。
上場候補発掘で独自色 野村HD、慶大とVC設立 みずほ証券、先端技術に特化(2015年12月28日)
東京理科大学は2月、40億円規模のファンドを立ち上げる。同大はロボットやエネルギー、農業など幅広い分野の研究成果を持つのが強み。大学の技術や大手企業との共同研究の成果を活用したベンチャーを支援する。年間5件前後のペースで投資先を広げる。
大学発ベンチャーに投資1年で2.6倍 育成ファンド1000億円に 東京理科大、40億円で来月設立(1月11日)
■大学発ベンチャー、設立数に目標値
内閣府は、国の科学技術政策の基本となる「第5期科学技術基本計画」に科学技術政策によって目指す成果の数値目標を導入する。大学や公的研究機関発のベンチャー企業の数や世界大学ランキングにおける日本の大学の順位など主要23指標で評価する。