日銀:直前まで市場見極めぎりぎりの判断、今週の決定会合-関係者
2016/01/26 00:01 JST
(ブルームバーグ):日本銀行が28、29両日に開く金融政策決定会合は、2%物価目標の早期達成のために追加緩和が必要かどうか、直前まで市場動向等を見極めつつ、ぎりぎりの判断となる見込みだ。複数の関係者への取材で分かった。
複数の関係者によると、日銀内には、原油価格の下落もあり物価見通しの下方修正が不可避となる中、春闘の賃上げも2%物価目標の早期達成には不十分という悲観的な見方も出ている。一方で、春闘は始まったばかりなのに加え、市場の混乱が実体経済に影響を及ぼしているわけではないため、情勢を見極めるには時間的余裕があるとの見方もあり、意見が交錯している。
スイス・ダボスで日本時間22日夜にブルームバーグの英語のインタビューに応じた黒田東彦総裁は金融政策について言質を残さなかった。市場の混乱は現時点で「企業行動にそれほど大きな影響を与えているとは思わない」とする一方、「マーケットは実体経済に影響を及ぼすこともあり得るので、注意深くウオッチしている」と述べた。今週の会合は、インフレ期待低下、原油安、円高懸念の中での決断となる。
JPモルガン証券の足立正道シニアエコノミストは、今週の金融政策決定会合の結果を占う上で最終的に重要なのは、「黒田総裁が何を考えているか」だと指摘。もし総裁が2%の早期達成に向けてリスクが大きく追加緩和が必要と考えれば、「政策委員会をそのように持っていける」と述べた。
会合直前の市場次第日銀は同会合で2017年度までの生鮮食品を除くコア消費者物価指数(CPI)上昇率の見通しを明らかにする。日銀は昨年4月に物価上昇率2%の達成時期を「15年度を中心とする期間」から「16年度前半」に変更。昨年10月にはさらに「16年度後半」に先送りしたが、いずれも追加緩和は見送った。今回も再三の下方修正と目標達成時期の先送りは必至とみられている。
みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは25日のリポートで、物価見通しの下方修正や2%達成時期の先送りは「本来は追加緩和につながるはずだが、昨年10月のケースと同じく、追加緩和に直結させるわけではないのだろう。追加緩和が今回の会合で決まるかどうかについては、会合直前のマーケット状況に依存する度合いが大きい」としている。
20日のドル円相場は一時1ドル=115円98銭と、昨年1月16日以来の水準まで円高が進行。21日の東京株式市場は大幅続落し、TOPIX、日経平均株価とも日銀が追加緩和に踏み切った14年10月31日の水準を下回ったが、追加緩和の思惑から先週末に急反発。円相場も118円台まで円安方向に戻している。
1月様子見でも3月か4月にSMBCフレンド証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは25日のリポートで、「29 日の金融政策決定会合直前まで、日銀はギリギリまで市場環境を確認してから、決断するように思われる。よって現時点で、日銀が追加緩和すると決め打ちすることはできない」と指摘する。その一方で、「やると決めたなら、中途半端ではない本気の追加緩和を行わなければ市場に失望されるだろう」という。
黒田総裁は繰り返し、量的・質的金融緩和(QQE)は所期の効果を発揮していると述べている。生鮮食品を除くコアCPIは11月に前年比0.1%上昇と原油安の影響などでなおゼロ近辺で推移しているが、日銀が独自に公表しているエネルギーと生鮮食品を除くCPIは1.2%上昇と堅調に推移している。一方で、ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)など各種の期待インフレ指標は軒並み弱含んでいる。
SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストは同日のリポートで、QQEの目的はデフレ心理の転換なので実際の物価より期待インフレが重要だが、「足元の期待インフレ率は0.3-0.5%にとどまっておりQQE1、QQE2以前に戻っている。先行きも円高と原油安、ベア低下の逆風が吹く」と指摘。「結局いつ踏み切るかだけであるが、1月は様子見としても3月または4月には動くのではないか」という。
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更新日時: 2016/01/26 00:01 JST