「アキバのアナバ」同人誌の原価と売上
定期的に話題になる同人誌の原価
同人誌の原価や売上をめぐる論争は定期的にTwitterで盛り上がる話題です。
今回の話題になったツイートは、
「原価(ここでは印刷単価のこと)が150円もしない本を1,000円で販売しているからコスプレ同人誌は儲かる」と主張しています。
私が昨年11月に製作した評論系同人誌「アキバのアナバ」について、
印刷単価と頒布価格が上記のコスプレ同人誌と近くせっかくなので原価と売上、収支について公開したいと思います。
※ 上記に挙げるコスプレ同人誌と本誌では、そもそも製作工程やジャンルが異なるので、単純比較はできません。
本の概要
本誌はフルカラー24Pのオフセット本で、秋葉原の飲食店を紹介する「評論・情報系」といわれるジャンルの同人誌です。
2015年11月15日に開催されたCOMITIA 114での頒布を目標として、8月頃から休日や深夜の時間を使って製作しました。
総製造部数は1,000部で、印刷はグラフィックさんにお願いしています。
在庫の割当場所と頒布実績、割当数は以下のとおりです。
- COMITIA会場: 400 / 400部 (完売)
- メロンブックス: 150 / 200部 (残50部)
- COMIC ZIN: 130 / 160部 (残30部)
- とらのあな: 120 / 140部 (残20部)
- 取材店舗さんでの販売: 30 / 30部 (完売)
挨拶用: 70部
頒布実績: 830部
残在庫: 100部
合計: 1,000部
経費
※ 細かい数字は丸めています。
印刷費・外注工賃: 190,000円
同人誌本体の印刷費や、イベント会場や同人ショップで掲示するポスターの印刷費の他、表紙イラストの依頼料が含まれています。荷造運送費: 15,000円
印刷所から各同人ショップへ発送した宅配便料金、自宅からイベント会場に在庫を搬入出するために用いたタクシー運賃が含まれています。取材費: 80,000円
各取材店舗さんで注文した料理や飲み物の代金です。接待交際費: 20,000円
打ち上げの代金です。自分に加え、イベント会場で売り子をお願いした2名の代金も負担しています。通信費: 10,000円
写真のレタッチや本誌のデータ製作には月額5,000円のAdobe Creative Cloudを利用しており、2ヶ月分を計上しています。支払手数料: 5,000円
COMITIAにサークル参加するために支払った申込費用です。
経費の合計: 320,000円
1冊あたりの原価: @320円
売上
- COMITIA会場: 600円 * 400部 = 240,000円
- メロンブックス: 529円 * 150部 = 79,350円
- COMIC ZIN: 529円 * 130部 = 68,770円
- とらのあな: 483円 * 120部 = 57,960円
- 取材店舗さんでの販売: 500円 * 30部 = 15,000円
売上の合計: 461,080円
収支
収支: 461,080円 - 320,000円 = 141,080円
時給にしてみると…
141,080円 / 150時間 = 941円
東京都の最低賃金よりちょっと高いぐらいですね。
まとめ
パソコンや撮影に用いたカメラ、レンズ、インターネット回線の費用も入れると赤字になりそうです。
情報・評論系同人誌で安定した収益を得るためには1種類の本で少なくとも数千〜1万部以上の売上が必要です。
さらに、コスプレ同人誌は他のジャンルの同人誌よりも遥かに流通量が少なく、取り扱ってくれるショップも限られていることから、情報・評論系同人誌以上のハードルの高さが容易に想像できます。
頒布価格1,000円の作品の印刷単価が150円だったとしても、その上に様々な経費が乗っかるので、儲かると決めつけるのは早計かなぁと思いました。
これから情報・評論系同人誌を作る方へ
出てきた料理をすべて一人で平らげた結果、後日右腹部に激痛が走り胆石が見つかって医療費も大変でした。 これからグルメ系同人誌を作ろうという方は取材にはお友達を連れて行いったほうが良いです。