平和のサクラ、乙訓に根付け 京都・長岡京
乙訓地域の活性化に取り組むNPO法人「京おとくに・街おこしネットワーク」(事務局・京都府長岡京市神足2丁目)が、今年もサクラの改良品種「陽光」を植樹する。同品種の生みの親・故高岡正明さん(享年92、愛媛県東温市)は、戦時中に教え子を戦場に送り出したことを悔やみ、平和への祈りを込めて開発した。同ネットワークは「高岡さんの願いがこもったサクラを乙訓に増やし、魅力あふれる地域にしたい」と意気込んでいる。
陽光は、高岡さんが30年近く試行錯誤を重ね、アマギヨシノとカンヒザクラを交配して作った。1981年にサクラでは第1号となる国の品種登録を受けた。ソメイヨシノよりやや早く開花、濃いピンク色の花が特徴だ。
愛媛県の青年学校で農業を教えていた高岡さんは太平洋戦争中、生徒に皇国史観を教え込んで戦場に送り出した。戦後、そのことを後悔し、教え子の供養や平和の願いを込め、世界中のどこでも咲くようなサクラを作ろうと、品種開発に没頭した。
このエピソードを知った同ネットワークは、2011年から高岡さんの長男照海さん(72)=愛媛県東温市=に苗木を譲り受け、これまでに乙訓2市1町に計261本を植えた。今年は、29日に苗を持参する照海さんとともに、同ネットワークが柳谷観音楊谷寺(長岡京市浄土谷)や長岡天満宮(同市天神2丁目)などに計55本を植樹する予定だ。
同ネットワークの中山秀亜理事長は「陽光に込められた正明さんの思いを多くの人に知ってほしい」と話す。京都市南区の京都みなみ会館では折しも、正明さんの生涯を描いた映画「陽光桜」を上映中で、新種開発に注いだ情熱の一端に触れることができる。
楊谷寺では「桜の里親制度」を実施しており、今回20人を追加募集している。問い合わせは午前9時~午後5時に同寺TEL(956)0017。
【 2016年01月22日 09時40分 】