ライフハッカー編集部 - アイデア発想術,キーパーソン,コミュニケーション,リーダーシップ,仕事術 07:00 PM
就任5カ月で無名の吹奏楽部を全国大会へ導いたカリスマ指導者から学ぶ、「信頼関係」を築く方法
昨年11月に開催された、第63回全日本吹奏楽コンクールの決勝大会。中学、高校、大学、職場・一般の4部門で実施され、参加団体は1万超という、国内最大規模の音楽コンクールです。そして、その中から地区大会から勝ち上がり、全国大会へ出場できるのはそのうちのわずか100団体ほど。
ところが2015年、そんな超ハイレベルな大会へまったくの無名だった長崎県の活水高校吹奏楽部が見事出場という快挙を果たしました。それまで実績のなかった彼らが、なぜ全国大会まで勝ち上がることができたのでしょうか。
その背景には、就任わずか5カ月で全国大会へと導いた、同校吹奏学部顧問の藤重佳久(ふじしげ・よしひさ)先生のカリスマ的な指導力がありました。
カリスマ的指導者の就任
藤重先生が定年を機に福岡の精華女子高校を退職し、活水女子大学音楽学部教授、活水中学・高校の吹奏楽部顧問に就任したのは2015年4月のことでした。
精華女子高校と言えば、吹奏楽ファンの間では言わずと知れた強豪校。藤重先生は同校の吹奏楽部で35年間顧問を務め、在任中には全日本吹奏楽コンクール金賞10回、全日本マーチングコンテスト金賞16回など数々の賞を獲得。まさに、高校吹奏楽界のカリスマ的指導者だったのです。そんな藤重先生の退職と、活水中学・高校への就任は当時大きな話題となりました。
それからわずか5カ月後、同校は見事に全日本吹奏楽コンクールの全国大会に出場。生徒たちの急成長による躍進で、見事な結果を残しました。
躍進の裏には豊富な練習量。生徒たちの原動力は?
藤重先生の指導力もさることながら、その急成長の裏には、やはり豊富な練習量があります。就任以前と比べ、練習時間はそれまでの倍となり、週末も丸1日練習に充てるようになったそうです。
しかし、初心者も多かったという同校の吹奏楽部。いきなりそんなに練習量が増えてしまっては、モチベーションや体力が追いつかない生徒も多そうです。
キツい練習でも頑張らせるために、生徒とどのようなコミュニケーションを図っていたのでしょうか? 藤重先生にお聞きしました。
「おはよう」プラスのコミュニケーション
藤重先生によれば、単なる挨拶にもそのようなちょっとしたコミュニケーションをプラスすることで、生徒との距離感を一気に縮めることができるのだそうです。生徒の数は60名を超え、一人ひとりと直接コミュニケーションを取ることが難しいだけに、こうしたちょっとした声掛けが大切になってくるのかもしれません。
また、生徒のことを理解するために、日記を書かせるという取り組みも。内容はプライベートであったことや今気になっていることなど、部活動と関係のないことでも認めています。日記は毎日チェックし、時折話のネタにもするそうです。
誰にでもチャンスを与える「チャンス教育」
チャンスを通して得た成功体験は生徒にとってかげがえのないものになり、その後もさらに高い目標を掲げて頑張るようになると言います。
もちろん練習中は生徒を厳しく指導をしますが、生徒が少しでも上達すると「ほら、あなたならできるでしょ」と褒めることを欠かしません。
変わったアイデアはすぐに試す
このように、普通はあまりない変わったアイデアを練習に取り入れることで、生徒を飽きさせないようにしているようです。
また、生徒が間違っていたり変わったことを発言しても、それをアイデアの種と捉えます。たとえば、生徒がちょっとおかしな発言して教室が変な空気になってしまっても、「そのアイデア、これに活かせるじゃん!」というように、発想を転換させます。こうした空気を組織の中につくることで、独創性も磨かれていくそうです。
活水高校躍進の理由は藤重先生の指導力に加え、やはり豊富な練習量にありました。しかしその基礎にあったのは、生徒にそれだけの練習量をこなさせるほどの、信頼関係を築く力でした。
これはビジネスマンにとっても参考になることかもしれません。どんなに素晴らしいビジネスプランやアイデアを持っていても、仲間や部下がついてきてくれなくては実現することは難しいですからね。
(文/広田睦侑、構成・写真/開發祐介)
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