最晩年の墨書…二松学舎大がびょうぶ購入
文豪、夏目漱石(1867〜1916年)ゆかりの二松学舎大(東京都千代田区)は25日、漱石が禅語を墨書したびょうぶを購入したと発表した。一般には存在を知られておらず、漱石の書では最大規模。最晩年の、物事に動じない思想が分かる貴重な資料だ。
びょうぶは二曲一双(計4面)で、1面の高さは162センチ、幅は80センチ。「夜静渓声近 庭寒月色深」(夜静かにして渓声(けいせい)近く、庭寒うして月色深し)など、禅宗の言葉を集めた「禅林句集」から、漱石が理想とした自然の情景を描く五言対句が草書体で4種類書かれている。死去の前年の、15年11月以降の筆とみられ、山口直孝(ただよし)同大教授(日本近現代文学)は「筆遣いは真剣かつ伸びやかで、世俗的なものと格闘しながら達観を得た晩年の心境がうかがえる」としている。
中央公論社社長だった麻田駒之助(1869〜1948年)が所蔵し、死後も同家に長く秘蔵されていた。
漱石は1881(明治14)年に当時は漢学塾だった二松学舎で約1年学んだ。来年で創立140周年を迎えるのを前に漱石の資料収集を進める同大が、古書店で売りに出されているびょうぶを発見、書体や落款から晩年の漱石の真筆と判断し、昨年末に購入した。2017年10月ごろ一般公開の予定。【鶴谷真】