米軍普天間飛行場がある沖縄県宜野湾市長選は、安倍政権が推す現職が再選を果たした。基地の閉鎖を願う民意の表れだが、名護市辺野古への県内「移設」が信任されたと考えるのは早計だ。
米海兵隊普天間飛行場の「移設」問題をめぐる安倍政権と翁長雄志県知事との激しい対立が持ち込まれた「代理対決」だった。激しい選挙戦を制したのは、自民、公明両党の推薦を受けた佐喜真淳市長である。
宜野湾市の中心部に位置する普天間飛行場は墜落事故を起こすなど「世界で最も危険」とされ、周辺住民に不安を与えてきた。
安倍政権は、同じ県内の名護市辺野古に造る米軍施設に普天間飛行場の機能を移すことで、日本側への返還を進めようとしてきた。
しかし、沖縄県には基地や訓練場など在日米軍専用施設の約74%が集中する。同じ県内に米軍施設を移設しても、県民の抜本的な負担軽減にはつながらない。
安倍政権が強引に進める県内移設に異を唱えてきたのが翁長知事だ。今回の市長選でも、対立候補の志村恵一郎氏を擁立し、政権と対決する姿勢を示した。
安倍晋三首相は「安全保障に関わることは、国全体で決めることだ。一地域の選挙で決定するものではない」としながらも、閣僚経験者や与党幹部らを投入し、てこ入れを図った。
政権側は、佐喜真氏が翁長氏の推す候補を破ったことを受けて、辺野古移設に自信を深め、作業を加速することになるだろう。
とはいえ、辺野古移設が宜野湾市民に「信任」されたと考えるのは早計だ。佐喜真陣営は選挙戦で普天間飛行場の固定化回避には言及したものの、辺野古移設推進を直接訴えたわけではないからだ。
今回の結果は、辺野古移設に対する賛意ではなく、生活を脅かす身近な米軍基地を一日でも早く撤去してほしいという切実な気持ちの表れと受け止めるべきだろう。
沖縄県内では移設先の名護市長選、沖縄県知事選、衆院選の県内全四小選挙区など直近の主要選挙でいずれも、辺野古移設反対派が勝利してきた。
安倍政権は県民の民意を尊重して、辺野古移設を強引に進めるべきではない。県内に米軍施設を新設しなければ普天間返還は進まないという、住民を分断する姿勢も改めるべきだ。
「米軍基地のない島」。それこそが宜野湾市民はもちろん、沖縄県民全体の悲願である。
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