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【大相撲】

琴奨菊が初賜杯 春場所で綱とりだ!

2016年1月25日 紙面から

父菊次一典さん(左から2人目)と母美恵子さん(左)、祐未夫人(右)と賜杯を手に記念撮影する琴奨菊=両国国技館で(神代雅夫撮影)

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◇初場所<千秋楽>

(24日・両国国技館)

 大関琴奨菊(31)=佐渡ケ嶽=が豪栄道を破り、14勝1敗で初優勝した。日本出身力士の優勝は2006年初場所の栃東(現玉ノ井親方)以来、10年ぶり。栃東が賜杯を抱いた後の58場所は白鵬、朝青龍らモンゴル勢や、ブルガリア出身の琴欧洲、エストニア出身の把瑠都が優勝してきた。31歳11カ月の琴奨菊は年6場所制となった1958年以降3番目の高齢初優勝。春場所(3月13日初日、エディオンアリーナ大阪)で初めての綱とりに挑む。

◆感無量

 10年動かなかった重い扉を、琴奨菊がついにこじ開けた。勝ち残りの土俵下でしばらく目を閉じる。「もう一番あるのかな」。豪栄道を突き落として初優勝を決めても、あるはずのない優勝決定戦を思い浮かべるほど頭の中はテンぱった。支度部屋に戻っても「わけ分かんない」と苦笑い。優勝インタビューからようやく実感が湧いてきた。

 「感無量。本当にやったんだな。これ以上うれしいことはないよ。(賜杯は)普通の重さよりも、いろんな思いの詰まった重さだった」

 苦しんだ分、喜びもひとしおだ。2011年九州場所の大関昇進後は左膝、右大胸筋と度重なるけがに悩まされた。6勝9敗と大きく負け越した昨年の夏場所後。「やめようかな」。ボロボロの体に引退も考えた。

◆肉体改造

 その時、トレーニングで師事する塩田宗広トレーナー(38)のひと言が琴奨菊を変えた。「もう遠慮はせんからな」。知り合って3年ほどになる塩田さんも、始めは相撲界の大関に遠慮がちだった。「千葉まで行ってでも付きっきりでトレーニングをやろうと」と塩田トレーナー。サプリメントの提供はもちろん、トレーニングに多くの時間を割くことにした。琴奨菊も「本当によくこの体で戦えたと思います」と肉体改造が実を結んだことをかみしめた。

 亡き祖父に最高の恩返しもできた。たまり席で観戦した父菊次一典さん(60)は館内の大歓声で愛息の悲願に気づいた。08年に76歳で病死した祖父一男さんの写真とともに。

 一男さんは小学生だった琴奨菊のために自宅に土俵を造り、連日午後5〜7時半の練習に付き合った。「おやじ(一男さん)にはいつも(琴奨菊の相撲を)見せるんですよ。本当に喜んでいると思います」と一典さん。琴奨菊も「おじいちゃんと先代にいい報告ができました」と、先代佐渡ケ嶽親方(元横綱琴桜)とともに相撲を教わった2人に感謝した。

 日本出身力士にとって10年ぶりの賜杯に琴奨菊は「たまたま自分がその時に初優勝しただけ」と謙遜した。外国出身力士に賜杯を奪われ続けて一矢報いたかったか? と聞かれると「もちろん」。腹を決めて戦っていた。

◆18年ぶり

 春場所で優勝か、優勝に準じる成績なら、1998年名古屋場所の若乃花以来18年ぶりの日本出身横綱誕生となる。03年初場所での貴乃花の引退後、日本生まれの横綱が姿を消して久しい。「自分の相撲をやりきったらできるという自信がつきました。頑張っていきます」と琴奨菊。初Vで得た自信を力に、横綱も現実にする。 (永井響太)

 

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