身寄りのない高齢者の見守りや、病院や介護施設に入る際の身元保証をする公益財団法人「日本ライフ協会」が、将来の葬儀代などとして預かったお金を運営資金などで使ってしまっていたことがわかった。

 預託金の不足額は約2億7千万円にのぼる。さらに1億7千万円が関連のNPO法人のために使われて回収不能になっている疑惑もある。

 預託金の早急な回復などを求める国の勧告を受け、協会は理事全員が引責辞任し、弁護士らによる調査委員会を設けて実態解明を進めるとしている。

 会員になっていた高齢者の不安は計り知れない。速やかに問題を洗い出して、責任を明確にするとともに、サービスに支障が生じることのないよう、万全の対応を求めたい。

 離別や死別、生涯未婚率の上昇などもあって一人暮らし世帯は増加傾向だ。また、核家族化や家族関係の変化などによって、子どもがいても頼れない、頼れる親類が近くにいないという人も増えている。

 そんな時代背景の中で、今回のような「身元保証」「家族の代行」をうたうサービスは広がっている。

 運営主体も、地域のNPO、社会福祉協議会、民間会社など様々だ。しかし、どれだけの団体が、どんな形でサービスを提供しているのか、誰も把握していないのが実情だ。

 今回の不正をチェックできたのは、運営主体が公益財団法人だったからだ。公益財団法人には年に一度、事業の報告が義務づけられている。

 こうした不正を防いでいくためにはまず、実態の把握が必要ではないか。そこは行政の役割だろう。

 制度のはざまに対応し、行政を補完するNPOなどの自由な活動はもちろん尊重しなければならない。だが、預託金のようなお金の取り扱いには、一定のルールがほしい。

 例えば、将来の葬儀の費用に備える冠婚葬祭互助会には前受け金の半分を保全するというルールがある。高齢者にとってわかりやすく、安心して利用できるサービスにしていくために、知恵を絞りたい。

 サービスが広がる現状を考えれば、こうした取り組みが急務である一方で、そもそもサービスに頼らないと一人暮らしの人が病院や介護施設を利用できない仕組みや慣習を見直すことはできないだろうか。

 少子高齢化が進むことを考えれば、そんな根っこからの議論もしていく必要がある。