市民の選択は…地域振興を掲げる現市政継続
米軍普天間飛行場の事故や騒音に苦しみ続ける沖縄県宜野湾市の市民は、名護市辺野古への県内移設を推進する政府との対決ではなく、政府の後ろ盾を得て地域振興を掲げる現市政の継続を選んだ。24日に投開票された宜野湾市長選は、現職の佐喜真淳(さきま・あつし)さん(51)が再選した。辺野古への移設に反対する新人の志村恵一郎さん(63)を支援した翁長雄志(おなが・たけし)知事にとっては手痛い1敗となったが、反対派は今後も移設阻止を訴え続ける姿勢を確認した。
「辺野古移設に『宜野湾市民も反対だ』との意思を示す選挙だという私の訴えが届かなかった。市民に浸透しきれなかったのは私の責任です」。「落選」の一報が入ると、志村さんは沈痛な表情で支持者に頭を下げた。記録的な寒波は南国・沖縄にまで届き、普天間飛行場に近い志村さんの選挙事務所の外にはあられのようなものが降っていた。
重苦しい雰囲気に包まれた事務所で志村さんに続きマイクを握った翁長知事も硬い表情を崩さない。「こんなすばらしい候補者を担いだのに、勝てなかったのは申し訳ない」。志村さんが昨年10月に出馬表明して以来、二人三脚で支えてきたのが翁長知事だった。
2014年の名護市長選、知事選、衆院選はいずれも県内移設反対派が勝利した。それだけに、移設反対派にとって、普天間飛行場の地元で敗れた衝撃は計り知れない。ただ「選挙の素人」だった志村さんが、政府・与党が全面的に支援する現職と激しい選挙戦を演じたことで、陣営には「宜野湾市民の間にも県内移設に強い抵抗があることを示した」と受け止める声もある。移設反対派は政府と対立する知事を支えていく覚悟を再確認した。
「相手候補は辺野古移設についてほとんど触れていない。『オール沖縄』という県民の世論は何も変わっていない。我々はこれからも知事を先頭に県内移設はだめだと訴えていきたい」。事務所に駆け付けた移設先の稲嶺進・名護市長は力を込めた。
敗戦の弁の後、翁長知事への思いを聞かれた志村さんもこう答えた。「県全体としてはこれ以上の基地押し付けは反対だという民意がある。法廷闘争も含め、団結して頑張っていただきたい」
移設を巡り、苦しい選択を迫られた宜野湾市民。翁長知事が改めて訴えた。「県内であっちだ、こっちだと悩むのは沖縄の宿命だが、それは沖縄の責任ではない。政府の責任だ」【川上珠実、比嘉洋】