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【Q&A】凍土遮水壁 国費320億円投入 地盤沈下など課題も

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【Q&A】凍土遮水壁 国費320億円投入 地盤沈下など課題も

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福島第1原発で行われた実証試験で状態を確かめるために掘り出された凍土壁=2014年5月16日、福島県(代表撮影)  東京電力は6月2日、福島第1原発で深刻化した汚染水問題の抜本的な対策「凍土遮水壁」の工事に着手しました。

 Q 土を凍らせて壁にするのですか

 A そうです。1~4号機の原子炉建屋には、山側から地下水が1日約400トン流れ込み、汚染水となっており、これを食い止めます。4つの建屋を囲むように約1.5キロにわたり、約1550本の配管を地下約30メートルまで打ち込みます。これらに零下約30度の冷却材を循環させ、周りの土壌を地下水とともに凍らせる仕組みです。

 Q 期待する効果は

 A ほかの汚染水対策と併せると、地下水を約280トン減らせるとされています。建屋の汚染水を少しでも減らし、溶け落ちた燃料の取り出しなど、本来の廃炉作業を進めなければなりません。

 Q 大がかりな工事になりそうですね

 A これほど大規模な工事は初めてです。前例がないため、当初は原子力規制委員会にも、建設による地盤沈下の恐れなど安全性をめぐる慎重な意見が多くありました。

 Q 東電の説明は

 A 建屋の地盤沈下は最大でも16ミリにとどまるとしています。これを受け、規制委は「着工を妨げるものではない」として、5月にゴーサインを出しました。ただ建屋内に汚染水がどの程度あるか正確に測定する方法や、トラブルや自然災害への備えなど課題も残っており、規制委で今後議論されます。

 Q いつ運用を始めますか

 A 来年3月に凍結を始め、2020年まで運用する計画です。

 Q 建設費はいくらですか

 A 国が「研究開発」の名目で320億円の建設費を負担します。この予算を得るため、あえて技術的に難しい凍土壁を採用した政治的な側面も指摘されています。

 Q 維持費は

 A 東電は具体的な数字を明らかにしていません。年間の電力量は一般家庭の最大約1万3000世帯分に上るそうです。

 Q ほかの汚染水対策は進んでいますか

 A 汚染される前の地下水をくみ上げ、海に放出する「地下水バイパス」の運用も5月に始まりましたが、効果はまだ分かりません。汚染水を浄化する「多核種除去設備(ALPS)」もトラブルが続いています。

 Q 現時点の汚染水の量は

 A 1~4号機の建屋地下にある汚染水は、3日時点で約7万2000トン。これまでに処理した汚染水の総量は48万トンに達しています。

 ≪埋設物と交差170カ所 工事にも難点≫

 「凍土遮水壁」の工事では、地下に埋め込む凍結管と地下の埋設物が交差する部分が約170カ所に及び、工事の障害になっている。原子力規制委員会の検討会で明らかになった。埋設物を避ける工法が提示されたが、凍土壁の脆弱(ぜいじゃく)性につながるとして有識者からは疑問の声が上がっている。

 東電によると、敷地内の地下にはケーブルや配管用トンネルなど埋設物が多く通っている。土壌を凍らせて凍土壁を設置するためには、凍結管を1メートル間隔で埋設しなければならない。凍結管と埋設物の交差は山側に76カ所、海側には約90カ所あるという。

 東電は埋設物を避けたり、貫通させたりする工法を提示したが、検討会に参加した有識者からは「把握されていない埋設物があった場合どうするか」「避ける工法できちんと土は凍るのか」との指摘が出た。特に埋設物を避ける工法については、高度な技術が必要とされており、施工を担当する鹿島建設は「作業員の訓練を進め、慎重に施工する姿勢でいる。ベテランがいるのでミスをすることはない」と強調した。(SANKEI EXPRESS

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