医学の世界はどんどん進んでおり、過去には良いと思われていたことが、現在では間違いだったり、もっと良い方法を発見されることがあります。
たとえば柔道などで首を締められ失神したとき、昔は叩くなどの刺激を与えて起こしましたが、その次に出てきた回復法は何もしないことが良しとされ、さらに「仰向けの状態で足を高く上げ、脳に血流を流すことが良い」となった後、現在では前に戻って「何もせず呼吸が苦しそうなら下顎挙上法で気道確保が良い」とされています。
同様に捻挫や筋骨格系の腰痛、頚椎症(けいついしょう:首の痛み)についても昔は安静することが大事だと言われてきましたが、最近の研究では運動とストレッチのほうが効果的であり、むしろ安静は回復を遅らせるというデータがあります。
安静が悪い理由として「筋肉が細り、骨も弱くなるために新たな痛みを引き起こす可能性がある」とのことです。
急性期の激痛がある場合には安静も必要ですが、何日も安静にする必要はなく、できれば軽い運動とストレッチから入って、回復の度合いを考えながら筋トレをしてゆくのをお勧めします。
「安静より運動とストレッチが良い」という話しの裏付けとして、麻酔科医や整形外科の先生方による記事から抜粋しました。
ライター:ペインクリニック麻酔医 富永 喜代先生
- 「痛いときには安静に」は迷信である
- 安静によって次の痛みを引き起こすのではないか? と考えられるようになった。
- 寝たきりの筋肉はやせ細り、関節の動きが悪くなっていく。
- 安静にしていると、体を動かすために必要な筋力が低下し、骨が弱り、骨折や関節の変形が進む。
- 傷ができた直後で、炎症が強く残るタイミングでの安静は重要。
- 安静は、かえって痛みを増悪させる要因であると考えられるようになった。
- 痛みを緩和するにはストレッチングが有効であり、機能改善には筋力増強エクササイズが効果的である
世界各国の腰痛治療ガイドラインによると、医学的論拠が高く、推奨グレードも高い治療方法として、運動療法、認知行動療法、鍼治療などが示されています。一方で、現在一般的に行われている物理療法やコルセットなどの装具療法は推奨グレードが低く、効果もはっきりしないといいます。
疾患解説|整形外科|大東市の整形外科~整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科「恵和会総合クリニック」
首が痛い、首が凝る
・治療
痛みや凝りに対しては、消炎鎮痛薬や筋弛緩薬などの薬物療法が有効です。また、ホットパックによる温熱療法や、筋肉のストレッチ、筋力アップなどの運動療法も効果的です。
痛みが強い場合は、神経ブロックの注射などを行なうことも可能です。
頸椎捻挫(ムチウチ)
・治療
はじめの約1週間の安静後は、頚椎の適切な運動が長期化の予防になります。
痛みに対しては消炎鎮痛薬、経口薬での薬物療法や、ホットパック、牽引、低周波などの理学療法などがあります。
「外傷性頚部症候群」
・症状
交通事故などで頚部の挫傷(くびの捻挫)の後、長期間にわたって頚部痛、肩こり、頭痛、めまい、手のしびれ、などの症状がでます。X線(レントゲン)検査での骨折や脱臼は認められません。
・原因と病態
受傷時に反射的に頚椎に対する損傷を避ける防御のための筋緊張が生じ、衝撃の大きさによっては筋の部分断裂や靭帯の損傷が生じています。
受傷後しばらくの間(1~3か月)は局所に痛みが生じますが、この期間に局所を安静にする習慣がつけば痛みが長引く原因となります。骨折や脱臼がないのに長期にわたって頚椎のカラー装着を行うと、頚部痛や肩こりが長期化する原因となります。
・予防と治療
骨折や脱臼がなければ、受傷後2-4週間の安静の後は頚椎を動かすことが痛みの長期化の予防となります。安静期間はできるだけ短い方がよいでしょう。慢性期には安静や生活制限は行わず、ストレッチを中心とした体操をしっかり行うことが最良の治療となります。