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「ざんげ報道」に批判=国営TVで自白、当局が強要か―党批判に見せしめ宣伝・中国

時事通信 1月24日(日)14時51分配信

 【北京時事】中国の人権問題で法律支援を展開し、今月3日に北京空港から出国しようとした際に拘束されたスウェーデン人男性が20日、国営中央テレビに登場して罪を認め、「中国の政府と人民を傷つけた」と謝罪した。
 中国では最近、共産党・政府に批判的な人物が拘束されると、国営メディアの報道でざんげを迫られる場面が急増。当局の圧力を受けて強要されたとの見方が強いほか、党・政府批判を萎縮させる「見せしめ宣伝」の狙いもあるとみられ、内外の批判が高まっている。
 米国務省のトナー副報道官は21日、「裁判が始まる前から自白を強要されているようだ」と懸念を表明。国際団体「国境なき記者団」(本部パリ)は、欧州連合(EU)に対して「ざんげ報道」を展開する中央テレビと新華社通信に制裁を加えるよう要求した。
 中国国内の改革派知識人の間では、公の場に引きずり出され、自己批判させられた文化大革命(1966~76年)を想起させると批判が強い。法院(裁判所)で行われるべき罪状認否がカメラの前で行われるため「中央テレビは『中央人民テレビ法院』になった」とやゆされている。
 国営メディアや共産党系紙・環球時報によると、スウェーデン人男性ピーター・ダーリン氏(35)は、西側の政府機関とNGOから2009年以降、計150万ドル(約1億7800万円)以上の資金援助を得て、人権派弁護士らと中国国内に13カ所の拠点を作り、「中国維権(権利擁護)緊急援助組」を展開。人権活動家や陳情者らを研修し、中国人権問題の悪化を強調した報告を作成したほか、「民衆をあおって政府と対立させ、集団抗議行動をつくり出そうと意図した」(新華社)と伝えられている。
 しかし、人権派弁護士の李方平氏は中国版ツイッター「微博」で「ピーター氏は、研修や法律支援を通じて中国の法治を向上させようとした」と反論する。習近平指導部は欧米など海外資金を基に人権派弁護士と陳情者らが結び付き、組織化されることに警戒感を強めている。
 中央テレビなどを使った「見せしめ」報道は13年8月、微博で大量のフォロワーを持ち、政府批判を展開した薛蛮子氏が買春容疑で拘束された事件以降、本格化し、記者や人権派弁護士らが相次ぎ登場。最近も、共産党に批判的な書籍を取り扱う香港の「銅鑼湾書店」の桂敏海氏ら関係者5人が相次ぎ失踪した事件で、桂氏が交通死亡事故の罪を償うため「出頭するつもりで帰国した」と自白し、謝罪している。 

最終更新:1月24日(日)16時26分

時事通信