【SIONとは】福山雅治もリスペクト!心の奥に届く、一度聴けば忘れられない唯一無二の歌声
2015年10月4日放送のフジテレビ系『ウタフクヤマ』にて、福山雅治が歌った『街は今日も雨さ』は、ロックシンガー、SION(シオン)の曲です。福山がミュージシャンとして多大な影響を受けたSIONは、デビュー30周年を迎え、今なお精力的に活動中。福山がカバーした曲を中心に、唯一無二の歌声を持つSIONを紹介します。
ロックシンガー、SIONを紹介
1960年、山口県生まれ。19歳で上京し、1985年発表の自主制作盤『新宿の片隅で』で注目を集め、1986年、アルバム『SION』(テイチクレコード)でメジャーデビューを果たしました。熱いロックから魂が震えるバラードまで、粗削りながらも、一度耳にすれば忘れられないハスキーなその歌声は、音楽界に強い衝撃を与えました。
SIONがデビューした当時は、バンドブーム全盛期。ロック業界は大いに盛り上がり、次々にバンドがデビューしては売れていきました。その中にあって、迎合せずに活動を続けるSION。不器用ともいえますが、流されないスタイルと独自の音楽性に、確実にファンを掴んでいったのです。
その後、レコード会社移籍が続く不遇の時代もあったようですが、2015年にデビュー30周年を迎えました。同時期にデビューし、30年続けているミュージシャンがどれだけいるのでしょうか?そう考えると、すごい業績です。
福山雅治がカバーした曲を中心に、SIONの楽曲や魅力を紹介していきます。
SION、その独特なスタイルと活動
ほかの誰とも違う、唯一無二の歌声
尖らせた長髪にギラギラした目つき、エスニックな装いも相まって、デビュー当時のSIONは他とは一線を画す存在でした。眉毛を剃った近付き難い風貌で、溢れる言葉を叩きつけるように、抑えきれないエネルギーを持て余しているかのように歌う若き日の姿には、目が釘付けになったのを覚えています。
デビュー当初はひとりで活動をしていましたが、「THE MOGAMI」や「The Cat Scratch Combo」といったバックバンドと共に、アルバム制作とライブ活動を続け、音の広がりが生まれました。また、俳優でもあり映画監督としても知られる鬼才、ジョン・ルーリー率いるラウンジ・リザースと共演、次第にブルージーな横揺れの音に辿り着きます。そして今は、それらの経験が包括された、ロックやブルースを歌っています。
音符などないかのようにまるで話すように歌い、ときに社会に挑むように叫ぶ。ハスキーで独特な歌声が、聴く者の心に楔を打ち付けます。特にバラードでは、切ないリアリティを伴った言葉がスーッと染み入ってくるのです。ほかの誰とも違う、そして誰も真似することができない、唯一無二のシンガーと言えます。
現在は、長年の酷使からでしょうか、ハスキーを通り越してつぶれているようですが、不思議と言葉はきちんと聞き取れるのです。そして、年輪を重ねたその歌声は、昔と変わらず心を揺さぶります。
デビュー当時?ギラギラしていたSION、若いです。
独特なファッションセンス
メジャーデビューしたSIONは、一部ミュージシャンに流行っていたエスニックなファッションを好んでいたようです。長髪に花柄のシャツ、ペイズリーのパンツにブーツ、たくさんのピアスとインドっぽい大ぶりのシルバーアクセサリーをたくさん身に着ける、そんな感じでした。
そうかと思えば、次第にマントのようなボロ布?をまとい、砂漠の住人といった謎めいた雰囲気に。髭を蓄え、多少肉付きもよくなりました。
金髪や黒髪の短髪にした時期もありましたが、今は白髪交じりの長髪です。シンプルなジャケットとパンツ姿のときもありますが、レザーや派手な柄のシャツは健在。ヨージヤマモトをよく着ているようですし、パンクス御用達のボンデージパンツを愛用しています。スカーフや帽子、ベルトのバックルなどの小物にもこだわりがあり、自身でアクセサリーをプロデュースし、販売もしています。
いつの時代も、派手で独特なロックファッションが多いSION。個性的な顔立ちにマッチしている上に、着こなしも上手なので、なかなか真似できないオシャレがファンの憧れでもあります。
1986年9月21日発売 シングル『KNOCK ON THE HEART』
初期のエスニックなファッションです。
2015年、シングル『俺の空は此処にある』MV
毎年恒例のライブ「SION-YAON 2014」の映像です。
現在もロックなファッションが似合います。
いつも左手薬指にスカルリングが。
遂には、完全受注生産、SIONプロデュースの
飛行舎Silver スカルリングが発売されました。
実は俳優業も。ファッションセンスが目に留まり、モデルに抜擢?!
SIONが、ときおり俳優としてドラマに出演しているのをご存知でしょうか?
これまでに出た作品を紹介します。
1.日本テレビ系『私立探偵 濱マイク』12話(2002年)
最終回の「ビターズエンド」に出演。主役である濱マイクの幼なじみ・殺し屋Bを演じました。エンディングには、SIONの『通報されるくらいに』も流れ、最後にふさわしい場面に仕上がっていたと思います。エキセントリックな役柄のBは、金髪で異彩を放つ風貌とマッチしていました。
2.NHK大河ドラマ『龍馬伝』最終回(2010年)
竜馬暗殺犯である渡辺篤役。同じ暗殺犯には、元BLANKY JET CITYのドラマーだった中村達也も出演しました。見慣れない「まげ姿」は、SIONの丸顔に不似合でギョッとしましたが、セリフは少ないとは言え、重要な役どころです。演技経験の少ないSIONが選ばれたのは、その存在感から、主演の福山雅治が推薦したからなのでしょう。
3.日本テレビ系『悪魔ちゃん』第2話(2012年)
自称ミュージシャンの父親・中原 文市役。娘に向けて歌うシーンがあり、自身の曲『お前だけ守れたら』をアレンジし、弾き語りで披露しました。ふいに空気が止まり、SIONがその場を支配していたように感じました。
モデルデビュー!!
先に紹介した通り、ファッションにもこだわりがある、おしゃれなSION。それが注目されたのでしょうか、ファッション・デザイナー、スズキタカユキ/Suzuki Takayuki氏の目に留まり、「2012 spring-summer collection/forward」にモデルとして起用されました!
ちょっと照れくさそうなSION。いつもと違うシンプルな装いが新鮮です。
あまり見られない雰囲気のSIONです。
SIONを堪能できる、おすすめのアルバム
『夜しか泳げない』ゆったりとしたブルースに酔う
ブルージーな楽曲を多数制作した、5stアルバムです。どの曲も、ふんわりとした空気をまとい、宙を漂うようなフワフワとした心地よさを感じさせてくれます。1曲目の『調子はどうだい』にはじまり、『遊ぼうよ』、『きれいだ』など、ラフで楽しい曲が多く、SIONのブルースが確立した作品でもあると思います。個人的に大好きなアルバムです。
ただ、8曲目の『12号室』だけは、空気がガラッと変わります。SIONの体験と思われる、子供時代の話。美しい彼女(少女?)との思い出は心温まるものの、ハッとさせられ、胸をチクリと刺す1曲です。
初期のスローナンバーを集めた『Ain't Nothin'I Can Do』
1stアルバム『SION』から6stアルバム『かわいい女』までの、スローなナンバーを集めたベスト盤。しんみりと独りの時間に浸りたいときや、お酒を飲みながら聴きたいアルバムです。ときに絞り出すようであり、ときに耳元でささやくような歌声。心の琴線に触れ、涙腺が緩む1枚です。
ファンのリクエスト集『I GET REQUESTS~SION with Bun Matsuda~』
デビュー25周年を記念してアルバムを制作するにあたり、ファンから好きな曲のアンケートを募集。トップ10に輝いた曲を、アコースティックバージョンにてセルフカバーした作品です。ファンが本当に好きなSIONの人気曲が集まっていると言えるでしょう。代表曲とも言える『俺の声』にはじまり、この後に紹介する『SORRY BABY』『12月』『街は今日も雨さ』など、初期の作品が多く入りました。
SIONの盟友でもあるギタリスト・松田文と制作。50歳になったSIONの焼き直しは、変わらないようでいながらも歴史の厚みと変化を感じさせてくれます。過去と聴き比べてみると、歌のニュアンスの違いなどをより楽しめますよ。
福山雅治がカバーした曲&コラボ作品
福山雅治が事務所のオーディションで熱唱した『SORRY BABY』
SIONの切ないバラードの代表曲とも言える『SORRY BABY』。実は、上京した福山雅治が事務所のオーディションを受けに行ったときに、歌った曲でもあるそうです。その後、デビューした福山は、両A面シングル『IT’S ONLY LOVE/SORRY BABY』でカバーしました。
もとは、SIONのメジャーデビューアルバム『SION』に収録されています。
SORRY BABY 誰かさんみたいに 俺に明日見えないから
SORRY BABY 約束なんてとてもできたもんじゃないんだ
こんな俺をうらむかね
(出典:SION アルバム『SION』SORRY BABY/1986年)
こんな歌い出しではじまります。愛する女性に歌ったであろうこの歌詞は、明日を約束できない自分は不器用な男。傷つけたくなんかないし、ただ笑ってほしいという気持ちを正直にさらけだしたラブソングです。SIONの語りのような歌声と、福山雅治の伸びやかな歌声は、同じ曲でありながら違った印象に。でも、その切なさはどちらも胸に響きます。
『街は今日も雨さ』福山雅治にとっての「東京」の歌
2015年10月4日放送のフジテレビ系『ウタフクヤマ』にて、福山がフルコーラスをカバーした『街は今日も雨さ』。この曲もアルバム『SION』に収録されています。
朝から晩まで指紋がすりきれるほど 皿を洗いつづけてたったの3200円
つぶれかけたスナックの裏にある かび臭い部屋 俺のねぐら
なにが都会の気ままな暮らしだ
それどこじゃねぇ まったくそれどこじゃねぇ
(出典:SION アルバム『SION』街は今日も雨さ/1986年)
30年以上前のことになりますが、1日中皿洗いをして3200円なの?と驚きます。今では考えにくい、厳しい生活だったのですね。母親の制止を振り切って16歳で家を出たけれど、生きるために働きづめで、湿った部屋での暮らしに疲弊する毎日。自分の心がびしょぬれで街がかすんで見える、と歌っています。
実は、この3200円の皿洗いは、上京する前の地元・山口での仕事だったそうです。また、上京して2軒目に住んだ中野にあるアパートが、この歌詞に出てきた「ねぐら」だったとか。本当に苦しい下積み時代の経験が、歌として昇華した作品でもあります。
東京に行くと、こんなにつらい生活になるんだと想像していた福山。しかし、東京での最初のアルバイトで月に16万円稼ぎ、「SIONさんよりセレブだ!」と思ってしまったそうです。
クリスマスに思い出す『12月』は、クリスマスらしからぬ歌詞
ふたりに疲れてはひとりに戻り
また誰か恋しくてまた繰り返す
屋根の上の猫がそんな俺を見て
めずらしいものでも見るよな顔して笑った
(出典:SION アルバム『春夏秋冬』12月/1987年)
今は10月中旬です。急に肌寒くなってきました。この記事を書くにあたって、頭の中をSIONが占めていることもあり、私の頭の中にはふいに『12月』が流れてきます。
繰り返す恋愛を、猫に笑われている。はたから見れば、滑稽なもんだと自嘲気味です。
12月
街はクリスマス気分
あちこちから想い出したようにジョンの声
そして俺ときたらいつもこの頃になると
なにかやり残したようなやわらかな後悔をする
(出典:SION アルバム『春夏秋冬』12月/1987年)
12月になると、街は華やかになって、クリスマスの賑わいに包まれます。移ろいゆくときに流されてしまい、目指す場所がわからなくなって迷子になってしまった。来るべきクリスマスへの高揚とは対照的に、この季節は後悔が残ってしまうと歌うのです。クリスマス気分を感じさせないどころか、聴いている自分まで身につまされ、なんだか悲しい気分に。
この曲からは、寒さが連想されると同時に1年を終えるさみしさを感じますが、私にとってはクリスマスが近付くと思い出される1曲です。粉雪が舞う景色が脳裏に浮かび上がってきます。
『ノスタルジア』別れた恋人への男のノスタルジー
ノスタルジア 遠ざかる人よ
ノスタルジア 愛されてるかい
そして見知らぬ男のことを
愛し始めたりしてるかい
(出典:SION シングル『がんばれがんばれ』ノスタルジア/1996年)
少しの未練とともに終わってしまった恋を歌った、失恋ソングです。もう友達としか呼べないかつての恋人をふと想い出し、なかなかふっきることができない男心。俺の恋愛なんて、新聞の片隅にも乗らないちっぽけなものだけど、2人の愛は光となって胸に輝いているのです。
実はこの曲と、先に紹介した『SORRY BABY』『街は今日も雨さ』の作詞は、SION&OKAMOTOとなっています。このOKAMOTOとは、作詞家の岡本おさみ氏のこと。吉田拓郎とのコンビで、森進一のヒット曲『襟裳岬』などを生み出した方です。若かったSIONに、作詞の手ほどきをされたのでしょうか?
惜しまれつつ終了した、福山雅治のオールナイトニッポン「魂のラジオ」での弾き語りを聴きましたが、カバーされた曲の中で、福山の声に一番しっくりしていたと思います。
SIONのデビュー20周年記念コラボ作品『たまには自分を褒めてやろう』
相変わらず俺の頭はガキで
大げさに天国と地獄を行ったり来たり
動く歩道を反対から歩いている感じだ
いくら歩いても進まない
(出典:SIONと福山雅治 シングル『たまには自分を褒めてやろう』/2005年)
元気だったと思えば次の瞬間に落ち込んだり、なかなかうまく進まない人生。だけど、くさらずにがんばってるんだから、たまには自分を褒めてやろう!と歌っています。ミディアムテンポな曲調で、元気をもらえる一曲です。
カップリング曲『曇り空、ふたりで』は、曇り空で街には色すら感じられないほど悲しいことが多いけれど、また明日がやってくるのだから眠ろう。そんなしっとりとしたバラードです。歌声を前面に出したアレンジで、子守歌のような優しい1曲に仕上がっています。
福山からの熱いラブコールにより実現した、このコラボシングルを発表したのは2005年6月8日。同日に、SION自身もデビュー20周年を記念したアルバム『東京ノクターン』を発表しました。2曲とも収録されていますが、『たまには自分を褒めてやろう』はソロアコースティックバージョンとなっています。
『石塊(いしくれ)のプライド』作詞SION×作曲福山雅治のコラボ曲
『たまには自分を褒めてやろう』から5年、福山からSIONにアプローチして完成した『石塊のプライド』。福山雅治のデビュー20周年記念のベストアルバムに新曲を入れたいと思い、実現したのだとか。福山が「普段使わないテーマで」とメロディーだけの仮歌を渡し、それを聴いたSIONが詞を書き上げたそうです。
だけどそれは 青い自惚れ
蹴躓いて 叩きつけられ
思い知らされ 自棄になって それでもまだ
この道を 歩いたのは石塊のプライド
(出典:福山雅治 アルバム『THE BEST BANG!!』石塊のプライド/2010年)
福山というよりSION自身の道のりでしょうか?石塊(いしくれ)とは、石ころの意味。SIONの出身地・山口では「この石塊が!」と、あまり良い意味で使われないそうです。2人とも地方から上京し、コンプレックスを持ちながらも夢をかなえたという共通点があり、福山もこの歌詞には共感できたと言います。
福山バージョンは、ミディアムテンポでアコースティックギターが心地よい、さわやかなサウンドです。ライブでは、アコーディオンを加えるなど、より楽し気で厚みのある曲になっています。SIONも自身の25周年記念アルバムに収録し、熱く楽しく歌っています。
立ち止まることを知らないSION
2015年でデビュー30周年を迎えたSIONは、今では立派なベテランシンガー。85年の自主制作盤から現在に至るまで、25枚のアルバムをリリースしています。2008年からは、宅録アルバム『Naked Tracks』も併せて発表。曲の重複はあるものの、ほぼ1年に1枚のハイペースでリリースを続ける精力的な活動を続けてきました。
そのハイペースの理由を問われると、「他に何もできないから。とにかくそれをすることしか自分には存在価値がないんだよ。」と照れくさそうに笑ったそうです。SIONは、シャイで照れ屋さん。くしゃっと笑った顔と、いまだ訛りが残る話し方に愛嬌がある少年のようなオジサンです。
一転して、あうんの呼吸で超絶な演奏をするバックバンドを従えたライブでは、熱い魂を咆哮し、ときに静かに歌い上げます。生で聴くその歌声は鳥肌もので、心の深いところを触れられてしまうのです。しかし、MCになると「歌詞が見えん」とオジサン発言が出たり、女性客が「SION抱いて!」と叫べば、「抱いちゃる、抱いちゃる」とお茶目に返すなど、リラックスして楽しんでいる様子になごむ場面も。
猫を愛し、体のあちこちにガタが出はじめ、忘れっぽくなっていると嘆く55歳のSION。きっとこれからも曲を作り、アルバムをリリースし、毎年恒例のライブ「SION-YAON」も続けていくことでしょう。歌しかできないと謙遜しながらも、歌があるから生きてこられたとも言っています。「俺の声」が出る限り、体が動く限り、その独特の歌声で魂を震わせ続けてくれるはず。いえ、そう願っています。
SIONの公式ブログ 愛猫たまごとの日常やツアー中のできごとなど、日記も見られます。
SIONが所属する事務所marsmusicのサイト
SIONが所属するレコード会社テイチクエンターテインメントのサイト
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