娘を看護学校入試会場まで送ってきた。離れて暮らしていることから、父親らしいことをあまりできないので、受験費用と送り迎え、学資の支出、メールでの英数の通信講座…、これ位は、せめてもの罪滅ぼしだ。
ただ、「今後も成長が期待される一定の生計を立てることができる職業」として看護師の人気が高まってきていることから、倍率も高くなっており、合格は厳しいかもしれない。
娘も含めて20代の受験生が最も多く、次が10代、そして30代の受験生が10数人、更には40代も2~3人いたそうだ。娘はそのうちの30代の女性と仲良くなり、色々情報交換等したとのことだが、30代の受験生の殆どは「シングルマザー」だそうで、「子供さんを育てるためにも、しっかりした職業に就こうと考えたのかな?」等、色々な感想を言っていた。
俺は「まぁ、試験の結果はどうあれ、出せるものを出し切ったならいいよ。頭を使ったから疲れたでしょう。甘い物食べに行こう」と労い、ファミレスで食事をしながら、労働問題やワーキングプアについて話した。
俺の学校時代の友人で、リストラや会社の倒産等により、職を失った友人が結構多い。NTT(50歳定年制)、建設不況、銀行のドラスティックな人事慣行、製造業の地盤沈下…これらがその要因だ。
俺が学生の時は、郵便局や社会保険庁の公務員、電電公社等の政府系企業に入社できれば「勝ち組」だっただろうが、まさかこれらの組織が民営化され、そこで働く労働者の労働条件が大きく低下する等の事態を迎えるなんて夢にも思わなかった。
また、銀行、建設会社、鉄鋼会社、更には三洋電機、山一証券、シャープ、北海道拓殖銀行、長銀等は、入社した時点で「勝ち組」だ。しかし、現在では、倒産・廃業を余儀なくされたり、倒産を免れても賃金は切り下げられたり、企業の統廃合でリストラ、出向を余儀なくされたりと、非常に厳しい現況にある。
「10年後に食える仕事、食えない仕事」を一昨年、読んだ。
日本はグローバリズムにさらされ、現在の仕事は、ジャパンプレミアム(日本人でなければできない仕事)、レッドオーシャン(日本人でなくてもできる仕事、主として高度な技術が必要でない製造業。ただ、稼ぐヒトはとことん稼ぐ弱肉強食の世界であり、メジャーリーグやIT等で富を積み重ねることは可能)等の世界に分類され、現在の常識や労働慣行も、通用しなくなるような大変動が来るというような示唆に富んだ本で、非常に勉強になったというか、背筋が凍る思いでページをめくった。
「日本は、今ある国力に胡坐をかかずに、更に国際競争力、技術力を高め、グローバル社会に対応できるようにしておかなければならないね」というのが娘と話した結論だった。
前回の続きを書く。
高校入試は無事、パスした。他の友人達もほぼ合格した。
ただ、俺の場合は、努力も受験勉強もしていなかったので嬉しさは無く、「まぁ、こんなもんかなぁ」と思うだけだった。
そしていよいよ卒業式当日を迎えた。
教室のいつもの席に座り、クラスメイトを見渡した…「あぁ、みんなともう、これでお別れか…」。。。できれば、ずっとこのクラスメイトのままで、笑い合ったり、バカやったりはしゃいだりして、過ごしていたいと思った。
卒業証書の授与が終わり、クラスに戻ると、卒業文集が配布された。
文集の中に「ベスト3」コーナーがある。
「面白いヒト」、「幼稚なヒト」、「偉くなりそうなヒト」…中学生らしい他愛のない項目について、クラスの男子、女子でベスト3を投票によって決めたのだが、その投票結果が載っていた。
面白いヒト部門では、俺は2位で、幼稚なヒト部門でも2位で、偉くなりそうなヒトには名前は無かった。まぁ、クラスで「それなり」の存在感を示せたみたいだ。
ケイコの名前はどこにも載っていなかったが、仮に「人気のあるヒト」とか「彼女にしたいヒト」というようなランキングがあったら、ブッチギリの1位だろうな。現に、修学旅行恒例の、「好きな異性発表会」では、ケイコはクラスの過半数の男子からの支持を得てたもん。
ひとしきり、卒業文集を眺めていたら、担任が入ってきて、卒業を祝う言葉を述べてくれたが、その内容は覚えていない。
ただ、担任が話をするにつれて、殆どの女子が泣き出した。
俺は男子だから泣きはしなかったが、女子が泣く理由、よく判った。
「二度と会えない訳じゃないし、卒業は悲しいことではない。でも、みんなと過ごしたこの時間、今は『ぬくもり』だけど、間もなく『想い出』となり、やがては『記憶』になる。それが嫌だな」
そう思いながらも、みんなにバイバイをして、教室を出て、下駄箱で靴を履き替え、校舎を出た。
中庭のところで、下級生が俺を待ち構えてくれていた。卒業式が終わって、ずっと待っていたようだ。
「ゆうさん、おそい~!」
と言いながら、女子生徒にもみくしゃにされ、ボタンを全てとられた。袖のボタンも含めてだ。
「彼女達は下級生なのだから、俺の実態を知らない。単なる背の高い、脚の速い先輩なんだろうな」
と思ったが、正直、悪い気はしなかった。
カジ君の「ゆうは、下級生だけにはモテるよな。ソトヅラだけは良いからな」というやっかみにも、「まぁな!」と余裕で受け流せた位だったから。
こうして、楽しい中学時代が終わり、高校時代に進むこととなる。。。