[PR]

 ご近所や職場、学校などで、外国出身の人たちと出会う機会が増えています。朝日新聞デジタルのアンケートには「多様性を尊重する社会に」という意見から「日本社会のルールを守って」という意見まで、たくさんの声が寄せられています。第1回は、ともに暮らす社会のあり方について寄せられた声を紹介します。

■米国人の自治会長 サム・テケンブロックさん(58)

 大阪府枚方市で約180世帯の自治会長を7年ほど務めています。妻は日本人。外国人は私だけです。アメリカから30年前に来日して、大学の英語講師や輸入建材販売の仕事をしながら10年前にこの地で暮らし始めました。

 アメリカには自治会のような組織はなく、役員会で会長のくじを引き当てたときはびっくりしました。回覧板や夏祭りの準備、役所とのやりとり。わからないことばかりです。そのつど人に聞いて勉強しました。一生懸命やると、みんな助けてくれるものです。

 私が自治会のスローガンに掲げたのがスマイルです。笑顔の効果は世界中同じ。相手の警戒心を解き、安心感を与え、ハッピーになれます。道ですれ違うときは笑顔であいさつするよう呼びかけました。

 日本人は外国人というだけで壁を作る人がまだまだ多い。外国人という言葉に「われわれの向こう側」という響きがあるように感じます。私が日本語で話しかけても「ノーイングリッシュ」と避けられることもあります。でも、そこで止まってしまってはだめ。笑顔であいさつすれば笑顔が返ってくる。そこから交流が生まれるのです。

 日本で暮らす外国人には「郷に入っては郷に従え」の考えを実践してほしい。文化や生活習慣の違いから、最初はフラストレーションがたまります。日本人の本音と建前の使い分けに、私も戸惑いました。でもつきあっていると、相手を傷つけない日本人特有の思いやりの精神がわかってきます。時間をかけて慣れることです。

 まず日本の社会に溶け込むことです。日本語の習得も大事ですが、話せなくても地域のイベントなどに参加することです。日本人と外国人の共生は難しいことではありません。互いに理解できないことは率直に言う。壁を作らず、人対人で接すれば、必ず理解し合えるはずです。(聞き手・楢崎貴司)

     ◇

 アンケートには、さまざまな文化が共生する社会を目指すべきだという意見が多く寄せられました。

●「幼少の頃から駐在員をしていた父と一緒に海外を回りました。日本は国際社会では例外的に外国人が少ない国です。世界に通じる国際国家となっていくには、治安が悪くなろうが摩擦が生じようが、それらと向き合い、乗り越えていくほかはありません。海外から見れば日本は相当、国際感覚のない非常識な国に見えています」(大阪府・50代男性)

●「異文化は自文化を映す鏡なので、日本人が自文化の長所短所を理解するようになり、同時に外圧によってしか変われない日本の制度上の不備や独善性を是正せざるを得なくなり、日本の独自性を保ちつつも、他の価値観・文化を取り入れることにより日本の社会が豊かになる」(神奈川県・50代女性)

●「『郷に入っては郷に従え』という考え方に対しては、大きな疑問を抱かざるをえない。それは外国人のみならず、住民それぞれに対して『郷』の価値観に従うことを強いる考え方だからだ。そもそも文化は流動的だし、グローバル化により価値観が多様化した世界に生きているのだから、それぞれの価値観の折り合いをどうやってつけるかを考えるべきだ」(京都府・20代男性)

●「いろいろな背景を持つ人々がともに住めば、生活習慣や言葉の違いなどから多少なりとも行き違いは起こるだろうが、その『違い』を楽しめる包容力のある社会に日本がなっていってほしい。『多様性が高い方が楽しい』と多くの人が思えるように」(京都府・30代女性)

●「日本の経済と社会の活性化に役立つ。ただ労働力になるだけでなく、消費者として国内市場の拡大にも役立つ。グローバル化の今日、国際社会の中で活躍できる日本人を増やす必要があるが、日本に住む外国人が増えることは、異文化の中で活躍できる日本人の育成にも役立つ。日本の歴史を見ると、外国人が日本に入り、定住することによって日本は大きな発展を遂げたし、移入された文化は今日の日本の文化伝統の一部になっている」(長野県・60代男性)

●「外国人との共生問題を解決することで、日本人の中にいるマイノリティー(セクシュアルマイノリティーや障害を持つ人など)の受容につながると思います。マジョリティーの価値観だけが全てだという風潮を無くし、多様な価値観が認められる社会になってほしいものです」(和歌山県・20代女性)

●「多文化共生には市民のボランティアや自治体の努力に頼るだけでなく、国レベルで人権や教育についての法制度の整備と社会統合政策が必要。真の多文化共生が実現できれば、日本に理解と愛着のある人材が社会の活力となり、文化的な豊かさ、グローバルな競争力の向上にもつながる。国際結婚も増えた今、『日本人=単一民族』幻想を脱し、偏狭な排除より、豊かな共生の道を選びたい」(静岡県・40代女性)

     ◇

 日本に住むなら慣習やルールを守ってもらいたいという声や、外国人の受け入れ自体に慎重な意見も寄せられています。

●「日本人と日本文化は色々な意味で仏教や神道の影響を受けています。日本の文化が好きで日本に来ている人は日本文化を尊重してくれると思いますが、お金とか暮らしやすさを求めてくる人には基本的に不信感があります。日本人には先祖を敬う国民性があります。そういう意味でも自分の国を簡単に捨ててる人をあまり信用できません」(神奈川県・50代女性)

●「昔から『郷に入らば郷に従え』と言うのに、『郷に従わず』自国のつもりで暮らすのなら、日本に住む理由がない。一時的な避難で、定住する気がない難民なら仕方ないけど、定住するなら、やはり『郷に従うべきだ』と思う」(京都府・40代男性)

●「異なる文化背景の人々と『共存』するための総合的なノウハウがまだ日本には無いので、これから先、摩擦は避けられない。日本の文化に慣れてもらうとか、理解してもらうとか、生ぬるくこちらの文化の押しつけをして解決するような問題ではない。移民を受け入れて、多民族国家となっている国々の現状をよく見れば、安易に移民、難民の受け入れをしようなどと言えないはず」(北海道・50代女性)

●「日本の法律を守り、文化、慣習を理解した上で生活していただきたいと思います。日本人が外国に住む場合も同じです。『郷に入れば郷に従え』の精神は、国を問わず必要だと思います。『多様な文化や価値観の共生』とよく言いますが、日本人に問う前に、そもそも来日する外国人のうち、どの程度の割合でそのような考え方を持っているのでしょうか。外国人定住者を受け入れるのであれば、もっと教育やサポート態勢を整え、悪質な滞在者は退去させる。その上での共生ではないでしょうか」(大阪府・50代女性)

●「外国人とひとくくりでは対応できない。駐在員、留学生、残留孤児とともに来日した配偶者や親戚家族など多様で、交流と摩擦がない交ぜです。長年の日本の慣習をどう理解して生活してもらうか、また私達も相手をどう理解するか課題が多い。行政が率先して多言語の地域情報の提供に努めて欲しいと思います」(東京都・50代女性)

●「どの国も同様でしょうが、お互いのお国柄や思想、生活習慣を尊重しつつも、日本に住むことを選択した以上は、日本の文化やマナーは最低限守って頂きたいです。日本人も島国特有の外部者を排除する思想にもそろそろ改革が必要ではないでしょうか。私自身も含め、先入観を極力排除して、友好な関係を築きたい」(東京都・40代女性)

●「小さい頃から、周囲の人たちに迷惑をかけないことを教えられている『日本人』と違って、突然、日本に来た外国人には、そんな配慮はない。深夜の騒音などクレームを入れると差別だ、と逆にけんかになった」(大阪府・50代女性)

■今回の企画のねらい

 日本に住む外国人は約217万2千人(2015年6月)と、過去最多になりました。政府は介護分野などで外国人労働者を増やすことも検討しています。また、世界的な課題である難民の受け入れも、日本にとってひとごとではありません。

 今回のフォーラムは、日本語を母語とせず、育った環境も文化も違う人とともに暮らすためのしくみづくりや心構えについて、皆で意見を出しあい、多様な人が暮らす日本社会のありかたを考える場にできないかと企画しました。「外国人どうこうなんて時代遅れでは?」といった声もいただきましたが、意見を交わす最初の一歩にしたいと思っています。

     ◇

 習慣の違いや言葉が通じない壁を乗り越えて、どう共生していくか。あなたが住んでいる地域での取り組みや工夫を教えて下さい。asahi_forum@asahi.comメールするか、〒104・8011(所在地不要)朝日新聞オピニオン編集部「隣の外国人係」へ。朝日新聞デジタルのフォーラムページ(http://t.asahi.com/forum別ウインドウで開きます)でアンケートも実施しています。