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福島第1凍土壁稼働できず 月末にも完成も規制委、認可に慎重

産経新聞 1月24日(日)7時55分配信

 東京電力福島第1原発事故に伴う汚染水問題で、建屋周辺の土壌を凍らせる「凍土遮水壁(とうどしゃすいへき)」の凍結に向けた工事が今月末にも完成することが23日、分かった。しかし、原子力規制委員会は「安全な運用が確認できない」として、稼働に待ったをかけている。国が汚染水問題の抜本策と位置付け、国費320億円を投じた凍土壁は、規制委の認可が得られず“無用の長物”と化す恐れが出ている。(原子力取材班)

 東電によると、凍土壁は山側と海側に分けて工事が行われている。山側は平成26年6月に着工し、27年4月に試験凍結を始めた。海側には鋼管を縦に並べた別の遮水壁があり、工事も難航が予想されたため規制委は必要性に疑義を示していたが、同年7月、海側についても着工を認可した。管に冷媒を入れる作業が今月末にも終わり、凍土壁は試運転後、いつでも凍結できる態勢になるという。

 東電は「試験凍結で土壌が凍るというデータが得られた」と自信を示す。

 もともと凍土壁は昨年3月に本格運用を始める予定だったが、規制委の認可が得られず1年延長。規制委は、凍土壁で地下水を止めることで、建屋地下にたまる高濃度の汚染水が土壌に漏れ出さないか、東電に対策を求めてきた。規制委によると、東電からこれまで納得できる回答が得られず、今月27日に検討会を開き、議論を進めるという。

 予想外の事態も浮上した。海側を鋼管遮水壁で閉じた後、海側の井戸から地下水のくみ上げを始めたところ、放射性物質の濃度が高く浄化後の海の放出ができず、そのまま建屋に送水せざるを得なくなった。遮水壁を作ったことでさらに汚染水を増やす結果になったことで、規制委側は「地下水の管理は難しい」と、凍土壁の運用に消極的になっている側面もある。

 原発事故は3月で5年を迎えるが、汚染水問題の解決が遠のいていることに対し、規制委の田中俊一委員長はこれまで「凍土壁ができれば汚染水問題がなくなるという変な錯覚をまき散らしているところに過ちがある。(凍土壁は)不要では、と指摘しても東電や経済産業省は検討しない」と指摘している。

 凍土遮水壁 建屋周辺の土壌の水分を凍らせて、建屋内への地下水の流入を抑制する工法。約1500本の凍結管(1本の長さ26・4メートル)を埋め、その中に冷媒となるマイナス30度の塩化カルシウム水溶液を循環させる。壁の総延長は約1500メートルで、厚さは1~2メートル。凍土壁はトンネル工事などでも使われるが、福島第1原発の凍土は計約7万立方メートルにもなり、日本最大となる。

最終更新:1月24日(日)9時29分

産経新聞

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