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太平洋の双翼 作者: カズヤン
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九六陸攻改 飛翔ス

明けましておめでとうございます。下手くそな小説ですが、これからもお願いします。
 ドイツへの艦艇輸出から三か月後、年が明けて昭和十一年となった。
『明けましておめでとうございます。』

 緋村たちは神谷家で正月を迎えていた。なお、なぜか一緒に杉野も来ていた。
「なんで新年早々おまえに会わなならんねん。」
「だって偕行社にいてもつまらんもん。」

 そう言いながらも緋村は杉野が来たのを歓迎していた。
「緋村さん、お餅どうぞ。」
「ありがとうございます。」
 緋村は差し出されたお餅を受け取った。

「ところで緋村さん達は三が日の予定はどうなんですか?」
「ああ、三が日は家にいる予定です。」
「じゃあ一緒に初詣に行きましょうよ。良かったら杉野さんもどうですか?」
「お、ええですな。それに、こんなベッピンさんと一緒やったら嬉しいですわ。」
「もう、ほめても何もでませんよ。」

 緋村は杉野と楽しそうに話す薫を、じっと見ていた。
「先輩、どうしました?」
「ん?いや、別に。」
 そう言って緋村は黙って雑煮を掻き込んだ。

その後、緋村たちは近所にある神社へと向かった。
「うわあ、やっぱ混んどるなあ。」
「はぐれないよう気を付けないといけませんね。」

 やがて、初詣を終え、緋村たちは帰りの道を歩いていた。
「何をお願いしたんですか?」
「秘密や。」
「教えたっていいじゃないですかぁ、先輩。」
「くどい!!」
「そんなに怒らんくても...」
(薫さんと仲良くなれますように、なんて言えるかい。)


 海軍省

「あけましておめでとう緋村君。今年もよろしく頼むよ。」
「明けましておめでとうございます、山本中将。こちらこそよろしくお願いします。」
「正月は楽しめたかね?」
「はい、山本中将はどうでした?」
「私は君と違って仕事が多いからね。せいぜい餅を食べたくらいだよ。」
「すみません自分たちだけ...」
「いやいや、今年は大変な年になるからな。」
「そうですねえ。」

 緋村は二月に起こる二二六事件を思い出していた。
「何としても高橋大臣たちを殺させてはいけません。」
「うむ、特に高橋大臣は日本に必要な方だからな。」

 高橋是清は「ダルマ蔵相」と呼ばれて慕われた人物であり、史実では軍の財政削減を行ったために、暗殺の対象にされてしまった。

「これを乗り越えれば日中戦争を回避できます。」
「うむ、とにかく我々も努力しよう。」
「ありがとうございます。」

 その翌日、緋村は各務原陸軍基地へとやってきた。
「あ、先輩。やっと来ましたか。」
 各務原には村田が一足早く到着していた。
「ああ、山本中将と話してたからな。」

 緋村たちが各務原陸軍基地に来ている理由は、九六陸攻改の改良型の試作機が、各務原基地で初飛行するためである。

 この九六陸攻改は、主翼を再設計し、主翼燃料タンクを防弾ゴムで覆い、エンジンを新型の金星44型を搭載している。

「しかし、金星44型が史実より早く完成するとはな。」
「山本中将が発動機の開発強化を指示したおかげですね。」

 山本中将は、大馬力発動機の開発を指示しており、中島飛行機でも栄エンジンの開発が早く開始されていた。

 この金星44型は、史実の51型と同等の性能であり、改良型九六陸攻も、最終生産型である二三型と同じ設計をしていた。

 やがて、九六陸攻にテストパイロットが乗りこみ、整備兵がエンジンのイナーシャを回し始める。そして、飛行準備が完了した九六陸攻は滑走路へ向かい、離陸を開始する。

「頼む、ちゃんと飛んでくれ...」
 緋村の隣に立っている三菱の技術者が、祈りながらそうつぶやいていた。緋村も無事飛行することを願いながら、離陸する九六陸攻をじっと見つめていた。

 そして、主脚が地面から離れ、ゆっくりと機体に収納され、上昇を始める。
「やった!飛んだ!!」
 技術者たちは喜びのあまり涙を流していた。彼らの努力と苦労の結晶がついに実を結んだのである。

「おめでとうございます!!」
 緋村はうれしさのあまり隣の技術者にそう言った。

「ありがとうございます。苦労の甲斐がありました。今死んでも悔いはありません。」
 技術者は涙でグチャグチャになりながらそう語った。

 やがて五分間の初飛行を終えた九六陸攻は、パイロットが技術者たちのもとへやってくる。
「いやあ、前の機体より速度も上がっているし、防弾装備も実戦で役に立つでしょうなあ。」
 パイロットは前回のテスト飛行にも参加したらしく、前回より高性能になった機体におおむね満足している様子だった。

 のちにこの改良型九六陸攻は、九六陸攻二二型として、海軍で正式採用されるのであった。






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