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海軍の変革
「アー疲れた。」
そう言いながら緋村たち三人は神谷家へと向かった。ちなみに緋村と村田は神谷家に下宿している。
「まさか日付をまたぐとは...」
「でもその成果は出ましたよ。これで海軍はかなり変わるでしょうね。」
昨日の会議で決まったのは以下のとおりである。
・陽炎型駆逐艦を一部設計変更し、対潜、対空能力の強化を行う。
・海上護衛部隊の設立。
・対潜、対空兵器の開発。
・レーダーの開発強化。
・大馬力発動機の開発。
・マリアナ、トラック諸島の要塞化、泊地能力強化。
といった具合である。なお、翔鶴型航空母艦3番艦はマル3計画に組み込むのは予算上無理ということになり、次回のマル4計画に回されることとなった。
「まあ、使い方が悪ければ変わらんけどな。」
「そうっすね。でもやらないだけマシでしょうよ。」
「だよなあ。」
そんなことを話し合いながら、二人は自分たちの部屋へと向かった。
(しかし、海軍だけ改革を行っても、意味はないからな。陸軍と話す機会があればなあ...)
陸軍と海軍の確執は、もう別の国の軍隊ではないかというぐらいの差がある。なにしろネジ一本同じ規格のものはないのである。
(部品統一化をするだけでも大きく違うからな。戦車開発も今のままだとブリキの玩具のままだし...)
「緋村さん、夕飯の準備ができましたよ。」
「え、ああ薫さん、分かりました。もうこんな時間か。」
「かなり集中してましたもんね。」
「ええ、まあ。」
そんな他愛もない会話を交わし、食事を終え、疲れを取るべく眠りについた。
翌日、横須賀海軍基地
「やあ緋村君。話とは何かね?」
「はい、96陸攻の改良型はどうなっているか気になりまして」
「うむ、そのことか。すでに三菱の方に指示は出してある。しかし、あのままではだめなのかね?私としては十分すぎる性能だと思うのだが。」
「いえ、長官。確かに96陸攻は良い飛行機です。しかし防弾に関しては皆無であるために史実の日中戦争では多数の機体が中国軍機に撃墜されております。これを防ぐためには、防弾装備は絶対不可欠です。」
「なるほど、確かにその通りだ。君の意見はいつも参考になる。」
「いえ、私なんて歴史の後知恵でこうした方がいいと思うことを言っているだけですよ。」
緋村は山本長官に史実の零戦などの航空機の話をした際、日本機の脆弱さに驚いていた。この話を聞いた山本長官は、手始めに96陸攻の防弾装備の追加を指示した。三菱の技術者は突然の変更に驚いたが、開発主任の本庄季郎技師は、のちに「突然の変更に最初は驚いたが、海軍がやっとこちらの意見を通してくれたと思えばとても嬉しかった」と語っている。
「そういえば、赤城の近代化改装が決まってましたよね。」
「ああ、加賀を元に艦政本部で設計図を作っていると神谷君から聞いている。」
「そうですか。大和型の改良は?」
「対空兵装は両舷の副砲を撤去して高角砲を追加し、機関も初春型の物から試作の機関を搭載するらしい。しかし、わざわざ新型の機関にせずとも、翔鶴型の機関を使えば良いのではないかね?」
「いえ、自分もそう思ったのですが、神谷さんが言うには、戦艦の機関は通常より10%デチューンしなければなりません。その場合、翔鶴型の機関の場合16万馬力ですと10%デチューンした場合ですと、約14万4000馬力となってしまうのです。」
「なるほど、強化にはならないということか。良く分かった。」
「ご理解いただけた様でよかったです。」
「そういえば、君が言っていた海上護衛隊だが、伏見宮閣下が主導になって設立を進めているらしい。それと電探も艦政本部で八木博士と宇田博士の二人を招いて研究を進めているそうだ。」
「なるほど、色々と教えてくれて有難うございます。こちらにはあまり情報が来ないので。」
緋村たちの身分は一応山本長官の部下であるが、少尉ということであまり情報が入ってこないのである。
「ところで今後はどうするのかね?」
「はい、自分の考えでは陸軍と話ができればよいのですが、まあ難しいでしょうね...」
「うむ、君の言っていた『二二六事件』を止めるため、だね?」
「はい。」
緋村はどうにかして二二六事件を防ぐために、何とかして陸軍と接触しようと考えているが、おいそれと陸軍と話ができるわけではないために、頭を悩ませていた。
「ただいまー」
夕方、神谷家へと帰宅した緋村を薫が出迎えた。
「緋村さん、お帰りなさい。村田さんが待ってますよ。」
「村田が?分かりました。」
そして村田の部屋へと向かった。
「あ、先輩。待ってましたよ。」
「おう、確か今日は艦政本部にアイオワとエセックスのプラモを持って行ったんだよな?」
「ええ、資料用に持っていきました。」
緋村たちが転移した際に持っていたプラモデルは、空技廠や艦政本部へ資料用として米軍の艦艇や未来の戦闘機等のプラモデルを提供しているのである。
「性能諸元とかの資料も渡したのか?」
「はい、空技廠にB-29の資料を渡したときなんかみんな驚いてましたよ。」
「まあ、あれは『未来から来た飛行機』と言われた程だからな。驚くわなあ。」
「あ、それと空技廠で驚いたことなんですが、銅線がビニールじゃなくて布でくるんでたのは驚きましたね。航空無線が雑音だらけだったっていうのはアースの配置だけじゃなくて、こういう所も関係してたんでしょうねえ。」
「ううん、山本さんに頼んで改善してもらうかなあ。」
「そういえば、明日海軍大臣と会うって話でしたよね?」
「ああ、大角海軍大臣だったな、この頃は。」
緋村たちが海軍大臣に会う理由は、ドイツとのことである。
「日本の技術だけじゃ勝てない。ドイツと手を組むしかないんだよな。」
緋村はそうひとり呟いた。
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