泣き崩れたエース萩原麻由子女子エリートは五輪出場枠獲得ならず、男子U23はメダル逃す アジア選手権ロードレース詳報
8月のリオデジャネイロ五輪女子ロードレース出場枠をかけた女子エリートの運命のスプリント。しかし、最終局面に残った4選手中2人が日本という数的優位をまったく生かせず、惜敗した。伊豆大島(東京都大島町)で1月23日午後に行われたアジア自転車競技選手権ロードレース・女子エリートは、エースの萩原麻由子(ウィグル・HIGH5)が3位で銅メダル、與那嶺恵理(フォルツァ・ヨネックス)が4位に終わった。午前に行われた男子アンダー23(U23)は日本から4人が出場したが、最高6位にとどまった。
優勝選手の国・地域がリオ五輪出場枠を1枠確定―という条件下、「エース萩原」というチームの絶対的指示を受けて勝利を目指した日本ナショナルチームの107.1kmを追った。
ラスト2周、萩原が自力でアタック
女子エリートロードレースは、大島支庁前を発着点とする11.9kmの周回コースを9周する107.1kmで争われた。日本ナショナルチームは萩原を筆頭に與那嶺、金子広美(イナーメ信濃山形)、坂口聖香(パナソニックレディース)の4人がスタートラインについた。
13カ国・40人が臨んだレースは、スタートから大きな動きがないまま一団となって進行。2周目に韓国勢がアタックを試みたが、すぐに集団に戻った。中盤に差し掛かっても変化のないメーン集団は、ときにゆったりとしたサイクリングペースにまで落ちるスローな展開となった。
じわじわと変化が見られ始めたのは5周目。集団から飛び出した4人の中に金子が入り、先行を試みる。これもやがて吸収されてしまった。
終盤戦に入った8周目、ついに萩原が腰を上げた。周回序盤の上りを利用し、自力でペースアップすると、これをチェックできたのはナ・アルム(韓国)ただ1人。五輪出場枠を目指すライバルとの戦いが激しさを増していく。さらには、集団から與那嶺がプ・イシャン(中国)とともにアタックし、前を行く2人へのブリッジに成功。先頭グループは4人となり、みるみる間にメーン集団とのタイム差を広げていった。
ラスト1周の鐘を聞く頃には、その差は1分37秒に。勝負は先頭を走る4選手に絞られた。與那嶺が上りで一度は遅れかけるも、その後の下りで再合流。海沿いの平坦区間に入っても4人が先頭交代のローテーションを繰り返し、最後の勝負どころに備えた。
4人がけん制状態でスプリントへ
そして迎えたラスト1km。フィニッシュに向かう上りに入っても、なかなか決定的な動きが生まれない。各選手がスプリントに向け牽制状態で見合うなか、集団先頭で萩原と並走ぎみになったナが200mからスプリントを開始。プが追い込むが、そのままナが先頭を譲らずトップでフィニッシュした。力強いガッツポーズを見せるナの後ろで、萩原が3位、與那嶺が4位でゴールラインを通過した。
25歳のナは、2008年のこの大会ジュニア部門でトラック・ロード5冠を達成。その後も、トラックでは2011年11月のUCI(国際自転車競技連合)トラックW杯・アスタナ大会ポイントレース優勝、ロードでは2012年ロンドン五輪13位と世界的に活躍している選手だ。最後は、持ち前のスピードで勝利を手繰り寄せた。
これで韓国はリオ五輪女子ロードのアジア出場枠が1つ確定した。日本をはじめこの大会で出場枠獲得を逃した国も、5月31日までの世界ランキングで、国別で22位までに入るか、個人ランキングで100位以内に入れば五輪切符を獲得できる。日本は今大会前までの国別ランキングで25位と微妙な位置だが、萩原が個人ランキングで51位につけている。萩原は今大会のタイムトライアルとロードレースでもポイントを重ねたことで、日本の出場権1枠の獲得は濃厚となってきたが、まだ確定ではなく予断を許さない状況だ。
見られなかった効果的なアシスト
日本ナショナルチームの女子エリートのメンバーは、大会前に開催地・伊豆大島で予備登録選手を含めて直前合宿を行い、出場選手の最終選考を経て本番に臨んだ。しかし地元開催の利点を生かしきれず、悔しい結果に終わった。
スタートから終盤まで約20人が一団のまま進む展開は、日本勢にとって明らかに不利だった。韓国などにはトラックでの実績を誇る選手が出場しており、スプリント勝負で苦戦することが予想できたからだ。このためエースの萩原には、集団から抜け出したり、ロングスパートで逃げ切ったりする得意の展開が期待され、アシストの3人はこうした状況に持ち込む展開が求められた。
結果的に、萩原はラスト2周で自身がアタックを仕掛けて抜け出すことに成功したが、最後には韓国、中国の有力選手と一緒にスプリント勝負に挑む展開となり、銅メダルに終わった。ラスト2周で、萩原のライバルを疲れさせたり、振るい落としたりする効果的なアシストは見られなかった。
涙にくれる選手たちの中で、4位でレースを終えた與那嶺は冷静にレースを振り返った。終盤に4人での逃げ切りが濃厚となるまでは積極的にグループを牽引したといい、「アシストとしての働きはできたかなという実感はある」と話した。一方で、「萩原さんの求めている通りに動いたつもりだったが、実際は違ったようだ」とも述べ、チーム戦術を遂行するうえでの連携が上手くいかないまま最終局面を迎えたことをうかがわせた。
→ラスト500mのゴールスプリントの映像(シクロチャンネルのフェイスブックページ)
このレースで萩原、與那嶺は、フィジカル(体力面)でアジアトップクラスであることを十分に示したが、勝つための連携は機能しなかったと言わざるをえない。エースを勝たせるために、アシストが“おとり”のアタックをしたり、ライバルのアタックを追走したり、エースのスプリントを有利な体制に持ち込むリードアウト(先導)を行ったり…と、ロードレースの定石といわれる戦術が見られないままフィニッシュを迎えたことが、実に惜しく感じられる。
とはいえ、選手たちが「五輪出場枠」というミッションに向かって精一杯走ったことは事実だ。今大会での出場枠獲得には至らなかったが、この悔しさを糧に、これからも世界を目指して戦い続けてほしい。
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男子U23は雨澤毅明の6位が最高
男子U23は11.9kmの周回を10周する119.0kmで争われ、メフディ・ラジャビカブードシャスメフ(イラン)がヒュイ・タン・トゥン(ベトナム)とのマッチスプリントを制して優勝。日本は雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)が6位となった。
レースは3周目に発生した3人の逃げに小橋勇利(シマノレーシング)が入り、メーン集団に最大約1分のリードで先行した。5周目に入ると、徳田優(鹿屋体育大学)を含む5人がメーン集団から飛び出して追走グループを形成。やがて小橋らの逃げグループに合流し、先頭集団は8人に膨らんだ。
一方、後方のメーン集団はモンゴルを中心にペースアップ。先頭集団の8人は8周目にメーン集団に吸収され、レースはふりだしへと戻った。その後もアタックが散発したが、決定打には至らない。
優勝争いが大きく動いたのは、9周目の後半。ラジャブカブードシャスメフがアタックして先頭に踊り出ると、メーン集団は崩壊し、トップから約5秒差でヒュイが追う状態でラスト1周の鐘が鳴った。
先行する2人が合流すると、協調体制を組んで逃げ切りを図り、あっという間に後続を引き離した。最後は、地力に勝るラジャブカブードシャスメフがヒュイに前を譲らず優勝。両手を高々と天に突き上げ、勝利の雄叫びをあげた。
優勝争いから1分12秒後、銅メダルをかけたスプリントが繰り広げられ、モハンマド・ガンジカンロウ(イラン)が先頭を確保。イラン勢の金・銅メダルが決まった。
日本代表では、雨澤が銅メダル争いのスプリントに敗れて6位に沈んだほか、前半から積極的に動いた小橋が5分54秒差の12位、終始メーン集団でチャンスをうかがった秋田拓磨(朝日大学/シマノレーシングチーム)が7分差の13位、中盤で先頭集団に加わった徳田が7分7秒差の15位に終わった。
雨澤はレース後、「終盤にイラン勢がアタックをした際に続くことができず、その後は自分たちだけがメーン集団を引くような態勢になってしまった。(ライバルの動きに対し)後手を踏んでしまったことが苦しい結果につながってしまった」と敗因を分析。銅メダル争いでも「最後は力不足だった。(お膳立てをしてくれた)チームメートに申し訳ない」と悔やんだ。
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24日は、ロード種目の最後を飾る男子エリートロードレースが午前8時にスタートする。メンバーは、別府史之(トレック・セガフレード)、新城幸也(ランプレ・メリダ)、畑中勇介(チームUKYO)、内間康平(ブリヂストンアンカー)の4人。当初は11.9kmの周回コースを14周する166.6kmを予定していたが、悪天候が予想されるため13周・154.7kmに変更された。
■アジア選手権ロードレース第5日 リザルト
●男子アンダー23ロードレース(11.9km×10周=119.0km)
1 メフディ・ラジャビカブードシェスメフ(イラン) 3時間7分29秒
2 ヒュン・タン・トゥン(ベトナム) +0秒
3 モハンマド・ガンジカンロウ(イラン) +1分12秒
4 チョイ・ヒウフン(香港)
5 ル・シャオシャン(台湾)
6 雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン) +1分17秒
12 小橋勇利(シマノレーシング) +5分45秒
13 秋田拓磨(朝日大学/シマノレーシングチーム) +7分0秒
15 徳田優(鹿屋体育大学) +7分7秒
出走34人、完走19人
●女子エリートロードレース(11.9km×9周=107.1km)
1 ナ・アルム(韓国) 3時間17分53秒
2 プ・イシャン(中国) +0秒
3 萩原麻由子(ウィグル・High5)
4 與那嶺恵理(FORZA・YONEX)
5 ファン・ティンイン(台湾) +2分25秒
6 ヤン・シャンユ(香港)
9 金子広美(イナーメ信濃山形) +2分29秒
15 坂口聖香(パナソニックレディース) +3分18秒
出走40人、完走26人