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 不良然とした少年が「YOYO(ヨーヨー)!」。いかつい男性的な表現手段と見られがちだった「ラップ」の担い手に、最近、女性の姿が目立っている。アイドル文化とも融合し、ゆるくて、シュールで、内省的で、多様なラップを繰り出している。

 1970年代、ニューヨークの路上で生まれたヒップホップ。ビートにリズミカルに言葉を乗せる、ヒップホップ特有の歌唱表現がラップだ。

 日本に伝わったのは80年代で、90年代に「日本語ラップ」として定着した。ダボダボの服、頭にバンダナを巻き、ブリンブリン(アクセサリー)を提げた少年たち。マイクを握って発するのは、社会批判やセルフボースティング(自己自慢)。だが近年、そんなラッパーのイメージを覆すガールズラッパーの登場が目を引く。

 ここ数年、音楽フェスで引っ張りだこなのが、ボーカルのコムアイ(23)ら3人組ユニット「水曜日のカンパネラ」だ。現役の慶応大生でもあるコムアイはもともと、ラップ経験ゼロ。作詞・作曲を担当するケンモチヒデフミは「試しにラップをやらせてみたら、へたくそだった。でもそれが耳に残るのが面白いと思った」と明かす。

 昨年メジャーデビューしたDAOKO(18)も「ヒップホップはあまり聴いたことがなかった」。中学時代、ネット動画サイト上で、参加者が無償提供する楽曲に、自身のラップを乗せて披露する「ネットラップ」と出合う。ここに投稿した曲が話題となり、デビューにつながった。

 叙情的歌詞が特徴の「泉まくら」や、料理のレシピを歌詞にする「DJみそしるとMCごはん」、普通の女の子のような風貌(ふうぼう)で本格的なラップを聴かせる2人組「カリスマドットコム」など、ここ数年、ガールズラッパーは雨後の筍(たけのこ)状態だ。

 音楽ライターの高木JET晋一郎さんは「かつての女性ラッパーは、男性ラッパーへのカウンターとしてのノベルティー(珍しい存在)と扱われがちだった。男っぽく振る舞うか、女性性を強調した“ビッチ”風に振る舞うかだった」という。「特定の仕掛け人がいるわけではなく同時多発的に増えている。『表現手段としてのラップがそこにあるから』という気軽さで参入しているのではないか」とみる。