移民危機はEUの深刻なリスク 仏首相インタビュー
- 2016年01月22日
フランスのバルス首相は21日、大勢の移民の欧州流入は欧州連合(EU)を深刻なリスクにさらしていると警告した。BBCのインタビューで語った。
バルス首相は、イラクやシリアの戦争を逃れた難民のすべてを欧州は引き受けられないとし、「そうでなければ我々の社会は完全に混乱状態になる」と述べた。
2015年に欧州に到着した100万人以上の移民の大多数は難民で、多くが危険を重ねて移動する。22日にはギリシャ沖で移民を乗せた船が沈没し、少なくとも21人が死亡した。
バルス首相は、昨年11月のパリ連続襲撃事件を受けて発令された非常事態宣言について、襲撃事件の犯行声明を出している過激派組織「イスラム国」(IS)に対する「全体的かつ世界的な戦争」が終わるまで非常事態は終了しないと述べた。
独ケルンの暴行・窃盗
スイス・ダボスで開催中の「世界経済フォーラム」(ダボス会議)に出席しているバルス首相は、BBCとのインタビューで、欧州が地域外との国境を管理するため行動を急ぐ必要があると語った。
国境管理は欧州域内の自由移動を認めるいわゆるシェンゲン協定を否定するものだと慎重意見が多いが、バルス首相は「欧州が自分の国境を守ることができなければ、欧州(統合)という概念そのものに疑念が生じる」と述べ、欧州という概念そのものが非常に深刻な危険にさらされているという見解を示した。
一方でメルケル独首相が昨年、難民歓迎を表明したことについては、バルス首相は直接の批判を避けた。
バルス首相は、メルケル氏は「勇気がある」と語った。しかし、バルス首相をインタビューしたリーズ・ドゥセット記者によると、メルケル氏による移民歓迎は誤りだったとバルス首相が考えているのは明白だったという。
「『おいでください。あなた方を歓迎します』というメッセージは大きな人口移動を引き起こす。ドイツだけでなく、北欧諸国やオーストリア、バルカン半島の諸国が引き続きこの移民の流れに直面している。ケルンの事件を受けて、国境に関する現実的な解決策が必要だ」
ケルンでは昨年の大みそかに性的な暴行を含む犯罪が相次ぎ、その多くが外国人によるものとされた。
ドイツのメルケル首相は22日にトルコのダウトオール首相とベルリンで会談する予定。
EU各国は、シリアなどの紛争地を逃れ欧州を目指す移民の流れをトルコが管理するよう求めている。
<英語ビデオ>バルス首相インタビュー
非常事態宣言については、フランスは「戦争状態にある」とし、それは「我々の民主主義制度で可能なすべての手段を使って、法の支配の下、フランスの人々を守る」ことを意味すると語った。
非常事態宣言はいつまで続くのかとの質問に対し、同首相は「必要でなくなるまでだ。いつまでも非常事態の中で生活はできない」と答えた。
バルス首相は、「脅威がある限り、すべての手段を使わなくてはならない」とし、「ダーイシュ(ISの別称)を掃討できるまで」非常事態宣言を維持すべきだとの考えを示した。
同首相は、「アフリカや中東、そしてアジアでダーイシュを根絶し、排除しなくてはならない」とし、「テロリズムに対する全体的かつ世界的な戦争に直面している」と述べた。さらに、「我々が遂行しようとしている戦争は全体的で世界的かつ容赦ないものでなくてはならない」と語った。
バルス首相は、フランスが「また攻撃されるかもしれない」と、過去数カ月でも6つの攻撃計画が抑止されたと明らかにした。
ISにつながりのある襲撃犯によって130人が殺害された昨年11月のパリ連続襲撃事件を受け、フランスで10年ぶりに非常事態宣言が発令された。その後3カ月間延長された宣言は来月26日に期限を迎える。
人権に関する国連の独立専門家たちは今月19日、フランスの非常事態宣言や電子通信の監視に関する法律が「過剰でバランスを欠く」と指摘した。
(英語記事 Migrant crisis: EU at grave risk, warns France PM Valls)