【私の失敗(5)】
2008年公開の映画『ポストマン』で製作総指揮に初挑戦した一茂は主演も務めた 【拡大】
テレビなどでの失言は数え切れない。批判やクレームを今でもちょうだいしている。失敗が多いからネガティブな意見も前向きに受け取れるし、ミスを恐れなくなったよ。
あるスポーツ番組で、(巨人で9連覇を達成した元監督の)川上哲治さんを「テツジさん」って読んだことがある。生放送だったからカットはできない。「テツハルさんですね」ってアナウンサーがフォローしてくれたのに、「どっちでもいいでしょ」と言い返してしまった。
サッカーファンから抗議されたこともある。「日本代表の試合、特にワールドカップでは『いつも負けろ』って常に思っていた。勝ったら、日本でのサッカー人気がさらに上がってしまうじゃないですか」って発言したからだけど、プロ野球関係者のホンネだと思うよ。
そもそも頑張っている人を見て、「頑張っていますね」ってコメントをするなら、俺じゃなくてもいいよね。うわべだけの言葉じゃつまらないし、伝わらない。テレビでは視聴者とは違う見方、視点を心がけている。
1996年限りで引退した直後、真剣に身の振り方を考えた。ずっと野球だけの人生だったからね。ユニホームを脱いだら何もできない。何を目標に生きていくのかさえ分からなくなった。
新聞やテレビの解説者が理想的な転職先だろうけど、俺は目立った成績を残せなかった。試合の感想は語れても、説得力のある解説はできない。選手の気持ちが分かるから批判的なことを言うのも嫌だった。