ブックスペース栄和堂に行って来た – 親子で本屋を再発明2016/1/23

皆さん、湘南モノレールってご存知でしょうか。大船駅から湘南江の島駅を結ぶモノレールで、鎌倉と藤沢の中央を海に向かって山突っ切る、みたいなちょっとおもしろい路線です(大分、乱暴な説明のような気がするが)。その道程のちょうど真ん中にあたる湘南深沢駅に、ワディットさんが「ブックスペース栄和堂」をオープンさせました。ネット界隈では、ゆーすけべー、と言ってしまった方が早いのかも知れませんが、ワディットは和田君親子が営む会社です(最近、弟さんもジョインして店長)。以前から新しいスペースの話は気になっていたのですが、今週、和田君のブログを読んだら是非、行こう、と思い立ちまして、昨日うかがって来ました。

栄和堂を開店して2ヶ月が経った件 – ゆーすけべー日記

大船駅から5分ほど、湘南深沢駅で降りて目と鼻の先、駅前商店街の一角にブックスペース栄和堂はあります。元々、和田君のおじ様が営んでおられた本と文房具のお店だったそうです。これをリノベ&リファインしたのが「ブックスペース栄和堂」。お店に入るとカフェマスターのマーク和田さん(和田君のお父様、以下、マークさん)がおられ、面識あったのでご挨拶して、コーヒーをいただきながら、しばしお話を聞かせていただいて来ました。

本屋の再発明

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旧栄和堂がブックスペース栄和堂として再出発するにあたって、リノベーションが施されているのだけれど、本棚と床は元のまま残されています。本棚は桜の木を使った特注品で、長い間使われて来たのに板のたわみもなく、それを支えて来た床とと共に、積み重ねられて来た時間を感じさせるものでした。ソファやテーブルもそういう雰囲気に馴染みの良いもの。本屋に文房具屋も併設されていた、いわゆる「街の本屋」だったわけで、結構広いです。レンタルスペースとしてもワークショップや開発合宿に耐える広さあります。

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肝心の本棚の中身ですが土地に縁のあるもの、近隣の人が選んだ本棚、家族の本棚、それから和田君の著書(Webサービスの作り方とか、boketeのムックとか)もあり、ニヤニヤしながら眺められるものでした。特に近隣の人が選んだ本棚は、近所の焼鳥屋さんが選んだ地元在住(ずいぶん前に亡くなられたそうだけど)の山崎方代さんという歌人にちなんだ棚、大学で歴史を学ぶ学生が選んだ鎌倉の歴史を学べる棚、ファンタジー好きの女の子が選んだ上橋菜穂子棚などなど。読んでいる本にはコメント付きの栞を挟めるようになっていて、ほかの人が手にとった時に、それ見れたりもします。

本を売るわけではないし、図書館でもなく、もう少し本や本棚を介して、お客さん同士が言葉を交わしたり、交流を深めたり、そんな場所にして行きたい、というお話をマークさんもおっしゃっていました。

ブックスペース栄和堂の地域性

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地域のことについても少し。ワディットさんに取ってはこの辺は地元で(鎌倉山って言われます、ローストビーフの店の名前でご存知かもですが)、マークさんご自身も「ブックスペース栄和堂」の場所で生まれ育ったそう。先ほども書いたとおり、大船・江ノ島・鎌倉・藤沢のちょうど中心にあたる場所で、モノレールとバスもよく利用されており、いわゆる観光地の鎌倉から見ると外輪になるのだけど、交通のハブになってる場所とのことでした。

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駅前に広い更地があるのはJRの工場跡地で、近年ここの再開発が大変問題になっているようです。複合型商業施設や高層マンションが立つ計画だったそうで、地域の人たちが署名活動をしてこれに反対し、この跡地がどのようになっていくのか、というはこれからのまちづくりに大きく影響しそうです。この話題に関してはマークさんのブログに詳しいです。歴史的にも新田義貞が最初に鎌倉に攻め入ろうとした際の合戦場になった場所だそうで、あの土地に数万人の群衆がいた場所だと思うと、何だか凄みがありました。現在も戦没者を供養するための「泣塔」が残っているそう。

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ブックスペース栄和堂のこれから

現在は地元のお客さんが多く(これとても良いことだと思う)、ただタウンニュースに掲載されたり、今後テレビの情報番組の放映予定もあるそうです。少し、これからのブックスペース栄和堂についてもマークさんとディスカッションしたのですが、例えば、うちの近所にある333 cafeというベトナムカフェでは、数人のママさんグループがカフェの2Fを予約して貸し切りする利用があり、ご飯を食べながらベビーカーのお子さんも連れてママさん達が個室でランチできる場所は駅前にはありそうでなく、一定のニーズがある、みたいなお話をしました。人が集う理由を人通りに期待するのはこういう場所では難しいところもあり、そういう口コミベースで広まっていく理由作りも大事なことかなあと思います。八女のうなぎの寝床も、メディアに取り上げられて話題だけど、店の前の通りには人通りはない、って以前お店の方も書いていたし。

それから、郊外ということ。東戸塚と湘南深沢では東京との距離感ちょっと違うけれども、それでも多くの人は、東京で仕事を終え、飲みに行く人は飲んで、それから地元に帰って来ることが多い。東戸塚の飲食店さんも、住んでる人ほどには地元の消費の需要がない、というような話をしていて(まあだから郊外居住と郊外消費は違うということだ)、そういう中で、どう日常にある風景にするというか、郊外での生活に馴染むものにしていくか、というのも大事なことかなと感じました。週末のイベントスペース利用とか、本棚をアーティストさんにレンタルボックス的な貸し出しをして、ギャラリーショップみたいな利用を促すとか、マークさんにも色々アイデアあるようでした。

あと最後、少し自分の仕事の話と絡んで面白かったのが、今、利用者などの数字などを見て、少しずつ変えていこうと思っているんだ、というお話をされてて、ああそれ今、仕事でグロースの人たちとUX見ながらUI改修しているのと話としては同じだなあという感じがしました。KPI見ながら、問題点を抽出して、UXで要件整理して、UIに落として、PDCAを小刻みに回していく、みたいなことだろうなあと思います。というわけで、和田君、場のグロースハックやればいいんだと思ったYO。

まとめ

アポも取らずにうかがったのですが、マークさんに歓待いただき、色々お話もうかがえて、ほしの珈琲という自家焙煎のお店のコーヒーもいただいて、良い訪問でした。意見あったらどんどん出してね、とは言われたので、なんか面白いことできないかなあなどと考えています。

冒頭に戻るんだけど、故人の意思とか故人との思い出とか、人が土地に根ざしたものというか、土地に人が定着したものというか、そういうものを残しつつ、新しく生まれ変わらせるというか、そういう仕事なのかなと思っていて、記事読んで、「良い仕事だなー」と思って出かけてきたわけですが、場を持つというのは楽しそうなことだなあと思いました。

ありがとうございました。

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