歴史ある温泉地として知られる、伊豆・修善寺。
去年9月、地域のホテルが中国企業に初めて買収され、大きな衝撃が走りました。
中国企業 社長
「今後我々がホテルを経営することになった。
皆さんと一緒に頑張って行きたい。」
買収したのは、中国の旅行会社。
6億4,000万円で購入を決めました。
22年前に開業した、このホテル。
しかしここ数年、客室の稼働率は下がり続け、赤字に転落していました。
そんなホテルを買収した中国の会社。
確実に利益をあげる戦略を持っていました。
伊豆のように富士山近郊や関東など、外国人が好む観光地のホテルを買収。
自分たちが企画したツアーにこうしたホテルを組み込み、団体客を送り込みます。
それにより、ホテルの稼働率を高く保つことができるのです。
先月(12月)、中国本社から送り込まれた徐(じょ)ケイさんです。
中国人団体客のニーズに徹底して応えることで、高い利益を上げようとしています。
多くの料理が並んだほうが豪華だと感じるという中国の人たち。
このため料理は会席料理のように一皿ずつ出すことはせず、一度に出すことにしました。
徐ケイさん
「こちらが土産物コーナーです。」
そこに置いたのは北海道の人気のお菓子。
伊豆の特産品にこだわらず、中国人に人気がある商品なら何でも取りそろえました。
買収から4か月。
こうした取り組みの結果、中国人の宿泊客は急増。
客室の稼働率は8割を超え、先月の収益は過去最高となりました。
徐さんは今、自社のツアーをさらに拡大し、周囲の旅館にも中国人客を受け入れてもらおうと考えています。
この日、修善寺の旅館組合を訪れ相談を持ちかけました。
徐ケイさん
「たくさんの中国人客に修善寺に来てもらおうと考えています。
皆さんにもご協力いただきたいと思います。」
旅館組合 浅羽一秀理事長
「組合の皆さんも期待していますし、協力してくれるなら一緒にという気持ち。」
好調な中国人客。
しかし、今のままでは日本人客が離れてしまうのではないかという懸念の声も出始めています。
「満室となっております。」
予約は中国人団体客で埋まっています。
来月(2月)の予約の画面。
空き室を示す白い部分はわずかしかありません。
常連の日本人客でさえ、断わらざるを得ないことも多くなりました。
食事の面でも頭を悩ませています。
サービス部門の責任者、小林美仁(こばやし・よしひと)さんです。
これまで大切にしてきた、きめ細かいもてなしができなくなると危機感を抱いています。
買収前の倍に増えた宿泊客。
しかし従業員の数は同じままです。
この日は、50人近い中国人の団体客の対応に追われていました。
こうしたなか、思わぬ事態が起きました。
「金目鯛の煮付けが出来ません。」
料飲部 責任者 小林美仁さん
「来ないの、一個は来たの?」
「一個は来た。」
小林さんの目が行き届かず、一組の日本人客にメインの料理が出されないままとなっていたのです。
料理が届けられた時、すでに食事は終わろうとしていました。
「経営が甘いんじゃないか。」
料飲部 責任者 小林美仁さん
「本当は常に誰かがいて、常にお客さんの状況を把握しているようでないといけない。
僕らとしては日本の人に少しでもいい評価を頂いて、中国のお客さんがいても、いい宿だよっていう部分を見せないと、日本のお客さんが離れていってしまう。」
どうしたら日本人客をつなぎとめられるのか。
小林さんが目を付けたのは、徐さんが企画した春節の餅つきのイベント。
ここに日本人客も参加させたらどうかと持ちかけました。
料飲部 責任者 小林美仁さん
「会場から(餅つき)が見えるわけじゃないですか、そこで餅つきを始めて、日本の人も見れば寄ってくるので、日本のお客さまにも、私もやりたいなという人もいるかも。」
じっと耳を傾けた徐さん。
旅館のにぎわいにつながるならとその提案に賛成しました。
料飲部 責任者 小林美仁さん
「中国の人にもちゃんとしたことをして、喜んで帰ってもらいたい。
日本の人にもちゃんとしたことをしたいというのが僕らの思い。
僕らもできるかぎり、力を合わせてやらないといけない。」