「社長と一緒に、議員会館にある大臣の部屋に行った。社長が桐の箱に入った最高級の羊羹(ようかん)と、現金50万円が入った封筒をショッピングバッグに入れ「これはお礼です」と言って渡した。大臣の秘書が大臣に耳打ちすると、大臣は「あー」と言って封筒を取り出し、スーツの内ポケットに入れ、羊羹の入ったショッピングバッグは足元に置いた。面会の時間は15分の予定だったが、40分も雑談し、記念写真も撮影した」
日本の建設会社幹部が、安倍政権の中心的な閣僚の一人である甘利明・環太平洋経済連携協定(TPP)担当相(66)に対し口利きを依頼し、3年間にわたって現金で1200万円を渡したという。21日発売の時事週刊誌「週刊文春」最新号が暴露した。甘利氏はこの日昼、衆議院で野党議員たちの追及を受け、「当該業者が私の元を訪ねてきたことは事実だが、何の話をされて、どういうことをされたのかについては記憶があいまいだ」と答弁した。安倍晋三首相は硬い表情で「甘利大臣が(今後)十分に対処し、説明すると思う」と語った。
甘利氏は2006年の第1次安倍政権発足後、(自民党政権の下で)常に入閣してきた唯一の閣僚だ。麻生太郎副総理兼財務相、菅義偉官房長官と共に、安倍政権の実力者の一人とされる。昨年にはTPP交渉を妥結に導き名声が高まった。今年初めにはフジテレビのバラエティー番組に出演し、金ピカのスーツ姿で演歌を歌って話題になった。
そんな甘利氏に、首都圏の建設会社幹部の一色武氏(66)が一撃を加えた。週刊文春によると、一色氏は2013年、知人を通じて甘利氏を紹介された後、毎週回転寿司店で寿司をおごったという。その後、外国人労働者のビザの問題解決や、ニュータウン開発事業など、あらゆる分野について口利きを依頼し、10万-500万円ずつ、計1200万円を手渡した。
関係がこじれた理由について、一色氏は「カネだけ受け取って、依頼したことはうやむやにされたので腹が立った」と語った。一色氏の会社がニュータウン事業をめぐってトラブルを抱えたが、甘利氏側がこれを解決してくれなかったという。
一色氏は現金をやりとりした内訳を記した資料を持ち、週刊文春の編集部に向かった。甘利氏との関係がよかった時期から、万が一の場合に備え、自己防衛の意味で主な対話の内容を録音していたという。甘利氏に50万円を手渡した日については、紙幣の番号をあらかじめ1枚1枚確認していた。週刊文春は「一色氏が持ってきた録音資料は50時間分の内容だ」と報じた。毎日新聞や朝日新聞などは「一色氏が手渡した1200万円のうち、政治資金として適法に処理されたのは376万円にすぎない」と報じた。