スキーバス転落事故はどうすれば防げたのか?~「小泉時代の規制緩和が原因」説を検証する

2016年01月18日(月) 高橋 洋一
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二度と同じ事故を起こさないために

株式会社イーエスピーに対する行政処分は、輸送施設の使用停止20日であって、営業停止ではない。このため、今回のバスツアーが直ちに中止される訳ではないが、結果として行政処分対象会社のバスを使って、事故を起こしたのであるから、旅行業者としての責任は免れない。

株式会社キースツアーにも、旅行業法に基づく立ち入り検査(検査を行うのは東京都)が入るので、旅行業法上の問題も徹底的に洗うべきだ。

規制緩和は、参入障壁などの経済規制であって、安全規制は規制緩和すべきでないという当たりまえのことを確認した上で、今回の事故を教訓にすれば、次のようになる。

第一に、バス運行会社が法令違反を犯した場合、営業停止のような処分も必要である。国交省で公表している行政処分は大半が文書警告にとどまっている。4000以上の事業者数に対して、許可取り消し処分は年に1件あるかどうかである。

かつて筆者が旧大蔵省時代に、投資顧問業者の登録制を担当していたが、数百の業者数に対して、登録取り消しは年間で10件近くやったこともある。悪徳業者の排除を行政は躊躇してはいけない。

第二に、旅行会社に対して、どこのバス運行会社を使うのか旅行者に対して開示する義務を負わせるべきだ。こうしたことは、ネットの時代であれば簡単に行えるのだから。

安全のための対策、規制は、安全の価格を旅行者に正々堂々と示すためにも必要である。安全はただではない、ということを改めて肝に銘じたい。
 

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