Updated: Tokyo  2016/01/23 11:21  |  New York  2016/01/22 21:21  |  London  2016/01/23 02:21
 

黒田日銀総裁:「それほど大きな影響与えてない」-市場の混乱 (2)

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    (ブルームバーグ):日本銀行の黒田東彦総裁は22日、ブルームバーグのインタビューで、「現時点で、企業は非常に積極的な設備投資計画を維持しており、賃金も上昇している。金融市場の状況が企業行動にそれほど大きな影響を与えているとは思わない」と述べた。

スイスのダボスで英語によるインタビューに答えた黒田総裁は、現在の国際金融市場の混乱について「リーマン危機後のような状況ではない」と語った。中国経済についても「ハードランディングするとは思わない」と指摘。「中国政府はあらゆる形の景気後退に対応する手段を非常に豊富に持っている。中国経済に関する短期的な見通しについては比較的楽観している」と述べた。

原油価格の急激な下落が企業や家計の物価見通しに影響を与えることが懸念されていることについては、「現時点で期待インフレ率は比較的維持されており、大きく低下しているとは思わない」と語った。

黒田総裁は一方で、「原油価格の低迷が長引き、グローバルな金融市場の混乱が長引けば、期待インフレ率に影響を及ぼす可能性がある」と指摘。「現在のグローバル金融市場の混乱が長引けば日本経済に影響を及ぼすので、グローバル金融市場とアジアの実体経済を注視している」と語った。

長引けば影響も

日本の株式市場が乱高下していることについても、「株式市場は最も重要な市場の1つであり、為替市場と併せ、常に注視しているが、一番大事なのは実体経済であり、物価だ」と述べた。その上で、「もし必要になれば、特に、物価の基調が大きな影響を受けるようであれば、量的・質的金融緩和をさらに拡大する余地がある」と述べた。

量的・質的金融緩和の限界論が指摘されていることについても、「現時点で量的・質的緩和が限界に直面しているとは思わない」と指摘。「日本には国債や株式など多くの金融資産があるが、最も大きいのは国債市場だ。現時点で日銀は国債の発行総額の3分の1を保有しているが、まだ3分の2が市場に残っている」と語った。

日銀は28、29両日、金融政策決定会合を開く。日銀は同会合で経済・物価情勢の展望(展望リポート)を策定し、生鮮食品を除くコア消費者物価指数(CPI)上昇率の新たな見通しを明らかにする。原油価格の下落により、見通しの下方修正と2%達成時期の先送りは必至の情勢で、円高の進行と株価の不安定な値動きも加わって、日銀が同会合で追加緩和に踏み切るとの見方が強まっている。

市場の見方

BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは22日付のリポートで、展望リポートでは、物価2%の達成時期の「さらなる先送りが不可避であろう。円高傾向、及びインフレ期待の低下に歯止めをかけるため、日銀執行部が1月会合で追加緩和が必要と判断しても不思議ではない」としている。

黒田東彦総裁はこれまで、度重なる物価見通しの下方修正と2%達成時期の先送りは主に原油価格の下落によるものだとして追加緩和には動かなかった。日銀は昨年4月、2%達成時期を「2015年度を中心とする期間」から「16年度前半」に変更。昨年10月にはさらに「16年度後半」に先送りしたが、いずれも追加緩和は見送った。

第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストは22日付のリポートで、「日銀が追加緩和に踏み切る可能性が急速に高まっている」と指摘。「市場参加者の追加緩和期待が高まっているということは『ゼロ回答』に対する失望リスク増大を同時に意味する」という。一方で、日銀が追加緩和に踏み切っても、その効果に対して懐疑的な見方もある。

みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは22日付のリポートで、「リスクオフの大きな流れが止まっていない中で残り少ない追加緩和カードを切っても、それが流れを決定的に転換させられる保証はない」と指摘。一時的に円安、株高が進んでも、「中国や原油の関連で新たな悪材料が出て『帳消し』になってしまうリスクがあることは否定できない」としている。

記事に関する記者への問い合わせ先:東京 日高正裕 mhidaka@bloomberg.net;ロンドン Francine Lacqua flacqua@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先: Brett Miller bmiller30@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net 上野英治郎, 谷合謙三

更新日時: 2016/01/23 00:45 JST

 
 
 
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