昨年の8月に起業して以来バックオフィス系業務を実際に経験しています。その多くは 会計ソフト freee や Bizer を活用することで効率化ができ、本当に助かっています。
しかしいっぽうで行政や銀行など社会的インフラのサービスを利用するためのインターフェースが著しく時代に即していないと感じていて、このままでは我が国は厳しいなと感じることが少なくありません。以下、批判的な表現を含みますが、純粋に実体を知って欲しい、改善して欲しいと切に願っての発言であることをご容赦いただきたいと存じます。
e-Tax は個人事業主の確定申告にもよく利用されます。e-Tax には Windows にインストールして利用するタイプのアプリケーションとWEB版とがあります。インストールタイプは Windows にしか対応していないのは諦めるとして(この時点で既に期待値低し)、WEB版は Mac Safari も対象環境となっています。
しかし、電子申請のための証明書を読み込むためのカードリーダー周りの環境が厳しく、動作実例も多々あるので一概に駄目とは言えないのですが、僕の環境では利用できず結局 Mac 上の Parallels Desktop で Winows 8.1 を実行して利用することになりました。
ユーザーインターフェースの旧世代感は否めないものの、利用できるかどうかという意味では利用できるので、e-Tax は許容範囲内です。
eLTAX はご存じでしょうか。字面からは e-Tax の兄弟または姉妹のような印象を受けますが地方税ポータルシステムだそうです。これを実際に活用されているかたはいらっしゃるのでしょうか(にこやかな笑顔)。
地方自治体にも申請・申告を行う機会が多々あるので昨年末に導入しようとしたところ、動作環境が Java8u60 というマイナバージョンまでしばっている点にまず椅子から滑り落ちそうになりました。しかも、トップページに以下の注意書きがありさらに追い打ちをかけてきます。
eLTAXの利用届出(新規)、申請・届出を提出する際に使用したJava実行環境は、セキュリティ対策の観点から、利用届出(新規)等を提出された後、直ちにJavaを最新のバージョン(Java8u62)に切り替えるか、又はJavaを無効化していただきますよう、お願いします。
どういうことかというと、サービスを利用するために脆弱性が含まれていることが明らかとなっている古い Java をブラウザ上で実行させなければならないが、そのままでは危ないのでサービスを利用し終わったら再びバージョンを上げて欲しいということですね。直ちに。ちなみに Java は 32bit版限定です。
(1月22日時点で確認すると、「直ちにJavaを最新のバージョン(Java8u71)」になってました。お、おう。)
IE でしか動作しないというのはそもそも当初から諦めているのでいいのですが(この期待値の低さがまず問題ですが)、アンセキュアな環境に一度身を投じよと行政が指示するのはいかがなものかと思います。そもそも Java のバージョンをがちゃがちゃ入れ替えられるリテラシーの層が対象なのかこのサービスは。
しかし eLTAX さんの本領発揮はここからで、地方自治体によってサービスの対応状況が全然異なるんですね。例えば「固定資産(償却資産)」の申告という手続がありますが、これは東京23区では利用できません。というか23区は住民税の手続しか受け付けていません。
他県(神奈川など)の状況を調べるとおおむね対応しているようですのでこれは23区だけの、問題、、であればいいですが、、
なお 東京都主税局<税目別メニュー><電子申告・電子納税等のご利用について> を読むと 23区内で当該の申告ができるように見受けられるのですが、実際申告画面に選択肢すら表示されない状況なので、できないと思います。もし認識が誤っていれば教えてください。
単にユーザーの勝手な都合だけでいうと e-Tax と eLTAX が分離しているのもそもそもよくわからないし、地方自治体によって対応状況が違うというのもよくわからない。実運用は別でもいいけど Wrapper 的な考えはないの? ないよね。。また、申請インターフェースは ネ申Excel の台帳をそのままアプリケーションにしたような感じで脱力を誘います。控えめにいって10年前くらいのアトモスフィアです。開発当初から目立った改善が行われていないので大変な時代遅れ感を醸し出しているのだと思われますが、それにしてもこの技術力の低さでは本当に厳しい。
当たり前のように Mac では利用できないですし、Java のバージョンを切り替えられない人はやっぱり利用できないし、というかそんなことしたくないですし、本当に eLTAX は誰のためのサービスなんでしょうか。辛い…
東京三菱UFJ銀行の提供する BizStation というネットバンク・サービスがあります。BizStation は Mac に対応していないことが明記されています。
「64bit版ブラウザ」や「Edge」の非対応も明記されています。Java のバージョンについては v8 であればいいらしく、マイナーバージョンしばりがないだけユーザーフレンドリーと言えそうです(錯覚)。
東京三菱UFJ銀行は 最近Fintech関連の情報発信が活発ですが、Mac だと御行が利用できないという現実をまずわかっていただきたい。
いや、本当に、いっとき、「何故 〇〇は Apple になれなかったのか」「何故日本でスティーブジョブズが生まれないのか」という言説を盛んに見かけましたけれども、答えはとても簡単で Apple 製品では日本では企業の運営ができないからですね。
というのは半分冗談ですが、実際、スタートアップ起業の利用しているコンピューターにおいて Max OS の割合は無視できないはず。そういう人たちは下手にリテラシーが高いので色んな罠をくぐり抜けてうんとこさと利用してしまっているわけですが、サービスのインターフェース設計を考えたとき、ユーザーの創意工夫ではじめてなりたつというのは非常に好ましくない。そもそも、Mac 対応がなにか特別なことであると捉えられているのであればそれが既にレガシーで、時代からは取り残されています。
銀行の話はもう1つあって、ではメガバンクがだめならネット銀行利用すればいいじゃないかと言われると思います。ジャパンネット銀行 は実際使いやすいです。しかし、ネット銀行は軒並み pay-easy に対応していません。
pay-easy は厚生年金などの保険料を銀行の窓口に行かなくても支払えるという優れたサービスです。が、ネット銀行は対応していません。。辛い。。窓口で支払うという選択肢はないので、おもな取引にはネット銀行を使い(インターフェースの問題もあるが手数料が安いので)、サブとして pay-easy に対応したメガバンクや都市銀行のサービスを利用することになります。
では Mac にも対応している みずほビジネスWEB を利用しよう!ということで使ってみると、みずほビジネスWEB はオンラインでの pay-easy 支払いには非対応ということで、、
お、おう。
結局みずほ銀行のATMから pay-easy を利用しています。それでもまだ楽ですけれども。
CSSのIE対応辛い、逆に某業界のつくるシステムはIE(しかもバージョン古いやつ)でしか動かないというのは Web界隈ではテンプレート的な笑い話ではあります。しかし、時代に追従できているか、モダンな環境や感覚に身を置いているかということは本当に大切なことだと考えます。iPhone がいったいどれだけの経済を生みだしたのでしょう。Mac を愛するエンジニアがどれだけの革新的なプロダクトを生んで来たのでしょう。そういう現実や感覚を無視した先に、起業が活発になるなんていう社会は決して訪れないし、いまいちどIT立国として輝くこともありません。
そんなことは民間主導で進めるべきだという意見が聞こえてきそうでそれには同意いたしますが、銀行や納税手続などの社会インフラは、どんなに先進的な企業であっても関係を断つことはできません。この国の生産性をどうしていきたいのかということに改めて向き合っていただき、改善が進むことを願ってやみません(誰に言っているのかよくわかりませんがたぶんこの国の大いなる何かに対してです)。また僕自身もひとりのIT技術者として、改善に寄与できることを日々考えていきたいと思います。
以上。
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