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『週刊ダイヤモンド』特別レポート

国立競技場、B案も工期短縮は可能だった――建築家・伊東豊雄氏に聞く

週刊ダイヤモンド編集部
2016年1月22日
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 A案はスタンド構成が3段でザハ案と同じです。それと、柱割りも同じ。柱は100本程度だったかと思いますが、これがザハ案と全く同じです。

――柱割りは、全体のデザインにも大きく影響するのでしょうか。

 柱割りは鉄骨の大きさに影響しますから。全体的にザハ案を踏襲したいという考えだったのではないでしょうか。

 それと、私たちの案ではコンコースと同じ高さにトイレがありますが、ザハ案ではコンコースから階段を上り下りしないとトイレに行けない。これは非常にまずいね、というのが我々の考えのスタートなのですが、これは常識的に普通に思いつく問題です。しかし、A案はザハ案とトイレの位置が同じです。これがそのままというのは、ザハから疑義を持たれても仕方がないと思います。

 さきほど隈研吾さんは記者会見(編集部注、1月15日に日本外国特派員協会で行われた記者会見)でこの点を問われ「座席数や部材の角度は条件から自動的に出て来るもの」という趣旨のことをおっしゃっていますが、そういう問題ではない。プランを作ったのは明らかに梓設計と大成建設です。すでに発注している材料もある中で白紙撤回になったのですから、そのまま使いたいという気持ちもわかりますが、ザハ氏が怒るのもまた、致し方ないですね。

――世界的に有名な建築家の間で、他の建築家の作品と類似した作品を作るということはそもそもあるのでしょうか。

 A案の提案書をよく読みますと、直接的には書かれていませんが、隈さんの役割は、外装のデザインと、VVIP室のインテリアのデザインのアドバイザーにとどまるようです。プランそのものには関わっておられないのではないか。事実はわかりませんが、もしそうだとすれば、建築家として相当無責任ではないかと思います。建築家であれば、もしコストや工期の問題があっても、前の計画の困難をいかに解消するかが当然の課題なんですから。

――今回のA案について、逆にB案より優れていると思われる面はありますか?

 それがねえ、本当にないんですよ。A案の競技場の周りの樹木はプラントボックスですから、メンテナンスにとんでもないコストがかかる。

 それと、A案では屋根などに木材が使われます。隈さんは木造建築を数多く手掛けておられるので自信満々で語っておられますが、完成後どのぐらい美しい状態が保たれるのか疑問です。我々が岐阜県で手掛けた、屋根に完全に覆われた建物の中の木材でも、半年程度で変色していました。木材はどうしてもだんだんとグレーに変色しますから、おそらく、東京オリンピック・パラリンピック開催時にはグレーに変色しているんではないか。

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