プロボクシングでミドル級の世界王座を目指している村田諒太(30)=帝拳=が、五輪金メダルのプレッシャーにあえいでいる。プロ転向して3年。8戦全勝だが判定が3試合。お客はKOの醍醐味(だいごみ)を望んでいるが、それを最も気にしているのが村田本人で、9戦目で世界挑戦という青写真も足踏み。勝ってもじれったさが残る。
日本人の金メダルは、1964年の東京五輪で桜井孝雄(バンタム級)が獲得して以来。銅はローマで田辺清、メキシコで森岡栄治が獲得してプロ転向。いずれも網膜剥離で引退した。桜井も世界のチャンスを逸している。五輪メダリストの世界王者輩出は米国を中心に海外勢が多く、村田には日本人初の世界王者の期待が大きい。
村田は前回から戦場を海外に移して世界へアピールしているが、その重要な初戦の米ラスベガスでの試合でKOを逸した。ボブ・アラムプロモーターは「OKだがグッドではない」と辛口批評。今月30日の上海での試合は、今後を占う大事な一戦になる。相手のガストン・アレハンドロ・ベガはアルゼンチンの強豪。勝つこととともに、内容が問われる。 (格闘技評論家)
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