バルト3国のソ連離反を思い出す
それでも中国が香港の反中国運動に神経を尖らせているのは明白である。学生たちによる2014年の雨傘革命は中国に大きなトラウマになっている。反中国の言論流布を放置して「雨傘革命の第2弾が起きたら一大事」と先手を打っているのだろう。
中国はアジアインフラ投資銀行(AIIB)の業務を開始した。アジア各国に影響力を及ぼすのがAIIBのもくろみだ。だが中国の足元をみれば、つい最近まで自分になびいていた周辺国がそろって「お前の言うことは聞かない」と言い出している。いま目にしているのは、そういう局面である。
こういう展開をみると、私はバルト3国のソ連離反を思い出す。
リトアニア、ラトビア、エストニアのバルト3国がソ連からの離反・独立を宣言したのは1990年である。リトアニアでは「血の日曜日事件」と呼ばれる市民殺害事件も起きた。ソ連の弾圧は功を奏せず結局、3国の独立運動が翌91年、ソ連崩壊の引き金になった。
台湾、北朝鮮、韓国、香港の動きはそれぞれ地理的条件も歴史的、政治的経緯もバルト3国とは、まったく違う。だが、中国や旧ソ連側から見れば「自分の影響力を強め、意のままに動かしたかった周辺国が相次ぎ離反した」という点では同じである。
これが何を意味するか。いま中国は断末魔を迎えていたかつてのソ連と同じように、もっとも近い周辺国から自国の求心力を失っている。威勢がいい発言を続ける見かけとは裏腹に、国としての魅力はもちろん、服従させる力を失っているのだ。
これは中長期的に見て、中国の将来を占うトレンドとみて間違いない。端的に言えば、台湾や香港の若者、暴走する北朝鮮、韓国が再び中国に接近しようと、愁眉を送る時がやってくるだろうか。中国がいまの体制である限り、私は「二度と来ない」とみる。
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