「NOTTV」終了で電波塔としての役割どうなる
東京のシンボルとなっている東京スカイツリーや東京タワー。これらは観光資源としての役割もあるが、本来の役割は、複数の放送電波を発射する「集約電波塔」である。日本に数ある電波塔のうち、日本で初めて建設された集約電波塔である名古屋テレビ塔が今、本来の役割を失う危機に直面している。
わが国のテレビ放送は開始当初、各テレビ局がそれぞれ独自の電波塔で電波を発射していた。たとえば東京では、NHKにアンテナを向けると日本テレビの映りが悪くなる、日本テレビにアンテナを向けるとTBSの映りが悪くなるといった事例が発生。すべてのテレビ局が同じ場所から電波を発射する「集約電波塔」が理想とされ、名古屋テレビ塔は1954年、その第1号として誕生している。
それ以来、名古屋テレビ塔は東海地区にVHF※テレビ放送の電波を送り届ける役割を担ってきたのだが、2011年7月24日にアナログテレビ放送が終了。東海地区の地デジ電波は、新たな集約電波塔である、瀬戸デジタルタワーから発射されることとなったため、名古屋テレビ塔はその役目を終えた。
※VHF…アナログテレビの1~12チャンネル
すると名古屋では、名古屋テレビ塔の存廃論議が巻き起こった。電波塔は工作物として建てられているため、建築物として存在し続けるには耐震工事が必要になることが露呈。また、テレビ局からのアンテナ賃料も途絶えることで収益が大幅減少する見通しとなり、その存在意義が問われたのである。
そこに救世主が現れる。スマートフォン向けマルチメディア放送「NOTTV」である。2012年4月からNOTTVのプラットフォームとなるジャパン・モバイルキャスティング社が名古屋テレビ塔より電波の発射を開始。名古屋テレビ塔は再び電波塔としての役割を担うこととなり、株主である名古屋市とともに耐震を見据え、電波塔としての第2の人生が始まった。…