登録 : 2016.01.22 02:31
修正 : 2016.01.22 06:09
東京に赴任してから2年が過ぎ、改めて感じることだが、韓日両国の関係悪化をもたらした真の理由は、両国国民のコミュニケーション方式の違いにあるのではないかと思う。特に、間接話法や引用句、あいまいな語尾の処理などで塗り固められた日本の政治家たちの話を聞いていると、今でもあの人は何を言っているのか、混乱する場合が多いが、そのような例を挙げるとキリがないだろう。
日本軍「慰安婦」問題に対する韓日政府当局の12・28合意が発表されてから、殺到する韓国内の反応を見ながら、そういう考えを改めて確信するようになった。個人的には、安倍晋三首相は「歴史修正主義者」だと考えているし、そういう意味で韓国人が安倍首相の歴史認識を批判するのは構わないと思う。しかし“誤解”に基づく批判であれば、問題の解決には全く役に立たず、むしろ韓国の地位を萎縮させる可能性もある。
安倍首相は、今月18日の参議院予算委員会で「今まで『政府が発見した資料には、軍や官憲による強制連行を直接示すような記述は見られなかった』という立場を2007年に閣議決定した。この立場に何ら変更はない」、「(今回の合意を関して)戦争犯罪のたぐいのものを認めたわけではない」と述べた。この発言を19日付の中央日報などが大きく報道し、野党の「共に民主党」は「先月の韓日慰安婦合意が無効であると宣言したことに他ならない」と批判した。
安倍首相は、12・28合意を否定したのだろうか?そうではない。合意で、日本政府は「慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している」という点を認めた。彼は、「当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた」ことを明らかにした「河野談話」を継承すると何度も言ってきた。
これらの文章で目を引くのは「女性の名誉と尊厳に深い傷を与えた」主体、すなわち主語がないという点だ。日本政府は慰安婦の募集、管理、移送に「軍が関与」し、「総じて本人の意思に反して」行われたため、強制的なものであり、結果的に女性の名誉と尊厳を傷つけたことを認めている。
しかし、人身売買という犯罪を犯した主体、すなわち省略された主語は「業者」であり、軍や日本政府ではないことから、日本政府に「法的責任」はなく、「道義的な責任」があるだけという立場を維持している。結局、日本が認める“責任”とは、人身売買という犯罪を犯した業者を適切に管理・監督できなかった道義的、二次的な責任にとどまる。
そのため、安倍首相が、日本軍が戦争犯罪に当たる「強制連行」(人間狩りをするように髪の毛を引っ張っていくこと)を「直接示すような記述は見られなかった」と言うことは、政府の従来の立場を改めて確認したのに過ぎない。つまり、「強制性=道義的な責任=(業者による)人身売買」は認めるが、「強制連行=法的責任=戦争犯罪」は認めないということだ。安倍首相としては認めたことがないため、事実上、覆すものもない。
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キル・ユンヒョン東京特派員 //ハンギョレ新聞社
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この点を見直してみると、12・28合意を通じて韓国政府が慰安婦問題に対する日本政府の認識を変えたのは、事実上何もないという結論を下さざるを得ない。
今回の慰安婦合意で自分の歴史認識を貫くのに成功した安倍首相が憎らしく思えるとしても、その事実自体を非難することはできない。私たちが非難すべき対象は、このような合意に同意した朴槿恵(パククネ)大統領であり、彼女を取り巻く韓国の外交ラインなのだ。
キル・ユンヒョン東京特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2016-01-21 18:46
http://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/727266.html訳H.J