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教科書問題 「採択」への影響を調査 文科省1月22日 17時27分
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教科書会社が教員らに検定途中の教科書を閲覧させたり現金などを渡したりしていたことが相次いで発覚している問題で、こうした不適切な行為をした会社が12社に上ることが分かり、文部科学省は各自治体が使用する教科書を決める「採択」に影響がなかったかさらに調べることにしています。
去年10月、教科書をつくる「三省堂」で外部に見せることが禁じられている検定途中の教科書を教員らに閲覧させて現金を渡していたことが発覚して以降、「東京書籍」や「数研出版」でも同様の問題が明らかになりました。
こうしたなか、文部科学省は他の教科書会社にもこうした問題がないか調査して、20日までに報告するよう求めていました。その結果、平成21年度から昨年度までに、小中学校の教科書を発行する22の会社のうち半数を超える12社が合わせて5157人の教員などに対し検定途中の教科書を閲覧させたり金品を渡したりしていたことが明らかになりました。
このうち、検定途中の教科書を閲覧させたうえで現金や図書カードなどを渡していたケースは10社から報告があり、関わった教員らは合わせて3996人でした。検定途中の教科書の閲覧だけをさせていたケースは9社から報告があり、対象の教員らは合わせて1151人でした。さらに1社は、自治体が使用する教科書を決める「採択」に直接関わる教育長や教育委員10人に歳暮や中元を贈っていました。
教科書会社別では、業界最大手の「東京書籍」が合わせて2245人の教員などに検定途中の教科書を見せたうえで現金3000円から3万円や図書カードを渡していたほか、「教育出版」は合わせて1094人に現金3000円から5000千円を渡し、「光村図書出版」が合わせて463人に現金2万円を渡していたということです。
文部科学省は教科書採択の公正性に疑念を生じさせる不適切な行為だとして、1か月以内をめどに各社に対して公文書での指導などをする方針です。また、現金などを渡された教員の中にはその後教科書の「採択」に関わった人もいることから、文部科学省は各地の教育委員会を通じて聞き取り調査などを行い、教科書採択に影響がなかったかさらに調べることにしています。
こうしたなか、文部科学省は他の教科書会社にもこうした問題がないか調査して、20日までに報告するよう求めていました。その結果、平成21年度から昨年度までに、小中学校の教科書を発行する22の会社のうち半数を超える12社が合わせて5157人の教員などに対し検定途中の教科書を閲覧させたり金品を渡したりしていたことが明らかになりました。
このうち、検定途中の教科書を閲覧させたうえで現金や図書カードなどを渡していたケースは10社から報告があり、関わった教員らは合わせて3996人でした。検定途中の教科書の閲覧だけをさせていたケースは9社から報告があり、対象の教員らは合わせて1151人でした。さらに1社は、自治体が使用する教科書を決める「採択」に直接関わる教育長や教育委員10人に歳暮や中元を贈っていました。
教科書会社別では、業界最大手の「東京書籍」が合わせて2245人の教員などに検定途中の教科書を見せたうえで現金3000円から3万円や図書カードを渡していたほか、「教育出版」は合わせて1094人に現金3000円から5000千円を渡し、「光村図書出版」が合わせて463人に現金2万円を渡していたということです。
文部科学省は教科書採択の公正性に疑念を生じさせる不適切な行為だとして、1か月以内をめどに各社に対して公文書での指導などをする方針です。また、現金などを渡された教員の中にはその後教科書の「採択」に関わった人もいることから、文部科学省は各地の教育委員会を通じて聞き取り調査などを行い、教科書採択に影響がなかったかさらに調べることにしています。
東京書籍「社内に許容する雰囲気」
この問題で、業界最大手の「東京書籍」は22日午前、東京都内で記者会見し川畑慈範会長が「教科書への信頼を大きく損なうことになり深く反省しています。心よりおわび申し上げます」と謝罪しました。
この中で、東京書籍は、検定途中の教科書を教員らに閲覧させていたことについて「内容を充実させるためには教科書を直接見せて意見を聞くことが有効だと考えていた」と説明し、文部科学省がルールを定めてこうした行為を禁じた平成14年10月当初から続けていたことを明らかにしました。
さらに、検定途中の教科書を閲覧させていたことは、川畑会長をはじめ、幹部社員も把握していましたが、是正するなどの対応は取らなかったということで、「社内に許容する雰囲気があり安易な選択をしてしまった」と説明しました。
また、現金などを渡していたことについては、「教科書への意見を聞いた対価で『採択』されるよう働きかける目的はなかったが、疑念を招く結果となり不適切だった」と説明し、今後は見直す考えを明らかにしました。
東京書籍は今後、外部の意見を取り入れながら再発防止策を検討したいとしています。
この中で、東京書籍は、検定途中の教科書を教員らに閲覧させていたことについて「内容を充実させるためには教科書を直接見せて意見を聞くことが有効だと考えていた」と説明し、文部科学省がルールを定めてこうした行為を禁じた平成14年10月当初から続けていたことを明らかにしました。
さらに、検定途中の教科書を閲覧させていたことは、川畑会長をはじめ、幹部社員も把握していましたが、是正するなどの対応は取らなかったということで、「社内に許容する雰囲気があり安易な選択をしてしまった」と説明しました。
また、現金などを渡していたことについては、「教科書への意見を聞いた対価で『採択』されるよう働きかける目的はなかったが、疑念を招く結果となり不適切だった」と説明し、今後は見直す考えを明らかにしました。
東京書籍は今後、外部の意見を取り入れながら再発防止策を検討したいとしています。
教育出版「ルールの認識に甘さがあった」
この問題で「教育出版」は22日午後、東京都内で記者会見し、小島正利専務が、「ルールに対する認識の甘さがあった。教科書への信頼を損ね、心からおわび申し上げます」と謝罪しました。
この中で、教育出版は、教科書などへの意見を聞くためとして教員などを5人ほど集めた小規模の会議を各地で開き、検定途中の教科書を閲覧させていたことを明らかにしました。検定途中の教科書は、本社の編集部門が鍵のついたロッカーで一元的に管理することになっていましたが、編集業務に支障が出るとして日常的に持ち出され、上司も黙認していたということです。
教員らを集めた会議は3時間ほどで終わり、1人当たり3000円から5000円の現金を謝礼として支払っていたということですが、飲食などの接待はなく、教科書の『採択』を働きかけるケースはなかったとしています。
教育出版は「会議の目的や謝礼の在り方に問題はないと考えているが、教科書の管理方法などを見直し再発防止を徹底したい」としています。
この中で、教育出版は、教科書などへの意見を聞くためとして教員などを5人ほど集めた小規模の会議を各地で開き、検定途中の教科書を閲覧させていたことを明らかにしました。検定途中の教科書は、本社の編集部門が鍵のついたロッカーで一元的に管理することになっていましたが、編集業務に支障が出るとして日常的に持ち出され、上司も黙認していたということです。
教員らを集めた会議は3時間ほどで終わり、1人当たり3000円から5000円の現金を謝礼として支払っていたということですが、飲食などの接待はなく、教科書の『採択』を働きかけるケースはなかったとしています。
教育出版は「会議の目的や謝礼の在り方に問題はないと考えているが、教科書の管理方法などを見直し再発防止を徹底したい」としています。
光村図書出版「採択してほしいという意識無く」
この問題で、「光村図書出版」は東京・品川区の本社で記者会見を開き、常田寛会長が「先生方、全国の児童・生徒、保護者の皆様の信頼を損ねる結果になりまして誠に申し訳ありません」と謝罪しました。
会社の説明によりますと、光村図書出版は、平成21年度から26年度にかけて合わせて63回、「教育フォーラム」という会合を開催し、合わせて463人の教員を招き、現金2万円と交通費を渡していました。
集まった教員には、日頃から教材について意見を聞いているため、実際に教科書がどう変わったのか示すために検定途中の教科書の一部のコピーを見せていたということです。光村図書出版は、一部を開示するのは問題ないのではないかと判断していたということです。
教科書の「採択」との関わりについては、「採択してほしいという意識はなく、その後、参加した先生方が採択に関わったかどうかは把握していない」と説明しています。
会社の説明によりますと、光村図書出版は、平成21年度から26年度にかけて合わせて63回、「教育フォーラム」という会合を開催し、合わせて463人の教員を招き、現金2万円と交通費を渡していました。
集まった教員には、日頃から教材について意見を聞いているため、実際に教科書がどう変わったのか示すために検定途中の教科書の一部のコピーを見せていたということです。光村図書出版は、一部を開示するのは問題ないのではないかと判断していたということです。
教科書の「採択」との関わりについては、「採択してほしいという意識はなく、その後、参加した先生方が採択に関わったかどうかは把握していない」と説明しています。
金品を渡していた教科書会社は10社に上る
検定途中の教科書を教員などに閲覧させたうえで、金品を渡していた教科書会社は10社に上りました。
業界最大手の「東京書籍」は、合わせて2245人に対し、現金3000円から3万円や、図書カードを渡していました。
「教育出版」は1094人に対し、現金3000円から5000円を渡していました。
「光村図書出版」は、463人に対して、現金2万円を渡していました。
「大日本図書」は、83人に対し、現金5000円から1万円を渡していました。
「三省堂」は、53人に対し、現金5万円を渡していました。
「学校図書」は、20人に対し、3000円から5000円の図書カードを渡していました。
「数研出版」は17人に対して現金2万円から5万円を渡していたほか、使用する教科書を決める「採択」に直接関わる教育長や教育委員10人に歳暮や中元を贈っていました。
「日本文教出版」は、12人に現金1万円を渡していました。
「教育芸術社」は5人に現金1万5000円を渡していました。
「新興出版社啓林館」は4人に対して2000円相当の物品を渡していました。
また、2社が金品は渡していないものの教員などに検定途中の教科書を閲覧させていました。
「開隆堂」は185人に検定途中の教科書を閲覧させていました。
「育鵬社」は35人に閲覧させていました。
業界最大手の「東京書籍」は、合わせて2245人に対し、現金3000円から3万円や、図書カードを渡していました。
「教育出版」は1094人に対し、現金3000円から5000円を渡していました。
「光村図書出版」は、463人に対して、現金2万円を渡していました。
「大日本図書」は、83人に対し、現金5000円から1万円を渡していました。
「三省堂」は、53人に対し、現金5万円を渡していました。
「学校図書」は、20人に対し、3000円から5000円の図書カードを渡していました。
「数研出版」は17人に対して現金2万円から5万円を渡していたほか、使用する教科書を決める「採択」に直接関わる教育長や教育委員10人に歳暮や中元を贈っていました。
「日本文教出版」は、12人に現金1万円を渡していました。
「教育芸術社」は5人に現金1万5000円を渡していました。
「新興出版社啓林館」は4人に対して2000円相当の物品を渡していました。
また、2社が金品は渡していないものの教員などに検定途中の教科書を閲覧させていました。
「開隆堂」は185人に検定途中の教科書を閲覧させていました。
「育鵬社」は35人に閲覧させていました。
中学校の教員「持ちつ持たれつの関係」
今回の問題について、平成22年度と昨年度に会議に招かれるなどして検定途中の教科書を閲覧したり謝礼として現金を受け取ったりした西日本の中学校の教員がNHKの取材に応じました。
この教員は、「教科書会社の人は日頃からよく学校に来る身近な存在で、自分から『検定途中の教科書を見せてほしい』と言って閲覧させてもらったこともある。教員側からすると現場の声を教科書に反映してもらえるし、営業サイドはそれを知りたい。教員と教科書会社とは持ちつ持たれつの関係だと思う」と話しました。
さらに、この教員は、みずからが参加した教科書会社主催の会議について、「どこの会社も同じように考えると思うが、ファンを増やすためのもので、本音の部分で言えば『採択』に関わるであろう人物を集めたのだと思う。ゆくゆくは教育委員会に入る若手・中堅の教員と接触をしておけば、いわゆるおつきあいの中で、内容もよければ当然、『採択』の対象になる。少子化の中、とにかく取り込みたいという会社のねらいがあり、採択されるかは死活問題で必死になっていると感じた」と話しました。
この教員は、「教科書会社の人は日頃からよく学校に来る身近な存在で、自分から『検定途中の教科書を見せてほしい』と言って閲覧させてもらったこともある。教員側からすると現場の声を教科書に反映してもらえるし、営業サイドはそれを知りたい。教員と教科書会社とは持ちつ持たれつの関係だと思う」と話しました。
さらに、この教員は、みずからが参加した教科書会社主催の会議について、「どこの会社も同じように考えると思うが、ファンを増やすためのもので、本音の部分で言えば『採択』に関わるであろう人物を集めたのだと思う。ゆくゆくは教育委員会に入る若手・中堅の教員と接触をしておけば、いわゆるおつきあいの中で、内容もよければ当然、『採択』の対象になる。少子化の中、とにかく取り込みたいという会社のねらいがあり、採択されるかは死活問題で必死になっていると感じた」と話しました。
教科書作成や採択の仕組み 見直しを
今回の問題について、国の教科書検定審議会で委員を務めた経験がある、國學院大學文学部の上山和雄教授は「背景には教育産業全体が縮小気味のなかで教科書会社がいかに生き残っていくか、激しい競争を迫られていることがある。教科書会社には大切な事業に携わっているんだということを肝に命じてもらい、多様な教科書を出せるように中身で競争し、採択するほうも中身で判断してもらいたい」と話しています。
そのうえで、再発防止に向けては、「もっと教科書の作成にさまざまな意見を反映できるようにして、採択の経過も多くの人に知ってもらえるような仕組みが不可欠で、それがなければ今回のような問題はまた起きるだろう」と指摘しています。
そのうえで、再発防止に向けては、「もっと教科書の作成にさまざまな意見を反映できるようにして、採択の経過も多くの人に知ってもらえるような仕組みが不可欠で、それがなければ今回のような問題はまた起きるだろう」と指摘しています。