横浜市の原鉄道模型博物館で1月16日から「台湾の鉄道展」が始まった。博物館の創設者で鉄道愛好家の故・原信太郎氏が撮影した台湾の鉄道映像を公開している。写真パネルや模型、資料を展示。標高2300メートルまで登る阿里山森林鉄道を原氏が16ミリフィルムに記録した映像を上映する。映像には日本製の車両も多く登場、沿線の映像からは当時の台湾の人たちの暮らしぶりもうかがえる。
原氏は1962年から何度も台湾を訪れ、鉄道記録を残した。68年には阿里山森林鉄道を撮影している。今や観光列車として知られているが、森林鉄道として米国から導入した「シェイ式蒸気機関車」が活躍していた当時の姿を見ることができる。台湾各地の鉄道の写真のほか、時刻表や地図の展示もある。なかには「中華民国建国70年記念切符」も。原氏が製作したシェイ式蒸気機関車の模型も展示されている。16日のオープニングセレモニーで原氏の次男で博物館副館長の原健人さんが「日本だけでなく台湾の人たちも見てほしい」とあいさつした。
約1時間の映像は3場面に分かれる。最初は台北から嘉義への旅だ。68年11月に原氏は台湾の鉄道探訪の旅に出た。当時の台湾には電化された鉄道は1路線もなかったという。主要幹線もすべて蒸気機関車、ディーゼル機関車だった。台北駅前から始まる映像は冒頭、駅周辺の市街地の中、列車の出入りがあわただしい線路を見下ろしている。原氏の台湾の旅に同行したことがある、鉄道著作家の松本謙一さんは「この時代の台湾は電化されておらず、蒸気機関車やディーゼル機関車が走っていた。日本統治時代の面影が残っており、それが映っているのは大変貴重だ」と話す。
ある時は車窓から、ある時は駅に降りて淡々と情景をリポートする原氏。ナレーションには所々、冗談も混じる。氏の明るい性格がうかがえる映像だ。見学者からもたびたび笑いが起きた。
嘉義を起点として、いよいよ阿里山森林鉄道の旅が始まる。シェイ式蒸気機関車がわずか70キロメートルの間に2300メートルの高地まで登る。急勾配をこなすためループ線やスイッチバックを組み合わせており、映像にもしっかりと記録されている。高度が上がるにつれ車窓からみえる樹木も熱帯林から亜熱帯林、温帯林と変化していく。現在は倒壊してしまった樹齢2000年級のヒノキの「神木」などを映しながら阿里山に至る。
トンネルや鉄橋、ダムなど撮影禁止の場所も多く、原氏が当局の目をかいくぐって撮影した映像もある。映像の中に「撮影が当局にみつかり、フィルムが没収された」とぼやくシーンも。さすがにこのときの原氏の声は落ち込んでいた様子だった。映像は中国大陸との緊張関係が続いていた当時の台湾の様子も見事に捉えている。機関車や駅舎といった鉄道資料としてだけでなく、貴重な台湾の歴史資料でもある。「台湾の鉄道展」は3月17日まで。
(村野孝直)
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