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SMAPを閉じ込めた「タコ部屋」カルテル

JBpress 1月22日(金)6時25分配信

 世の中を騒がせたSMAPの独立騒動には、違和感を覚えた。普通はスポーツ紙の芸能ネタなんか問題にしない一般紙もこれを追いかけ、事務所から正式の発表もないのに「SMAP×SMAP」の冒頭でメンバー5人が謝罪した。

 結果的には独立も解散もなかったので、事務所が「何もありません」と否定すれば終わりなのに、新聞やテレビで憶測が乱れ飛び、メンバーの謝罪も誰に何を謝罪しているのか分からない。この背景には、芸能界だけでなく日本のメディアの病理がある。

■ テレビ局を支配するジャニーズ事務所

 問題が公になったのは、ジャニーズ事務所のメリー喜多川副社長が昨年(2015年)1月に行った『週刊文春』のインタビューだった。ここで彼女は「[SMAP担当の]飯島マネジャーが事務所の中に派閥をつくっているという噂が本当なら辞めさせる」と明言した。

 これをきっかけに飯島マネジャーの独立が、業界では取り沙汰されるようになった。彼女の育てたSMAPのメンバーの独立も弁護士を入れて協議され、4人は独立の意向を表明したが、木村拓哉だけは残留を表明したという。当初は移籍先として名前のあがった芸能事務所も、キムタクなしでは無理だということで話は昨年のうちに壊れたようだ。

 各社の報道では「キムタクが4人の独立を思いとどまらせた」という話になっているが、これは疑わしい。SMAPの売り上げは年間100億円以上といわれ、ジャニーズ事務所の稼ぎ頭だ。事務所が彼らの独立を阻止するためにはあらゆる工作をするだろう。

 独立しようとした売れっ子タレントが事務所とトラブルになるケースは、芸能界では珍しくない。特にジャニーズ事務所の市場支配力は大きいので、「うちから独立したタレントは使うな」とテレビ局に通告すれば、局側も従わざるをえない。

 しかしこれは奇妙な話だ。芸能事務所はタレントを補助するマネジメントをやるだけで、彼らに業務命令を出す立場にはない。結果的にはキムタクが残ったことで、独立の交渉は不調に終わったが、それだけのことだ。なぜ4人が謝罪しなければならないのだろうか。

 しかも草彅が「今回ジャニー[喜多川社長]さんに謝る機会を木村君が作ってくれて、いま僕らはここに立ててます」と言ったように、事務所に対する謝罪を公共の電波でやるのは常軌を逸している。

■ 番組のバラエティ化で「空洞化」する民放

 これはジャニーズ事務所や芸能界だけの問題ではなく、独立したタレントを干すタコ部屋カルテルが成立する背景には、テレビ業界の歪んだ構造がある。

 本来テレビ番組は、テレビ局が企画してキャスティングするものだが、バラエティ番組の視聴率は「誰が出るか」でほとんど決まってしまうので、「数字の取れる」特定の人気タレントに出演依頼が集中する。その結果、芸能事務所が企画を決めるようになった。

 昔から大阪の局の番組は、台本もなくお笑い芸人がスタジオでしゃべるだけだ。こういう番組では、笑いを取れる芸人を出せるかどうかがすべてなので、吉本興業の政治力が強くなり、吉本が番組の企画・制作を請け負うようになった。

 同じような傾向が在京キー局でも強まり、たとえば「たけしの平成教育委員会」はたけし事務所が企画したものだし、「報道ステーション」を制作しているのは古舘プロジェクトだ。

 つまり民放の番組が(報道やワイドショーも含めて)バラエティ化した結果、タレントの個性や才能に依存する傾向が強まり、企画機能が「上流」の芸能事務所に移っているわけだ。

 他方、番組制作や技術スタッフは「下流」の下請け・孫請けに出している。これはテレビ局の経営としては合理的で、広告収入が落ちる中でコストダウンを図りつつ視聴率を取るため、番組のバラエティ化で民放の空洞化が進んでいるのだ。

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最終更新:1月22日(金)6時25分

JBpress

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