本来保険を解約したときにはある程度の金額のお金が払い戻されます。これを「解約返戻金」と呼ぶのですが、最近では「解約返戻金」を低く抑えるか、まったくゼロにする医療保険が主流となっていて、解約返戻金がある医療保険はほとんど販売されていません。
現在でも〈解約返戻金を低く抑えたタイプ〉と〈解約返戻金があるタイプ〉との両方を販売しているソニー生命を例に、医療保険の解約返戻金について解説します。
●解約返戻金を低く抑えたタイプ[低解約返戻金特則付総合医療保険(無配当)]
月額保険料:3845円(35歳男性、保険料払込は60歳まで、保険期間は終身)
保障 | 金額 | 備考 |
---|---|---|
入院給付金 | 日額5000円 | 入院5日目から1入院につき360日を限度に支払い |
手術給付金 | 1回につき5~20万円 | 手術の種類による |
死亡給付金 | 5万円 | |
解約返戻金 | 5万円 | 60歳以降に解約した場合のみ支払われる |
こちらの〈解約返戻金を低く抑えたタイプ〉の医療保険では、60歳以降まで保険を続けた場合のみ5万円が支払われます。月額保険料は3845円。
●解約返戻金があるタイプ[総合医療保険(無配当)]
月額保険料:6380円(35歳男性、保険料払込は60歳まで、保険期間は終身)
保障 | 金額 | 備考 |
---|---|---|
入院給付金 | 日額5000円 | 入院5日目から1入院につき360日を限度に支払い |
手術給付金 | 1回につき5~20万円 | 手術の種類による |
死亡給付金 | 50万円 | ただし解約返戻金が50万円を上回る場合は、解約返戻金と同額となる |
解約返戻金 | 払込済み保険料合計の70%前後 | 詳細は下の表 |
※解約返戻金・返戻率の詳細(保険料払込は60歳時点で終了)
経過年数 | 年齢 | 払込保険料累計 | 解約返戻金額 | 差額 | 返戻率 |
---|---|---|---|---|---|
10年 | 45歳 | 76万5600円 | 52万9865円 | 23万5735円 | 69.2% |
20年 | 55歳 | 153万1200円 | 112万1990円 | 40万9210円 | 73.2% |
30年 | 65歳 | 191万4000円 | 144万9215円 | 46万4785円 | 75.7% |
40年 | 75歳 | 191万4000円 | 138万5400円 | 52万8600円 | 72.3% |
〈解約返戻金があるタイプ〉の医療保険では、いつでも解約したときにそれまで払い混んでいた保険料の70%が戻ってくることになります。解約返戻金額は保険加入からわずか10年で約53万円、20年経てば110万円を超えた額が戻ります。月額保険料は6380円。
第一に注目してほしいのは、〈解約返戻金があるタイプ〉の方が〈解約返戻金を低く抑えたタイプ〉よりも、圧倒的に保険料が高くなるということです。月額保険料を比べると、〈抑えたタイプ〉では3485円で済むのに、〈あるタイプ〉では6380円もかかります。解約返戻金を抑えることによって、月々の家計に与える負担が相当軽くなることが分かります。
また、入院や手術に関する保障は一生必要、いやむしろ、高齢になるにつれ必要度が増していきます。それに医療保険には
という特長があります。
なので、終身医療保険を解約する人は少なく、実は解約返戻金の存在はあまりありがたがられません。このため保険各社では、解約返戻金のない、掛け捨ての終身医療保険が主流となっているのです。
次に注目してほしいのは、〈解約返戻金があるタイプ〉では解約返戻金額と死亡保険金額が同額となっていることです。死亡後は医療保障が必要なくなるので、死亡すなわち自動的に解約と考えれば良いでしょう。もちろん、解約返戻金の受取人は契約者本人ですが、死亡給付金の受取人は遺族となるという違いはあります。
なお、オリックス生命の『リリーフW』のように、死亡給付金があっても解約返戻金はない医療保険もあるので、注意しましょう。
このため、〈解約返戻金があるタイプ〉の需要は、
なお、解約返戻金は税制上「一時所得」として扱われるので、解約返戻金額が払込保険料累計を50万円以上超えない限り(すなわち50万円以上プラスにならない限り)、税金はかかりません。
ソニー生命の場合は、どの場合でも解約返戻金額の方が少ないので、非課税になるということですね。常識的な金額で医療保険に加入しているなら、返戻率が100%を大きく上回らない場合は非課税と考えて良いでしょう。
これまでに解説したように、終身医療保険を解約することによってその後の医療保障を捨ててしまうのは、いくら解約返戻金が受けとれるとあっても、あまりおすすめできることではありません。
けれども、ずっと掛け捨てで保険料を払い続けるのはとってももったいない…と感じることもありますよね。
なので、ここからは【一定の年齢に達したらそれまで支払った保険料が戻ってくる。しかも保障はずっと続く】という一風変わった終身医療保険をご紹介します。
最近は保険会社各社で、終身医療保険については月額保険料の安さで競争しています。このため、保険料が割高となる貯蓄性の高い(掛け捨てではない)商品は、あまり多くありません。しかし、それでも掛け捨てには抵抗があるという方には、上記のような60歳や70歳などの時点でそれまでの払込保険料全額が返ってくる保険商品がおすすめです。この場合は解約しなくて済むので、その後も一生涯保障が続くのもポイントとなります。